オカルト部の先輩―――橘凪(たちばななぎ)が失踪した!
橘に恋をするオカルト部の後輩である俺、野田歩は先輩を探すことに!
どうやら先輩は失踪前、とある山に住む神様⋯?についての伝承を調べていた。
唯一の手がかりはこれか!よし!動くか!木刀片手に!先輩!待っててくださいね!
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目次
一怪目
新シリーズ
多分すぐ終わる⋯はずです。
俺がとあるネット掲示板のオカルト板にこのような書き込みをしたのはようやく突拍子もない現実を少しずつ受け入れられた時だった。
---
1:イッチ
俺の片思いしていた先輩が失踪した。あ、いや、行方不明?
なんかわからないけど、いなくなった⋯らしい。
警察も動いてるんだけど⋯多分先輩は警察も手に負えない場所にいると思う。
2:名無し
事件の予感
3:名無し
警察も手に負えない場所?反社会勢力の人たちの事務所とか?外国か?
4:名無し
詳しく
5:イッチ
えっと⋯どこから話そうかな。
先輩はオカルト部の部長だったんだ。で、先輩に一目惚れした俺もオカルト部に入った。
先輩はオカルトが好きだった。と、いうより依存してた。
6:名無し
依存?どゆこと?
7:名無し
警察が手に負えないならイッチにも手に負えないのでは?
って言おうとしたらなんか不穏な展開になってきてた
8:名無し
今どきオカルト部なんてあるんやな
というか、そんな理由で部活に入るとかイッチ青春しとるな
9:イッチ
なんて言ったらいいのかな。
先輩の周囲の人がろくでもない人ばっかりだったみたいで、その現実逃避にオカルトで頭をいっぱいにしてたって感じかな。
10:名無し
まぁ、イッチも一目惚れで部活入ってるろくでもない奴やしな
11:名無し
先輩病んでない?怖いんだが。そしてそれを知ってなお先輩に好意を寄せるイッチも怖いんだが。
12:名無し
ろくでもないってどゆこと?
13:イッチ
ボカして言うけど家族からの扱いが杜撰だったり、クラスメイト達とも色々あったり、
教師からも腫れ物扱いみたいな感じかな
14:名無し
四面楚歌やん
15:名無し
うわぁ、そりゃ病むな。
16:名無し
で。そんなクソみたいな現実から目を背けるためにオカルトに⋯オカルトに?何故に
17:イッチ
なんか、連れ去る系怪異っているじゃん?
18:名無し
ん?いるな
19:名無し
急にどうした?
20:名無し
あ⋯
21:イッチ
連れ去って⋯ほしかったみたいで⋯
22:名無し
!?
23:名無し
とんでもねぇwww
24:名無し
そこまで追い詰められてたのか⋯いや。余裕があるような⋯?
25:イッチ
だから、そういう系のオカルトをひたすら集めてたみたいで。
で、失踪前に調べてたのがとある山の神様の伝承⋯?みたいなので。
26:名無し
なるほどつまり、先輩はそこにいるかもってことか
27:名無し
警察に話せば?
28:イッチ
話したけど取り合ってもらえなかった
29:名無し
世知辛い⋯
30:名無し
まぁ、そんなもんよな
31:イッチ
ってことで!今から先輩救出してくるわ
32:名無し
え、今からって⋯
33:名無し
イッチ、学生やろ?もう23時やから明日にしな
34:名無し
睡眠取らないと本当にヤバいよ。早く寝な?
35:イッチ
いや。先輩心配で眠れないから今から行くわ!
