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公開中
【淡本中学校:TRPGリプレイ総集編】キルキルイキル
シルバーウィークということで手を出した、
言わずと知れた名作シナリオ。
良いお買い物でした。
なので今回は自作シナリオじゃないです。
シナリオ全編のネタバレが含まれます。
プレイの予定がある人は、閲覧をお控えください。
かなりのシナリオ改変が含まれます。
(文字数削減のために、不要そうな部分を端折ったり)
ついでに淡本中学校本編の重大なネタバレも含まれます。
KP:A先生
参加者:校長 西先生
リプレイ作成:心汰
**『生き残りたければ、もうひとりを殺せ。』**
---
A先生「さあ早速イカれた探索者を紹介しますよ」
東さん「どうも東ケッカだよ、東さんって呼んでね」
---
探索者ステータス【東ケッカ】
STR (筋力) 11
CON (体力) 13
POW (精神力) 12(初期SAN値:60)
DEX (敏捷性) 10
APP (外見) 13
SIZ (体格) 13
INT (知性) 14
EDU (教育) 15
HP (耐久力) 13
IDE(アイデア) 55
幸運 50
知識 70
芸術(楽器演奏) 60
言いくるめ 40
説得 45
パンチ 50
運転 15
目星 65
隠す 75
---
東さん「地元じゃ敵無し 喧嘩は負け無し YO」
A先生「馬鹿なこと言ってないでさっさと自己紹介」
東さん「音大首席卒業だけど、何故か今は売れないバンドの
ギターボーカルをやっている人だよ。月収?そんなの聞かないでよ!」
A先生「なるほど、ニートですか?」
東さん「ちがいますー、未来ある若者です!」
A先生「そういえば、推奨技能の聞き耳ないですけど大丈夫ですか?」
東さん「あ、聞き耳推奨技能なの?僕説明書読まないタイプでさ」
A先生「ぶん殴りますよ」
A先生「では次の探索者紹介に移ります」
西さん「(西マツロです)」
---
探索者ステータス【西マツロ】
STR (筋力) 9
CON (体力) 8
POW (精神力) 15 (初期SAN値:75)
DEX (敏捷性) 12
APP (外見) 12
SIZ (体格) 11
INT (知性) 13
EDU (教育) 14
HP (耐久力) 8
IDE(アイデア) 60
聞き耳 55
目星 65
芸術(小説執筆) 60
精神分析 50
信用 50
心理学 45
パンチ 25
言いくるめ 70
説得 65
---
西さん「(ある有名作家のゴーストライターです。
休日は東さんのバンドを手伝っています。
一応ドラムです)」
A先生「なるほど...西先生がドラムとは意外ですね」
西さん「(西先生って誰ですか?)」
A先生「もうロールプレイ開始してましたか...」
A先生「それではキルキルイキル、セッション開始致します。
よろしくお願いします」
探索者「「よろしくお願いします」」
---
あなた達はふたりでルームシェアをしている。
ある朝目を覚ますと、そこはふたりが共有で使用している
リビングダイニングであった。
食卓に腰掛け、そのまま机に突っ伏して眠っていたらしい。
どうしてこんなところで寝ているのか?
...まったく覚えていない。
あなた達が身を起こすと、卓上には見慣れぬ1枚の紙が置かれていた。
卓上のメモには、ミミズが這ったような文字でこう記されている。
”生き残りたければ、もうひとりを殺せ”
---
東さん「いやぁよく寝た...って、この紙文字汚いな。
絶対チミが...おっと、いやぁ誰が書いたんだろうねー...」
西さん「(なんですかうるさいですよ せっかく羊を数えていたのに)」
東さん「いやそれ眠れてないよね?それよりこれ見てよ」
西さん「(...生き残りたければ、もうひとりを殺せ?
ああ、おやすみなさい)」
東さん「ちょっとスルーしないでよ!これチミが書いたでしょ?」
西さん「(私こんな文字汚くないです)」
東さん「嘘つかないでよ!」
西さん「(ああ、おやすみなさい)」
東さん「ちょっと待ってって!じゃあ誰がこれを書いたわけ?」
西さん「(どうせ、犯人はヤスですよ)」
東さん「やかましいな」
東さん「あー、僕ちょっと熊狩ってくるね」
西さん「(お花摘んでくるの対義語ですか?)」
東さん「そうそうおトイレ行ってくる」
西さん「(最初からそう言えばいいものを)」
---
あなた達が部屋を出ようとすると、気が付きます。
室内は明るく、まるで新築のようにピカピカだ。
掃除も隅々まで行き届いており、使用感もあまりない。
ワックスを引いたばかりのフローリングに、
簡素なキッチンと、椅子が2脚セットされた食卓。
そしてそれぞれが好きなものを置くための飾り棚と、
テレビが置かれている。
また水場へ向かう扉、それぞれの部屋へ通じる扉、
玄関へ向かう扉、計4枚の扉がある。
---
東さん「うーん、これって本当に僕らがいつもいる部屋なのかな?」
A先生「それではアイデアロールどうぞ」
ダイスロール:54 成功
東さん「うっわギリギリ!」
A先生「あなたはあることに気が付きました。
ここはいつもの部屋ではない...ただの直感とは思えない、
妙な確信を持っています。それに加え...」
A先生「いつからふたりでここに住んでいるのが、思い出すことができません」
東さん「なんか部屋が妙に綺麗だよね」
西さん「(筋肉の妖精のおかげでは)」
東さん「なるほどー、納得...納得?え、チミ何いってんの?」
西さん「(というか東さん、トイレはいいんですか?)」
東さん「そうだトイレ!行かないと!」
A先生「ふたりは水場へ向かいました」
東さん「じゃあ僕はトイレ行ってくるから、西くんは自由にしてて」
西さん「(了解です)」
A先生「トイレから戻る時間を1D10お願いします」
東さん「えぇ?最大10分?大のほうじゃないよ」
西さん「(ウォシュレットで頭でも洗うんでしょう)」
A先生「はははw」
ダイスロール:7
A先生「はははw」
東さん「ああ、じゃあ僕ついでにウォシュレットで頭洗ってくるね...」
A先生「まずい面白すぎますけどこれ」
A先生「では、残された西さんはどうしますか」
西さん「(うーん、玄関に行きます。ということですので、
ウォシュレット浴び終わったら東さんも来てくださいね)」
東さん「パワーワードすぎるんだけどウォシュレット浴び終わったらって...」
西さん「(そういえば、歯磨き粉買いに行かないといけませんね)」
東さん「ん?まだ結構なかった?」
西さん「(え?)」
東さん「え?」
西さん「(うーん、確かにまだあった...ような?)」
東さん「あったよ全然!まだ買わなくていいよ」
A先生「ここで東さんは鏡を見て気が付きました。
自分の顔の額と髪の生え際に、小さな見慣れぬ傷があります」
東さん「突然も突然だね。なんだろうこの傷」
西さん「(さあ?では私は玄関に行ってくるので、これで)」
東さん「はいはーい」
---
A先生「あなたは玄関に行きました。何をしますか?」
西さん「(とりあえず玄関を開けてみます)」
A先生「ですが扉はびくともしませんでした。鍵はかかっていないようです」
西さん「(えぇ?なんで開かないんです?
