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カウントダウン・レッド
リクエストもらいました😆
書きました。
リクエストの内容ともんのすごいずれてしまいました。
😭
与謝野晶子(謝りますという意味です)。
あの子が赤い糸を引きずっていることに気づいたのは放課後の教室だった。足首にまるで鎖のように赤い糸がぐるぐると巻かれていて、それはどこに繋がっているのか廊下にまで続いていた。私が「その糸。なにそれ?」と訊くと相川沙羅は首を傾げた。「なんのこと?」
「その足…赤い糸あるじゃん。」
相川紗羅が自身の足を動かしいろいろな角度から確認していたが、10秒ほど経って彼女の口から出てきたのは、先ほどより訝しげな「なんのこと?」だった。私はそれ以上なんと言えば良いのかわからなくなった。彼女に見えないなら追従するべきではないのだろうし、変な子と認識をされても困るので、結局は勘違いだったみたいとごまかした。なかなか無理のある言い訳だと思った。
「相川さん、まだ帰らないの?」
私は話を変えて、通学カバンを肩にかけながら彼女に問うた。
「あ、うん、友達が部活終わるの待ってるから。」
「あ、そうなんだ。じゃあ私帰るね。ばいばい。」
私は彼女に小さく手を振って教室を出た。赤い糸がずるずると通っていて、やっぱり存在してるし、はっきり見えるよね、と眉をひそめた。私は赤い糸がどこに繋がっているのか確かめるために、赤い糸が続いている方に歩いた。突き当たりまで行ったところで糸は右に折れていた。音楽室と音楽準備室だけがあるような狭い廊下だ。私も曲がり、糸の先を見やると、そこには音楽準備室のドアがあった。
どうやらこれは、音楽準備室から生えているらしい。いや、生えているのは相川沙羅からで、音楽準備室はゴールの可能性もあるが。
私はドアを開けようとした。当然というべきか鍵がかかっていて横にスライドすることはできない。仕方なくあきらめて、踵を返してきた道を戻った。
翌日、学校に行った。相川紗羅の足にはやはり赤い糸が巻きついていてそれは昨日よりも巻き数が減っているような気がした。
「犬飼さん、おはよう。」
彼女は昨日私が奇妙なことを言ったことなんてまるで意識していないようで、いつものような笑顔で挨拶してきた。「おはよう。」私もなるべく彼女の足に視線をやらずに答えた。
クラスメイトたちも普段通りの様子で、だから赤い糸なんて本当になくて、私がおかしいだけなんじゃないかと思った。何かの病気なのかな、とスマートフォンで調べようとしたとき、チャイムが鳴ってHRが始まった。私はスマートフォンを通学カバンにしまった。
休み時間、友人に小声で「昨日から相川さんの足に赤い糸が見えるんだけどさ…、」と相談した。友人は「なにそれ? 薬指じゃなくて?」と冗談っぽく笑った後、自分には見えないことを教えてくれた。
「そっか、やっぱり私がおかしいのかなー。」
「さあ、でもなんで相川さんなんだろーね。やっぱあれかな、顔? 相川さん美人だし。」
うーん、と唸って返した。友人は続ける。
「てか美人っていうか…いや美人だけどなんか、清潔感? なんだろー、垢抜けたんだろうね。だって去年はそんな目立ってなかったもん。」
私は去年は相川沙羅とは別のクラスだったのであまり記憶はないが、友人は同じクラスだったらしい。私は彼女の方を見た。艶やかな長い黒髪と、涼やかな目元と、印象的な涙袋に、確かにかなり美人だなと改めて思った。
翌日も、さらに翌日も、赤い糸は消えてくれなかった。しかし相川紗羅の足首からはほどけるように糸の巻き数が減って行き、だんだんと彼女の白のソックスが覗くようになった。
「相川さんさ、隣のクラスの男子に告白されたらしーよ。」
友人は私が相談した日から彼女の話をよく持ち出すようになった。私はそうなんだ、とかありきたりな相槌を打つことしかできなかった。他人と違う自分の視界について、脳みそについて、そして相川紗羅について、考えたくなかった。
彼女の白いソックスはもうほとんど見える。彼女の上靴の中から生えるように出てきているその赤い糸が、あとどれほどの長さで尽きてしまうのか、私は知らない。
相川紗羅が赤い糸から完全に解放された時、なにかが起こりそうで、私はそれに恐怖すら抱く。それでも目を離せなくて、だからむしろ、私のほうが赤い糸に囚われている気がする。いや、相川沙羅という人間に、か。
タイトルださすぎて一周回ってださい。