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#1 犬
正直ドン引きするレベルの虐待描写があります。
見るのは自己責任でお願いします。では始まります。
「むかーしむかし。あるところに一匹の可哀想な犬がいました。」
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僕は犬だ。
家の中で飼われているから飼い犬なのだろう。
けど、僕は今、ひどくお腹が空いていた。
丸一日、飼い主が帰ってこないのだ。
まぁ、帰ってきたとしてもろくに餌なんてくれないけどね。
カサカサブンブンとハエやゴキブリの巣と化している家はゴミだらけでひどい臭いを放っていた。
僕はしばらく、そのゴキブリを無理やり口の中に入れて飢えをしのいでいた。
が、そろそろ限界だ。
せめて、柱にくくりつけられているリードを外せられれば自由に動けるのに。
僕の背の高さではとてもじゃないけど外せない。
仕方なく、飼い主が帰って来るのを大人しく待つ。
⋯生きてる内に帰ってきてくれるといいんだけど。
死んだら死んだで別にいい。特に思い残したこともない。
強いて言うなら、お腹いっぱいご飯が食べたい。
そんなことをぼんやりする頭で思っていると、突然、玄関の扉が開いた音がした。
あぁ、もう帰ってきたのか、と思っていたが、どうやら違うみたいだ。
バタバタと何人もの足音が聞こえる。
「酷い臭いだ。」
「あぁ、全くだ。仕事じゃなければこんなとこ来ねぇよ」
大人の男の人の声と共に、何かを運び出す音がする。
なんだろう。強盗とか?
僕が色々考えている内に、僕のいるリビングの扉が開く音がした。
「うわ。ここの方がひでぇ」
ボヤく男性の声がどんどん近づいてくる。
僕は見つからないようにできる限り息を潜める。
「あ?人?おいお前、こんなところで何して⋯」
警察官の格好をした男性が僕を見つけ―――固まった。
どうしよう。見つかった。また酷いことされる⋯?
とりあえず、言わなきゃ。隷属の印であるあの言葉を―――
「⋯わん」
喉が乾いていて掠れてしまったが、震える唇を懸命に動かして言う。
この言葉は僕が従順な犬である証だ。従順な犬ならすごく酷いことはされない。
男性はしばらく呆然と僕の方を見ていたが、やがて我に返ったのか慌てた様子で無線機を手に取る。
「小学生低学年ぐらいの男児を発見。服の類を身に着けておらず、全身に火傷や痣を確認。犬の首輪を付けられており、リードで自由を奪われている。ひどく痩せていて体も震えている。至急、救急車の手配を。」
ところどころ上擦った声で無線に向かって叫ぶ男性。
急に目の前で大きな声を出されたので僕の体がビクリと震える。
怖い。逃げなきゃ、でも逃げ場なんてどこにもない。
男性はゆっくりと僕に近づく。
なんで?もしかしてあの言葉が聞こえなかったの?
「わん」
さっきより大きめの声で言うと、男性は何かを取り出した。小型のナイフだ。
どうして?なんで?
「⋯っ!わん⋯っわん⋯わ、わん!わん!わん!!わんっ!!」
なんで近寄ってくるの?半狂乱で叫ぶように言葉を繰り返す。
ナイフは痛い。怖い。
すると男性はリードを手に取って、ナイフで切った。
そして素早くナイフをしまうと、自分の上着を脱いで僕に掛ける。
そして僕を抱きかかえると揺れないように慎重に玄関の方へ歩き出した。
「もう大丈夫だからな。」
男性がポツリと言った泣きそうな言葉の意味がよくわからなくて。
僕はいつ投げられてもいいように体を固くした。
温かい春風が吹いていた。
あとがき
やりすぎですかね。
絶対に幸せにするので気に入ったら見てくださいね。