編集者:しらたまさまんさ。
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目次
1day
僕は今現在。人が行き交い、にぎやかに、そしてのんきに過ごす人々を眺められるような絶景の見える場所に立っている。
ここから一歩でも動けば僕は死ぬだろう。
だが、僕は死ぬ気は更々ない。
特に生きることにも、死ぬことにも抵抗はない。
そんなツマラン人生を何年も何年も送っている。
このようなツマラン人生を送っているやつは大抵ロクなやつじゃない。
僕だって学校くらい行っている。
早くここから出ていきたい。この死にそうな崖っぷちから。
だが、
「見ろよ!ツル!ヤベェぜ?!」
「おいおい、マジかよ。」
こいつ、バッカな野郎だが頭だけはいい。
天才とバカは紙一重的なものだ。
そのへんではなんだかんだイライラしながらも尊敬している部分だ。
何がさっきからやばいかというとまぁ、そのうち分かる。
「ーーい、ーーーる?ツル〜!」
「あっうん何?」
「なんか俺らここめっちゃ危ないとこにいる?」
「え、いまさら?」
「ねえ!わかってたなら早く言えよぉ!」
「いや、知ってると思ってた。」
「ざっけんなよ!」
彼はハト僕はツルという。あだ名だ。
なぜかなんて分らない。
辺りの友達やクラスメイトが勝手につけたものだからだ。
いつだって僕は、他人に媚を売って生活している。というより、周りに尊敬、親しくしてもらうために、命、身をかけている。
そうだよな?と言われたら当然のようにそうだね。と答える。
自分がそう思っていなくたって、そうだ。と、肯定するだけで他人との関わりはいつの間にか深くなっている。
その人間の心の”原理”のようなものをうまく利用して、いいや。このように言うのは背徳感が妙なように湧いてくる。だから、こうしよう。うまく応用して僕は人間関係を築いている。
その為だろう。このような恐ろしくツマラン人生しか送れないのは。
「つか、ツルっていっつも他人に合わせてね?」
ドキッとした。急に痛いところをついてくる。
「正直言って合わせてる。」
「なんで?自分の意見は尊重したほうがいいよ」
「いや、だっていじめられたくないし、僕にそんな権利1ミリだってないし。」
「人は誰しも自分の意見を言う権利を持っているっていのにか?」
「そうだよ。実際のところ人間は平等なんかじゃない。」
「まぁな。」
そう。だれか、偉人だったか、文豪だったかが書いた”学問のすすめ”にこう書いてある。天は人の上に人を造らず。その人はきっと、絶対、彩り豊かな人生を送っていたのだろう。だから、サラッと不特定多数の人に見られる本の原稿にこのような綺麗事をかけたのだろう。きっとハトが言いたいのもこの”天は人の上に人を造らず。”と、そういうような意味をさっきの言葉に込めていたのだろう。
「じゃあ聞くけどよ。」
「何?まだ何かあるの?」
「お前はさ、セイについてどう思う?」
「なにいってんの?」
「だから、セイつったらどんなものを想像する?」
「なんかよくわからんけど、生きるっていうのを想像するよ。」
「そうか。サンキュな。もう帰ろうか。」
「なんなんだよ。」
そして僕らは崖っぷちの場所から遠のいて行く。古文などで出てくる表現で行くと今は黄昏時といのだろう。昼でも、夕方でも、夜でもないこの時間帯のことを。僕とハトはゆっくりと背を崖っぷちに向けながら、家の方向にゆっくりとそしてあっけなく、向かっていく。これまでのあの危険な場所にいたことがまるで夢だったことなのかと思うほどにあっけなく終わる。
僕とハトはそれから家に帰るまで一度だって話していない。
あいつが言っていたセイとは結局なんなのかわからずにいた。なぜあいつがそんなことを急にいいだしたのかも僕は、わからずにいた。
それから何日か経った。学校が始まる。僕はその日のお昼。食堂でランチを取っていたとき、例のハトがやってきた。そしてこう言った。
「お前、もうちょっとで夏休みだろ?一緒にどっかいかね?」
「え。」
「別に、無理にとは言わんけど。セイについてなにかわかるかもしれないから。」
「そっ…か。」
「うん。どう?」
「う〜ん。行こうかなぁ。」
「っし。決まりだな。」
その日の出来事はまぁこのくらいだろう。
家に帰宅し、そのことを親に伝えようと思ったが、家に親はいなかった。ただ、机の上に置き手紙があった。
