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七夕祭りと願い事
星田 奈那華・・・願い事を抱える高校生。人生に価値を見出せない。
--- ねぇ、あなたは幸せ・・・? ---
そんな声が聞こえて来た。
「今日は七夕祭りか・・・」
7月7日の朝、そんな独り言を呟いた。
大きな背伸びをして、部屋のカーテンを開ける。眩しい朝日が顔に当たる。
段々と、眠気が去っていった。
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学校。いつもと変わらない風景。
誰とも目が合わない。
ただ一人、目が合ったのは、いつものあの子。
「あは、今日も来たんだ。星田サン?」
「・・・」
金色の、束ねた髪を揺らしながらほほ笑む彼女は、山田さん。スクールカースト最上位のギャル。
「はぁ?無視~?」
うるさいなぁ・・・。
「そんなんなら、机に暴言書いてもいいけど?」
こんなの、いじめだ。
「まぁ、しないけど」
でも、誰も認めてはくれない。
だって、彼女は賢いんだもん。
こうやって、証拠の残らないいじめを淡々と続けるだけ。直接的ないじめはしてこない。
いっそ、身体中に傷をつけてくれればいいのに・・・。
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それからも、見えないところで何度も何度も、腐った言葉を吐き捨てられて。
まるで私は、ゴミ箱だ。そうなんだろ?前世ゴミ箱だったのかな。
そんな面白くもない冗談を言って、今日を笑い飛ばす。
あぁもう、私ってなんなんだろう。
でも、悲劇のヒロインみたいに、最悪な環境ってわけじゃないんだよね。だから、それが余計に辛い。
「そういえば、今日は七夕祭り・・・」
祭りは一人で行くものじゃないよね。そう思いながらも、夜出かける為に、課題を急いで終わらせようとしている自分がいた。
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ドン、ドン、ドコドン・・・
ガヤガヤ ザワザワ・・・
太鼓のビートに、人の声、屋台の客引きの大声。
祭りには、たくさんの音で溢れていた。
夜空に、いろんな色の灯りがきらめいて。
「すごい・・・」
最近見たものは全部、白黒のようだった。色は識別できるけど。
でも、祭りの色は、鮮やかで、美しくて。
「久しぶりに、《《色》》が分かる。綺麗って、分かる!」
あぁ、楽しい。ずっと、この場所で、この時間でいたい。
何も考えず、ずっとこのままでいたい。
日常に、戻りたくないな。
この時間が続くなら、なにを代償にしてでも、欲しい。
魂でも、なんでもあげる。
そんな叶わない夢をほざきながら、大きな竹の下へ向かった。
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竹の下には、たくさんの子供、色とりどりの短冊があった。
「わ・・・、綺麗」
竹の葉の隙間から垣間見える月明かりは、毎日の辛さを忘れさせるように、優しく奈那華を照らした。
「短冊・・・、書こうかな」
奈那華は手元にあった、自由に使用できる短冊を手に取った。
「紫・・・」
なんとなく、紫を選び、願い事を考えた。
「私の、願い事・・・」
「・・・これ、かな」
そっと短冊を竹の葉に付ける。下の方は、子供がたくさん付けていたので、背伸びして、なるべく高い位置に結んだ。
「お願いなににしたー?」
「新しいお人形!」
「いいね!私はゲーム!」
「あーっ!それも欲しい!」
子供が2人、笑い合って駆けていく。その先には大人たち。皆笑っている。
「楽しそう」
そう呟き、奈那華は家に帰った。
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次の日。
「う・・・ん」
奈那華は大きく背伸びした。
「今日は・・・いや、今日も・・・」
--- 7月7日 ---
「えへへ。ちゃんと願い事が叶った」
その日、辛い学校をしのんだ奈那華は、出かける準備をした。
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ドン、ドコドン
太鼓の音。奈那華は真っ先に竹へ向かった。
「あった」
竹の、少し高い場所。
「私の、短冊」
紫の、綺麗な短冊。
「叶った!」
奈那華は笑った。
「毎日、ここに遊びにこれる!」
奈那華はもっと笑った。
奈那華は、幸せになった。
奈那華の短冊には、
「7月7日に、ずっといたい 星田奈那華」
そう書かれていた。
というわけで、7月7日にちなんだお話でした!太陽さん達は、願い事ありますか?心の底から思っているもの、これが欲しい!みたいなもの、なんでもいいのでファンレターにでも書いてみてください! 奈那華ちゃんは、これで幸せなのかな? なんて。それではまたにぇ~!