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第三話 go to the Habitable Zone.
僕は、先輩の手を引いて、二時間ほど歩き続けた。
ずっと歩いていると、抵抗する気も失せたのか、慣れてきたのか、先輩も何も言わずに歩いていた。
「あっ!」
僕が急に止まると、先輩は僕が引っ張っていた手を繋いだまま気づかずに歩き始めたせいで、先輩は無様に顔面からころんだ。
「急に止まるんじゃねえよ....」
「そんなことより、見てくださいよ!」
僕はその方向を指さそうとしたが、先輩には見えないことに気づいてやめた。
まさか、こんな地獄にも蜘蛛の糸が垂らされてくるとは!
「EXITって書いてあります!」
「出口ですよ!」
僕が喜んでいるのとは逆に、先輩の顔からはどんどん血の気が引いていった。
「風船も、ニコニコマークも書いてあります!」
「早く行きましょうよ!」
僕はまだころんだままの先輩の手をひこうと、手を取ろうとした。
が、先輩にその手は叩かれた。
「それは罠だ。」
「とっとと離れるぞ。」
本当だろうか。だが、出口をわざわざ僕に隠す理由もない。
仕方無しに、僕はまた先輩の手を引いてその出口?から離れた。
「いいか、このバックルームでは、安全そうな場所は逆に危険だ。」
「賢いエンティティがいる可能性があるからな。」
さっきから言っているエンティティとは一体何なんだ?
「エンティティってなんですか?」
そうきくと、先輩は一瞬呆れたような顔をした後、また元の顔に戻って僕の質問に答えた。
「エンティティってのは.....簡単に言うと、危険な化物だ。」
「姿や生態は色々あるが、大体は生態とかを知っていれば対策できる。」
大体は、ということは遭遇を避けられないエンティティもいるということだろうか。
聞きたかったが、更に恐ろしい事実を知らされそうだったので何も聞かなかった。
また歩いていくと、周りの黄色い景色と浮いている地味な灰色の階段を見つけた。
「先輩、止まります。」
「おう。」
前には急に止まって先輩を転ばせてしまったから、なにかする時は声に出している。
目が見えないとはこうも不便なものなのか。
以前はどうやってこのバックルームを生きていたのだろうか。
「そういえば先輩って、僕と出会う前はどこにいたんですか?」
「真の最終レベルっていう、現実に帰れるらしい噂のある場所だ。」
「でも帰れなかったんですか?」
「ああ」
先輩は、現実世界に帰りたいのだろうか。
僕は特に生きる理由もなくのんびりと生きてきたから、
危険がなければあまり帰りたいとは思わない。
先輩が目が見えなくなろうと現実に帰ろうとするのは、なぜなんだろうか。
「先輩、なんで先輩って現実に帰りたいんですか?」
その質問を口にした瞬間、先輩の顔が豹変した。
僕に怒っているわけではないのはわかる。何か思い出したくないことや、辛いことを思い出したときのような顔だ。
「先輩、行きましょう。」
僕はまた先輩の手を引いて、灰色の階段へと足を踏み入れた。