ユウへ
お母さんは少し仕事に出てきます。
晩御飯は自分でレンジでチンして食べてください。
母より
こんな普通すぎる内容。僕は書き置きのおりに冷蔵庫に入っている晩御飯をレンジでチンして一人でいただきますをいった。そのいただきますは、僕の家の暖色のライトに照らされながら、オレンジっぽく染まっている白い壁に吸い込まれてゆく。僕には、家族があと四人いる。一人はさっきの母親。それから二人の弟。そして今はもういない、僕の父親。弟たちは未だに部活のせいで帰ってきてないだけであって決して遠くに行っているわけではない。だが、もう父親は一生会えないような存在になってしまった。それは僕が確か小学六年生の頃だった。父がいつもどおり電車で通勤していると、電車が脱線して、死んだ。
母親は常に仕事をしている。オンラインなどでよくやっているから、家から出ることは滅多に無い。だが今日はその滅多に無い日の滅多にの部分の日だったらしい。母親がいつかえってくるか、弟がいつかえってくるかなどを考えていたらいつの間にか皿からご飯は消えていたし、腹は膨れていた。僕は晩御飯を食べ終わり、ごちそうさまでしたと言う。だがそれもまた、ライトに照らされてオレンジ色に染まる壁に吸い込まれて消えていく。
僕は皿をシンクの中に入れ、蛇口から水を出し、透明な水を見ながら皿についたよごれの色も同時に見ていた。すると当たり前の話だが、透明な水に色のある汚れが流されていく。
ガチャリ。 「「ただいまーっ!」」
複数人の声が一気に廊下に響く。だがそれもまた、壁の中に薄っすらと消えていく。
僕は、
「おかえり」
と返した。当然だそれに返される言葉もなく、ただ廊下の床が踏みつけられ、ドンドンという音が近づいてくる。それだけ。帰ってきたのは二人の弟。
「母さんは今日夜遅いってよ。」
「了解にーちゃん!」
「わかったー!」
「ご飯どうする?」
「なんでもいいー!」
テキトーな会話後。僕は弟らの晩御飯を冷蔵庫から出してレンジでチンをする。一分三十秒後レンジがチーンとなった。弟らの晩御飯の皿からラップを引き剥がし、ゴミ箱へすてる。
「おーい。お前らー!ごーはんー!食べねぇのー?」
「食べるー!」
「食う。」
同時に同じような内容が返ってくる。別にそんな返事に返事は返さない。返す必要もないし、特に意味もない。そのへんはまた人間の心の”原理”のようなものだ。弟らが御飯を食べているとき、僕はひとりでにシャワーを浴びに行く。シャワー浴びが終わる頃には、とっくに弟らの御飯タイムは終わっている。まぁ当たり前の話だ。そんなに長々とご飯を食べるのは右利きなのに左でご飯を食べようとしているようなやつくらいだろう。
弟らもご飯を食べ終え、シャワーにも入り、明かりで染まっていた白い壁も今度は深い灰色になった。そして、家が寝静まった深夜約二、三時。
ガチャリ―――。母親が帰ってきた。
僕だってもう部屋で勉強済ませ、瞑想タイムに入ってる。深夜の二、三時まで瞑想しているやつなんてみたことがない。それもそうだ。大抵の人は瞑想なんてしないで顔を光で青白くしながらスマホの画面を覗き込んでいるだろう。それもでツマラン人生だ。僕は瞑想をしているといつもいつの間にか寝ている。今回も同じく寝落ちしていた。
2day
登場人物紹介してなかったので紹介します。
ツル (福原弓弦 ふくはらゆづる)
ハト (伊集院遥斗 いじゅういんはると)
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ツルの母 (福原由美 ふくはらゆみ)
ツルの弟 上 (福原翔 ふくはらしょう)
ツルの弟 下 (福原翔 ふくはらかける)
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いつもの寝落ちだった。寝落ちをすれば大抵朝が来る。寝てから体感感覚約一 分程度で現実時間約五時間が経っている。とても不思議だ。現実でずっと起きて いる人には、五時間はとても長く感じられる。だけど、僕らのような寝ている人 達は約一分というとても短い時間を過ごしたという感覚になる。人間は一生のう ち約三分の一を寝て過ごしているらしい。この時間感覚が狂うような感覚もまた、 生きる、セイのひとつなのかもしれない。今日の僕にもまた、同じように約一分 間の短い夜が明け、眩しい朝が来る。これを毎日毎日繰り返していると、いつの 間にか一年、二年、十年、二十年と、時が過ぎてゆく。
