市夏は幼馴染の蒼に恋している。
だけど、好きなのだと、もう言えなくなってしまった。
二人が描いた物語の中に隠された真実とは_。
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目次
桜の木の下で
ふわり、ふわりと何かが舞い落ちてきた。
「桜の花びら?」
そう呟いた瞬間、ぶわっと強い風が吹いた。
すると、何かが飛んでいった。
「あ。」
そう思ったけれど、もう遅い。
私の帽子が桜の花びらに紛れて、どこかへと飛んでいこうとしていた
身長の低い私は、手を伸ばせる限り伸ばしても、もう届かなくなっていた。
あぁ...どうしよう。
そう思っていると
ひょい、とどこからともなく手が出てきて。
びっくりして横を見ると
1人の男の子と
私の帽子を掴んでいる手があった。
---
「ありがと」
私は帽子を返してもらって、お礼を言う。
「えへ」
その子は、そう返事した。
なんで、「ありがと」の返事が「えへ」なのかは、分からないけど。
---
そうして、私たちは一緒に遊ぶようになった。
毎日毎日、一緒に遊んだ。
それから数年たったけれど、その関係は変わらなかった。
まあ、いわゆる幼馴染という関係。
私たちの出会いは、桜の木の下なのだった。
緑の葉が生い茂る木の下で
それから春、夏。
秋、冬。
それが何回か過ぎて。
出会ったあのとき...4歳のときより、数年たっているから、小2だね
夏になりかけている木が見える。
私たちは、あの桜の木の下で、遊んでいた。
遊んでいたってより、話していた。
どうでもいいような話を
どうでもいいのだって、分かっていながらも、楽しいからただ話していた。
「なあ市夏。こないだのテスト、何点だった?」
「いちかは、85点!あおは?」
「ぼくは、80...何点だと思う?」
「87点!」
「惜しい!86点だー!」
「悔しいー!テストの点数も、当てるのも!」
「あはは」
そんな話だね
そんなどうでもいい話だけど、楽しい話。
それを、ずっとずっと、日が暮れるまで、緑が生い茂る木の下で、話していたね。
緑が生い茂る、桜の木の下で
紅葉する木の下で
どうでもいい話をした日から、さらに数年後。
小学4年生の私と蒼。
今は、ちょうど秋だといえるような季節。
木は紅葉してるし、どんぐりもいっぱい落ちてるし。
そんな中で、私はひときわ目立つどんぐりを見つけた。
「ねぇ蒼。おっきいどんぐりが、あるよ!」
「いや、市夏。よく見ろ」
「何を?急にどうしたの?」
「このどんぐりの方が大きいぞ」
「真面目なことを言うのかと思ったー!」
などと、私たちの話は、本当にどうでもよくなってきた。
でもこの一つ一つの何気ない会話こそが、楽しいのだ
紅葉する木の下で、私たちが何気なく過ごした日常。
それは、一つ一つ大事なもので_。
雪が積もる木の下で
その秋の次の季節がやってきた。
そう、冬。
寒い日でも、何気ない一言に、日常に、暖かくなる。
---
「市夏、明後日遊べるか?」
12月23日に、蒼はそんなことを聞いてきたよね。
なんでか分からない私は、すぐこう聞いた。
「なんで?」
「まず遊べるかどうか答えて?」
「うん。遊べるよ」
私は蒼の返事を待った。
でも、返事がこない。
「なんでなの?」
もう一度聞いた。
「ひ・み・つ」
蒼は、そう答えた。
---
そして。
蒼と遊ぶ約束をしていた日。
今日は、何かの日だったような...?
そう思いながら、私は蒼と遊ぶ場所へ行く。
それは。
そう、あの桜の木の下。
---
桜の木は、雪が積もっていた。
でも、まだ生きるぞ!
そういっているように感じた。
いや、気のせいなのかもしれないけどね
そこに、蒼はいた。
服についた雪をはらってたっている。
後ろから少し近づくと、蒼は呑気に鼻歌なんか歌っていた。
もう!
そして、背後からそーっと近づいて。
「あーおくんっ」
驚かせようと私はそう小さく言いながら、顔を覗き込んだ
「うわっっっ!」
蒼はそう反応した。
いや、私に化け物に会ったときみたいな反応するな!
「はあ~。ビビったわ。寿命が延びた気がするわ。」
「いや、「寿命が縮んだ」ね。」
一応そこは訂正しておく。
「んで、何するの?今日。私、別に何も遊ぶものとかはもってきてないけど」
「うわ、マジか。ぼく、市夏が何か持ってくると思って、全部おいてきた」
「いや、服とかはちゃんともってきてるじゃん」
「ナイス。ツッコミ係長市夏」
いつの間に、私はツッコミ係になっているのだろう。
---
そのあと、いっぱいいろんなことして遊んで。
もう、帰る時間になっていた。
「じゃあ、また」
そういって、私は歩きだす。
「いや、市夏、ちょっと待て!」
でも、蒼に止められた。
「蒼、何?私、帰るだけじゃん。」
「そうじゃなくて!えっと...はい、これ。」
「え?」
プレゼント?なんで?
私の誕生日は、まだ先だし。
えっと、今日って...
「あ」
「思い出したか?」
今日、クリスマスじゃん!!!
初めて知った、そんなこと!
あー。
思い出してたら、蒼にもプレゼントあげたのに...
「今あけた方がいい?」
一応蒼に聞く。
「いや、後であけて。」
そういう蒼の顔は、赤かった。
けど、夜になりかけている暗さのせいで、そんなことは分からなかった。
でも、たぶん私の顔も赤かったのだと思う。
空を見上げると、いつの間にか、一つの星が瞬いていた。
夜の空に、私と、蒼と。
それから、あの雪が積もった桜の木の影が映り込む。