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覚悟してください、お嬢様。⑤
「お嬢様、とても綺麗です」
今日のレノの、私との会話の第一声はこれだった。
「あら、珍しい。今日は小言を言わないのね。というか、ついてこないのね?今日の舞踏会には」
「…ええ、今日はお嬢様に近づく不届な令息どもをねじ伏せていくことができず、残念です」
………ええっと、もちろん物理的にではないわよね?でも、やりかねないのがレノだもの。
「…ねえ、レノ。今日は1日中ほとんど私と別行動だったわね。…まさか、辞めるだなんて言わないでしょうね?!」
「ええ、そのようなこと。言うわけがございません。私はお嬢様に一生ついてゆくと誓いましたから」
「…そう、そうよね!…でも、もし本当にやめたくなったら。…ちゃんと言うのよ。できる限り引き止めるけど。地獄まで追いかけるつもりだけど」
「え…お嬢様が言うと本当にやりそうで怖いです」
あら、なんかレノに引かれた気がするわ…
レノは、私付きの執事だ。
5年前、私が11歳、レノが12歳のときに引き取った。
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「ふんふんふんふーん♪」
私は王都の通りを歩いていた。
今日は待ちに待った小説の新刊の発売日!
私は新刊が出るたび、こうして自分の足で本を買いに行く。
「シルビィ、来たわね。ついに!!」
「ええ、お嬢様。どれだけこの日を待ったことか!!」
シルビィは私の身の回りの世話をしてくれる専属メイド。
そして、数少なき私の本好きを理解してくれる友達でもある。
今日発売のこの小説ももとは、シルビィがおすすめしてくれたのよね。
メイドであり、友達でもあり、姉のような存在でもある。
「…んふふ…ふっ、…ふふぇ…」
シルビィはいつも図書館とか本屋にくると奇声を発する。
何故、奇声を発するのか聞いたことがあるけれど、「お嬢様も、そのうち分かりますよ」と言われた。
そのうち分かるのかしら?
でもシルビィの方が読書歴は長いわけだし。
本当にそのうち分かるのかもしれない。
「ふふっ…」
思わず、ニヤけてしまう。
「お嬢様、良かったですね」
「ええ!帰ったらすぐに読むわ!!」
「すみません、お嬢様。少し、外します」
「…ええ。わかったわ」
私は本を大事に抱えながら歩く。
突然ドッ、と何か大きなものに押されて前のめりになる。
「お嬢様…!!」
遠くでシルビィの声が聞こえた。
何が…起きたの?
「…チッ、」
ぶつかってきた大柄な男は、私に謝りもせずさっさと歩いていく。
「……クソッ、邪魔だ」
そう言って、私が買った新しい本を蹴った。
ブチッ。
「待ちなさい!!!あなた…謝りもせず私の大切な大切な本を蹴った…?」
私は叫ぶように言い放った。
「ああ?なんだ、嬢ちゃん。俺に喧嘩売ってんのか??」
男は私に向かって歩いてくる。
目の前にして、足がすくんだ。
あら…?私、怒りに任せてとんでもないことしてしまったのかしら…?
男は私の胸ぐらを掴もうと手を伸ばしてくる。
私は恐怖に目をつむった。
次の瞬間。
私はまた、何かに押された。
え…………?
そこには私と同じくらいの背丈の少年がいた。
助けてくれた…?
「…お前…!俺の…俺の母さんの、か、形見を返せ!!」
少年の声は震えていた。
「…チッ、めんどくせぇガキが増えたな」
男は今度は少年に手を伸ばす。
あ…もう、だめだ。
「…お前、汚い手でお嬢様に触らないでくださいます?」
紫に輝く眼を光らせて、シルビィは静かに言った。
シルビィは、目に見えないほどの速さで回し蹴りを喰らわす。
あっという間に男は地面に突っ伏していた。
「…ッ!ジル゛…ビィ゛…!!」
私は泣きながらシルビィに抱きつく。
「うわああああああああああん」
ぼろぼろと、大粒の涙がこぼれ落ちる。
「お嬢様、大丈夫ですよ」
シルビィは優しく私の頭を撫でた。
「ぅっ…うぇ…」
あの少年も涙を堪えていた。
私はそっと手招きする。
少年は戸惑いながら、近づく。
私はその腕を強引に引っ張って抱き寄せる。
彼は、今までの緊張の糸が切れたように泣き出した。
それにつられて、私もまた、泣き出した。
シルビィに連れられて、私たちは屋敷に帰った。そこには、少年━レノもいた。
レノの体は傷だらけだった。
服もボロボロだった。
しかし、服はある程度の原形をとどめていた。そこから推測するに、レノはどこかの貴族の生まれなのではないだろうか?
また、彼の髪は汚れてはいるもののよく手入れされたものだった。
でも、私は彼の生まれについて問うことはしなかった。
レノは、私たちに…なんというか…敵意を向けていた。
なぜか?これもまた、彼の生まれに関わるのかもしれない。
……でも、
「レノ。あなた、行くところがないのだったらうちで働かない?」
そのときのお嬢様の表情はまるで何かを企んでいる純粋な小さい子供のようだった、とシルビィが語っている。
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そういえば、そんなこともあったわね…
あれから、レノとはいつも一緒にいた。
なんていうか…お互い、合うのでしょうね。
いつも、一緒にいたのに…
なんか、レノがいないと調子がでないわね…
「お嬢様、難しい顔をしていますけれど。私では不満ですか?」
そう言ったのは、シルビィ。
「…っ、そんなことないわよ!!」
「……でもお嬢様、今レノのことを考えていたのでしょう?」
………………っ!
「か、考えてないわ!!」
私の答えにシルビィは微笑んだ。
揺れる馬車の窓からは、私が参加する舞踏会の舞台━王城が見えた。
また、長くなってしまいました…!
常々、思うのですが、過去編多いなと。
いい加減、現実を進めなきゃとは思っているのですが………
気づいたら過去編を入れてるんですよね。
次回こそ現実を進めたい…………
ここまで読んでくださり、ありがとうございます!!