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目次
ショートケーキの女の子
バイト先の小さな喫茶店
そこに毎週来る女の子がいた
さらさらな白髪に赤目で色白な女の子
そんな見た目にショートケーキだけ食べて帰るからバイトのメンバーからは
ショートケーキの女の子
略してショーちゃんと呼ばれていた
そして今日もショーちゃんは店に来ていた
「いらっしゃいませ」
「ショートケーキを一つお願いします」
「かしこまりました」
そんな簡単な会話をして
その子は席に座る
必ず外が見える大きな窓の下の席に座るから
常連さんや店側の私達からすると定位置になっている
いつもならケーキを一つだけ食べて終わるけど今日は珍しい日だった
「お姉さん、すみませんがワインを一杯、いただいても?」
ワイン
いつもなら飲み物は頼まないのに珍しく頼んだから一瞬だけみんな固まった気がした
「お姉さん?」
「は、はい!赤で大丈夫ですか⁈」
わっと頭が動きだして声が大きくなる
そしたらふふっと柔らかい笑い声が聞こえて顔を見る
「えぇ、赤で大丈夫よ」
そう言われて足を動かす
キッチン担当の人に伝えると
「あのショーちゃんがワイン…似合いそうだな」
と思ってはいなかった返事が返ってきたが
確かに似合うなと思った
細かな白髪に鋭い赤目、ふわりとした白と黒を基調としたドレスに当たる窓から入る月明かり
月明かりを反射してきらきらと光るワインをゆっくり飲み込んでいく唇…え、何かのワンシーン?
そんな事を考えていると担当の人がワインを持ってきていた
ワインを持って持って行くとケーキはもう食べ終わっていてこちらを見つめていた
目が合って心をならしながらも席にワインをのせる
「ありがとう」
そういってワインを少し飲んだ
目に光が少し入り目が赤く光る幻が見えた気がした
珍しい日の次の週のまた次の週
ショーちゃんは席にいなかった
キッチン担当はなんか凹んでるし
店長は「癒しが…」ってなんかずっと呟いてるし
常連さんはすごい心配していた
でも心配なのは全員一緒だった
そんなある日の帰り、私は見覚えしかない白髪をみた
「え、ショーちゃん⁈」
と、そのまま口から出てしまい
気づいたのか振り返るとやっぱりショーちゃんで
「えっ、とお店のお姉さん?」
「え、あ!はい!」
「どうかしたの?」
「え、あーあーえーと…さ、最近!お店に来ないからもしかしてワイン口に合わなかったかなー!って思って、たまたま見かけたから…ご、ごめんね、本来ならお客さんのプライベートに口に出しちゃいけないんだけど…」
「…」
あー!やっちゃったよやっちゃった!すっごいぽかーんってしてるって私これやらかした⁈やっぱりあの時の口に合わなかったのかな⁈それともプライベートでいきなり話しかけちゃったのやっぱりやばかったかな
「お姉さん」
「は、はい!」
「ありがとうございます」
「え?」
「心配してくれたのでしょう?」
「はい…?」
「そうね、本来は言わないのだけど…少し、家に誘っても?」
「え、はい⁈」
来ちゃった…
え、まってショーちゃんの家すごい大きかったし豪邸だしなんかメイドさんもいっぱいいて…
やば…
語彙力が全部消えてる…
「ごめんなさいね、いきなり、紅茶でよかったかしら?」
「は、はい!」
「…本当にごめんなさいね」
「…?えっと…?」
「あれ以降行かなかったから心配してくれたのでしょう?」
「は、はい…たまたま見かけちゃったからつい…」
「…理由、知りたい?」
「え、…はい」
紅茶の入った高そうなカップを手に取ってショーちゃんは困ったような顔のまま微笑んだ
少しだけ、寂しそうにも見えた
「私は、吸血鬼の血が入っているの、だから夜しか外には出られないし…そもそもがほとんど外に出ちゃいけないの、怖がられてしまうから」
「吸血鬼…」
「えぇ、だけど週に一回だけ、外に出ていいってお母様に許可をもらえたの…ずっと気になってた店があったから」
「気になってた?でも外に出られないならわからないんじゃ…?」