僕は白い布団から頭だけを出し、目を覚ました。そして布団を切り捨てるよう に僕は起き上がる。また、新しい朝が来ると思うと憂鬱でたまらない。もう朝は 来てほしくないそう思うときだってある。隣りにあるピロンピロンとなっている スマホのアラームを止め、僕は部屋のドアを開け、部屋から出る。階段を降り、 洗面所へと向かう。そして、今日も朝が来たと起きたときよりも深く実感する。 水を顔に目一杯かけたと同時に僕は手を顔に当て、撫でるようにこする。
顔をも洗い終え、母親に作ってもらった朝ごはんを最初にいただきますと言い ゆっくりと食べる。今日のいただきますは、人数が多いためか、音が吸収され、 消えるのが早かった。
「母さん?あのさ、夏休みに僕ハトとどっか行こうって言ってんだけど。いい?」
遠回りをせずに聞く。
「いいよ~。楽しんでらっしゃい。」
「さんきゅ」
予想通りの回答。うちの母さんはいつもそうだ。大抵は許可してくれる。だけ ど、昔は違ったんだ。その内容も後々わかってくる。とりあえず僕は朝ごはんを 食べ終え、ごちそうさまでしたを口にする。そろそろ良い時間だ。二階の自分の 部屋に上がり、服を着替え、バッグに教科書やらノートやらをきれいに詰め込む。 そして学校に行く準備が整い、リビングの方へまた降りた。そこから正面玄関に つながっている扉を開け、そこを通過する。靴を履き替え、玄関の扉をガチャり と開ける。
「いってきまーす」
「いってらっしゃーい」
家族のいってらっしゃいを受け取り、僕は学校方面へと歩き出す。一日一日が僕 にとっては憂鬱だ。だけど、死ぬ気も更々無いから特に何も思わない。だけども し死ぬのなら...。
いや、今は考えないようにしよう。そんなことを自分同士で討論している間に あっという間に黒いフェンスの校門についた。そこでハトと合流する。ハトと僕 は反対方面の家なのでいつも学校でしか会えない。校門には、もうとっくに花び らが散りきって葉桜になった桜の木がある。
「はよー」
「おはよ。」
「親からのオッケーがぁ......でました~!」
「やったな!」
「まぁ大抵うちはそうだけどね。」
僕は微笑を顔に浮かべながら冗談のように真実を言う。
「うちもまぁ当然だがオッケーだ。」
「で、どこ行くか決まってるんだよな?」
「おうよ!今回は、九州に行こうと思う。」
「おぉ!じゃあ新幹線で 3,4 時間?それくらい?」
「そんなもんかな~」
「いいんじゃね?」
「うん。なんでかつったら、俺がちょっとしてみたいことがるんだ。」
「へぇ~。お前にしたい事、ね。」
「なんか悪いかよっ」
「いいけど意外だなぁなんて。」
そんなこんなの会話を交わしていると、各自の教室の目の前についた。
「じゃあまたな。」
「おうよ」
僕はアニメとかでよくいる窓側の端っこで頬杖を付きながら黄昏れて、空っぽ になってるような奴だ。所謂陰キャと言うのだろうか。名称なんて別に興味も関 心もないから別に気にはしない。毎日のようにそんなことをしていると、最初は 一分が一時間位に感じていたのが、十分が一分のように感じるようになった。
改めて思うが慣れとはとてつもなく恐ろしいものだ。人間が本当に恐れるべき なのは自分たちがその間違った環境に慣れてしまう事なのではないかと内心思っ ている。
スピーカーから鳴る太めの鐘の音。それと同時にクラスの中心部分の奴らが必 死になって席に戻る。僕は立つだけだからとても楽だ。そんなことを思っている と、いつの間にかホームルームは終わっている。一限目から数学というのは鬼畜 な話だ。
ノートを取りながらひたすらに先生の話を聞き流す。ノートはシャーペンの芯 の黒とノートの白の二色だけだ。別に他の奴らとは違って僕はマーカーとかで印 をしたりはしない。黒板に白く綴られた文字を書き写しているだけだ。 暇することもなく、またスピーカーから太めの鐘の音が聞こえる。学級委員長の 号令とともに一時限目の授業は終了した。
それがお昼ごはんまでであと三回もある。その三回は授業の内容、教科は違え ど、することはすべての授業においてほぼ同じだ。 そのため、二回目くらいになってくると、段々と暇になってくる。これも授業へ の慣れが重なった結果、飽きにつながったのだろう。
