とにかく気まぐれ。
現在連載している小説に行き詰まったり、自分にすごい刺さる小説を書きたくなったりした時の気分転換枠です。
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目次
ふたつでひとつ
僕には、小さい頃からずっと一緒の幼馴染がいる。
彼と出会ったのは、もう10年前だ。その時、僕は4歳だった。
彼には僕の声が聞こえなかった。それと同じように、僕には彼の声が聞こえなかった。
だから、いつも彼とは筆談をしていた。
あの日僕は、いつもと同じように挨拶をして筆談を始めようとしていた。
いつもはすぐ返事が来るのに、いつまで待っても返事が来ない。その時は忙しいのかなと思って、深く考えなかった。
それからいくら待っても、返事が来ることはなかった。中学1年生になった春のことだった。
中学2年生になった今でも、返事は来ない。
僕のことが嫌いになってしまったのだろうか。
でも、別に不思議なことじゃない。
ちょっと考えれば、あり得ることだ。
彼とは、全くといっていいほど性格が違った。本当に正反対。真逆。
彼が太陽だとしたら、僕は…月?
いや、だめだ。月は綺麗だから。
…小石。そう、小石。僕はそこらへんの小石。まあ、それぐらい違ったってこと。いくら名字が同じでも。
僕は憂斗。彼は晴斗。名字は山咲。
お互い、友達がいなかったから仲良くなった。
きっとそれがなかったら、とてもじゃないがあり得ないと思う。
性格は正反対だったが、似ているところはたくさんあった。
彼には双子の弟がいた、らしい。
僕には双子の兄がいた、らしい。
いつだったか、兄弟についての話になった時に教えてくれた。
それを母から明かされたことまで同じだった。そんなとこまで似ているのか、と驚いた。
僕たちは、親友だった。
その親友が、行方不明。まさに音信不通。全く音沙汰がない。
どこにいるのか、何をしているのか。
彼を失った僕は空っぽだった。辛くても苦しくても彼がいてくれたから。寂しい時間を埋めてくれたのはいつも、彼だった。
---
彼と音信不通になってからもうすぐ1年がたつ。いままで、誰にも頼らず1人だけで彼を探してきたが、もう限界だった。
痺れを切らした僕は、母を頼った。
母は彼を知っていた。彼の話をすると、母はなぜか悲しそうな顔をしていた。
母なら、助けてくれると思った。
「母さん」
そう呼ばれた母はびくりと体をこわばらせた。「晴斗は、…晴斗はどこにいったの?」
その問いかけに、母はしばらく口を開かなかった。そして、母は諦めたように言った。
「晴斗…くん、は、もういないのよ。会えないの。……なんで、あの子が」
その続きはなかった。母がリビングを出ていったからだ。
だめだった。唯一頼れる人に、あんなことを言われたら。呆然と立ち尽くす僕は、母が先ほどまでずっと握っていた紙切れをテーブルの上に見つけた。
くしゃくしゃになっていた紙を開く。
「二重人格とは、1人の人間の中に、全く異なる性格や記憶を持つ2つ(またはそれ以上)の主体的な人格が入れ替わりで現れる状態のこと」
そう書かれていた。
ふと、彼の話を思い出す。
『二重人格には、主人格と副人格っていうのがあるんだってよ。主人格と副人格はお互いの存在を認識しているけど、みんながみんな仲良いわけじゃない。たとえ、仲が良くてもいずれ主人格は副人格と融合して吸収されてなくなるんだってさ。主人格が消えるんだぜ?やべーよな』
主人格が副人格に「吸収されて消える」。たしかに怖かったけど、正直自分には実感がないと思った記憶がある。
そんなことより、母はなぜ二重人格の意味が書かれた紙を?
彼は、晴斗はどこに行ったんだ?
