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12話「我、ボルカニカ」
「ま、やられるだけやられてみただけだ。雑魚の魔法にやられるかよ」
呑気な顔をして戻ってきたもんだ。
どうやって戻ってきたんだろう?
どこまで行っても規格外なやつだ。
「合格ってことで…いいのか?」
「仕方ねぇからそうしてやるよ。オメエ」
そして、スバルは1層への階段を登る。
そして、1層へつくと。
そこには、ただそこに存在するだけで世界の質量が傾くような、圧倒的な巨躯が佇んでいた。青白く輝く鱗、すべてを見透かすような双眸。
「__我、ボルカニカ。古の盟約により、頂へ至る者の志を問わん」
「…こいつが話にあった…最強のドラゴン…」
神龍の放つプレッシャーの最中、スバルの脳裏に、あの冷徹なエミリアたちの声がリフレインする。
『死にたいのに死ねないなんて。でも大丈夫。もっと苦しくなるから』
スバルは奥歯を噛み締め、ボルカニカを睨み据えた。
「……名前を失くして、仲間にすら殺されかけて、それでもここに来たんだ。今さらどんな『志』を問われようが、俺の答えは変わらねぇよ……!してもすげえでかいなぁ。ハッタリじゃなきゃいいけどなぁ!!」
スバルは腰の縄を取り出して、それを鞭のように扱う。
ボルカニカはそれが当たっても全くダメージは無いようにしている。
さすが最強のドラゴンといったところだろうか。
スバルもこの可能性は想定しているはずだ。
ただこのままやっても、削り切れないのは分かり切っていることだ。
神龍の巨躯が、ただ尾を軽く一振りしただけで、1層の空気そのものが爆ぜるような衝撃波がスバルを襲う。
「がはっ……!?」
まともに喰らったら一発で肉片だぞ、おい……っ!
圧倒的な暴力を前に、スバルの脳裏にオットーのあの言葉が過る。
『本当に大事な時だけ使ってください。そうすることが自分のためにもあなたのためにもなると思います』
「__ああ、分かってるよオットー!リスクはもちろんわかってる…でももう失うもん失ってんだ!リスクなしで頼むぜ?神様。 そして…今がその、本当に本当に、やべぇ時だ!!」
スバルは地を這いながら、自らの中に息づく禍々しい力を引きずり出す。
「**コル・ヒドラエ…………ッ!**」
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その頃、3層の書庫『タイゲタ』では、エミリアがソワソワと落ち着かない様子でベランダから上層を見上げていた。
「スバルは?ねぇ…?一応あれでも私たちの仲間だったんでしょ?仲間がいないっていうのはすごーく緊急事態だと思うの」
「お師様ッスか?今は一層で皮肉屋と戦ってるッス〜!お師様なら大丈夫なんで心配はいらないと思うッス!」
「でも…」
エミリアはまだそわそわが落ち着かない様子だった。
やはりスバルを忘れていても、心の底にある優しさというのは隠せないのだろう。
「…心配…ッスか?」
シャウラがいつにもない真剣な目でそうしゃべる。
いつもは、口が達者、でいい感じに適当な人だが、こういう時は妙に真面目だ。
「……うん…」
そうエミリアがしゃべる。
やはり心配なのだ。
彼を忘れていても、自分たちの仲間なのだ。
仲間がいないというのは緊急事態だ。
そうさっきエミリアも言っていた。
「よし。それなら皮肉屋のもとに一直線ッス!」
シャウラが元気にそうしゃべるとエミリアが笑顔を取り戻して「うん!」と力強く言うのであった。