ならマスターキーの出番ですかね...)(拳を握りしめる)」
A先生「便利な拳ですね」
ダイスロール:20 成功
A先生「扉はどんなに叩いても殴ってもびくともしません」
西さん「(やけに頑丈だぜこのトビラ...)」
A先生「人造人間編の天津飯ですか?」
西さん「(何やってもびくともしないだなんて、
一体どうなっているんですかこの扉は?)」
西さん「(では次はポストを調べてみましょうか)」
A先生「中には貴方宛てのガス料金の催促状が入っています。
4000円らしいですよ」
西さん「(これを紙飛行機にして飛ばしてもいいですか?)」
A先生「は?」
西さん「(手さばきと投擲振ります)」
A先生「は?」
ダイスロール:18 成功
ダイスロール:25 成功
A先生「西さんはガス料金の催促状を紙飛行機にして飛ばしました」
西さん「(これで東さんには怒られませんね)」
A先生「もっと怒られるの間違いでは?」
西さん「(じゃあ、次はドアスコープを覗いてみます)」
A先生「西さんがドアスコープを覗いてみると、見慣れぬ薄汚れた壁のようなものが
見えました。普段なら、ここからは外の風景が見えるはずです」
西さん「(うーん、なぜここに壁が?)」
東さん「ごめんごめん、ちょっと長くなっちゃったよ」
西さん「(ああ東さん、玄関の扉が開かないんですよ。
私が殴ってみてもびくともしなくて)」
東さん「ならもう開かないだろうね」
西さん「(そしてドアスコープを覗いてみたら、汚い壁が見えたんです)」
東さん「壁?外の景色じゃなくて?」
西さん「(そこなんですよね...)」
A先生「東さんもドアスコープを覗き込んでみました。
すると、東さんはこの壁に見覚えがあることに気が付きました」
東さん「うーん、なんかさ...いや、なんでもないや」
西さん「(どうしましょう。あ、スマホとか持ってますか?)」
東さん「確かに!えっと...あれ?いつもポケットに入ってるはずなのに...」
西さん「(私のも見当たりません...)」
東さん「ちょっとスマホ探そうか、リビングに戻ろう!」
A先生「ふたりはリビングに戻りました」
東さん「うーん、とりあえず周りを見渡してみるよ」
A先生「目星ですか?」
東さん「うん」
ダイスロール:40 成功
A先生「目についたものは、写真立てと救急箱と金庫とテレビ、
それとゲーム機があります。テレビに繋がっていますね。
お目当てのスマホはないようですが」
東さん「写真立て見ていい?」
A先生「写真立てには、幼いときの西さんと東さんが写っています」
東さん「わー、西くん写真写り悪い」
西さん「(ぶっ飛ばしますよ。というか、私たちは
幼い頃からの知り合いなんですか?)」
A先生「あなた達は、今それを思い出しました」
A先生「そして、東さんだけがあることを思い出しました。
この写真を撮ったあと、ふたりで決して近付いてはならないと
言われた、裏山に行ったことを...です」
東さん「ふむふむ?」
西さん「(私ゲームやりたいです)」
東さん「あっ僕もやりたい」
A先生「先にニュース見ませんか?(汗)」
東さん「ちょっとKP焦ってない?」
西さん「(じゃあニュースを見てあげますよ)」
A先生「テレビを付けると、いつものニュース番組が流れています。
東さんのみアイデアロールお願いします」
ダイスロール:26 成功
東さん「なんかこれ昨日見たニュースと同じだよね」
西さん「(そうなんですか?再放送ですか?)」
東さん「でも、ニュースがそんな千と千尋の神隠しみたいなことするかな?」
西さん「(千と千尋の神隠しと再放送ってあなたの中でイコールなんです?)」
東さん「しかし、これはどうなっているんだろうね。
なんかのバラエティの企画だとしか思えないけど」
西さん「(だったら怖すぎますよ、プライバシーって言葉知ってますか)」
東さん「どうせチミが勝手にそういうのに応募したんだろ?」
西さん「(してませんよ!バカ!)」
東さん「なんだと!バカ!」
探索者「「バカバカバカバカバカバカ」」
A先生「ちょっと落ち着きなさいバカ」
西さん「(あの、私救急箱を調べたいです)」
東さん「うわ急に落ち着かないで?」
西さん「(ということで調べます)」
A先生「これはふたりで共有している救急箱です。
開けると、中には一箇所不自然に空いている箇所があります。
ちょうど何かの薬箱がひとつ収まりそうなくらいですね。
ここに何を入れていたのか、あなた達は思い出せません」
東さん「なんかここ入ってないけど???」
西さん「(あなたまたODしましたね!?あれほどやめろと言ったのに!)」
東さん「いや今回は違うよ!僕じゃないって!」
西さん「(今回”は”?どでかい墓穴ですね)」
東さん「あっあっ...」
東さん「じゃ、じゃあ次は西くんの部屋探索しない?」
西さん「(いいですよ)」
A先生「では、ふたりは西先生の部屋に向かいました」
東さん「やっぱチミの部屋って面白みないや。調べなくていい」
A先生「ちょちょ!秘匿だけ伝えさせてください」
東さん「秘匿あるの?この部屋に?」
西さん「(ずいぶんと私の部屋をコケにしてくれますね)」
