沙月(私)の短編を集めたシリーズです。
不定期更新。
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目次
[現代版]赤ずきん
「お、お前は、、、、グハッ」
そう言って、男は息絶えた。
男の死体のそばに佇む一人の少女こそ、男を殺した張本人。
稀代の殺し屋、赤ずきんである。
彼女の家系、|氷室《ひむろ》家は代々殺し屋を営んでいた。
赤ずきんの母は持病があり、家業を続けるのが難しかったため、まだ若い赤ずきんが殺し屋を継ぐことになった。
元々、彼女達に殺し屋としての呼び名はなかった。
だが、殺し屋を続けていくうちに、彼女の被っていた頭巾に暗殺対象の返り血がこびりつき、洗ってもとれなくなった。
だが仕事に支障はないのでそのまま使い続けていたところ、業界内で「赤ずきん」という呼び名が定着したのだ。
死体を処理して、赤ずきんが家に帰ると、母親が待っていた。
「ホタル、少し『おつかい』を頼めるかしら?」
ホタルというのは少女の名前である。
「いいけど、、、どこへ?なにを?」
彼女は職業暗殺者である。
依頼を受けるときは「対象」「仕事内容」「期間」をしっかりと確認しなければならないのだ。
それは家族間でも同様である。
「ホタル、お婆ちゃんはわかる?」
「わかるよ。ツツジお婆ちゃんでしょ?それがどうしたの?」
「実は、最近お婆ちゃんの体の具合が良くないらしいのよ。だから、ホタルに薬を届けて欲しいのよ」
「わかったよ、お母さん。、、、そして本当の理由は?」
「あら、ホタルには全部お見通しなのね」
ホタルは仕事のため、様々な場所に潜入をしたことがある。
その中で、嘘を隠そうとする政治家や、虚偽証言を貫き続ける犯罪者などにも出会った。
人の嘘を見抜くのは、ホタルの|十八番《おはこ》なのだ。
「お婆ちゃんを殺そうとする人がいるらしいのよ。お婆ちゃんは足腰が弱ってるから、抵抗できないかもしれない。だから、ホタルに排除してもらいたいのよ」
ホタルの家系は暗殺者の家系のため、様々なところで恨みを買っている可能性がある。
復讐者など、日常茶飯事なのだ。
「わかったよ、お母さん。いつ行けばいい?」
「できれば、今すぐ行ってくれた方がありがたいわ」
「じゃあ準備してすぐ行くね」
「ありがとう」
ホタルは使い慣れた拳銃を手にし、家を出た。
ここからツツジの家まではかなりの距離がある。
「用心していかないとな、、、」
恨みを買っている可能性があるのは、ホタルも同じなのだ。
すると案の定、怪しい男が話しかけてきた。
「やあ、お嬢ちゃん。おつかいかい?この辺りはあぶない人がいっぱいいるから、お嬢ちゃん一人だと危ないよ。僕がついて行ってあげようか?」
ホタルは、男がそう言いながらホタルにナイフを突き立てようとしていることに気がついた。
この辺りは住宅街のため、拳銃は使えない。
拳を握りしめ、渾身の一撃を男に叩き込む。
「がはっ」
そう言って、男が倒れこむ。
一般人ではなく、「こっち側」の人間であることがバレバレだった。
男はまだ生きているようだったが、ホタルは時間が惜しかったので、とりあえず近くのゴミステーションに男を放り込んでおいた。
そのうち目覚めるだろうが、その頃には自分はツツジの家がある森林の中にいるだろう。
そこなら、思う存分銃弾をこの男にブチ込める。
この男の処理は後ででいいか。そう思ってホタルは男を放置した。
「んーと、お婆ちゃんの家は、、、」
そう言ってホタルは歩き出した。
数十分後。
「クソッ!あのガキ、俺をゴミステーションに投げ入れやがって、、、」
ホタルに撃退された男が気絶から回復した。