目的地着いたらまたスレくるな!じゃノシ
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「ふぅ。さて、行くか」
山までは少し遠い。
俺は自転車に跨って夜の道路に繰り出す。
必死に自転車を漕ぎながら、先輩と初めて会った頃を思い出した。
***
「オカルト部を作りたいのですが、部員が足りないんです。誰か、入ってくださいませんか」
一年の夏休み明け、一人の少女がチラシを配っていた。
部活に入りたい奴は入り、入りたくない奴は入らない。
そう一学期中に生徒が分け切った後の二学期に、部活の勧誘とは珍しいと思いなんとなく彼女の顔を見た。
綺麗だと思った。
黒曜石のような大きな目、熟れた桃のように瑞々しくピンクの唇、陶器のように滑らかな肌。
それらに目を奪われ、俺はそのチラシを受け取ろうと近づく。
そして、思わず息を呑む
その美しい目は光を失い海底のようで、綺麗な肌には痛々しい包帯や、ガーゼが散らばっていた。
そのアンバランスさが、なるほど確かにこの世のものとは思えない。
オカルト部を作るだけのことはある。
「チラシ、ください」
これが、怪異に魅入られた少女と、その少女に魅入られた俺の出会いだ。
二怪目
ファンレターありがとうございます
本当に励みになります
目的地に着いた俺は適当にその場に自転車を置いて掲示板を開いた。
---
36:名無し
あ、おい!
37:名無し
え?マジで行った?
38:名無し
十分も音沙汰なしやな。まあ帰ってくるの待とか
39:イッチ
着いた
40:名無し
今日はもう帰って来ないのかと思った
41:名無し
着いたってことはマジで今その場所にいるのか?
42:名無し
3時間経ってるけど意外と遠かったんやな
43:イッチ
そう。今その山の中。
三駅分だからね。でも、そんなに経ったんだ。先輩のこと考えてたら一瞬だった。
44:名無し
夜に山は危ないって!
45:名無し
山舐めるなよ?本気で遭難するから引き返したほうがいい
46:名無し
三駅分?電車使ったの?
47:イッチ
そうしたいところだけど、この山に先輩がいるって思うといても経ってもいられず、つい。
いや、自転車。
48:名無し
自転車三時間漕ぎ続けたの案外すごいな
49:名無し
朝にしな?ね?
50:名無し
遭難しても知らんで
51:イッチ
⋯そうだね。朝まで待つよ。
テント張って
52:名無し
違うそうじゃない
53:名無し
テント持ってたのかw
案外用意周到だなw
54:名無し
意外と余裕やなwww
虫とかいそうやな
55:イッチ
カップ麺とかマシュマロとか持ってきたからキャンプできる
56:名無し
クッソwww
57:名無し
なんでちょっとキャンプ実況っぽくなってんだよww
58:名無し
こんな深夜にカップ麺の話とか
イッチは残酷な奴だよな
腹減った
59:イッチ
焼きマシュマロうまっ!
60:名無し
火炊いて大丈夫なん?法律的に
61:名無し
山火事とかなんないようにね?
62:名無し
焼きマシュマロ食いてぇ
63:イッチ
ガスボンベのやつだから⋯セーフ?田舎だから大丈夫でしょ
64:名無し
結構雑いな
65:イッチ
じゃあ、明日の日の出5時二十分からスレ再開するからそれまでお休みなさーい
66:名無し
お、おぉ
67:名無し
野宿か?熊とかに気をつけろよ?
68:名無し
ほぼ二時間後やんワイらも仮眠するか
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三駅も先の人があまりいない場所。先輩がいなかったら俺はこんなところには来なかっただろう。
街灯が少ない山の中。夜空には普段は人工の明かりで消えてしまう星々の明かりが柔らかく照らしている。
できあがったカップ麺をズズッと勢い良く啜る。夜のカップ麺って本当にうまい。
先輩は今、どうしているだろうか。寂しくないか、困ってないか、泣いてないか⋯。
気づけば先輩のことばかり考えてしまう。
俺はふと、入部したときのことを思い出した。
+++
「このたび入部しました。一年の野田です」
ぺこりとお辞儀をする。本棚には資料を集めたファイルのようなものが規則正しく並び、バラバラに貼られたいかにもな御札が壁を飾る部室。その部室にただ一人黙々と机に散らばった資料に目を通すのはこの部室の部長で、俺の片思い相手だ。
「⋯そう。この部室は好きに使ってくれて構わない。部員として名前が借りれればそれでいいから。」
特に目も合わせることもなく、ポツリと呟いた先輩。
その日から先輩の様子を密かに伺いながら過ごす日々が始まったのだった。