A先生「まあ西さんが隠さない限り、どちらも知れる情報です」
A先生「西さんは、机の上に新聞記事が置いてあるのを発見しました。
どうやら、行方不明事件についての記事のようです。
内容はこうです」
---
昨日未明、淡本町に住む10歳の児童2名
東ケッカ、西マツロが行方不明となった。
彼らはふたりで外出したその後、行方不明になっている。
ふたりが訪れたと思われる山には、何者かの血痕が残されており、
警察では誘拐、殺人の両面で捜査を続けている。
---
東さん「これ絶対僕らだね」
西さん「(そうですね)」
東さん「僕以外にケッカって名前の人間いると思う?」
西さん「(私以外にマツロって名前の人間いると思いますか?)」
探索者「「だははははははwww」」
東さん「...」
西さん「...」
東さん「えっ、じゃあなんなのこれは?誘拐された覚えとかないけど」
西さん「(今が誘拐っぽい状況ではありますが、私たちは大人ですもんね)」
東さん「よく分からないな。まあ、一応持っておこうか」
東さん「じゃあリビングに戻ろうか」
A先生「ふたりはリビングに戻りました」
---
再びダイニングルームに戻ると、何かが腐ったような異臭を覚えるだろう。
新築のようにまっさらだった室内は、一瞬で数年の時が経ったかのように
色褪せてしまっており、いたるところが劣化している。
---
東さん「あー...僕はケッカ、これは劣化。なんつって」
西さん「(殴られたいんですか?)」
東さん「ごめんって!ぶたないで!」
西さん「(あなたを殴る時間すら惜しいです。
なんなんですかこの異様な光景は?さっきまで普通でしたよね?)」
東さん「まあたまにはこういうこともあるよ。じゃあ次僕の部屋行こうか」
西さん「(たまにありますよねこういうこと。ってアホですか?ねぇよこんなこと)」
A先生「じゃあ行くんですか?東さんの部屋」
東さん「行くよ」
A先生「え、東さんの部屋に行くんですか?」
東さん「なになに、怖いんだけど」
A先生「西さんの部屋行きません?」
東さん「誘導下手くそだな!さっき行ったんだよ!」
A先生「行きましょう」
西さん「(じゃあ行きましょうか)」
東さん「いいよ、そこまで言うなら行こうか」
A先生「ふたりは再度、西さんの部屋に向かいました」
---
扉を開けると、そこは子供部屋になっていた。
西が幼い頃使っていた子供部屋とまるきり同じ内装をしている。
大きくとられた窓からは、朝の柔らかい光が燦々と差し込み、
とても心地の良い暖かさを感じるだろう。
部屋の真ん中には丸いラグが敷かれており、
その上には子供時代の東と西の姿があった。
彼らはラグの上に座り、何やら雑談をしているようだった。
近付いてもあなた達に反応することはないし、
それらに触れることもできない。
どうやら彼らに、こちらは見えていないらしい。
---
東さん「僕の貴重なショタ時代が...!」
西さん「(見方次第じゃロリに見えますよ)」
東さん「ちょっと西くーん?何いってんのー?」
西さん「(俺にそういう趣味はないので大丈夫です)」
東さん「というかこれ、何話しているのか聞けたりしない?」
A先生「聞けますよ、聞き耳使います?」
東さん「じゃあ西くんお願い」
西さん「(了解です)」
ダイスロール:15 成功
---
子供時代のふたりは、ひどく他愛ない会話をしている。
それは日常の一部分を切り取ったようなもので、
話している内容に違和感などはなかった。
「昨日の晩御飯、家族でレストランに行ったんだ。
ハンバーグ美味しかったよ」
「...うん......」
「テスト100点取ったご褒美だって、デザートも食べれたんだ」
「...うん......」
「あ、そうだ。今度一緒に宿題しよう。
算数で分からないところがあって」
「...うん......」
このような具合で、会話を聞いていればすぐに、
幼い東は相槌を打っているだけで、ほとんど喋っていないことに気が付く。
その会話に、得体のしれない違和感を感じた。
そしてその直後、先程あなた達が入ってきた扉の向こうから、
テレビでニュースを読み上げる声が聞こえてきた。
『先週起きた行方不明事件、児童1名の安全は確認されたものの、
もうひとりの行方はいまだに分かっておりません。
警察では、引き続き目撃情報を募集しております。
行方不明になった児童の、西マツロくん10歳。
西マツロくん10歳です、お心当たりのある方は、警察までご連絡を』
それは、西が行方不明になっていることを告げるニュースだった。
---
A先生「さてここでSAN値チェックのお時間です」
東さん「じゃあまず僕から」
ダイスロール:68 失敗
SAN値:1減少 残り59
東さん「なんで失敗!?このダイス腐ってるよ!」
西さん「(では次は私が)」
ダイスロール:42 成功
---
ニュースの音声が一巡し、繰り返し始めると同時に
室内が激しい縦揺れを起こす。
壁はミシミシと軋みを上げ、天井からはパラパラと
破片が床に落ちていった。
それは、わずか数秒の揺れであった。
揺れが収まり、ふたりが身を起こすと、