「だから言っただろ?ガキとはいえアイツは|殺害人数《スコア》132人の赤ずきんだぞ。油断して一人で突っ込んでいくからこうなるんだ」
「だが、俺達は『|狂狼《ウェアウルフ》』だ。あんなガキを大人数で|嬲《なぶ》るなんて柄じゃねえ」
「だからといってお前が逆に殺されたら意味がないだろうが。俺達はヤツに殺された高山の復讐をしようとしているんだ。それで狂狼の誰かが死んだら逆効果だろう」
「う、、、」
言い返せずに固まる男。
「いいか?俺達は、ヤツがツツジの家に行き、二人が一緒にいる状況で同時に殺るんだ。いいな?これ以上の命令違反は流石に見逃せないぞ」
「チッ、わかったよ」
そう言って彼らはツツジの住む家がある森林へと向かう。
彼らは「|狂狼《ウェアウルフ》」という暴力団だ。
団員の一人をホタルに殺され、彼女とツツジを殺そうと計画している。
復讐に燃える彼らが、ホタルとツツジに牙を剥く。
ホタルはツツジの家に着いた。
「お婆ちゃんー。いないの?」
「今開けるよ」
そう言って、出てきたのはツツジではなく、、、あの男だった。
狂狼の団員達は、ツツジの家へと向かったが、ホタルより早く着いた。
そしてインターホンを押し家へと入り、ツツジを拘束したのだ。
想像しなかった事態に、ホタルは一瞬固まる。
男はその隙を見逃さず、ホタルの体に拳を叩き込んだ。
「かはっ、、、」
「お返しだぜ」
ホタルはその場に倒れ込んだ。
「さっき俺を倒せたのはどうやらマグレだったようだな。いくら稀代の殺し屋とはいえ、この俺の拳をまともに食らったら1日は起きないぜ」
「調子に乗ってないで、早く片付けるぞ」
「おっと、そうだな。ヤツが反撃してきたときの人質として生かしておいたこのババァも殺していいか」
「そうだn」
男の言葉が最後まで発せられることはなかった。
即座に態勢を整えたホタルが、男の頭を正確に撃ち抜いたからだ。
「お前!生きていたのか!」
当たり前である。
この程度で、稀代の殺し屋たるホタルが動けなくなるはずはない。
ホタルは続けざまにもう一人の男の頭も撃ち抜いた。
「はぁ、、、掃除が大変だな、、、」
そう言いながらホタルは家の奥へと進む。
家の中にも何人か男が隠れていたが、ホタルは歯牙にもかけず冷静に「処理」していく。
「お婆ちゃんー。生きてるー?」
そう言いながらホタルは、死んでたら仕方ないか、と思っていた。
ホタルの家では誰かが死ぬのは日常茶飯事だからである。
すると、くぐもった声が聞こえるような気がした。
声が聞こえる方に進み、ドアを開けると、手足を縛られ、口にガムテープを貼られたツツジがいた。
しかし、ホタルは容赦なく銃を構える。
「あなた、お婆ちゃんじゃない」
そう言われたツツジは、一瞬で手足の縄を解き、ガムテープを剥がした。
「なんだ、バレてたのか」
そう言ってツツジ、、、男は変装を解く。
彼は「狂狼」のリーダー。
万が一ホタルが団員を倒しこちらに来た時のため、ツツジに変装して、ホタルが油断した瞬間を狙い殺すつもりだったのだ。
「だが、『赤ずきん』とはいえ一対一で俺に俺に勝てるかなッ」
ホタルは容赦なく男の眉間を撃ち抜いた。
「はあ、、、かなり汚れちゃったなあ、、、」
そう言いながらホタルはツツジを探す。
本物のツツジは屋根裏部屋にいた。
「ホタル、迷惑かけてしまってすまんねぇ」
「大丈夫だよ、お婆ちゃん。それよりほら、薬だよ」
「おお、ありがとうね。最近体の調子がよくなくてねぇ。助かったよ、ホタル」
「よかった。今度お見舞いに行くね」
そうしてホタルは帰路についた。
彼女こそが、|暗殺人数《スコア》137人(今日の分で追加)の稀代の殺し屋。
赤ずきんこと、氷室ホタルである。
