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雨に溶けて
視点:前部→榊渚
後部→内田和樹
「あぁ、君か。…風邪ひきますよ。」
屋上の扉をギィと開けて出てきた人物に向かって理解の言葉、ついでに気遣いの言葉をかけておく。
その人物は人が居ると思っていなかったのか、ビクンと肩を揺らしてから恐る恐るといった感じでその姿の全体図を表した。
少女は色素が薄い髪はセミロングで内側にハネていて、緩い笑みを浮かべながら歩いてくる。手にはなにかの小説を持っている。
|情ノ陽璃淡《ジョウノヨウリオ》、14歳。感情痛症候群の患者。
「渚さん、こんにちは。…雨ですね。」
璃淡は雨雲を見上げて目を細めると、空に向かって手を伸ばした。
その仕草は儚くて、霧雨に溶けて消えてしまいそうだった。
そして、雨で濡れたからか、物思いが終わったのか璃淡はくるりとこちらを向き直って笑みを向けた。
「…そうだ、今日の夢なんですけど、めっちゃ気持ちよく寝る夢で、またその中で寝てて、でまたその中で…」
「無限ループだ。なんかそんな絵本病院のどっかに有ったよな。どこで見たかな…」
ふたりとも暫く考えていたが、璃淡が思い至ったように顔を上げた。
「…その本、私の部屋に有ったかも。絵本とかもよく読むから」
「じゃ僕は診察行った時に見たのか。君が見たのはその絵本の夢か?」
璃淡は肩をすくめてさあ?というジェスチャーをすると、雨に当たらないベンチまで行き、小説を読み始めた。
渚もまた呆けるのを始めた。
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「……今日は点滴の日ですか。最悪です。」
和樹はトイレの中で嫌なことを思い出し、ため息を吐き捨てた。
灰色の短髪に黒い丸メガネ、眼は眼鏡と同じ色の漆黒。183cmの高めの身長に患者服。目元には大きな隈が鎮座している。そして頭に悪魔のような角が生えている。
内田和樹、35歳。頭蓋角化異常症の患者。
因みに現在はトイレに篭って煙草を吸っている。これでも生粋のヘビースモーカーである。
点滴は嫌だ。まず先端恐怖症で刺すとこの先が嫌だ。そしてシンプル邪魔だし痛い。
もういっそ逃げてやろうか。早死にはするだろう。いつか頭に生えた角にメモ皮膚も破られるのだ。
考えただけで痛い。
諦めてげんなりしながら自分の病室へ戻ると、藤咲創也がせっせと点滴の準備をしていた。
無造作にハーフアップにされた髪はアッシュグレー、焦茶色の眼。自分よりも慎重が下の為見下ろす形になる。白衣を羽織り、「THE・医者」みたいな格好である。
藤咲創也、24歳。病院職員。
「あ!戻ってきましたか。じゃ、点滴するのでベットに戻ってじっとしててくださいねー!」
頭の中で悪態を垂れながら創也の横を通り過ぎる。その途端、創也が勢い良く振り向いてきた。
「おわ!?な、なんですか…寿命縮みますよ…」
「内田さん、煙草吸ってきましたね?」
なんでバレてんだ。匂いか?
唐突なことにピクリと肩を震わせると、創也は深々とため息を吐きやれやれと行った様子で続けた。
「好きなことやりたいのはわかるんですけど、煙草は辞めて下さい。」
「…はいはい。わかりましたよ。」
聞こえないように舌打ちを一つ。幸いそれは聞こえなかったようだ。ベットに乗り点滴の先から顔を逸らす。
「僕は優秀なので安心して大丈夫ですよー!」
「…そういうことじゃないです」
近づいてくる先端に、和樹は顔をしかめながら再び悪態を吐いた。
出演:榊渚、情ノ陽璃淡、内田和樹、藤咲創也