室内の様子が一変していることに気がつく。
暖かい印象を受けた室内は今や薄暗く、
大きく開かれていた窓には、段ボールとガムテープによって
目張りがされている。
床や家具などは、まるで物取りでも入ったかのように荒れ、
散らかり放題といったさまであった。
日差しも差し込まず、明かりもついていない部屋の
真ん中には子供がひとり、へたり込むようにして床に座っている。
彼の眼の前には、無機質な金属の箱がひとつ、
ぽつんと佇んでいた。それは先程リビングダイニングで目撃した、
あの金庫によく似ているようだ。
彼は、うわ言のように何かをつぶやく。
時折力なく、楽しげに笑いながら。
まるで、親しい友人と会話をするかのように、
目前の箱に向かって話しかけている。
胡乱な目をしたその子供は、幼い東であった。
痩せこけ、虚ろな表情をした幼い東が呟く言葉は
先程ここで幼いふたりが交わしていた会話と、全く同じ内容だ。
ただ、相槌を打つものはいない。
あなたが耳を澄ますと、時折箱の中から
なにかうめき声のようなものが聞こえることに気がついた。
---
A先生「聞き耳お願いします」
西さん「(では私から)」
ダイスロール:21 成功
東さん「僕はどうかな」
西さん「(絶対失敗しますよ)」
ダイスロール:2 クリティカル
東さん「ここで出た!」
西さん「(有用な情報が手に入るかもしれませんね)」
---
箱の中から、声が聞こえてくる。
「開けて」「苦しい」「助けて」「家に帰りたい」という、
苦しげに助けを求める声だということに気がついた。
それは何か、質の悪いスピーカーを通したような
幼い子供の声だった。時折ゴポゴポと、口から泡を吹くような
水が泡立つような音が混じっている。
東は気がついた。それが、幼い頃の自分の声であると。
---
A先生「SAN値チェックお願いします」
東さん「えぇ、また?」
A先生「文句言わないで」
東さん「はいはい...」
ダイスロール:50 成功
A先生「さらに東さんは思い出します。あなたはその光景に見覚えがない。
西の家で遊ぶことは多々あったはずだが、箱に向かって
話しかけるようなことなど、なかったはずです。
あそこに座っているのは、本当に自分でしょうか?」
東さん「それについてはいささか疑問を感じるよね...
なんか、僕っぽくない気がするんだ」
西さん「(それは俺も思ってました)」
A先生「対して西さんですが、あなたはその光景に見覚えがある。
あの会話をしたのは自分で、相槌を打っていたのが
東であったはずだ。あなたは床にへたり込む
幼い東に対して、”これは自分なんじゃないか”という
疑念を抱くでしょう」
西さん「(どういうことなんでしょう、これは)」
東さん「さあ、まだ分からないけど...」
A先生「あなた達が呆然としていると、箱の蓋が軋みを上げながら
わずかに開く。幼い東は意にも介さず話し続けており、
金属製の重苦しい蓋はキィキィと僅かに揺れているばかりでした」
探索者「「まずいまずいまずい」」
西さん「(これ何が出てくるんです)」
東さん「SAN値チェックは嫌だー!!SAN値チェックはもう嫌だー!!」
西さん「(蓋を抑え込んで出てこないようにはできますか?)」
A先生「いいえ、その金庫に実体はありません」
西さん「(らしいですが)」
東さん「SAN値チェックはもう嫌なんだ...」
A先生「あなた達が箱に近づくと」
探索者「「近付きません」」
A先生「近付くと、まるで弾かれるようにして
金属製の蓋が勢いよく開くでしょう」
東さん「あーあ絶対神話生物じゃん」
西先生「(私ももうSAN値チェック嫌なんですけど)」
---
中からひとつの影が飛び出す。
それは、大きな虫のような何かであった。
甲殻で覆われた桃色の身体から、関節肢を持つ
いくつかの足が生えている。
両腕と思わしき関節肢の先端には、蟹のハサミによく似た
形状の手が生え、生物であれば本来頭部があるべき部位は、
桃色の渦巻く触手で覆われていた。
その背に生えている、虫の羽によく似た膜状の双翼を羽ばたかせ、
その生物はあなたに向けて飛びかかってくるだろう。
しかし、その生き物はあなたの身体を通り抜け
いつの間にか開いていた扉の外へと飛び立っていってしまった。
---
A先生「SAN値チェックですよー」
東さん「嫌だぁ!!!!もうSAN値チェックは嫌だ!!!!」
西さん「(しかも神話生物相手なので1d6ですかね)」
東さん「ああ、それは私が最も苦手とする単語です」
西さん「(Google翻訳とか使ってます?)」
A先生「ということでダイスロールどうぞ」
東さん「はいはい...」
ダイスロール:16 成功
東さん「うわぁ助かった!!!」
西さん「(ちっ面白くないですね)」
東さん「チミが失敗したら面白くなると思うんだ」
西さん「(人の失敗を面白がるとか、どんな神経してるんです?)」
東さん「ちょっと待って、向こうからでっかいブーメラン来てるよ」
西さん「(では俺の運命力見せてあげましょう)」
ダイスロール:42 成功
東さん「え?」
西さん「はい?」
東さん「いや...なんかここで成功しちゃうのってさ...