「いいえ、お出かけはするのよ、車からは出られないけれど、その時窓から見えたケーキが美味しそうに見えて」
ショーちゃんは頬に手を当てて心底嬉しそうに微笑んだうっとりとして綺麗な瞳がもっと綺麗にみえた…目が赤なのは吸血鬼だから?でも、そのおかげでもっと綺麗に見えた
「だから貴女達のお店に週に一回行っていたの…でも、貴女達を見ていると美味しそうに見えてきてしまったの、貴女達みんな健康的ですごく血色がいいもの」
あー…まかないいっぱい食べてるしお店のルールで3食食べる事!みたいなルールあるから尚更…
「だから、あの時を最後にしようと思ったの」
「あの…という事は、血を飲めばまた、きてくれますか?」
「え?」
吸血鬼で、食べたくなってしまう事が理由なら
もう好きなだけ飲めば、満足すれば⁈みたいな気分で口から出た言葉にショーちゃんはとても戸惑っていた
「私の血、飲みませんか?別に飲んだら眷属になる、とかありませんよね?」
「え、えぇ…でも、いいの?」
「はい!その代わり、また今度お店に来てください!みんな待ってるので!」
「…」
その場のノリで思いっきり立ってしまって言った発言を思い返す…やばくね?こんな事言っちゃって流石に…
「なら、少し、もらっても?」
「…はい、どこから飲みますか?」
頑張って落ち着いて促す
するとベットの方への移動して手で誘ってきた
え…?
邪な心がある私からしたらベットへの手招きはすごくエロくみえて顔が赤くなった感覚がする
ショーちゃんはもう部屋着と思われる服に着替えているから尚更
「お姉さん?」
「は、はい!行きます!」
ベットはすごくふかふかで手が沈み込むような感じさえ思うほどで少し感動してしまった
ベットにもたれかかり服を少しずらす
「これで…大丈夫ですか?」
「えぇ…ありがとう」
ゆっくりとショーちゃんが近づいて心臓の音がうるさく聞こえる
首に小さな牙が当たる感覚がしてすぐにちくりといたんだと思うとそれ以降は何もなくて
血を飲む音だけが聞こえてきた
長く思える程の時間が経ってショーちゃんが離れる
「美味しい…」
そう呟いたショーちゃんはすごく煽情的で
もたれかかった私を押し倒すような姿で髪を耳にかけたまま少しだけ口から垂れる血と私を見つめる赤目がすごくそそられた
「ねぇ、お姉さん」
「はい…?」
「もっと、飲んでも?」
「はい、大丈夫ですよ」
そう言ってすぐまた首だと思って直そうとしていた手を降ろすとショーちゃんは思ってもいない場所に手を伸ばした
ショーちゃんは微笑んで私の足を開かせると履いていたスカートを少しずらして足に牙を立てた
慌てて少し暴れるとショーちゃんが口を離して
「暴れないで?いろんな所から飲みたいの」
そう言って小さく飲んだ場所にキスをして次は腕の袖を捲ってパクりと噛み付く
…なにこのエロ漫画⁈すっごいショーちゃんエロいってぇ…
脳みそが叫んでいる間も色んな場所から飲んではキスを落としていく
するとくらりとしてショーちゃんにもたれかかる
「あら…ごめんなさい、飲みすぎてしまったわね」
「いえ…」
「…貴女、一人暮らし?」
「はい…」
「なら、泊まっていって?そのまま帰れないでしょう?少し飲みすぎてしまったから…せめて跡が消えるまで」
「跡?」
少し高そうな鏡が向けられて見てみると噛まれた場所にはまるでキスマみたいに赤くなった跡があってまた顔が赤くなる
「どうする?」
「…泊まります」
そうしてショーちゃんの家に泊まって次の日、私は家に帰った
また次のバイトの日、久しぶりにショーちゃんがお店にやってきた
店長は喜び常連さんは微笑ましそうにして
珍しい程の暖かい空気になった
ショーちゃんは今日もショートケーキを注文していつもの席で食べている
注文の際にショーちゃんに
「また、飲ませて頂戴ね」
と耳打ちをされた事は私だけの秘密にしておく事にした
ドリームルーム
<「何ここ…」
「ゲームセンター?みたいな」>
えー…橘弓架、17歳
友達の礼那と一緒に変な空間にいます
ゲームセンターみたいなのになんか古そうだし
所々は錆びてるし色変色してるし
あまりにもおかしい!