お昼。食堂にて僕はまた一人で椅子に座ってお箸で口にご飯を移しながら ボーッとしていた。すると、毎日お昼は同じ席に座ってくるハトが今日も座って きた。
会うのは朝以来だが、なんだか 1 年ぶりにあったような気持ちになる。それは 暇だった授業が四限もあったからだろうか。
「おひさー 。」
「まだあってから一日もたってませんが?」
案の定の返答。
「そうだけど、授業のせいで一日がめちゃ長く感じひん?」
「それはそう。」
「暇やし。」
「教科担任してる先生があたりかにもよるよな~」
「それなぁ~」
「でも理科のあの地学の先生はあたりやわ。」
「なんで?」
「寝れるもん。」
「言うと思った~」
「でも事実やん?」
「まぁね?」
僕は考える。先生のあたりはずれは実際にあると思う。だけど、寝れたらそれは 本当にあたりの先生なのか?
寝てしまうような授業をする先生は普通に考えるとはずれだと思う。それでも、 これはやっぱり大人から見ての話だ。学生から見たらやはり、寝られる先生のほ うがあたりなのだろう。 僕はちなみに寝るとかは授業中にしないから、特にそのへんのあたりはずれはど うでもいい。 正直言って、先生にあたりはずれがあるなら、学校自体にもあたりとはずれがあ るんじゃないのか?
「おーい?」
「ツル~っ!」
「!ぁあごめん考え事してた。」
「お前考え事し始めたら止まらんもんな。」
「ごめん」
「別に謝らんくていいけど」
「あはは」
「何考えてたの?」
「あー、先生にあたりはずれがあるなら学校にもあるのかなーと思って。」
「あるんじゃね?メンツとか。」
「あーね。それはそうかも知れん」
僕の座右の銘、大切にしている言葉、それは、
あなたが生まれたとき、あなたは泣き、世界は喜んだ。そしてあなたが死んだと き、世界は泣き、あなたは喜んだ。そんな人生を送りなさい―。
だから僕は、生まれたときのことはもう変えられないけれど、死ぬときは喜べる ように、悔いのないように生きようと思う。そのせいだろうか、悔い無き人生は、 僕にとって他人と精一杯関われるような人生だ。だから僕は一生他人に合わせ続 ける。そのことはさておき、僕が言いたいのは、僕の座右の銘なんかじゃない。 座右の銘は前置きだ。僕が本当に言いたいこと、それは、
よく笑っている人は 自分がこの世で一番嫌いで、拒否している。 他人に相談できる人は 本当の優しさと強さを持っている。
かまって欲しい人は 自分のこととなると恐ろしいほどの恐怖が押し寄せてくる。 ツンとして無愛想な人は 本当に何もできない凡人。
頭がいい人は 孤独を感ぜられる天才。
この五つのことが言いたかった。僕はきっとこの中には入っていない人種だ。こ れが僕にとっての人間だ。ずっとこう思ってきた。
いつだって誰かが助けてくれるはず。なんて甘い考え。誰かが助けてくれるな んて、馬鹿らしすぎる。
僕はいじめにあったんだ。急すぎる過去の告発だけど、理解してほしい。この先 きっと僕が過去を話せる場なんて殆どないから。毎日、クラスメイトがカッター やハサミを向けて、僕を切りつけてきた。その頃は僕、鶴賀 夏生はやはり今言 ったような甘い考えしか持ち合わせていなかった。
いつか、先生かだれかがきっと助けてくれる。助けてくれないわけなんてない。 だからだから、早く助けて。
そうとしか―、思えなかった。
思えるわけもなかったんだ。毎日パニックになっては、それを隠し通し、心の余 裕なんてあるわけがなかった。 そうだね。怖いね。この言葉だけを、同情だけを求めて、ただひたすらに叫んだ。 やめて。ってね。 それしか言いようがないことも確かだが、やはり、もっと考えるべきだなと今に なっては思う。やめてなんて言葉は、いじめっこに通用するわけがない。それな のにやめてなんて、今なら喉をかき切られてでも言えない。言えるわけがない。 あっちは僕をいじめて楽しんでる奴らだ。嫌がれば、もっとしてくるに決まって いたのに。考えればわかるのに。その頃の僕にはわからなかったんだ。そんなこ と。
そんなわけで僕は、辛い目にあっていた...なんてもう感じすらしないけど、こん な過去が僕にはあるんだ、人間は忘れる。この事があったと覚えていても、その 時の感覚は、その後一日もせずに、忘れてしまう。だからもう、どーでもいいん だ。
いっそ、消えてしまえばいい と、考えることだって考えてみれば悪くはな いだろう?