どうなの?失敗する流れじゃんこれは」
西さん「(そんなのダイスに聞いてみてくださいよ)」
A先生「じゃあシナリオ進めるので静かにしてくださいね」
---
それは、円筒状の金属物質であった。
床に落ちた円筒体は、コロコロと転がり、
あなたの足元でその運動を停止させるだろう。
そこから、声が聞こえる。
それは幼い東の声であった。
質の悪いスピーカーを通したような
泡混じりの声が、円筒体から発せられている。
「苦しい」「出して」「助けて」「誰か」
あなた達はそんな声を聞いているうちに、気を失ってしまうだろう。
次に目覚めると、そこは相変わらず子供部屋の中であった。
だがそこには幼い東の姿も、金庫も、あの円筒体も存在しない。
ただ何もない廃墟のような、伽藍堂の部屋があるだけだった。
---
東さん「そういえばすぐ聞き耳使っちゃったせいで調べれなかったんだけど、
窓の外を覗いてみていい?絶対何かあったでしょ?」
A先生「重要なのありましたよ、誘導忘れていました」
東さん「チミの誘導下手くそだからいいよ」
A先生「ではあなた達は窓の外を覗いてみました」
---
あなたが窓に近づくと、暖かな陽射しが目を包みこんだ。
それは、少し切なさにも似た夕暮れの陽射しだった。
外の風景は見慣れた町並みではなく、
どこかの山のような、牧歌的な風景が広がっている。
空は薄暗く、日が落ち始めていた。
そして少し向こうの開けた草むらの上に、
子どもが二人座っていた。
ふたりはなにか会話をしながら、地面に穴を掘って
クッキーの缶を埋めようとしているようであった。
そうしてふたりで、それを土の中へと埋めた。
程なく、ふたりの背後からひとりの女が歩み寄ってきた。
その女は片目を髪で隠しており、近くには目のようなオブジェクトが
ふわふわと浮遊していた。
女はぎこちない足取りで幼いふたりに近づくと、
何やら声をかけている様子だった。
そして、ポケットからひとつの石を取り出した。
幼いふたりはその後、女と二言三言交わした後、
歩いていく女の後を追って、山の中へと姿を消してしまった。
---
A先生「ではおふたりとも目星ダイスロールお願いします」
東さん「じゃあ僕から!」
ダイスロール:3 クリティカル
東さん「やったぁクリティカル!!」
西さん「(ダイスに細工なんて、汚い真似しますね)」
東さん「チミは僕のことなんだと思っているの?」
西さん「(では私も振ります)」
ダイスロール:5 クリティカル
東さん「おっとこりゃ汚いw」
西さん「(はっ倒しますよ。俺のこと何だと思っているんです?)」
東さん「だからブーメランフルスイングしすぎだって」
---
ふたりは少し向こうへ目線をやってる。
すると、すっかり日も落ち暗くなった山の向こうで、
一筋の人工的な光が、いびつな動きで空を飛び立ったのを目撃した。
あなたたちは、窓の外で繰り広げられた光景に
見覚えがあることを思い出した。
どうしてか今の今まで忘れていたが、
そういえば写真を撮ったあの日、ふたりで裏山に
タイムカプセルを埋めに行ったのだった。
そのために山を登る途中、綺麗な石を拾った。
東はその石を持ち帰り、西はその石をタイムカプセルに入れて、
大人になってそれを掘り出したとき、
お揃いのアクセサリーを作ろう、なんて話していたはずだ。
そのとき、あの妙な女に出会った。
女は言った。
「そういう綺麗な石が、向こうにたくさんありましたよ。
案内してあげましょう」
幼い東と西は、その言葉にまんまと騙されて
喜んで着いていってしまったのだ。
そのあと、何があったのか。
どうやって家に帰ったのか、全く思い出すことができない。
考えれば考えるほどに、ひどい頭痛に苛まれた。
---
A先生「SAN値チェック入りますよ」
東さん「また!?もう嫌なんだけど!」!
西さん「(では今回は私が先に振りましょう)」
A先生「どうぞ」
ダイスロール:75 成功
西さん「(ギリギリでしたね)」
東さん「いやすごいギリギリだね、1個でも多かったら失敗だったよ」
西さん「(でも成功したので結果オーライですよ)」
東さん「確かにね?じゃあ僕も成功させるよ」
ダイスロール:39 成功
西さん「...ちっ」
東さん「おっとお行儀悪い」
A先生「では続けてアイデアロールもお願いします」
ダイスロール:90 失敗
ダイスロール:41 成功
A先生「では東さんは思い出しました。
近くあの女性を見たことがあります、どこだったかまでは
思い出すことはできません」
東さん「うーん、僕あの女性見たことあるよ」
西さん「(奇遇ですね、私もです)」
A先生「あれは北先生じゃありません(圧)」
西さん「(あ、はい...)」
東さん「西くんはどう?見覚えある?」
西さん「(あの光景を見るに、1回は会ったことがあるのでしょうけど。
昔のことだからか、あまり覚えていませんよ...
確かに、見覚えがある気はしますけど)」
東さん「まあそうだよねー、10年以上前のことなんて」
西さん「(逆に、あなたはよく覚えていましたね)」
東さん「A先生、これって”近く”って言っているけど、
最近会った覚えがあるってこと?」
A先生「そうですね、あなたは最近あの女性に会った覚えがあります」
東さん「えー?どこでだろうね。宝くじ売り場かな」
西さん「(あの女性宝くじ売り場に閉じ込められてる人なんですか?)」
東さん「あまりあの状態を閉じ込められてるって言わないよね...あれ?
