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ただ、待ち続ける
気まぐれ短編、第三弾。
冬の日。
真横からの大きな衝撃と薄れる意識の中、聞こえた必死に僕のことを呼ぶ声。
「………先生、ッ、……先…」
ごめん、君の気持ちに答えられなくて。
せめて、僕が君と同じぐらいの歳なら。
いつだったか、僕が君につぶやいた言葉だ。
人生の終わりを覚悟して、僕は意識を手放した。
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少女は病室にいた。
少女は制服を着ていた。少女は中学生だった。
目の前には1人の男性が横たわっていた。
死んでいるようにも見えるが、眠っているようにも見えた。
少女は綺麗なカモミールの入った花瓶を持っていた。
それを横たわる男性の傍らに置いた。
「先生……先生ッ………起きてッ、起きてよぉ…」
少女は泣いていた。
少女の静かな叫びは虚しく、先生と呼ばれた男性は目を覚さない。
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病室には少し髪の伸びた少女がいた。
少女は高校生になっていた。
中学生のときと同じように、少女の手にはカモミールがあった。
「先生、私高校生になりました」
少女の顔は虚ろだった。
「……先生ッ、あいたいよぉ……」
少女は泣いていた。
心から苦しそうに泣いていた。
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「先生、私大学生になりました」
少し大人びた雰囲気になった少女がいた。
横たわる男性はあのときのままだった。
「先生、私あと少しで20歳になるんですよ」
少女の顔は前よりも虚ろになっていた。
「先生、早く起きてくださいよ。また、わたしの名前を呼んでくださいよッ……」
少女は泣いていた。
少女は、一生このままかもしれないという絶望を意識し始めた。
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「先生、私20歳になりました。もう、大人です。私、大人になったんですよ」
少女は泣いていた。
「先生にも、私の振袖見せたかったなぁ」
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「先生、私25歳になりました。先生と同い年です」
そこには、もう少女と呼べない大人びた綺麗な女性がいた。
傍らには、あの日と同じカモミールが飾られていた。
かつて少女だった彼女は泣いていなかった。
その顔は、絶望に染まっていた。
病室は、無音になった。
まるで、ときが止まったようだった。
その静寂を遮るように、ことは起こった。
男性は、ゆっくり目を開いた。
「━━━━…?」
男性は彼女の名前を読んだ。
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『先生、好きです』
先生は少し困った顔をした。
『ごめんね、君の気持ちには答えられない』
わかっていた。
自分の気持ちが伝わらないことは。
『………せめて、僕と同じくらいの歳だったら…』
先生はぼそっと呟いた。
本音なのか、優しさなのか━━━たぶん優しさなんだろうけど。
もっと好きになってしまった。
そして…………あの日。
先生は、事故にあって植物状態になった。
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「先生、言いましたよね?"せめて、同じぐらいの歳だったら"って。私、先生と同い年になったんですよ」
かつて少女だった女性は泣いていた。
でも、その顔は安堵に満ちていて、とても綺麗だった。
この2人好きだなーと、書いてて思いました。
気まぐれ短編、第三弾「ただ、待ち続ける」
どうだったでしょうか?
気まぐれ短編シリーズはご依頼があれば続きとかも書けたらいいなー、なんて思っています。
ファンレターで「○○の続き書いてください!」などいただければ書きます。
ここまで読んでいただきありがとうございました!!