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すべてのおわり、すべてのはじまり
ついにその日は来た。
カテリーナさんがこの世からいなくなる…いいや、氷の女皇と融合し一部になり、「神の器」としての責務を終える日。
…そう言わないと、自分の気持ちが溢れ出しそうでつらかった。
「……イルーガ。」
「ひゃいっ!!なんですか!!」
考え事をしている時に突然カテリーナさんに話しかけられたので、思わず変な声が出てしまった。
「……みんな、やる気ない……?宴で疲れた……?」
「あ、あぁ!多分大丈夫ですよ!みんな二日酔いです!」
「…イルーガは……お酒飲んでなかった…、でも落ち込んでる…。…わたし、何かしたかな…。」
カテリーナさんが沈んだ表情をしてしまった。
「ぇ…………、…いや、違いますよ!あなたは何もしていません。」
「……そう?なら…いいや。……任務行ってくるね。」
「ぁ……あの、カテリーナ、さん…。」
「…?何?」
「……やっぱり、なんでもないです!任務頑張ってください!」
「……?わかった…いってくるね。」
カテリーナさんを不安にさせちゃだめだ。最期まで、ちゃんと見届けないと。
あーあ………最後まで、ちゃんとカテリーナさんに言えなかったなぁ…。
「好きだ」って。
---
任務から帰ってくると、ライトキーパーのみんながピラミダの入り口付近にきれいに並んでいた。
「あ…カテリーナさんだ…」
「かわいそうに…。」
かわいそう?何が?わたしはここにいるよ?
「……カテリーナ。」
「あ、……ニキータおじさん。任務の報告を────」
「ここに、立っててくれないか。」
「……え?どうして?」
「………悪く思わないでくれ。私たちを、責めないでくれ。」
「…どういうこと?わたしは………───」
突然、空気が重くなった。
隊員のみんなは胸に手を当てて、目を閉じていた。まるで何かに忠誠を誓うように。
そして現れたのは────
どこかで見たことのある人物だった。
銀髪に、底の見えない覚悟を決めた群青の瞳。
全てのものが忠誠を誓うようなその威厳と気品。
「……よくぞいらっしゃいました。女皇陛下。」
「えぇ。お許しとお招き、感謝するわ。」
許す?なにを?さっきからみんなは何を言っているの…?なんでここに氷の女皇と執行官の「道化」がいるの……?
なんでわたしだけここに?イルーガは?フリンズは?なんで何も言ってくれないの?なんでみんなと同じように忠誠を誓うような仕草をしているの?…助けてくれないの………?
「…カテリーナ、我が娘よ。」
「むすめ…?わたしが……?」
「…お前は今から役目を果たすのよ。」
「役目………?」
「そう。お前の『神の器』としての役目。」
「『神の器』……?…なにを言っているの…?わたしはライトキーパーだよ…。神様なんて、あなたになんて、なんの縁もないよ………。」
「…じきに分かるわ。」
わたしが困惑していると、氷の女皇は大きな槍を取り出した。
…戦うのかな?
なら、わたしも武器を────────
グサッ
「ぇ……………………」
「さようなら、我が娘よ。そして……また会いましょう。」
刺された…?いま、わたしは心臓を刺されているの…?
武器を取り出す前に刺された。はやい。勝てない。
わたしはもう、死ぬんだ。
いつもの人たち。いつもの任務。いつもの日常。
一生続いて欲しかった。一生続くと思っていた。
…続くわけない。続くわけないよ……。最初からわかってた。
氷の中から現れて、瞳孔の形がおかしくて、みんなから力を使うなと念を押された。おかしくないわけがない。
わたしは、何者だったのだろうか。最期まで分からなかった。
…イルーガは任務に行こうとした時、なにを言おうとしていたんだろう…。
少し前を向くと、みんなが見えた。
イルーガは少しこっちを見たけれど、すぐに目を背けて強く瞑ってしまった。その瞑った目からは、涙が落ちているように見えた。
フリンズは何も言わず、平然としているように見えた。でもわたしには分かった。彼はすごく動揺している。彼はイルーガと同じくらいの感情を抱えて、抑えている。
フリンズの『我が君』もなんだったのだろうか。
最期まで、分からないことだらけだ。
意識が薄れていった。
そしてわたしは、死んだ。…『神の器』となった。
「……………残念ね。」
最期、そんな声が聞こえた気がした。
---
「…かいるかー!」
…あれ?
「いたら…ろ!」
………人の声がする…?
「あ、あれは…!?」
「氷の中に…人が…!?」
…わたしのこと……?
「ど、どうする」
「とりあえず氷を割らないとな…。」
「でも割って中の人が傷ついたらどうする?」
「うーん…」
「私、いい方法知ってますよ!」
「お、本当か!なんだ?」
「こういうのは…」
ブォンッ
「気にせずとりあえず全力で割ろうとすればいいんですよ!!」
パリーン
「お、お前…。」
「え?ダメでした?」
「いや………はぁ…もういい…。」
「えぇ…???」
「おい!大丈夫か!怪我はないか!?」
知らない人が駆け寄ってきた。
「……えっと…」
「よかった、意識あるぞ!」
「……ここは、どこ…?わたしは……いつからここに…?」
「分からないのか…?記憶喪失か何かだろうか。」
「お前、名前は?」
「名前…?……わからない…。」
名前なんて、元からなかった気がする。そもそもわたしは誰なんだろう、どうしてここにいるんだろう。
「じゃあ〜!私が名前をつけますよ!」
「今か!?」
「……私の、名前を?」
「そうですよ!うーん…そうですね〜、雪みたいに白くてきれいで、純粋な心を持ってほしいから〜…」
「「(意外と本気だな…)」」
「決めた!今日からあなたは『カテリーナ』!」
つづく。