確かにあそこってどこから出るの?」
西さん「(怖いですね)」
A先生「それで、ここからどうします?」
東さん「とりあえず、まだ調べられてない僕の部屋を調べに行こうよ」
西さん「(そうですね)」
A先生「では、あなた方は東さんの部屋に向かうため、
一度リビングに戻りました」
東さん「あれ、無理やりリビングの描写入れられた」
西さん「(何かありそうですね?)」
A先生「そして、西さんは部屋を出るときに気が付きました。
窓の反射で写った自分の顔が、一瞬東のものになったいたことを」
西さん「(気持ち悪いですね)」
東さん「ナチュラル暴言に僕のSAN値減少」
A先生「では1d10お願いします」
東さん「冗談ですやん!!」
西さん「(1d10とかこの世の終わりですかね)」
---
部屋の内部の様子が、更に変化していた。
薄汚れている程度の印象であった室内は、
今や廃屋のように至るところが劣化し、壁や天井には薄いヒビが入っている。
あなた達が床を踏むたびに、乾いたフローリングは
ギチギチと不愉快な音を出してたわみ、
ともすれば、崩壊してしまいそうな印象を受けた。
---
東さん「まーた劣化進んでるね」
西さん「(ですね)」
東さん「劣化進んでる...劣化...レッカ...ケッカ...
そぉれぇ!!!!僕の名前はケッカだ!!!!!」
西さん「(カスのゴー☆ジャスみたいなのやめてください)」
東さん「これ...まだ助かる?まだ助かる...マダガスカル...
そぉれぇ!!!!ここ!!!!!マダガスカル!!!!!」
西さん「(はっ倒しますよ)」
A先生「www」
西さん「(KPツボんないでください)」
東さん「じゃあ冗談もそこそこに」
西さん「(お前が始めたんだろ)」
東さん「あれ?あの生き残りたければ...とか書いてる紙、
なんかびっしり文章追加されてるよ?」
西さん「(えっ?ああ、本当ですね。包丁も添えられてますよ)」
東さん「そろそろ、どっちか殺さないといけないのかな...」
---
机の上に置かれた紙に書かれていた内容は、こういうものだった。
東の名前と、昨日の日付が記載されている。
更に、担当医の欄には知らない女性の名前が記されてある。
症状と書かれた欄には、頭痛・記憶の混濁
解離性同一性障害の疑いあり・脳に甚大な損傷の疑いあり
後日精密検査を行う...そう記されていた。
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東さん「あらら...僕なんかヤバい状態みたい」
西さん「(ヤバいとかの領域を超えている気がするんですけど...
今日精密検査の予定だったんですか?)」
東さん「ああ...今思い出したよ。そうだった。早く行かなくちゃなのに、
家がこんな状態じゃどうにもならないかな」
西さん「(なら、早くここから出なければ。
まだ調べていない、あんたの部屋をさっさと調べましょう)」
東さん「うん、そうだね...ありがとう」
A先生「では、東さんの部屋に向かいますか?」
東さん「うん。行こうか」
西さん「(ですね)」
A先生「では、東さんが先に部屋に入りました。
すると扉が閉まり、開かなくなってしまいます」
西さん「...え?」
西さん「東さん聞こえます!?ちょ、なんで扉が
蹴破ります!思い切り蹴破ります!!」
A先生「びくともしません。玄関の扉と同じです」
西さん「東さん!?返事をしてください!!」
A先生「返事は返ってきません。完全に外界から遮断されている感じです」
西さん「...」
A先生「では、どうしますか」
西さん「(なら、水場を調べに行こうと思います。
今思えば、あまり調べていませんでしたし)」
A先生「了解しました。では、東さんの描写からやっていきます
次に、西さんの描写を行います」
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扉を開けると、そこはいつか東が訪れた病院の
診察室になっていた。東の部屋の扉はちょうど、
待合室から診察室へと入室するための扉に置き換わっているようだ。
こじんまりとした診察室の中には、患者が座るべき丸椅子と
医者が座る椅子が、向かい合わせに置かれている。
周囲の器具や壁に触れることができず、
まるで幽霊のように通り抜けてしまう。
東が丸椅子に座ると、程なく白衣を着た医者らしい女が現れる。
それは間違いなく、あなたが以前診察を受けた医者なのだが、
その顔にはなにかモヤのようなものがかかり、しっかり見ることができない。
医者は入室すると、東の向かいの椅子に腰掛け、
そのまま東に向かって話し始めた。
「東さん、診察の結果が出ました」
「驚かずに聞いてくださいね」
「あなたには、解離性同一性障害、
いわゆる多重人格症の疑いがあります」
東はその一言で、それが先日訪れた診察室での
追体験であることに気がつくだろう。
「あなたがお話してくださった、ルームメイトの西さんですが...」
「彼は既に、亡くなっておられます」
「あなた方が10歳の頃、行方不明になってから戻られていないのです」
「おそらくあなたはそのショックから、西さんの人格を...
あなたの中に、作り上げてしまったのでしょう」
「あなたは、あなた達はそのことに気付かないまま、
今日まで互いが互いを、存在しているものであると認識して生きてきたのでしょう」
「そのせいで、あなたの脳には甚大な負担がかかってしまっているようなのです」
「おっしゃっていた頭痛ですとか、記憶の混濁ですとか。
そういった症状は、おそらく今日までふたり分の人生を処理してきた脳に
限界がきてしまったために、現れた症状でしょう」
「そのまま放っておけば症状は進み、あなたという人格は
消えてなくなってしまうかもしれません」
「これ以上、そのお体でふたり分の人生を処理することは不可能です」
「大変申し上げにくいことですが...」
「どちらかの人格を、消さなければ」
「あなたも、彼も、どちらも消えてしまうことになるでしょう」
「近く、あなたは潜在意識の中で西さんに会うことがあるかもしれません」
「その時が、おふたりで話し合える最後になるかもしれない」
「あなたが、あなたとして生き続けたいのであれば
...無慈悲なことを申し上げますが」
「あなたの中の西さんを、殺してしまう他ないでしょう」
東はこのとき、医者に向かってなんと言ったのか、思い出すことはできない。
怒ったのか、泣いたのか、叫んだのか。
その記憶は定かではないが...