辛口シスターと悪ガキ
気まぐれ短編です。
たまに自分にすごい刺さる短編を無性に描きたくなります。
「うわ、タバコくさっ」
10代ほどの少年が手で煙を払いながら言った。
「タバコじゃねぇ。キセルだっつってんだろ」
ガラの悪そうなシスターが言った。
「たいして変わんないって」
「わかってねえなぁ、悪ガキ」
いくつも並べられた長椅子の最前列。
少年は、そこに足を組んで座るシスターの隣に座った。
「お前…、母ちゃんは元気か?」
「……まあ、うん」
「毎日毎日、祈りにきて。そばにいてやった方が良いんじゃねえか?」
少年はゆっくり|俯《うつむ》く。
「母さんには………兄ちゃんがいるから良いんだ」
「……ふーん」
シスターはゆっくり煙を吐いた。
右手にはキセル。
左手は少年の頭にあった。
そのまま、髪をわしゃわしゃする。
いつものことだった。
まだ、少年の母が元気だった頃。
少年は悪ガキだった。
少年のいたずらは日常茶飯事。
村の人たちも、なんだかんだ言って少年が好きだった。
しかし、少年の母が病気になってから。
彼のいたずらはパタリとなくなる。
それから毎日、教会に来て祈りを捧げていた。
母の病気が治るよう。
少年はバッと顔を上げた。
「…というか、シスターがタバコ吸ってていいの?」
シスターはゆっくり煙を吐く。
「これ許さねえ神は神じゃねえよ」
「ふーん」
毎日通うようになって気づいた。
シスターは普段とんでもなく猫をかぶっている。
だっていつものシスターは、
『あら、おはようございます』
『ええ、ふふっ』
なんていうか、ふわふわしたかんじ。タバコも吸ってない。
でも、
「あ?なんだ?」
素は…………ガラが悪い。あと、口も悪い。
まだ、少年の母が元気だった頃。
一度だけ教会に来たことがあった。
優しいシスターに恋をした。
初恋だった。
でも、辛口を知っているのはきっと俺だけ。
「あー、酒飲みてえ」
少年は、煙を吐きながら言うシスターの横顔を盗み見た。
読んでいただき、ありがとうございます!
こういう、シスターなのに酒飲むとかタバコ吸うとかいうのがちょっと刺さるんですよね…
ぜひ、よろしければ感想やリクエストなどお待ちしてます!
ただ、待ち続ける
気まぐれ短編、第三弾。
冬の日。
真横からの大きな衝撃と薄れる意識の中、聞こえた必死に僕のことを呼ぶ声。
「………先生、ッ、……先…」
ごめん、君の気持ちに答えられなくて。
せめて、僕が君と同じぐらいの歳なら。
いつだったか、僕が君につぶやいた言葉だ。
人生の終わりを覚悟して、僕は意識を手放した。
---
少女は病室にいた。
少女は制服を着ていた。少女は中学生だった。
目の前には1人の男性が横たわっていた。
死んでいるようにも見えるが、眠っているようにも見えた。
少女は綺麗なカモミールの入った花瓶を持っていた。
それを横たわる男性の傍らに置いた。
「先生……先生ッ………起きてッ、起きてよぉ…」
少女は泣いていた。
少女の静かな叫びは虚しく、先生と呼ばれた男性は目を覚さない。
---
病室には少し髪の伸びた少女がいた。
少女は高校生になっていた。
中学生のときと同じように、少女の手にはカモミールがあった。
「先生、私高校生になりました」
少女の顔は虚ろだった。
「……先生ッ、あいたいよぉ……」
少女は泣いていた。
心から苦しそうに泣いていた。
---
「先生、私大学生になりました」
少し大人びた雰囲気になった少女がいた。
横たわる男性はあのときのままだった。
「先生、私あと少しで20歳になるんですよ」
少女の顔は前よりも虚ろになっていた。
「先生、早く起きてくださいよ。また、わたしの名前を呼んでくださいよッ……」
少女は泣いていた。
少女は、一生このままかもしれないという絶望を意識し始めた。
---
「先生、私20歳になりました。もう、大人です。私、大人になったんですよ」
少女は泣いていた。
「先生にも、私の振袖見せたかったなぁ」
---
「先生、私25歳になりました。先生と同い年です」
そこには、もう少女と呼べない大人びた綺麗な女性がいた。
傍らには、あの日と同じカモミールが飾られていた。
かつて少女だった彼女は泣いていなかった。
その顔は、絶望に染まっていた。
病室は、無音になった。
まるで、ときが止まったようだった。
その静寂を遮るように、ことは起こった。
男性は、ゆっくり目を開いた。
「━━━━…?」
男性は彼女の名前を読んだ。
---
『先生、好きです』
先生は少し困った顔をした。
『ごめんね、君の気持ちには答えられない』
わかっていた。
自分の気持ちが伝わらないことは。
『………せめて、僕と同じくらいの歳だったら…』
先生はぼそっと呟いた。
本音なのか、優しさなのか━━━たぶん優しさなんだろうけど。
もっと好きになってしまった。
そして…………あの日。
先生は、事故にあって植物状態になった。
---
「先生、言いましたよね?"せめて、同じぐらいの歳だったら"って。私、先生と同い年になったんですよ」
かつて少女だった女性は泣いていた。
でも、その顔は安堵に満ちていて、とても綺麗だった。
この2人好きだなーと、書いてて思いました。
気まぐれ短編、第三弾「ただ、待ち続ける」
どうだったでしょうか?