なんか不協和音な童謡みたいなの流れてるし…
不気味すぎるでしょ!
<「とりあえず…た、探索する…?」
「そうだね…?」>
<「で、でも…普通のゲームセンターじゃない?」
「…あれ見ても?」>
指の先を見ると触ってない筈のクレーンゲーム機のガラスが割れて…ぬいぐるみが…立った
<「待ってまってまってこわいこわいこわいこわいこわい!」
私は礼那に抱きついて腕を力いっぱい掴んだ
「だ、大丈夫だよ!落ち着いて…」>
すると礼那の言葉に返すみたいにぬいぐるみが走ってくる
<「なまかまたかたやさはやはや」
「いやいやいやいや何その呪文⁈」>
そのまま礼那が手を引きながら走ってくれながらぬいぐるみから離れていく、意外と遅くて助かった感じが強かった
<「ぅ〜…ありがとう…」
「まぁまぁ…大丈夫?」>
<「うん!ほんとにありがとう…まじで神様ぁ…というか、なんでそんな余裕そうなのさ!」
「いやー…可愛かったし…」>
<「…まぁ、ぬいぐるみ好きだもんねぇ…礼那は」
そう、礼那は極度のぬいぐるみ大好き!
今まで何度私にクレーンゲームで取ったぬいぐるみを渡したり
ちょっと所々縫跡があるリサイクルショップで買ったやつお裾分けしてきたり…
ほんっとに大好きなのが丸わかり!
「とりあえず、ここから出たい?」>
<「そりゃそう!出口あったの?」
「多分?行ってみる?」>
<「うん!」
礼那が見つけた扉はめっちゃくちゃ目立つ!
とにかくカラフルだしなんか…レ◯みたいな…
<「え、ほんとにこれだよね?」
「うん、それとも行かないの?」>
<「え、いや…うん、い、いくよ!いく!」
渡った先は…無限ジャングルジム?
ネットのこんな感じのあったよね?
所々に穴が空いてて、下にいけるのかな?
<「穴の下いく?」
「そうだね、いこうか」>
2人で息を合わせて穴を見つけては落ちていく
何回も落ちてもあんまり終わりが見えないけど…
多分大丈夫かなって思いながら
カラフルなネットの穴の中にまた入る
穴を見つけては落ちる
穴を見つけて落ちる
穴を見つけては落ちる
穴を見`つ`けて落ちる
穴を見つけては落ちる
穴を見つけて落ちる
穴を見つけて落ちる
穴を見つけては落ちる
穴を見つけて落ちる
穴を見つけて落ちる
穴を見つけては落ちる
穴を見つけて落ちる
穴を見つけて落ちる
穴を見つけて落ちる
穴を見つけては落ちる
穴を見つけて落ちる
穴を
穴を
穴を
穴を
穴ヲ
穴を
穴を
あなを
…頭がおかしくなりそう
<「礼那」
「どうしたの?弓架、やっぱりきつい?」>
<「…うん、休憩したいかも」
「わかった、ここら辺で休もっか」>
一旦考えるのをやめて腰を下ろす
そこからは最近の話が始まった
<「そういえば最近、私達会えてなかったね…寂しかった?」
「そうだね、寂しかった」>
<「礼那のこと考えちゃってぬいぐるみ、家に増えちゃったから、ここでたらもらってくれる?」
「もちろん、弓架がくれるなんて珍しいね」>
<「まぁいつも礼那がくれてたもんね!」
「そうだね、いまも家にあるの?」>
<「もっちろん!…まぁ、あのリサイクルショップで買ったって言ってたやつはちょっとぼろぼろになっちゃったけど…」
「それでも、実家じゃなくて家に置いてくれてるだけ嬉しいよ」>
<「…あれ、言ってたっけ、一人暮らししたの」
「あぁ、友達から聞いたんだよ」>
<「そっか!ならいいかな?」
「そうだよ、だって私と会えてなかっただけでみんなとは会ってたでしょ?」>