今感じている感情と、おおよそ同じことを考えていたに違いない。
「あなたが、あなたがそれでも」
「あなたと西さんが、どちらも消えてしまうことが分かっていても、
それでもふたりで生きたいというのであれば」
「すべての事実を伝え、双方が納得することが大切です」
「相互に理解をすることで、脳への負担はわずかですが軽減されるでしょう」
「ですが、忘れないでください」
「ふたりで生き続ければ、あなた達は間違いなく...
遠からず、おふたりとも消えてしまいます」
「これは決して避けられない事実です」
「私からお伝えできることは、これで以上になります。
もう少し早く、病院に訪れてくださっていれば、
処置のしようもあったのですが......誠に、申し訳ございません」
医者はそういって頭を下げ、椅子から立ち上がり
扉の外へと消えていってしまった。
呼び止めようとしても、あなたの手は
医者の身体をすり抜けてしまい、掴めることはなかった。
---
A先生「ということで、自分たちの境遇を知ってしまったあなたは
SAN値チェックをしてください」
東さん「なるほどね?またSAN値チェックか...」
ダイスロール:61 失敗
SAN値:3減少 残り56
東さん「ああ...なんか、現実って重いよね」
東さん「重くのしかかってきて、下ろすことなんてできない
ただ気を紛らわせて、重くないと錯覚することしかできない」
東さん「なるほど、そういうことだったのか」
東さん「なるほど...ね......」
---
扉を開けると、中は見覚えのない無機質な部屋になっていた。
足元に敷き詰められた緑色のタイル以外は、部屋に立ち込める
異様な闇のせいで、入口から室内すべてを視認することはできない。
西が室内に一歩足を踏み入れると、すぐさま視界が暗転し、
その場に倒れ込んでしまった。
遠くで、部屋の扉が閉まる音だけが西の耳に届いた。
程なく、まぶた越しにさえ分かるほどの
鋭い光にあてられ目を覚ました。
西は見慣れぬ手術台の上に横たわっており、
その目を刺した光の正体は、手術台についた照明だったようだ。
周囲には生臭く、鉄臭い、湿気を帯びた嫌な臭気が漂っている。
西はその身を起こしたところで気がつくだろう。
自分の身体が、幼い子供の姿に縮んでしまっている。
手術台の脇に置かれた、金属製のワゴンに映りこむ西の姿は、
幼い東の姿になっていた。
割れるような頭痛に頭を触れば、その指先には
ぬるりとした赤い血液が付着する。
西は、この光景に見覚えがある。
幼い頃、この光景を目撃したことがあるはずだ。
そこで西は気がついた。
これが、幼い日の追体験であることに。
幼い東の姿をした身体は制御が効かず、ただその身体の中から
かつての記憶を目撃しているにすぎないようであった。
周囲を見渡せば、西が眠っていた手術台の横に
もう一台手術台が置かれているようだ。
そこに、もうひとり、誰かが眠っている。
恐る恐る近寄れば、それは幼い日の自分であることに気がついた。
力なくだらりと垂れた腕、見開かれた目、血の気の引いた皮膚。
そしてぽっかりと穴の開いた、頭部。
幼い自分の頭蓋は無惨にも割り開かれ、その内部にあったはずの脳髄が
すっかり取り除かれてしまっていた。
確認するまでもなく、気がついてしまった。
そこにいる幼い自分が、もうすでに生きてはいないことに。
程なく、手術室の奥からいくつかの足音と、
虫が羽ばたく羽の音が聞こえてくるだろう。
女のふわふわとしていて甘ったるく、
本心を読めないひどく不明瞭な声が聞こえてきた。
「ああ、片方は死んでしまいました。やはり幼すぎましたか?」
「ひとり生き残っている、それで充分でしょう」
「しかし、現れたのは脳の人格なんでしょう。実験は成功では?」
「それはそうですが、成長によって変化が起こるかもしれません」
「まだまだ観察しなければならないのですよ」
女は誰かと話をしながら、西の方へと歩み寄った。
そこに現れたのは、片目を髪で隠した女性...いや、少女であった。
彼女は西が起き上がっていることを確認すると、
恍惚とした愉悦の笑みを浮かべながら、西に語りかけた。
「おはようございます西マツロ、あなたが無事で何よりです」
「安心してくださいね、あなたはきちんと家に返しますから」
「そうだ、ご友人もお返ししますね」
「入れる予定だった身体が死んでしまったので、
代わりの入れ物に入れたんです。会話くらいはできると思いますよ」
そう言って少女は、西に向かって金属製の
大きな円筒を差し出してきた。
円筒状態の物体からは、ゴポゴポと泡立つような
水の音に合わせて、人のうめき声のようなものが聞こえてくる。
それは、「苦しい」「助けて」「出して」と懇願する、
幼い東の声であった。
その後気づいたときには、西はタイムカプセルを埋めに訪れた
裏山に立ちすくんでいた。どうやってそこまで戻ってきたのかは
定かではなく、その後すぐさま周囲を捜索していた警察に発見され、
保護されるに至った。
その手に、銀色の円筒体を抱えて。
幼い日の西は、自らの身に起きた出来事を理解することができず、
またそのあまりにも残酷な現実を直視することもできず、
その記憶を、封印してしまっていたようだ。
家に帰った西は、持たされた円筒体そのものを
東だと思いこむようになった。
そこに東が存在していると、思い込むようにしていたのだ。
毎日、毎日、その円筒体と会話をしていた西であったが、
日が経つにつれ、その円筒体から発せられる声は弱々しくなっていった。
その頃、西の中には東の人格が形成され始めていた。
幼い西は、自らの中に生まれた友人の人格を、
本物の友人だと錯覚するようになっていった。
そうして友人の代替品であったあの円筒体を、
そのすべての記憶と共に家にあった金庫に閉じ込め、鍵をかけた。
気がつけば、西は薄暗い診察室の椅子に座っていた。
そこは最近訪れたことのあるような、見覚えのある診察室であった。
目前の椅子には、片目を髪で隠した女が、ひとり向かい合うように座っている。
それはあの日、あの手術台で西に笑いかけた女であった。
「お久しぶりですね西マツロ。元気そうで何よりです」
「あなた達のおかげで、我々の研究は一歩前進しましたよ」
「ご協力感謝いたします」
「我々は、私は。人の心について研究をしているんですよ」
「それは長らく、人の脳に宿るものだと考えられていましたが、
実際のところはそれが事実なのか、判明していないんですよ」
「だから、試すことにしたんです。人間ふたりの脳を入れ替えて、
その身体に現れる人格がどちらになるのかを」
「結果、その身体に現れた人格はあなただったわけですが...