周りの人は、自分が消えた悲しみですら一瞬で忘れてしまうのだから、消えた いって思ったっていいじゃないか。
何もわかってない偽善者にゃわかんねえし。どう思ってたって、一緒だろ。
「ハトさ、僕が昔人の意見に流されないような人だったって言ったら信じる?」
「?んー、まあ、想像はできねえけど信じるかな。」
「そっ...か...。うん!ありがとう!」
「お前もなんか不思議なとこあるよな。」
「そうかな?wまあいいや」
僕らはそれぞれの教室へ帰るために別れをつげる。
「またあとでな〜」
「うん。またあとでね。」
それからハトと別れて自分の教室に入り、僕は自分の席に座った。僕はひとりで に考えてしまう。いつか、ハトとの本当の別れが来たらと、僕の結局最後は一人
なのだろうか。そんなくだらないことを考えているうちにまたもや、太い鐘の音 が聞こえた。キーンコーンカーンコーン...。がららっと下に石でもあるのかとい うほどの鈍い音を上げながら、重そうな鉄の扉を開けて、先生が入ってくる。今 回の授業は社会だ。
「ここが、サウジアラビアです。このアラビア半島の近くにサウジアラビアがあ ると思っていてください。」
それからもペラペラと先生は、自分の脳に詰まっている知識を重い空気の中に 軽快に吐いていく。所々で、先生は、寝ている人を起こしにかかる。寝ていた人 は、重いまぶたを目いっぱいに開き、「すいません」という。周りからは、から かわれるように笑われた。その人もくすっと恥ずかしいように笑う。
そんな軽くなった空気も先生の知識吐きが開始すると、また、重い空気になっ た。その空気を切り裂くように鐘がなる。全員が重そうに体を上げ、軽くすとき の対処として、うんとのびをする。級長が礼といった瞬間、全員がありがとうご ざいましたと、心のこもっていない感謝を伝える。それが終わると、各自の趣味 や、友人とペラペラ喋る。僕には当然友達なんかいない。だから、じっと机とに らみ合いをするか、空を眺めてきれいだと単調にくつろぐ以外の選択肢はない。
この調子で、 6,7 時限目もやり過ごし、放課後へと時間が変わる。 隣のクラスのハトと今日は帰るので、ハトを迎えに行く。
「お〜い、ハト〜」
ハトは気づかない。だけど取り巻いていたハトのクラスメイトが気づいて呼んで くれた。
「おい、はると、ゆづるくんがお呼びだぞ。お帰りの時間でちゅね〜」
「おっマジ?てかその語尾やめろ。殴っちゃうぞ ♡ 」 「おー、こわいこわい、サーセンしたっ」
「んじゃまたあしたな〜」
「ばいばーいはると〜」
「ん。」
ハトがこちらへ来る。
「よ、よかったのかよっ、」
「ん?なにが?」
「僕なんかと帰ってよかったのかよ。」
「やだなぁ、俺を鬼だと思ってるの?この偉大な伊集院遥斗様を!!!」
「うん。おもってるよ☆」
「え、ぇ、弓弦のクソヤローっ!!!!」
「ごめんてw」
「あ、ツルさ、今日予定とかある?」
「え、ないよ?」
「じゃあ、かえって電話するわ!わかんねえとこ聞きたい。いいよな?」
「いいよw」
「おっ、もうついちった。じゃあ、また後でな!」
「うんまたね。」
それからは僕一人で帰る。家には今日は母さんがいるはず。 ガチャリ。
「ただいまっ」
「あら、おかえり」
「今日のようご飯何?」
「えっとねー、色々」
「そっか、いつごろになりそ?」
「うーん、7:15くらいかしらねえ」
「りょーかい。それくらいに降りてくるわ。」
「ありがとう。よろしくね。」