<「うん、最近なんかほら、炭戸がさ」
「あいつ、フラれたんだってね」>
<「そう!そりゃああんな縛りつけてたら無理だよ!」
「縛りつける(物理)ね」>
<「そう!物理物理!」
「最近だと亜美も」>
<「そう!亜美っちも彼氏に捨てられたーって!」
「まぁ亜美ちゃんはいっぱいお金使うしね」>
<「将来の夢はお金持ちのお嫁さん!だっけ」
「そう、お、か、ね、も、ち、のお嫁さん」>
<「そうお金持ちが大事!」
2人で笑いあって笑い疲れるまで話をした
友達の話
家族の話
美味し `か`ったものの話
行きたい場所の話
最後にしたのは好きな人の話
<「ね、礼那」
「なに?弓架」>
<「好きな人、できた?」
「…相変わらず恋バナ好きだねぇ」>
<「できたの⁈」
「そーだね、いるよ」>
<「だれだれ⁈炭戸⁈」
「ない」>
<「じゃあ歩他⁈」
「いやよあんな歩く産業廃棄物みたいな変態」>
<「じゃあじゃあ埼村⁈」
「いいえ」>
<「えー…じゃあ、新しいお友達?」
「いいえ」>
<「…じゃあ、誰なの?」
礼那は何を言わずに微笑んだだけだった
「もうそろそろいこっか」>
<「…教えてくれないの?」
「大丈夫、いつかわかるよ」>
それだけ言って次の穴を潜る
それを追いかけていくとパッと新しい場所にでる
<「…綺麗」
そこはたくさんの花が咲いた広場みたいな場所で
周りには
頭が割れたり首に花が咲いた不気味だけど可愛らしいお人形と
パステルカラーの屋根のお家がたくさんたっていた
少し歩いていくと礼那が立っているのを見つけて堪らず抱きつく
<「礼那」
「どうしたの?弓架」>
礼那は綺麗な薄くて長い桃色の髪と赤と紫のグラデーションみたいに混じった瞳のタレ目の女の子
どうしても周りに広がる桃色の霧や流れている子守唄みたいな音楽で儚さに拍車がかかってしまう
<「…ううん」
「…大丈夫だよ、弓架、私は消えないから」>
礼那はそっと頭に手を置いて撫でてくれる
<「…大丈夫だよね?」
「うん、私が弓架みたいな可愛い子、置いてくわけないでしょ!」>
<「私、別に可愛くないよ⁈」
「可愛いよ!ふわふわの長めの黒髪も、くりくりなホリゾンブルーの目も!私よりも低くてぷにぷにな体も…私は大好きだよ」>
<「…そう?」
少しだけ笑った顔が怖くなって手を離す
前も、こんなだったっけ…
<「いこ、道なりでいけるかな?」
「うん、いけると思うよ?」>
広場の真ん中にできていた芝生のない土色の地面を無言のまま進む
所々に黒く滲んだ場所や芝生の中に埋まった人形の手足や目が血の色をしたぬいぐるみの頭が落ちていたりと進んだ分だけ不気味なものがでてくる
扉が見えるほど歩いた先、扉の後ろには大きなお家が見える
<「おっきい…家?」
「そうだね、大きい…綺麗な家」>
礼那の顔を見上げると目を細めて微笑んでいて
ゾッと鳥肌が立ったのかただ恐怖を感じたのかわからない感覚がして顔から血の気が引いて青くなる感じがした
「…ねぇ、弓架?」>
<「…な、に?」
「次はどんな場所だと思う?」>
<「え」
「ほら、どう思う?」>
<「え、えと」
「早く答えないと…あの子達、追いかけてきちゃうかも」>
そういって`ま`た微笑んだ瞬間
進んできた道の方からボコボコっと音が鳴って
振り返ると
道にいた人形やぬいぐるみが走ってくるのが見えた