時間とともに変化することも、あるのかと思いまして。
しばらく様子を見させてもらっていたんですよ」
「するとどうでしょう。あなたの中には、失われたはずの
東ケッカの人格が形成されました」
「それがその身体に宿った記憶から生まれたものなのか、
それともあなたが作り出した偽物の人格かどうかについては、
結局わからずじまいですが...これはすごい発見なんですよ」
「これで、次の実験に進むことができます。
あなたには感謝していますよ、西マツロ。いや、東ケッカなんですか?」
「近頃は、東ケッカとしての人格が強くなってきているようですね」
「長く持ったほうでしたが、もうその脳も限界のようです」
「人間の矮小な脳では、ふたり分の人生を処理しきれなかったようですね」
「損傷が激しいです。程なくあなた達の人格は、
ふたつとも消えてしまうでしょう」
「回避するには、どちらかの人格を殺してしまう他ないでしょうね。
勿体ない話ではありますが...」
「そのままふたり分の人格を、その入れ物に入れておくことは不可能です」
「近く、あなた方の脳が崩壊する直前に、潜在意識の中で
東ケッカと会うことができるかもしれません」
「そこで話し合うと良いでしょう。あなたと東ケッカ、どちらが残るのか」
「すべてが崩壊する前に、東ケッカを殺してしまうといいでしょう」
「それは元々あなたの脳なんですから、
あなたが生き残るべきだと、我々は思いますよ」
「それでも、ふたりで生きていたいのであれば...
よく話し合うことです。そのままの生活を続ければ、
間違いなくあなた方はふたりとも消えてしまいますが...」
「それでも互いがそれに同意するのであれば、わずかながら
崩壊の速度は抑えられるでしょう」
「ですが、そうするのであれば、決して今日思い出したことを
彼に話してはいけませんよ。知れば、東ケッカは消えてしまいますから」
「さあ、好きな未来を選んでください。
安心してください、今後あなたがどうなろうと、我々はもう関与しません」
「存分に残りの人生を謳歌するといいでしょう」
少女はそのまま、するりと扉の向こうに消えていった。
そこには、あなただけがポツリと取り残されてしまった。
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A先生「ということで、自分たちの境遇を知ってしまったあなたは
SAN値チェックをしてください」
西さん「............」
A先生「...泣いてます?」
西さん「(泣いてませんよぶっ飛ばしますよ)」
ダイスロール:43 成功
A先生「それでは、話し合いの時間です。
お互いの結末を、しっかり話し合って決めてください」
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西が水場の扉を開けて外に出ると、ほぼ同じタイミングで東も部屋から出てくる。
ふたりはいつものように、リビングの椅子に腰掛けた。
西さん「...すべて、思い出しました」
東さん「...僕も、同じような感じかな」
西さん「要するに、あんたは俺が生み出してしまった人格」
東さん「そうみたいだね。実に面白い!僕自身でさえ、
チミに生み出された人格だとは気づけていなかったよ」
西さん「...そして、どちらかしか出られないわけですが」
東さん「うん、どっちも出たとして...少ししか生きられない。
残っているのは、チミの身体なんだろう?」
西さん「はい」
東さん「ならチミが出るべきだ、西くん。
バンドのことは頼んだよ」
西さん「そんな...まるで思い出したかのようにバンドの設定引っ張ってきましたね」
東さん「いや忘れてたよ僕らバンドやってたって」
西さん「...ひとつ、提案があるんですけど」
東さん「ああそれ、多分僕も同じこと言うと思うよ」
「「一緒に死のう」」
西さん「あなたがいないのなら、俺が生きる意味はありませんよ」
東さん「おや、嬉しいね。僕もだよ」
西さん「俺...刃物になりそうなもの、見つけたんですよ」
東さん「...割れた鏡?ああ、チミはさっき水場に行っていたね」
西さん「そうです。俺はこれで、あんたは包丁で首掻っ切りましょう」
東さん「じゃあ、それで決まりね」
西さん「...東さん、あんたとの生活も、悪くなかったですよ」
東さん「うん、楽しかったね」
少しの静寂のあと、床に包丁が落ちた金属音と、
鏡の破片が床に落ち割れる音が響き渡った。
その後聞こえてくる、重みのある音。
喉を掻っ切り倒れ込んだふたりは、恐らくあの10歳の頃から何も変わっていない。
ただ一緒に、来年も再来年も、一緒に遊んでいたかった。
ただの子どもに過ぎなかった。
---
キルキルイキル
END
書きながらちょっと泣きました。
余韻がすごいですねこのシナリオは...
西さんが最後筆談じゃないのが、取り繕っていない
本心で話している感じが出てよかったと思っています。
淡本中キルキルイキルのFA大募集です。
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目次
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- 2......【淡本中学校:TRPGリプレイ前編】淡い命のもとを絶やさず
- 3......【淡本中学校:TRPGリプレイ中編】淡い命のもとを絶やさず
- 4......【淡本中学校:TRPGリプレイ前編】神々集うオーディション
- 5......【淡本中学校:TRPGリプレイ総集編】キルキルイキル