—―町から遠く離れた集落、カレン村。村に母と住んでいる少女フレアは、ある日母を
殺され、カレン村も焼き尽くされる。そう仕向けた犯人は、王宮を乗っ取る貴族ダニエルだった。
復讐を誓うフレアは、町へ向かう—―
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目次
我、王女なり1
第一話。ほぼあらすじと一緒です。
黒い煙が、どこまでも青い空を汚していた。
ほんの数日前まで、カレン村には穏やかな風が吹き、緑の匂いが満ちていたはずだった。しかし今、フレアの視界にあるのは、すべてが炭と化した村の無惨な姿だけだった。家々から上がる炎の爆ぜる音が、遠くでパチパチと鳴っている。
「……お母さん」
かすれた声で呟きながら、フレアは地面に膝をついた。目の前には、冷たくなった母親の亡骸がある。衣服は引き裂かれ、胸元には鋭利な刃物で一突きにされた深い傷跡。
なぜ、こんなことになったのか。
カレン村は、町から遠く離れた貧しい集落だ。奪うような財宝もなければ、誰かの恨みを買うような理由もない。ただ静かに、助け合って生きていただけなのに。
『ダニエル様からの伝言だ。町の発展に貢献しないやつらは、一匹残らず焼き払えとな』
村を襲った兵士たちが、笑い声を上げながら口にしていた名前。
ダニエル。
王宮を我が物顔で乗っ取り、今やこの国の実権を握りつつあるという、そんな雲の上の存在がなぜ、この小さな村を標的にしたのか。今のフレアには知る由もなかった。分かっているのは、その男が母の命を奪い、フレアのすべてを焼き尽くしたという事実だけだった。
フレアは涙を流さなかった。いや、流せなかった。心が乾いたかのように。
「殺す……」
震える手で、母の形見であるペンと、落ちていた小さな果物ナイフを拾い上げる。
「ダニエル……絶対に、お前を許さない」
少女は立ち上がり、振り返ることなく歩き出した。
目指すは、仇のいる王都。すべてを失った少女の、復讐劇が始まった。
ーー少女は立ち上がり、振り返ることなく歩き出した。
目指すは、仇のいる王宮。すべてを失った少女の、復讐劇が始まった。ーー
我、王女なり2
第二話ー!
黒い煙が遠ざかっていく。フレアはただ、ひたすらに歩いていた。
丸二日、泥の混じった水をすすりながら歩き続け、フレアは王都の手前にある町「レムリア」にたどり着いた。
活気にあふれた町の中で、フレアはカレン村を襲った兵士たちと同じ紋章をつけた男を見つけた。
怒りで頭がカッと熱くなり、懐の果物ナイフに手をかける。しかし、背後から伸びてきた分厚い手に、ガシリと手首を掴まれた。
「やめときな。そんな鈍らじゃ、犬の皮一枚も通らねえよ」
振り返ると、酒臭い大男が立っていた。男はフレアを強引に路地裏へと連れ込む。
「放して! あいつらは、お母さんを……!」
「声がデカい。死にたいのか」
男はフレアの手からナイフを取り上げた。
「俺はガロン。鍛冶屋だ。お前が持ってるそのナイフじゃ、ダニエルのところに行く前に殺されるぞ」
「ダニエル」の名を聞いた瞬間、男の目がわずかに険しくなったのをフレアは見逃さなかった。
ガロンは、フレアがもう片方の手で握りしめていた母の形見のペンに目を留める。
「そのペン、持ち主はただの村人じゃねえな」
「……お母さんは、昔、王都で学者をしてたって」
「やっぱりな。ダニエルが村を潰したのは、ただの気まぐれじゃねえ。表に出したくない何かを隠すためだ」
母が殺された本当の理由が、ダニエルという男に繋がっている。
フレアはガロンからナイフをひったくり、まっすぐに見つめた。
「私に、あいつを殺せる武器をちょうだい。使い方も教えて」
「……命をドブに捨てる覚悟があるなら、少しはマシな牙の研ぎ方を教えてやる。ついてきな」
ガロンの寂れた工房で、鉄を叩く音が響き始める。
フレアの復讐のための泥泥とした旅は、ここから本格的に動き出そうとしていた。
闇落ちですね……。