** 騾?£縺ヲ騾?£縺ヲ騾?£縺ヲ騾?£縺ヲ縺薙%縺ッ莠コ髢薙?蝣エ謇?§繧?↑縺? 縺薙%縺ッ莠コ髢薙?蝣エ謇?§繧?↑縺?シ? 譌ゥ縺丞、悶↓蜃コ繧? 縺昴?螂ウ縺ッ縺セ縺ィ繧ゅ§繧?↑縺?シ?シ?**
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人形やぬいぐるみ達が口々に何かを喋りながら追いかける
それが怖くなって腰が抜けそうになると礼那に手を引かれて扉の先に行ってしまう
<「礼那…?」
「次は水の場所みたいだね」>
<「礼那!」
「…どうしたの?」>
<「さっきの…」
「あぁ、さっきの?気にしない方がいいよ」>
<「でも、でも…」
文字化けみたいな意味不明言語、その言葉の中で少しだけ聞こえた
「逃げろ」
「その女はまともじゃない」
…これが礼那の事だったら
私はどうすればいいんだろう
「気にしなくていいよ」>
<「…うん」
礼那の顔が目の前にきて咄嗟に離れてしまう
そっと手が伸ばされかけているのが見えたけど私はそれを気にしずに周りを見回すと
今度はたくさんの水に埋め尽くされた場所で
壁は真っ白で床はプールサイドみたいな場所と少し遠い場所には真っ黒な穴が空いた場所が見える
「見えないね、扉」>
<「…うん」
「歩く?」>
そう言われて2人で歩き出す
アラームのような音が鳴り響いて私達が歩いているから鳴る水の跳ねる音だけがなる
「ね、弓架」>
<「…どうしたの」
「ここから出たい?」>
<「え、うん…?」
「どうしても?」>
<「…なんで、そんなこと聞くの?」
「…なんでだと思う?」>
また目を細めて光が見`え`ない微笑みを見て
私は走り出した
パシャパシャ
パシャパシャ
パシャパシャ
1人分の水の音だけが聞こえる
礼那の音は聞こえない
気になって振り向くと
私の後ろには化け物がいた
<「ひっ…!きゃあああああああ!」
黒い手足に小さすぎる頭と骨のような胴体
焦げ`た`臭いがするその姿に私は混乱して走った
走って
走って
走って
走って
走って
走って
走って
走って
走って
走って
走って
走って
走って
走って
走って
走って
走って
走って
はしって
はしって`?`
はしって
はしって
はしって
はしって…
どこにも出口は見えない
礼那の姿さえも見当たらない
あるのは水と遠くに見える真っ白な壁
また走って走り続けて
自分の息の音さえも考えられなくなって
目の前がぼやけてきて
フラフラし始めた時
目の前には扉が見えた
扉があるのは
大きく空いた黒い穴の真ん中
その真ん中の上に浮いている
キィ…と音が鳴ってちらっとみえたのは近所の景色
これで、出れる…?
私はその扉に手を伸ばした
後ろから伸びた手に気付かずに
「見つけた」>
<「あ…礼、那?」
礼那の手に目は覆われて
伸ばそうとした手は後ろに捕らわれた
「ほら、帰ろっか」>
<「待って、やだ、やめて!」
薄らと手の隙間から見えた扉は
目の前で閉じて水の中に落ちていく
それを見た私は
どうしようもない絶望感と溜まった疲れでか
意識を失った
最後に見えた礼那の顔は
今まで見たことがない程美しく
ただ欲しいものが取れて喜んでいる子供に見えた
--- 高校生の女の子が行方不明となった事件は現在も行方を捜査しており… ---
「…今日も可愛いね、ゆーみか」>
「`縺、縺九∪縺医◆? `」
「うん、ありがとうね」>
青色ドレスの透け少女
「ねぇ、お姉さん手伝ってくれない?」
「…はい?」
メーデーメーデー、
足が透けてる女の子に手伝ってと言われた時
あなたはどうしますか?
