公開中
第4話 偶然
朱莉ちゃん目線で物語が進んで行きます(珍しいパターン)
やほー、私、星宮朱莉(18)。この|木ノ華学園《このかがくえん》の高3生。暇なときは勇者パーティ…二人しかいないからコンビの方がいいかな?…に入って、JKヒーラーとして活躍してる。だけど、普通の日はもうほんっとーに平凡な学生ライフを送ってる…。
私は教室の窓の方を向いて、ため息をつく。今日も疲れたなー。
「あ、おーい!あかりー!」
無駄に明るい声が聞こえる。声の聞こえた方を向くと、そこには勇者コンビのリーダー、如月羅衣(17)が立っていた。
「今日一緒に帰らなーい?」
「…おけー」
---
「それでさー、弱々ゴミ勇者くんが私に何の用ー?」
「っ誰がクソダサ弱々ゴミポンコツ勇者野郎だって!??」
「…そこまでは言ってないわ」
夕日で赤く染まったアスファルトの上を私たちは歩いてた。
「それで…何の用なのよ?」
「…えー、」
隣で歩く彼が軽く咳払いをする。
「これから…ゴミ拾いでもしない?」
「…は?」
ゴミ拾い?急にそんななんで…。こっちの考えを読んだみたいに羅衣が返答を返す。
「いやぁ、なんか勇者として世界の人々の役に立ちたいというかなんというか…」
「…ちょっと…地味すぎでしょ、勇者の活動ってするには」
「…これぐらいがちょうどいいんだよ!高望みすんなっ!!」
大声で喚く。羅衣はキレやすい、かなり。…私、いちおー先輩なんですけどー。
「…で、いつ?どこで?」
「……これから木ノ華公園でゴミ拾い《《大会》》があるんだよねー」
「大会、って…誰でも参加できるじゃん」
「…………」
はい、論破⭐︎反論の言葉を探し当てたかのように、羅衣が口を開きかけたその時。
…すぐ近くから爆音でトルコ行進曲(作:モーツァルト)が流れ出す。
「…あ、電話だ」
羅衣がスクールバッグの中を漁り始める。いや、着信音にトルコ行進曲って…。
スマホを探し出すのにそんなに時間はかからなかった。赤色の手帳型のスマホが出てくる。渋っ。
手帳を開けると…黄色のバックにメガネのマーク。羅衣がこれでもかというくらいに嫌な顔をした。
「…ちっ、マネージャーか…」
マネージャー…ってあの牧田さん?前に一回会ったことがあるけど、確か結構性格が終わってたよーな…
…あ、ちなみに羅衣は勇者やりながら、アイドル活動もやってるんだよねー。意外と忙しくは無いらしいけど。
ゆっくりと通話ボタンを押し、スマホを耳に当てる。
「…はい、もしもs……」
耳に当てたのが間違ってた。スピーカーモードでも無いのに、さっきのトルコ着信曲に劣らないくらいの爆音で高音ボイスの男性がペラペラと画面越しに喋り出した。
[あ、もしもしらいくーん?あのさー、今けっっっこーーライブとかその他諸々の打ち合わせが溜まってんのねー?それでー、むつきくんが「出来るだけ早い方が良い」って言うからさー、今下校中でしょ?できれば家帰る前にさー、速攻事務所に来てくれないかな?《《今すぐ》》!良い?おっけー?ありがとね!じゃ!!]
ブツっ。最後の方が聞こえるか聞こえないかぐらいのところで通話が切れる。
「……。」
羅衣は無言。でも、無言の圧?ってものは感じる。
「…………なよ」
「え?」
「…ふっっっざけんなよ!あんの██████████████████████(←自主規制入りまーす)
--- |a few minutes later…《数分後》 ---
…………はぁ………はぁっ………」
「………終わった?」
…こんな感じでかなり口が悪い。…現役勇者なのに。現役アイドルなのに。
「………まぁ、速攻終わらせて戻ってくるよ、光速でね⭐︎(←イケボ)」
「…はいはい」
…マネージャーに似てウザいなぁ…。やっぱ一番近くにいる人に似る説。…え、てことは私将来あれくらい口悪くなるってこと??…縁切ろうかな…。…もちろん嘘。
---
「…え、けっこー人いんじゃんー…」
ざっと…うん、100人はいる。ゴミ拾いって意外と人気あるんだー…。受付時にゴミ袋と一緒に渡された一枚の小さな紙を見る。
(35番…。変わってるよねー、同じ番号の人とペア組んで協力って…)
あ、学校のバッグは家に置いてきた。邪魔だったから。…とりあえず35番の人を探せば……
「…あのー…」
不意に肩を叩かれる。振り向くとそこには…
茶色の腰まで伸びたくせ毛、赤い瞳、頭に付いてる…なんだっけ、あの南国の花…
「…っ魔王…!」
「…え、いつものヒーラーの子…だよね!?やっぱり!もしかしてあなた《《も》》このイベントに参加してるの?それなら…」
私が持っている紙と同じようなものをこっちに向ける。
「…《《35》》って、誰か分かる?」
…あー、何となくだけどそんな予感してた。最悪。ほんとは戦うべき相手とペアなんて。…ここに羅衣がいなくて良かったかも。マネージャーナイス。
「35…なら私ですけど」
わざわざ嘘をつくほど私は魔王を避けるつもりは無い。渋々本当のことを言った。
---
「あんたって…前会った時も思ったけど、お人好しよねー」
「…え、そ…うなのかな?」
わざわざ人から離れた場所でゴミを探す。これで心置きなく私たちだけの事情を話せる。
「そうでしょー、たまに忘れかけたり疑ったりすることあるけどさー、いっっちおーーあんた魔王なんでしょ?」
「…ティア・ハイビスカスね」
…名前なんか聞いてない。「あんた」って呼ばれるのが嫌だったのかな?……あ、そうだ。私は後ろを振り向いた…と見せかけて拳をペア相手の方へ振り上げた。
「…ひっ、いやぁっっ!!」
瞬きをする間も無くバリアが目の前に張られる。…やっぱり。前戦った時も、ずっとこのバリアばっかり使ってた。
「…なんでそんなバリアばっか張るわけ?」
「え…だって…っ、私これしかできない、ただの……ただの落ちこぼれだからっ……!」
語尾が強くなる。あんまこーいう話題には触れて欲しくない感じ?
