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Ⅳ「脱獄」Ⅳ
私は情報の数々に呆気に取られ、上手く言葉を発することができない。
しかし、私よりもナナヤの方が、激情に震えているようだった。
「ラヴ殿は本来なら、『鬼狩り令』が廃棄された日に、釈放されるべきだったのです。だが先ほどのお話によると、この牢獄の管理は随分と杜撰なようですね。……どうりで、おかしいと思いました」
私は少しぎょっとした。彼が、自分自身を責めているように見えたからだ。
「普通の方法では殺すことができず、まだ生きているはずの女王の噂を、十年前から一つも耳にしていない。私はどうしても鬼人の力をお借りしたくて、一縷の望みにかけて、ここへ来たのですが、なんともまあ、人間は時折、愚かなことをする生き物だ」
ナナヤは終始複雑な様子で、その瞳にはばつの悪そうな色が浮かんでいる。
……つまり、五年前の話をしたのは、長い間閉じ込められていて無知な私を安心させるためか。彼は私を騙すつもりはなく、私を縛る権力者や法令も無いのだと、身の潔白を証明したかったのだろうか。
「『鬼狩り令』が廃棄されたということは、わたしは今、堂々と正門から出たとしても……」
「運悪く管理人と揉めない限りは、助かるでしょう。咎められるのはラヴ殿ではなく、貴女を放置していた人物ですから」
「ナナヤさん、あなたは、どうやってここへ?」
「独自の手段によって、無断で侵入しました」
ナナヤは静かに言った。私は、彼を信じることにした。
「では、その独自の手段というもので、ここを出ます。鬼人の女王は、ここで人知れず餓え死んだことにしてしまった方が、おそらく私にとっても好都合です」
私は痩せ細った腕で、彼の手を握った。十年ぶりの他人の肌は、父でも母でも、兄妹でも、友人でもなく……鬼人ですらなく、どうやら訳ありらしい人間の手だった。
ナナヤは、覚悟を決めたように強く握り返した。
「ありがとうございます。…………そのまま、私の手を離さないでください」
彼はそう言うと、なんと、まるで幽霊のように鉄格子をすり抜けて、牢の内側に入ってきた。
驚きに息を呑む私を、彼は迷わず抱き抱える。
冗談ではない、ここは石と鉄でできた堅牢な監獄だ。分厚い壁にぶつかる、そう思った瞬間、何の抵抗もなく冷たい感覚が体内を通り抜けていく。
まるで水中をくぐるように、脱獄に成功してしまった。