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数百年前の皇女殿下
それは、数百年前の出来事だった。
まだフェイがスネージナヤを支配していた時代だった。
僕もフェイの貴族として豪華絢爛な日々を送っていた。
そんなある日、僕は見てしまった。
「おぉ…!あれがスネージナヤの女皇陛下と皇女殿下…!!」
「なんとお美しいの…!」
当時の僕と同じくらいの小ささながらも美しすぎる姿と、彼女にとっての「お母様」であるアナスターシャ陛下とよく似た、麗しい雰囲気。僕はそんなカテリーナを見て、言葉が出なかった。
「お初にお目にかかります。女皇陛下、皇女殿下。フリンズ、挨拶しなさい。」
「おはつにお目にかかります…。」
父に言われて、声を振り絞って挨拶をした。
「えぇ。初めまして。話は兼ねて聞いているわ。あなたも挨拶なさい。」
「……はじめまして。」
この時のカテリーナと今のカテリーナは違うところがある。
この頃は、
気高く美しい皇女殿下であるはずなのに、そこに「神の器」である彼女にはあり得ないと言われるような、「苦しみ」が見えた。
拷問や虐待を受けているわけではなかったと思う。女皇陛下からもそれなりに大切にされている様子だった。
これは僕の憶測だが……
ライトキーパーとして生きている今の彼女を見る限り、自由に行動して、色々な人と自由に話をして、人々との交流を楽しむ。そんな生活が好きなんだと思う。
だから、人々に一歩進んだ存在として讃えられ、他愛もない話ができる人が少ない生活は、彼女にとって苦しいものだったのかもしれない、と今になって考えた。
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幼少期、僕とカテリーナは仲がよい方だった。
「皇女殿下。あっちのほうにフロストフラワーがたくさん咲いていました。良ければ僕と一緒に見に行きませんか?」
「………そうなの…?お母様、行ってもいい?」
「構わないわ。暗くなる前に帰ってきなさい。」
「わかった……ありがとう。」
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「わぁ…!きれい………!」
「………フリンズ、なにつくってるの…?」
「フロストフラワーの花冠です。この前、父上に作り方を教えてもらいました。………皇女殿下に、似合うと思って…。」
おそらく僕の初恋の相手は、カテリーナだったと思う。
自分でも驚くほど無意識なアプローチをしていた。
今は…わからないが。
今のカテリーナに花冠なんて送ったらどんな表情をするのでしょうか……、その前に、坊ちゃまに止められてしまうかもしれませんね。
「………………わたしに、冠を…?」
「……えぇ。」
僕はカテリーナに花冠を被せた。
「きれい…!ありがとう。……ねぇ、作り方……教えてくれない…?お母様につくりたいの……。」
「女皇陛下にですか?ふふっ、それは良いですね。一緒につくりましょう。………それにしても、皇女殿下は本当に女皇陛下がお好きなのですね。」
今思えばこの質問、かなり不敬である。
カテリーナが心の広い方でよかったと改めて思っている。
「………そうだね。お母様は………わたしの一番大切な人だから…。それに、わたしはいつか皇女じゃなくなるってお母様が言ってたの……。あ、これはまわりの人に言わないでね。………皇女じゃなくなったら、きっとフリンズとも話せなくなっちゃうし、お母様ともどんな関係になるかわからない………。」
「…………。」
「だから、今のうちにできることは、思い出にできることはしておきたいの。………こうやって、花畑でフリンズと話すことも、思い出のひとつだよ。」
「……そうですね。」
あぁ、僕のことを思い出と言ってくれたのに。
皇女じゃなくなったら僕と話せなくなるなんて言ってくれたのに。
もう、2人きりで花を編んで話すことなんてないんだなぁ…、もう、元の関係には戻れないんだ。
ここまで狂わせておいて、当の本人は「忘れてしまった」なんて……。
随分と罪な人だ。