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泣いていたあの子は。 ~ 第2話 ~
深夜1時__
「そこ座ってな。…水でいいか」
青年につられるまま、転弧は青年の家へ上がった。
柔らかいソファに体を埋めながら、部屋の中を見渡す。
全体的に綺麗だが、物がぐちゃぐちゃで大雑把なことがわかる。
青年から水を受け取ると、おそるおそる顔を上げた。
「、おにーさん、名前は、?」
青年はテレビをつけながら答えた。
「龍之介」
「りゅうのすけ、」
口の中で転がすように、龍之介の名前を繰り返した。
青年はその様子を横目で見ながら、雑に布団を投げた。
「寝なよ。もう夜遅いだろ」
転弧はぽす、と布団を受け取るが、龍之介はまだ寝る様子ではない。
手に違和感を覚えて視線をやると、触れていた布団が崩壊しかけていた。
「っ…!!」
反射でパッと手を離す。
ふるふると手が震えていた。
「…それ、個性か」
龍之介が転弧の手を見つめながら呟いた。
( どうしよう、また捨てられたら__!!! )
恐怖で龍之介の顔を見ることができない。
すると、ぽすっと頭に温かい感触が降ってきた。
おそるおそる顔をあげると、龍之介がいつの間にか近くに寄ってきていたのだ。
「ぇ、あ、えっと…っ」
声を振り絞るが上手く出すことができない。
「そんな怖がんなくていいから。大丈夫」
なにが大丈夫なのか。
わからなかったけれど、転弧にはそれが妙に優しく感じた。
少し時間が経って、ようやく転弧も落ち着いた。
少しずつだが「個性」のことを話した。
途中、龍之介はずっと黙って聞いてくれていた。
話終わると、震える転弧を抱きしめた。
「…大丈夫」
転弧を抱きしめる手は優しくて温かかった。
「、ぅ"…っうわあぁん、、ッ」
__ここまでが「幸せの"終わり"」である。
あれから10年以上の月日が過ぎた。
龍之介と転弧が共に時を過ごしたのはたったの一年弱。
それでも2人の心にはそれぞれ大きな傷を残した。
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「…転弧?」
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突然姿を消したあの日から、龍之介と転弧が交わることはなかった。
…そう、今日この日までは。
「、りゅうのすけ…?」
next▶︎▶︎▶︎