公開中
お試しlover 1話
R!u.
『お試し期間!貴方とあの人のlover♡』
『プロローグ』
〜♪✴︎
石井side
「お試し期間?」
いつも通り帰宅する途中で見かけた掲示板。
そこには『お試し期間!貴方とあの人のlover♡』と意味のわからないことが記されている。
「loverって恋人やんな…?」
なんとなく、理解はできた。
ポケットからスマホを取り出しロックを解除してLINEを開く。
『にいやま』という名前を探してタップする。
「新山」>
<「なんや」
「(写真を送信しました)」>
<「何の掲示板やねんコレ」
「俺もよー分からんけど」>
「(写真を送信しました)」>
「ここの事務所に行けば参加できるらしいで」>
<「…やからなんや」
「行きたいねんけど」>
<「はぁ?ちゃう芸人と行けや」
「いやや」>
<「…いつの何時や」
「明日の昼2時」>
<「行けば良いんやろ」
「ええの?やった」>
珍しく長い会話をしてスマホの電源を切る。
どこかウキウキした心持ちで家へと向かった。
新山side
『お試し期間!貴方とあの人のlover♡』
その言葉が頭の中でループする。
アイツ、まさかその意味を分かっていないわけではないだろうか。
きっとコレは好きな子が好きな子に誘うやつ、みたいな。
だから俺たちみたいなおっさんが2人揃っていったら、事務所の方も驚くのではないか。
そう言った意味で断ろうと思ったのに、『いやや』なんて言うから。
「…アイツは今更何が言いたいねん」
モヤモヤする気持ちとワクワクする気持ちが混じって変な感じ。
…そもそも。
明日は石井が行きたいと言ったから予約した店がある。
忘れていたのか、それともそっちの方が大事なのか。
先ほど電源を落としたスマホともう一度向き直る。
ロックを解除すると開きっぱなしにしていた石井との会話が浮かび上がる。
「おい石井」>
返信は返ってこない。
数分待っていると既読がついた。
<「なに?」
「明日お前が行きたいって言っとった店予約してんねんけど」>
<「…せやったわ」
画面越しでも伝わってくる悲しそうなメッセージ。
<「予約キャンセル料とかあるやろ」
<「明日は店行こや」
「絶対明日不機嫌案件やろ…」
キャンセル料は全額返金とかじゃあるまいし、まあいいか。
そう思って石井にもう一度メッセージを送信した。
「別にええよ、キャンセル料とか。」>
「俺もちょっと気になるし、そっち行こか」>
<「…ええの?」
「ええよ」>
<「やった!明日楽しみやわ」
字から伝わる嬉しそうな相方の顔。
ふっ、と笑みをこぼして電源を落とした。
でも、この時これに行くことにしたのが人生を左右する出来事になるのだ。
1話 end