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【第一日目】「名前ヲ呼ブト死」(後編)
「何でこんな都合よくマンションに風呂と寝室と飲食物があるんだか…しかも、 `人数分 `。」
蓮は2階の1番奥にある部屋のベッドに腰掛け、頬杖をつき、足を組みながらそう呟く。
鍵は何故かドアの鍵穴にささったままで、部屋に入った時、中にはまるで最初からこのデスゲームが始まることを分かっていたように、部屋にそれぞれ人数分の飲食物と風呂や寝室などの生活空間が用意されていた。
だが…何故だろう。自分がいるこの部屋だけ、"飲食物の量とベットの数が明らかにおかしい"気がする。
「…もう一人来るのか……??」
と独り言を呟いているうちに、ドアをコンコン、とノックする音が聞こえる。やはり、誰かもう一人来るのだろう。
「どうぞ。」
ガチャリと音を立ててドアが開き、そこに立っていたのは、自身より小柄の、男性とも女性ともつかない人物が立っていた。
作曲家の石神侑李である。
「どうも、自分は─おっと、名前を言ってはいけませんでした。ただの一端の作曲家です。」
物腰柔らかく、落ち着いた声色で石神は自己紹介をした。
「…そうか。俺は普通の大学生だ。」
蓮もそれを見て軽く自己紹介をする。といっても、ただ職業などを言っているだけだから、自己紹介と言えるのかどうかは疑問だが。
とりあえず、同居人が異性でなくて良かったと、心の中で安心した。異性と住むなど未経験であり、そもそも異性と関わったことがあまりなかったため、もし同居人が異性であれば、どうすれば良いか分からなかったからだ。
「あ、飲食物はそこ、風呂と寝室はあっちにある。」
「分かりました。ありがとうございます。」
間取りなどを教えておこうとベッドに腰掛けたまま指をさしてそう言う。蓮はすでに部屋に入ってからある程度部屋の中を調べていたため、部屋の間取りを把握できていた。
「俺はまだもう少し探索してくる。」
腕時計を見てみれば、すでに夜の8時を過ぎている。だが蓮はあまり寝れない体質(夜行性)であるため、そう言って玄関の方へと歩き、靴を履いてドアノブを回し、扉を閉めた。
「なぁ!何してんの?」
まるで待ち構えていたかのように、エナドリを片手に持ってギザ歯を剥き出しにして笑う男、降鐘紫樹が蓮へと話しかけてくる。
「…何の用だ。」
「別に?気になったダケ!」
蓮は眉間に皺を寄せ、紫樹を睨みつける。だが紫樹はそんな蓮の視線など気にせずニヤニヤとしながら見下ろしてくる。
176cm(厚底込み)の蓮に比べて、目の前にいるこの男は188cmと12cmの身長差がある。
初対面で名前も何も知らないが、蓮はこの不快極まりない存在である紫樹に見下ろされていることに苛立ちを覚え、チッと小さく舌打ちをした。
「おいおい、それはないだろ?そんな警戒しなくてもサ!」
それを紫樹は聞き逃さず、わざとらしく眉毛を下げて傷ついたかの様に演技をする。もちろん、全く悲しんでも傷ついていないが。
「ドアを開けていきなり話しかけてくるやつに警戒するなという方がおかしい。ましてや初対面のやつにな。」
紫樹を一瞥し吐き捨てる様にそう言うと、紫樹の横を通り過ぎ、階段を降りて足早にその場から離れていった。
「…死んでも知らないぜ。」
紫樹はその場から一歩も動かず佇んだままその背中を見送りながら、不気味に笑ってそう言った。やがて紫樹もエナドリを口にしながら、自分の部屋へと歩いていく。
「(なんだったんだ、あいつは…。)」
一方で蓮は、誰もいない中、マンションを出て空を見上げていた。満月が浮かび、それに呼応する様にドームの光も青白く光っていた。
「…二日目は、何のルールになるかね…。」
蓮は空を見上げたまま、一人、そう呟く。夜風が吹いてその声をかき消し、肌をひんやりと撫でる様に通り過ぎていく。
突然デスゲームに巻き込まれてしまったため、これからどうなるかが全く想像がつかない。なぜ自分がデスゲームに巻き込まれる形になったのかは、今の蓮には知る由もなかった。
【今回の出演者】
・綺堂蓮
・石神侑李
・降鐘紫樹
第二日目 前編に続く─