気まぐれ短編シリーズはご依頼があれば続きとかも書けたらいいなー、なんて思っています。
ファンレターで「○○の続き書いてください!」などいただければ書きます。
ここまで読んでいただきありがとうございました!!
激メロ男を落としたい!!①
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短編にしようもしたのですが、思いのほか長くなってしまったので分けます!笑
次回、②です!お楽しみに!
よければファンレターなど送っていただけると嬉しいです!誰かの癖に刺さればいいな…と思いながら…
辛口シスターと悪ガキと真面目くん
自主企画から作りました!
自主企画参加ありがとうございました!!
「お前ら毎日毎日、暇なのか?」
シスターは煙を吐きながら言った。
「せっかく、祈りに来てるのになんだよー」
「うるせぇ、悪ガキ」
「シスターなのに、本当口悪いよな」
「お前もうるせぇ、真面目くんが」
教会には、シスターと悪ガキと呼ばれる少年の他に、真面目くんと呼ばれた少年がいた。
「あー、酒飲みてえ」
シスターはキセルを片手に足を組んで言った。
その姿を見て真面目くんは、眉を寄せた。
「シスターとは思えないな」
「ほんと」
「お前らはまだお子ちゃまだからな」
「は、少なくとも俺は真面目くんよりは年上だから!」
「悪ガキっていわれてるやつが、言えないだろ。しかも1個しか変わんないし」
「どんぐりの背ぇ比べだな」
「なにそれ」
「………バカ?」
「ああ??」
「バカだろ」
シスターは煙を吐き、真面目くんはバカにするような視線を向ける。
「大して変わんねぇって意味だよ」
「へぇ…」
「………ん?俺たちのこと言ってるのか?」
「お前も大概バカだろ、だから変わんねぇんだよ」
「「はあ??」」
「は、声そろえて仲良いな」
シスターは煙を吐いた。
---
「…まぁた、来たのか」
「おーっす」
「どうも」
「暇だよなぁ…お前ら」
シスターは呆れながら言った。
「うっせ」
悪ガキは、そう言って祈りを捧げた。
少し離れたところでシスターと真面目くんは見ていた。
「ほんと、律儀だよなぁ」
「いつも、来てるのか?」
「ああ、お前が来る前からずっと」
「へえ…」
シスターは煙を吐いた。
悪ガキは、パッと振り向いた。
「何話してるんだ?」
「「何も」」
「ふーん…」
唐突にチリン、とベルの音が鳴った。
「やっべ」
シスターは慌てて、身支度を整えた。
「「?」」
煙を手をあおいで消して、キセルをどこかへと隠した。
しばらくして、1人の男性が教会に入ってきた。
シスターはそこに駆け寄る。
「おはようございます」
遠目に見ても分かる、猫の被りよう。
「…まるで詐欺だな」
「…うん」
「…あいつ、絶対あのシスターのこと好きだな」
「はっ??」
悪ガキは声をあげた。
真面目くんは悪ガキの肩に手をのせた。
「まあ、頑張れ」
悪ガキの恋路は険しい…
全部、私が悪い
** 「そんなことない…!!!」**
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「さあさあ、皆さま!本日もよろしくお願いいたします!ようこそ!」
「まだか、まだか」
「早く、早く!」
「まあまあ、皆さま焦らないで。……ゴホン、それでは改めまして。ようこそ!** |人身売買屋《トレード・ハウス》へ**」
司会の女性は、ニヤリと笑った。
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そこでは、人身売買が行われていた。
「まず、最初の商品はこちら。世にも珍しい|色違いの瞳《オッドアイ》を持つ少年です!さあさあ、皆さま。いくらで落札いたしますか?」
「50万!」
「おっ!いいですねぇ…他には?!」
「60万!」
「80万!」