「…あんまうるさいと周りに聞こえるじゃん…」
「あっ……ごめんなさい……」
…情けない。でも、敵だけど守りたくなる。この感情を周りに抱かせて今までずっとやり過ごしてきてたのかぁ……
………腹立つ。
「あのさ、あんた甘えすぎ。魔法が使えないから何?人間界に住んでるやつ大体そんなもの使えないの。もっとさぁ、努力したら?いろんな面で。今まで散々ちやほやされてきたんだろうけど、そういうの、無駄。私より年上のくせに努力も出来ないとか、ダサ過ぎ」
「えっ……あ…えっと……」
論破本日二回目。でも少し物足りない。
「反論の一つくらいしてみたら?あのマジ弱い勇者くんですら反論くらいするよ?あいつより弱いって、相当な雑魚じゃん」
「………えへへ…」
よく見ると…相手は笑ってた。お守りにくっついてる小さい鈴が鳴るみたいにころころ。
「…なんで笑ってんの?」
「だって…こんなに私のこといっぱい心配してくれた人、ヒーラーの子が初めて。だからぁ、嬉しいなーって」
「……」
…論破失敗。…やっぱ敵わないなぁー…。
「…じゃぁさ、私とあんたで約束一つ結ぼ」
「約束…?何の?」
「何のって……次私たちが攻めに行く前に少しでも強くなってること。良い?そうじゃないと……」
「…そうじゃないと?」
「………」
駄目、交換対象が全く想像できない。
「…とにかく!前よりは強くなってること!締め切りは今度会う時!!良い!?」
「……うん、わかった!」
彼女は唐突に…中指を立てた。
「…は、何?喧嘩売ってんの?」
「え、だって日本の文化で『指切りげんまん』ってあるんでしょう?だからそれの…」
「それは小指!こう!」
お手本を見せたけど、なぜか難儀してる。
「…あぁ、もういーや!はい、握手握手!これぐらいならできるでしょ!」
そう言って手を伸ばす。
「…うん、握手でもいいよ!」
手と手が触れ合おうとした時。
「あ、あかりちゃんじゃーん!こんな場所で何やっ…て……」
急に聞こえたハイトーンボイスが一瞬で頼りなく消える。あの有名なのか無名なのかよくわからないアイドルグループがマネージャー込で3人とも立っていた。「ICElighT」、通称アイスト。羅衣たちのグループだ。羅衣がかなーり青ざめている。それとは正反対に、なぜかマネージャーはすっごいニヤニヤしてる。
「…あぁおい!い、今お前、魔王と何やろうとしてたんだよ!??」
「何…って…握手だけど?」
「握手!?何だよ、何か変な友好条約でも勝手に結んだのか!??」
「条約…って言えば条約…かな?約束って言うか…」
「はぁぁ!??」
「え、何、やる?」
お互いに拳を振り上げる。流れに置いていかれてる約3名がこちらを何とも言えない表情で眺めてる。
「お前、今すぐその約束とかいうやつ取り消せよぉっ!!」
「えー、やだー、だってさー、約束って一回結んだら取り消しちゃダメっしょ」
「日本は昔不平等条約を改正してんだよ!大正時代あたりに!」
「明治時代ね、ばーか。あと、国際問題とプライベート一緒にすんな」
「…あぁぁ!??ばかっつったかぁ!??今!!今の発言と約束両方とも取り消せよなぁぁっ!」
こうして、今日1日は私たちの口論で締められたのだった。おしまい⭐︎
なんか…なっっっっっが。(by:|中の人《みるる》)
※前作の倍以上の文字数ありました。