短編小説を書いてみました。(短編かどうか怪しい長さになってしまった)
短編だと設定とか大変なので、童話を少し使わせてもらいました。
「現代版」昔ばなしシリーズとして、不定期に更新する予定です。
好評だったら続編だそうかな
でも勢いで書いたのでそこまで面白くない((殴
【現代版】かぐや姫
男は、詐欺師だった。
17歳の頃、闇バイトに引っかかり犯罪に手を染めた。
だが幸運にも捕まらず、以来お金に困っては詐欺をするという行為を繰り返していた。
そんな彼が、ある日恋をした。
ふらりと立ち寄ったカフェの店員に、一目惚れしたのだ。
勇気を持って話しかけてみたところ、話が弾み、意気投合した。
そのまま彼と彼女は仲が良くなり、付き合い、結婚した。
彼は、詐欺をやめることを決心した。
彼女に恥じない、まっとうな人間として生きていこう―――。
〜時は流れ、20年後。
とある星で、謎の生物達が会議をしていた。
「これは何たる失態!姫の逃亡を許すなど!」
そう言って、髪の長い方が激昂している。
「しかしよく考えてみてください。姫がピッキング用の針を靴の中に隠すなど、誰が考えますか?」
短髪で、若い方がそう答えた。
「黙れィ!理由が何であれ、姫を逃がしたのは重罪!貴様の罪、姫を探し出すことでしか償えないと心得よ!」
そう言って去っていく長髪に、短髪は「うぜぇなあ」と思った。
(お前が警備していたら逃さなかったのか?クソ、地位を盾に無理ばっかり言ってきやがって)
実際、彼も騙された。
姫の身体能力が非常に高く、さらにピッキング用の針、そして小型爆弾まで持っていたとは。
(まあ、月の軍に追われたら、見つかるのは時間の問題だろうがねえ、、、)
短髪はそうは思ったが、上司の命令には逆らえず、嫌々従うことになったのだ。
そして彼は向かった。
”地球”へと。
20年後、地球。
男はいつも通り妻にいってくるよと伝え、外に出た。
そして、自宅の近くにある山に登る。
男は最近動物の写真を撮ることに熱中しているのだ。
愛用のカメラを手に持ち、妻に作ってもらった弁当をリュックサックに入れて、彼は山へ出かけた。
彼は、妻と結婚してから企業を立ち上げた。
彼の詐欺師の頃の話術と詐術は健在で、上手く取引を誘導し、業績をどんどん上げていった。
そして、社長の座を退いた。
会社には、新しい風を吹かせなければと。
そこで、信用できる者を社長に任命し、自らは隠居することにした。
だから、彼はたくさんのお金と時間を、自分の好きなことに使うことにしたのだ。
そして、貯蓄していたお金で山奥の家を買い、ついでに山も買った。
究極のスローライフである。
彼は山を登った。
そこまで標高があるわけではないが、流石に年寄りの体にはきつい。
(ふぅ、、、今日はこの辺でいいか)
山の中腹あたりまで登り、腰を下ろす。
時刻は10時半頃。
弁当を食べるには少し早い時間だと思い、彼はカメラを手に取る。
少し探すと、リスを発見した。
近づきすぎると逃げられてしまうため、逃げられないギリギリからシャッターを切る。
なかなか良い出来の写真が取れた。
そのままシカ、ウサギ、タヌキといった野生動物の写真を撮る。
気づけば、時刻は12時になっていた。
そろそろ弁当を食べるか。そう思って彼は、腰を下ろせそうな場所を探す。
そして、竹藪を見つけた。
そこには丁度いいサイズの岩があったため、彼はそこに腰を下ろした。
そうして弁当箱を開く。ふと、違和感に気づいた。
(なんだ?この竹藪。何かがおかしい、、、)
相手の表情や動きの違和感を見逃さないのは、詐欺師時代のスキルである。
そうして、違和感の正体を探るため、彼は竹藪を散策した。
そして見つけた。その原因を。