「さ、他にいらっしゃいますか??」
「100万!!」
「おっ!来ました来ました!他にいらっしゃいますか?…いらっしゃらないですね?」
少年は、怯えた眼をしていた。
「では、100万円で落札でーす!」
司会の女性は、手に持ったベルを高らかに上げて鳴らした。
---
「続いての商品は、ここらでは珍しい人魚の娘でございます!さあ、皆さまよーく見てください!この美しい鱗…!そして、この娘。なんと言っても真珠の涙を流します…!さあ、皆さまこの娘、いくらで落札いたしますか??」
「120万!」
「おっと!最初から高値ですね〜」
「140万!」
「他にいらっしゃいますか〜?!」
「180万!!」
「お〜!!他に、他にいらっしゃいますか?」
「200万!!」
「200万!さあ、他にいらっしゃいますか?…いらっしゃらないですね?」
人魚は一粒の真珠の涙を落とした。
人々は感嘆する。
「200万円で、落札でーす!!」
---
異種人の少年。
「200万!」
エルフの娘。
「250万!」
金髪、金眼の娘。
「300万!」
計12商品。全て、落札。
---
**バンッ!!**
「全員そこを動くな!!」
あのオークションから、数週間後。
「王国警察だ!!お前たちが人身売買をしているという証拠はそろっている!!!」
「やめろ!はなせ!」
「大人しくしろ!証拠はそろっていると言っているだろう!!」
「な、や、やめろ!!…そ、そこの!そいつだ!そいつが悪いんだ!俺たちは何もしていない!!」
小太りの男性、━━━オーナーだ━━━が声を上げた。
司会の女性は、奥歯を噛み締めた。
ああ、こいつらは。
何も、変わらない。
人のせいにして。人を人だと思っていない。
「くっ…!」
手をうしろで組まされた。
私は、
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「綺麗な瞳だ」
少年は、怯えの色をあらわにした。
「大丈夫だ、私は何もしないよ」
少年を引き取った女性は、柔らかに微笑んだ。
「《《彼女》》が、願ったのだからな。君たちを無事に引き取るよう」
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「そう、怯えるな。何もしない」
人魚の娘は、真珠の涙を落とした。
「ほら、この真珠はきみのものだ」
人魚の娘を引き取った男性は、娘の手に真珠をのせた。
「《《彼女》》の計らいだ。彼女は、誰よりも君たちのことを思っている」
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「安心して、あなたは大切にされるべき存在なのよ」
異種人の少年は、思わず泣き出した。
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「君には、帰る場所があるんだ」
エルフの少女は、うずくまって泣いた。
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「綺麗ね…これは、この輝きは、あなただけのものよ。誰にも、誰のものにもなってはいけない」
金髪、金眼の少年を引き取った女性は、少年の頭を撫でた。
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私は、
私…は、
私が、
「全部、私が悪い」
私が、
私が、
全ての責任を負わなければ。
引き取られていった彼ら、彼女らをこれに、巻き込んではいけない。
私があのオーナーに隠れて、引き取り先を選んでいたことは、何が何でも隠し通さなければ。
** そこでは|人身売買《孤児の引き取り》が行われていた。**
ここまで、読んでいただきありがとうございました。よければファンレターで、感想や考察など送ってくださると嬉しいです。