僕はリビングを出て、自分の部屋へと繋がる階段を登る。そしてドアの真ん中が すりガラスになっている部屋を開ける。ふぅ、と吸ったわけでもない息を肺から 漏らす。それから、かばんを下に置き、ネクタイを緩めてベッドに仰向けに横た わると、スマホを取り出し、ハトからの電話を今か今かと待っていた。
すると不意に、着信画面が表示されていることに気がついた。相手はもちろん ハトだった。応答ボタンを押し、
「もしもし?」
と言う。 すると当然
『もしもし、ハトだけどと返ってくる』
「あ、うん知ってる。」
『なんだよ、全くよ、』
「え、何にキレてらっしゃって?」
『チッ』
「ごめんてー!」
『許さない。』
「許してください遥斗さまぁー。」
『なんでもいいけどよ。早く教えろ。』
「うん。それがさ、教えたいところなのだけれど、もうすぐご飯でさぁ…。明日じゃなだめかなぁ」
『いいよ。うちももうご飯だから言おうと思ってた。』
「気が合うねぇ〜?」
『ハハッ。そうだな笑』
「んじゃまた明日ね。明日もいつもどおりのとこで待ち合わせな〜」
『おけぃ』
ツーツーと電話が切れた音がする。それからは、何気のない一日だった。
3.5day
いつも通り。
僕には、毎日眠ると朝が来る。それは絶対だった。だけど、いつの日か僕には朝が来なくなっていたんだ。なぜ、僕には朝が来ない?いや、来なく
なってしまったのか。それは、僕が死んだからなんだよ。これまでの文も、
これからの文もきっと死者日記。プロローグという名の僕の人生は終わり。
ここからは、死者の日記。亡霊と化した、福原弓弦の日記だ。
まずは死んだ経緯から話そうか。僕はその日明日も同じ場所での待ち合わせをハトとしたんだ。その次の日、いいや、眠りについている前に僕は、死んだんだ。枕元においてあったカッターナイフ。それで眠りにつくまも
なく、喉を掻っ切った。ひんやりと感じる空気の中に生暖かい血が流れる。つまり、自殺というやつだ。別に死に興味があったわけではないけれど、一回死んでみたくなったという動機で、僕は死んだんだ。さようなら。と、告げた瞬間に目の前は霞がかかったようにばや
け、端の方から赤や緑や青にどす黒い灰色が混ざったような色が視界を侵食していった。どす黒くなった視界の奥にまだぼんやりと自分の手や、部屋の壁が見える。完全に意識がなくなって死んだと感じたのは、音が脳へ伝達されず、以降、考えることもできなくなったときだった。
これが僕の辿った。死だった。
僕はいつでも、ハトと一緒でなければ存在すら認知してもらえないような存在だった。ハトとは背丈が今の三分の一くらいの時からの知り合いで、親とも仲良くしていた。ずうっと、僕は一人だった。たまたま小学校が、違った時、僕は、いじめられちゃったんだ。いじめられたって僕は頑張って生きたんだ。いずれ、自分には幸福が訪れる。そう信じてた。そんなの、あるわけないのになぁ…。
死後は暗闇の中で一人、日記を書き続けた。
今読んでいるのだって、日記。暇な時に書いていた。ずうっと暇だから、まあ、ずっと書いていることになる。
結局は、ただただ、何もかも吸われ尽くしてゆく、空気と変わらなかった。そんな僕に、植物のような何かを与えてくれる、居場所が存在したのなら、僕は今でも生きていたのだろう。きっと…僕なんて、いても仕方がなかったんだ。いじめられて、殺されて、死んで、殺して、のろって、ただただ、存在していただけ。生きれば生きるほど辛くなって、存在が薄れていって、消える。
あぁ…僕は、死ぬんだなって自覚した時にはもう。