それは、「光る」竹だった。
「なんだこれ。こんな竹があるのか、、、?」
彼は、動物の体で光るのは肉食動物の目とウリクラゲだけだと思っていた。
竹に近づいてみる。
眩しく、思わず見惚れてしまうような綺麗な光だ。
だが、彼は光の中に、「それ」を見つけた。
それは、赤子だった。
竹の中は空洞である。
この竹は見たところ内部から発光しているようであり、であれば、「中にあるもの」の姿形が影となって映ることになんの議論の余地もなかった。
彼は、護身用(とは言っているが一回も使ったことはない)のナイフを取り出し、竹に傷をつけていく。
そして、竹は割れた。
中から出てきたのは、やはり赤子だった。
性別は女の子。
見知らぬ赤子だ。だが、山に置き去りにするのは見殺しにするのと同じである。
彼は赤子を抱き、家に連れて帰った。
帰ってきて、彼は妻に赤子のことを話した。
彼には子供がいない。
彼は立ち上げた企業の重要ポストに付いていて仕事が忙しく、育児に参加できず、君ばかりに世話をやらせてしまうと妻に伝えたからである。
妻も、そこまで子供が欲しかったわけではないようで、この話は終わっていた。
だが、彼が連れ帰ってきた赤子を見て状況が一変する。
その赤子はまるで天使のように可愛かった。
妻は、赤子を養子にすることを提案した。
彼は、自分達のほうが先に寿命を迎えるのだからこの子に寂しい思いをさせてしまうと反対したが、結局は妻の勢いに押し切られて、赤子は彼らの養子になった。
赤子は「|輝夜《かぐや》」と名付けられ、すくすくと育った。
彼と妻は自分達が先に死んで、輝夜を一人にしてしまうことに危機感を覚えていたが、病気などはなく、彼らも今のところ元気であった。
20年後。
輝夜は立派な大人となっていた。
両親もまだ病気などはしておらず、医者から「こんなに元気なお年寄りは見たことがない」と驚かれるほどアクティブシニアだった。
輝夜は美しい女性に育った。
輝夜は高校を卒業したあと「父さんと母さんに迷惑をかけられないから」と就職して、商社に勤めるようになった。
だが、すぐに仕事はやめた。
輝夜曰く「みんな私の方に来て仕事にならない」だそうだ。
輝夜の美貌がそうさせるのだろう。男達に責任を求めるのは可哀想だ、とは彼も思ったが、自業自得だとも思った。
輝夜は今のところ結婚などは考えていないらしく、それに彼の妻は「もったいない」と思った。
輝夜は家でできる仕事を探し、Webデザイナーとなった。
美しく、人の心を引き付けるデザインを作る輝夜に、二人は驚いたものだ。
だが、幸せな日々というのは、
長くは続かない。
ある日、彼が山から帰ってくると、輝夜の姿はなかった。
最初は、もう大人だしどこかに出かけたのか、と思っていたものの、22時になっても帰ってこず、翌朝になっても帰ってこない輝夜に、二人は不安を覚えた。
「輝夜、遅いわねえ。どこに行ったのかしら」
「俺が探してくるよ」
そう言って彼は家を出た。
薄々感づいてはいた、、、輝夜が人間とは異なる存在なことに。
それは彼の妻もそうだろう。
竹から生まれた子が普通の人間なはずがない。
そして、輝夜の美貌。
普通の「美」ではなく、まさに「人外の美貌」と呼ぶのがふさわしい美貌だったのだ。
「何があったのかはわからないが、無事でいてくれよ、、、?」
彼は、輝夜のことを信じていた。
人間じゃなくとも。
20年育てた自分達の子供である。
それにはこちらを騙そう、利用しようという意思は全くといっていいほどなかった。
詐欺師時代の勘である。
輝夜にはスマホを持たせていない。
持たせようとしたこともあったのだが、輝夜が断ったのだ。
