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第6話 時の交わり
普通の日常。そう思っていた。
「ふわぁぁっ…よくねたぁ………ってあれぇ!?ここどこ!??」
朝、目を覚ますと私、ハイビスカスは魔界の街の外れにいつもの3人と一緒に寝ていた。服も何故か寝巻きじゃなくていつもの服になっている。
「……うるさ……ん?」
「ん……あれ、これ、ゆめ…?」
「俺はお兄ちゃんがいたら別にどこでもいいよ〜…」
「…寝ぼけてやがる、こいつ」
各々目覚めて辺りを見渡す。魔界であることは分かる。空紫色だし。だけど……。
「…ちょっとレトロすぎない?」
今はもう無いような駄菓子とか、いっぱい売ってる。タイムスリップ…?急に?
いつの時代に来てしまったんだろう、と思っていると。
__「あぁいっ号外、号外ーーっ!!魔王様に後継様が二人生まれたらしいぞーーっ!」__
新聞売りのおじさんの声が遠くから聞こえる。え、私に子供が生まれた未来…ってこと?でも二人って……もしかして…。
「…どうやら俺ら、27年前に来たみたいだな」
流石、黄河くん。仕事が早い。…待って、今もしお父様に会うことが出来たら……
…《《あの出来事》》が、起きなくなるってこと…?
__「……おい、ハイビスカス!止まれ!」__
私は27年前の自宅の向かって走り出した。
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「…あのっ、すみません…っ!門を開けてくださりませんか……!」
息を切らしながら、城の門番に向かってそう話す。
「どちら様で?」
「私は……っ……あれ」
…なんて言えば良いのだろう。……あぁっ、もう良い、ままよ!
「私は!27年後の未来から来た!次期魔王ですっ!」
「「………」」
二人の門番は互いに顔を見合わせる。
「あの……」
「何を言っておられるのか…」
ですよねー、知ってた。でも、諦めない。無理に門を突破しようとする。
「良いからっ!早く、通して下さいっ!」
「あ、ちょ、おい!誰かその娘を捕まえろ!」
あっという間に私は二人に取り押さえられた。
「ハイビスカス!大丈夫か!?」
向こうから黄河くんたちが走ってくる。
「連れか?そいつらも念の為押さえておけ!」
どこからか新たな兵が門の前に現れ、3人も私と同じように拘束される。両手を縛られたまま私たち連行され、城の地下牢の一室に放り込まれた。
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「…勝手に行動してごめんなさい…」
私たちは円を描くように冷たい石畳の上に座っていた。
「…起きたことはしょうがない。問題はこれからだ。このままこの牢屋にいてもタイムスリップの原因の調査は不可能だ。まずは脱出することを考えろ」
「でも…」
私は自分の両手を動かそうとした。後ろで縄で縛られていて、びくともしない。
「…縄なら俺が解く」
そう言い、黄河くんは両手を変形させ、自由になった手で私たちの縄も解いてくれた。
「…で、どーするー?」
せーらちゃんがこてんっと首を傾げる。
「「「「…………」」」」
沈黙。全員が俯き、思考をする。石造りの狭い部屋。窓には鉄格子が嵌められていて、扉も鉄格子でできている。当たり前だが、扉には鍵がかかっている。至って普通の牢屋って感じ。まぁ、知ってたけど。たまに来てたし。
「…あ」
最初顔を上げたのは、睦月くんだった。
「結構無謀な案だけど…もしかしたら…!」
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巡査の兵が、ランタンを片手に牢を徘徊し始める。彼が私たちの部屋の前に来た瞬間。
ぱりんっ。ランタンのガラスが静かに割れ、浮遊し始める。その破片の一つが、兵の腕を大きく裂いた。
「痛っ!?…って…」
痛みに驚いた拍子にランタンが手から滑り落ちる。それは石畳の床に激しくぶつかり、中の燃料が事前に敷いておいていた布切れに染み込む。布が大きく燃え上がった。魔界の炎は普通のものと比べて温度が桁外れに高い。鉄格子が少し柔らかくなるのに時間はかからなかった。
「…今!せーらちゃん!」
「わかった…!」
半死体であるせーらちゃんは、痛覚を持っていない。手が多少焼けたが、鉄格子がしなやかに曲がった。
「成功だ!やったぁ、お兄ちゃん!」
「いや、ほとんど運任せみたいなものだろ、これ…」
いや、一喜一憂している暇なんてない。
「この城のことは私が一番知っている!付いてきて!」
そう言って私は母の部屋であるはずの場所まで走り始めた。
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がちゃっと大きな音を立てて扉が開く。部屋のベッドには、お母様と幼い私とシオラ、そしてベッドの傍にはお父様が立っていた。
「…誰だ」
「…!お父様っ!」
扉を閉め、無我夢中でお父様に抱きつく。ここにいる人は私以外みんな…事故で亡くなっちゃったから……。
「…良かった…!もう一度だけでも会いたくて……!」
「……何を言っている」
見上げると、怪訝な顔をしたお父様がいた。
「…私は27年後の未来から来た、ティア・ハイビスカスです」
「…奇遇だな、今彼方で寝ている娘と同じ名前だ」
「ええ、実は……」
私は、今日1日で起こったことを話した。お父様は遮らず、最後まで私の話を聞いてくれた。
「…というわけで…。あ、えっと……実はお父様は私が5歳の時に……!」
そこまで言った時に、ふと黄河くんに口を塞がれた。
(なんで?今伝えないと、みんな死んじゃうのに……っ)
(落ち着け。…タイム・パラドックスだ。無闇な過去改変は現在を曖昧なものにする)
(…でも…)
(……辛いのは分かる。分かるが、今は我慢しろ)
(……)
「…どうした」
お父様が口を開く。
「…いえ、なんでも…」
じっと見つめられる。何もかも、見透かされているような気分になる。
「…そうか」
彼が視線を逸らす。そこで私はふと、お父様たち以外にもう一人立っていることに気づく。黒髪の、ピンク色の瞳をした男性だ。……あの人の顔、どこかで見たことがあるような…?
彼がゆっくり微笑む。不気味に。全ての悪役、支配者のような顔をして。
「……!もしかしてあなた……」
その名を声に出そうとした瞬間、意識が遠のき、私は深い眠りへと落ちていった。
ふと目を覚ますと、そこはいつもの私の部屋だった。夢かな、と思ったけど、みんなおんなじ夢を見てたらしい。ううん、多分夢じゃない。何より、目覚めた後もせーらちゃんの手が焼けてたから……。何だったんだろ……?ま、考えても仕方がないか。吹っ切れたように私はいつものように朝食を作る支度を始めた。あれ…何か大事なことを忘れているような……。
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ここから中の人の感想↓
途中で大きな矛盾が発生しそうで怖い。以上。