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雨の響く世界
選んだものは「檻」と「雨」です 地下一階、私は閉じ込められていた。
「はぁ・・・」
小さなため息を漏らす。何度ついたか分からない、重たくて冷たいため息。
自分は、親から虐待を受けていた。小さなころからずっと。でも、たまに、優しい。だから、諦めきれない。実は親は操られていて、自分を虐待するのは本望ではないのではないか。そんなあり得ないことを、ずっと考える。地下に設置された檻。それが自分の居場所。地下にあるものの、外の音もまぁまぁ聞こえる。ずっとここから出ていないから、明確には分からないが、最近ずっと雨の音が聞こえるので、たぶん梅雨。サァァァァァ・・・と、綺麗な雨音が、自分の檻に響く。ここは自分の世界であり、全てであった。
自分の世界に、雨が響く。
虐待ですさんだ心が、落ち着いていく。
サァァァァァ・・・
今日は小雨なので、雨音が軽快に響いている。
カァカァと、カラスの鳴き声が聞こえてきた。
あぁ、今日も、この時間が来た。
カン、カン、カンと、鉄で出来た階段を下りる音がする。親が来た。
「あぁ、まだ生きてたの?」
「ごめんなさい」
「汚らしい・・・とっとと消えてよ」
「ごめんなさい・・・」
「邪魔なのよ!!」
ゲシッ!
みぞおちを蹴られる。痛い。痛い。
「うっ・・・」
「あんたが死ねば!私は!この・・・!!」
「ごめんなさい・・・!」
親が動き回ったせいで、辺りに濃い香水の匂いが漂う。自分が世界で一番嫌いな匂い。
「さっさと飯食べてくたばって!こんな娘産まなきゃよかった!!」
ベチッ!
食べ物を投げつけて、親は消えた。食べ物を与えてくれるのは、優しさからではない。自分が死んだとき、痩せていると、虐待がばれる可能性があるからだ。だが、毎日蹴って、殴ってした痣が、身体中にまとわりついているから、意味はない気がする。そんなところが、親は本当に馬鹿なんだな、と改めて実感できる。
苦しいけど、いつかは終わる。
そう思って、今日をしのいで、眠りについた。
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朝が来た。来てしまった。
ザァァァァァ・・・
今日は大雨のようだ。小雨の軽快な音と比べて、重たくて、ずっしりした雰囲気。どちらも自分の好きな音。
晴れより雨が好きだった。だって、晴れていても檻の中では何も分からないから。それに比べて雨は、檻の中にいても雨だって分かる。
それに、
雨の音は、
大嫌いな今日を、紛らわしてくれるから。
今日も昨日と同じ。明日も今日と同じ。自分の人生は、同じことを繰り返して、いつか朽ちていく。
これまでも、今からも。ずっと。
でも、それ以外道はないから、それでいい。
自分の人生はこうなのだ。小さい頃は、何で、とか、愛してほしいとか思っていた。でももう、そんな望みは、想いはない。もう諦めた。
自分は、自分の人生と共に歩いていく。
雨が、降っている間は、生きていける。
そんな気がした。
明日も、雨が降るといいな。
自分の世界に、
明日も、雨が降るといいな。
なんかふわっとした感じで終わりました。まぁ、この後の展開は皆さんのご想像にお任せします、みたいな感じです。今回の小説は、みはなださん、ぺんぎんさんの企画の小説です!楽しんでいただけたでしょうか?少しでも面白いと思ってくれたら幸いです!それではまた別の小説で~!