私の答えは簡単、
逃げます
後ろを振り返らず走り出した私に
女の子は声をかけながら追いかけてくる
「待って待って待ってお姉さん!」
わーおこの子早ーいターボババアの子供ですか?
「待ちたくない待ちたくない!」
必死になって腕と足をフル回転させる
「っわたしの身体!見つけて欲しいの!」
そう叫ばれてピタッと体を止める
「見つける…?」
「そう!わたしの身体、ずっと、探してるの」
「どうゆうこと、地縛霊とかじゃないんでしょ?生き霊とか幽体離脱とかでも無さそうだし…」
「うん、わたしはもう死んでる、でも転生する為には身体をどうにかこの世から浄化してもらえないといけないの」
「浄化って…火葬とかってこと?」
「そう」
「…ちなみに、何年」
「2年、くらい」
つまりこの子は2年の間自分の身体を探してたっこと?2年も経ってればもう白骨化してるんじゃ…
「どんな風になっててもいい…見つけたい」
「…はぁ、いいよ」
「!いいの⁈」
「その代わり、時間は気をつけてね私これでも大学生だから」
「…大学生⁈見えない!」
そう言って口に手を当てた姿を見て少し睨みながら問いかける
「…何歳だと思ってたの」
「社会人、OL」
「お、喧嘩?」
「だってスーツじゃん!」
私は今日就職説明会に行ったばかりで新品のスーツを着ていた
「就活帰りですけどぉ⁈」
「あらま大変ね」
「他人事かい」
「だってもうわたしやることないもの」
「来世で就活苦労しろこの野郎」
「野郎は男だよ」
「このメスガキ」
「もうそれはちょっと違くない?」
「じゃあガキ」
「うん、もういいや…」
この後、そのまま流れで家にいくことになってしまった
「で、名前は?」
「高橋百合音、百合と音でゆりね」
「年齢」
「この状態になったのは12歳」
「その服装のは?」
「…わかんない、多分最期に着てたんだろうね」
百合音が着ていたのは足が見えない程長い明るめの青色のドレス、百合音は綺麗な黒髪と海みたいな青色の目を持っているから似合ってはいる
「…犯人が、着せたかな…まぁで、その状態になる前のこと、教えてよ」
「うん、どこからがいい?」
「えー…思い当たること全部」
「じゃあ、身体があるかもしれない場所っぽい所にきた所から…」
「はい?」
「?」
「いやいやいやいや、候補あるんじゃん!そこいけば見つかりそうじゃん!」
「それがね、わたしこの状態でも壁抜けできる訳じゃないし物触れないの」
「あー鍵かかってるってこと?」
「うん」
「じゃあ案内してくれればわかるくない?」
「…あの人が、生きてるかもしれないから」
「…犯人が?」
「…うん、だから、それも調べてほしくて」
ぎゅっと手を握って俯いた姿を見てつい手を握ってしまう
「…お姉さん?」
「わかった、お姉さんにまかせてよ」
おずおずと顔を上げた顔に対して微笑んで
話をしてもらうことにした
私は11歳の時に
親戚の人のお手伝いに行くことになって
その親戚の人は絵描きさんで
わたしをモデルにしたかったって教えてくれた
アトリエは森の奥
わたしの家の近所にある大きな森の中の奥
ほとんど外の音もしない
なんなら電気もかろうじてしか繋がらないし
携帯も電波がほぼ繋がらない
そんな場所
最初ら辺は椅子に座って
そのままだったりぬいぐるみもったり
果物食べたり本を読んだり
次は窓の近く
そのままで外を眺めたり
光に合わせてポーズを取ったり…色々
そんな風に、たっくさんお手伝いした
それが半年くらい経った頃に変わった
場所がベットになった
服脱がされたり髪を無理矢理切られたり
もっと細くなれって
ご飯抜かれて、外に置いてきぼり
時々のお母さん達が差し入れを持ってきてくれる時はくれた、差し入れのほんと一欠片だけど
それでも嬉しかったし
もう胃が小さくなっててそれだけでお腹いっぱいになれた
最後は何故か大切にされた
わたしの見た目をしたお人形がきて
いつも隣同士だったからちょっとだけ寂しさもなくなったし
綺麗な服ももらえた
この状態になってから知ったけど
それウェディングドレスだったみたい
大切にされた時期の最後は
わたしとお人形が隣同士で寝っ転がった姿
それを書いてる親戚の人の姿しか覚えてない
「だから多分、わたしの身体はそのアトリエの中」
そう話した百合音の顔は悲しさも見えたけど
明確にそうとは言えなかった
「…」
「お姉さん」
「…何?」
「これ聞いても、探してくれる?」
「うん」
「危なくても?」
「探すよ」
「…ほんとに」
「本当に、…そんなに信じれない?」
「ちがう、ただ…」
「そもそも話しかけたのは貴女だけど、了承したのは私、やるよ」
そう話したけど…
「なんでわたしも家にいるの…?」
いま私達は私の家の私の部屋にいます
「あのね、百合音ちゃん」
「うん」
「さすがに深夜に探すのは無理…」
そう、あの話をしていたのは近所の公園のベンチ
しかもその時の時間は夜8時頃
流石に難しい…!
