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第二話 who is that?
「あ、腹減ったんだろ?コレ飲め。」
そういって、魔女帽の人物は僕に黄色い缶を投げてきた。
ラベルには、
〔almond water〕と
書かれている。
明らかに怪しい。飲むのを渋っていることに気づいたのか、
魔女帽の人物はこちらを向いて呆れた顔をしている。
だが、こんな状況では選り好みなどしてはいられない。
たとえ泥水だろうと汚水だろうと、生きるためには飲むしかないのだ。
覚悟を決めて口に含んでみると、想像していたような味ではなかった。
薬のような苦みではなく、酢のような酸っぱさでもなく、アーモンドのやさしい甘い味だ。
僕が口を開いて唖然としているのを見て、もう落ち着いたと思ったのか、魔女帽の人物は話し始めた。
「すまんな。急に選択を強いて。」
「でも、俺の役に立ってもらわなくちゃ、ここでは置いていくことしかできないんだ。」
「承諾してくれて助かったよ。」
この黄色い空間を放浪しているうちに薄々感づいてはいたが、
この場所は、死にかけの人を助けることができないほどに危険なのだ。
もしくは、人を助けるほどの余裕を皆、持っていないのだ。
「自己紹介がまだだったな。」
「俺の名前は......
「……え〜と...」
「......あー.......」
「ちょっと後に回すね。」
名前を忘れることなんて、あるのだろうか。
それとも、こんな気の狂いそうな場所にいると自然に忘れてしまうのかもしれない。
「俺は見ての通り、ここから脱出する方法を3年くらい探してる放浪者さ。」
「途中でエンティティに襲われたりして、両目はなくなっちゃったんだけどね。」
確かにこの人は、さっきから今までずっと両目を開けていない。
だから、目の代わりとなってくれる人物に僕を選んだのか。
しかし、エンティティとはなんだろうか。
襲われるということは、危険な化物のようなものなのだろう。
「後は...名前.....名前ね......」
「思い出せないからとりあえず、先輩ってよんでくれ。」
先輩は、少し誇らしげな顔をしている。
こんなヤバい空間で生き残れているから実力者ではあるのだろう。
だがそれ以上に、イカれたこの場所でこんなに陽気でいられているところが怖い。
「さぁ、初仕事だ相棒!」
相棒とは、僕のことだろうか。
そこまでの仲は深まっていないように感じるが、先輩にとってはそうなのだろう。
拒否する理由もないので、そのまま話を聞き続ける。
「この黄色い空間を歩いて、階段を見つけてくれ。」
「階段と言っても、なにか文字とか書かれていたりしたらちゃんと知らせるんだぞ。」
どこかお母さんのような雰囲気も感じる。
ここがこんな異様な場所でなければ、少しは安心できただろう。
「あなたはついてこないんですか?」
歩き出した僕に対し、先輩は道の中央で仁王立ちしている。
「壁に手をついてないせいで周りがわからんくて歩けん」
すごーーーく無様な仁王立ちだ。
よく見ると足がプルプル震えている。
「.......こっちです、先輩」
無理やり手を引っ掴んで先輩を動かす。
ゆっくりではあるが少しづつ移動できそうだ。
「やめてくれ...クソ怖い....」
さっきまで威勢よくドヤ顔をしていたのが嘘のようだ。
「頼む、やめてくれ.....」
「あああ.....」