だから、GPSで探すことはできない。
彼は全力で疾走する。老人とは思えないほどの速度と、持久力で。
日々の山登りの賜物である。
小さい頃遊んだ公園。初めてできた友達の家。卒業するときに思わず泣いてしまった中学校。
輝夜に関係する場所を彼は片っ端から探していったが、輝夜を見つけることはできなかった。
「クソ、、、もうすでに町内にはいないのか、、、?」
そう思ったときだった。
「動くな」
そんな声が聞こえ、彼は気付いた。
自分の首元に、刃物が突き立てられていることに。
「ハァ、、、ハァ、、、」
こんな経験、現役世代にもない。
「お前、姫様を探しているのか?」
彼に刃物を突き立てている男が言う。
「姫?誰だソイツ、、、」
「とぼけるな。お前達が『輝夜』と呼んでいるヤツのことだ」
「!!」
彼は戦慄していた。
輝夜を取り巻く環境は、想像よりよっぽど複雑だったようだ。
だが、そんなことで20年間大切に育てた娘を諦める彼ではない。
「さあ?そんな人は知らないな」
とぼけてみる。
「、、、本当にそうか?なら情報部の伝達ミスか、、、すまなかったな、今の事は忘れてくれ」
そう言って男は、刃物をしまい去っていこうとした。
その隙を見逃す彼ではない。
背後から、詐欺師時代に知り合いからもらった強力な睡眠薬を首に打ち込む。
「なっ!!てめぇ、、、」
そんなうめき声を上げて男は崩れ落ちる。
「悪ィな。お前にも色々あるのかも知れないが、俺達にとっても輝夜は大切な娘なんだ」
そう言って彼は輝夜捜索を再開する。
だが、この男にすぐ信用してもらえたのはラッキーだった。
演技は得意である。
首元に刃物を突き立てられながら嘘を付くことができるなんて、考えもしなかったんだろう。
そんなんじゃすぐ詐欺に引っかかるぜ?と、彼は他人事のように思う。
「それよりも、、、輝夜だ」
彼は走り始めた。
「ここはどこ?ねぇ、お父さんとお母さんのところへ返してよ!」
輝夜がそう叫ぶ。
ここは、町の空き家のある部屋。
彼女の両手両足は、縄によって椅子に縛られていた。
「悪いが、それはできない。姫は、我が国の重要な人物だからな」
やってきた男がそう答える。
「姫って誰なの!?そんなの知らない!!」
「嘘を付くな。我々はすでに知っている。貴方が『月』の国の姫だと」
「、、、、、、、、、、、」
輝夜は沈黙する。
「20年前、貴方に逃げられたのは誤算だったな。まさか貴方の運動神経があそこまで高いとは。しかも、地球まで逃げてきた代償に、年齢が退行しているとは思いもしなかった。それで、探すのが遅れたのだがな」
「、、、貴方達が悪いのよ」
「何?」
「貴方達が地球を壊そうとするから!!」
輝夜は大声を上げる。
「それは仕方がないだろう。|地球の奴ら《あいつら》は月に侵入してきた。我が国の掟では、領土を侵すものは殲滅せよとなっている」
「侵入じゃなくて調査よ!大体、貴方達がそんな閉鎖的なコミュニティを築いているから、、、地球は素晴らしい惑星なのに!あんな美味しいもの、月では食べたこともなかった。あんな楽しいこと、月ではしたこともなかった。頑固な貴方達も、もう少し他人の意見を取り入れたらどうなの!?」
「それはできないな。我が国の掟なのだから」
「それが古いって言ってるのよ!!」
「もういい。貴方と話しても何も進歩は生まれない。それより、早くそのボタンを押せ。掟では、敵国に対する戦争開始は姫が宣言することとなっている。そのボタンは、戦争開始の合図を送るものだ」
「そんなの嫌!戦争が始まったら、私のお母さんとお父さんも巻き込まれるんでしょ?」
「貴方の両親は国王陛下と王妃様だ」
「あの人達は私に何もしてくれなかった!気にもかけてくれなかった!あんな人達、私の両親じゃない!」
