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ジャスミンティーの魔法
静かなバーで、せっせと手を動かす女。
それが、私である。
個人的なバーで一人頑張っているのだが、未だにあまりいいことはない。
稼ぎも微妙だ。
あーあ、ハリルがいたらなぁ。
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ハリルは、私より二歳年上の先輩。
バイト時代に出会ったのだが、そこから急に付き合うことになった。
でも、ダメだったなぁ。
会うことなんて本当に二ヶ月に一回くらい。
付き合ってるっていうか、古い友達というか。
メールの返信も全然来ない。
もう半年くらい会ってないんじゃないか。
あんなに、優しかった彼なのに。
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営業時間が終わったので、一人だけ、バーに残る。
自分で淹れたジャスミンティーを飲む。
ジャスミンティーが好きなわけではない。
香りなんかはむしろ苦手だ。
でも、昔ハリルと飲んでいたから、営業時間後に飲むというのはもう癖になってしまった。
なんか静かで心細かったので、ラジオをつける。
「それでは、昔流行ったあの曲、杏里のオリビアを聴きながらです」
あ、好きな曲だ。
ハリルもこの曲が好きだったらしい。
「幻を愛したの」
この歌詞が好きだった。
りりりりりりりりん!
お気に入りの黒電話がなる。
「はいもしもし。平岡ですが」
「……………………」
無言?間違い電話だろうか。
「もしもし?聞こえてますか?」
「ガチャ」
ん?なんだ。急に掛けられて急に切られた…
もういいや。一気にジャスミンティーを飲んで、アパートに帰ることにする。
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翌日。
今日は常連さんも来ないので、少し暇だ。
全然お客さんが来ないので、続きが気になっていた本を読む。
りいりりりいりりりりりいりりん!
ん、また電話か。
「もしもし。平岡です。」
「…………………」
「もしかして昨日電話をくださった方ですか?」
「……………………」
「もしもし?聞こえてますか?」
「ガチャ」
はあ、多分昨日の人だな。
それから誰も来なかったので、ジャスミンティーを飲んで早めに帰ることにした。
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次の日。
「じりじりじり…きゅるっ…じりじりじり…」
いつもは携帯電話で電話するのだが、黒電話で初めて電話してみる。
「はいもしもし。草陰ですが。」
「昨日の電話、あなたでしょう。」
「…………………」
反応も昨日、一昨日と全く同じ。
絶対、ハリルだ。
「今日、会いに行く。」
「……?」
「お前、バーをやってんだろ。確か………子狐亭てやつ。」
覚えてくれてたんだ。
「いい、けど」
「そっか。ごめ…」
「がちゃ!」
やばい。こんな汚い服装じゃ、ハリルが引くに決まってる。
肩あたりまである髪を手ぐしでとかして、(くしは持っていない)高い位置で結ぼうとする。
けど、結んだことがないので、ぐちゃぐちゃになってしまう。
もういいや。そのままで。
「からんからん」
ドアが開く音。
ハリルが、きた。
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「…………」
「…………」
気まずい。
お互い話そうともしない。というか目を合わせようともしない。
第一、話すことなんてない。
「は…たの。」
「?」
もう、言ってしまおう。
「愛は消えたの!もうかけてこないで!」
「っ!」
言いすぎたかもしれない。でも、今の私は一人でいたい。
私らしくいたいの!
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思った時には、もうハリルはいなかった。
強く言いすぎたかもしれない。あの時の私は何かおかしかった。
メールを開く。
「ごめん、愛してる。また会おう」
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