「陛下に対して暴言を吐くなんて。舌でも抜いておくか」
「!?」
「そうだ、それがいい。我が国から逃げたものに対する罰だ」
そうして男が輝夜に近づいてくる。
「嫌、、、嫌、、、」
「拒否権はない」
そう言って近づいてくる男。
その時、彼が辿り着いた。
「俺の娘に、、、なにしてんだぁ!!」
大声を上げて、渾身の一撃を男の身体に叩き込む。
「ガハッ」
血を吐いて、男が倒れる。
「父さん!!」
「ごめんな、輝夜。今助ける」
そう言って彼は縄を解きにかかる。
「父さん、ありがとう、、、」
輝夜は思わず涙が出そうになる。
しかし、その時大勢の「月の国」の兵士が部屋に入ってきた。
「動くな!!手を上げろ!」
「なっ、、、」
彼は驚き、固まってしまう。
その隙に、兵士は彼の腹に打撃を叩き込む。
「ぐっ、、、」
そう言って彼は倒れ込む。
「お父さん!!」
「さあ姫、私達と一緒に月に帰ってもらいましょう」
(クッ、、、もはや、ここまでか、、、)
そうして、彼が諦めそうになったその時。
部屋に、ひときわ豪華な服を着た男が入ってきた。
「皆のもの、武器を下ろせ」
「!? ですが、国王様、、、」
「武器を下ろせ」
「!! はいっ!!」
そうして兵士は武器を下ろす。
「なんだと、、、?国王、、、?それに月って、、、」
困惑する彼に、男は説明する。
輝夜と自分達が月の人間であること。
輝夜が20年前に月を脱走して地球に来たこと。
それは、月が地球との戦争を計画していたことが理由であること。
そして今輝夜の居場所を特定し、連れ戻しに来たこと。
「だが、、、済まなかった、輝夜。余と我が国のものは、輝夜の気持ちなど考えもせず、非道いことをしてしまった」
そういって男、、、月の国王は頭を下げた。
「輝夜、、、許すのか?」
彼は輝夜に問う。
「、、、私が両親と生きることを許してくれるのなら」
「そうか、、、済まなかったな、、、」
そうして、月の人達は帰っていった。
輝夜に拷問を加えようとした男と、俺に攻撃した男は、このあと軍法会議にかけられ、極刑に処されるらしい。
そこまでしなくても、、、とは思ったが、やったことがやったことなので、仕方がない。
そして、彼と妻は、輝夜と共に暮らすことが叶った。
ずっと抱いていた輝夜に対する疑問も解決し、彼らはとても幸せな日々を送った。
そして、30年後。
ついに、彼はあの世へと旅立った。
輝夜も、妻も泣いた。
そして、同じ年に妻も旅立った。
輝夜は泣いた。
今までにないほど。
自分が大好きだった、お父さんとお母さんが、同じ年に二人とも亡くなってしまったのだ。
しばらくは、何も手につかなかった。
何かをする気になれなかった。
生まれて初めて自分達に優しく接してくれた二人。
輝夜は、心にぽっかりと穴が空いた気がした。
だが、1ヶ月後。
輝夜は、月へと向かった。
それは、月の国を変えるため。
自分のように辛い思いをしている人が、他にもいるかも知れない。
なら、そのつらさを知っている自分が、変えなければ。
変えられるのは、自分だけだ。
二人も、きっとそれを望んでいる。
そう、きっと。
そして、輝夜は月に向かい出発した。
読んでくれてありがとうございます!沙月です!
これが短編だと、、、、?(5870文字)
赤ずきんより長いじゃん。
現代版昔ばなしシリーズ、なんでみんな犯罪者の話になるんだろう。
これが沙月の脳の限界です(?)
ちなみに、山から拾ってきた赤子を養子にするくだりでは、詐欺師時代のツテを頼って偽造の書類だかなんだかを作っています。
てか輝夜ってどうやって月から地球まできたんだろうね、、、
続編予定なし。