「あー…」
「うん、百合音ちゃんは多分幽霊だから色々大丈夫だったと思うんだけど…私は…」
「捕まっちゃう…」
「そう…」
「でも、お母さんとかは?」
「ママはまだお仕事、夜勤だから」
「お父さんは?」
「バイト〜」
「ご飯とかは」
「お金はあるしちゃんと買ってきたよ…それとも食べる?…あ、というか食べれるの?」
「わかんない」
「うーん、一旦試そうか」
という事でキッチンに行ってレンジでチンしたお弁当を持って部屋に戻る
箸だともしかしたら食べれない時落としてしまったら危ないと思ってスプーンを一緒に持って行く
「はい、ハンバーグ弁当!あーん」
「あ、あー…ん」
差し出したスプーンの上に乗ったハンバーグの一部を百合音ちゃんの口が覆うと退けた時にはスプーンの上から消えていた
「…食べれたね、美味しい?」
「おいしい…」
嬉しそうに微笑んだ姿を見てどこか微笑ましくなる
「というか食べれたって事はさ…風呂とかも…」
「いやいやさすがに着替えれない…」
「いーや願ったらいけるね!ほらバスタオル巻き想像して!」
「えっえっ」
ぎゅっと手を握って願う
するとポンっと気の抜ける音がして目を開けると
百合音ちゃんの衣装がバスタオル巻きの状態になっている、バスタオルになった事で足元が見えるようになって足が透けている事で幽霊な事を再認識してしまう
「えぇ…ほんとにできるんだ」
「…以外とおむねあるね百合音ちゃん」
「え、セクハラ?」
「いやいや健全の目」
「うっそだぁ」
「ほら入ろ」
手には触れられないけれどちゃんと触れているみたいな演技をして引くと百合音ちゃんはついてきてくれてそのまま一緒に洗いっこをする
まぁ…実質フリではあるけど
でもやらないよりはいいかなって思って
お風呂から出たらまた服を変えて
ベットに2人で倒れ込む
「と、言う事で…物さわれましたな?百合音殿」
「まさか意識の問題とは…」
「これで食べれたし触れたし洗えたし着替えれた…あとは寝れるかだね!」
「う、うん…」
ちょっとだけテンションが下がってそうな百合音ちゃんに私は気づかぬまま眠る
「…お姉さん」
わたしは、幽霊
だから眠れない、わかってるよ
食べる事はできた、着替えることも
でもお風呂の時とかお姉さんは本当は無理なのにまるで本当にやってくれているみたいにしてくれて洗えていないはずなのに
物には影響ができる、人には影響がない
つまり物は触れても、人には触れない
たとえ物越しであっても
…本当は小さな望みだけで声かけたらこうなっちゃうなんて
「ありがとう」
わたしが髪を撫でてもお姉さんの髪は風のせいでしか動かなかった
「んー…ゆりねちゃん…?」
起きた時百合音ちゃんは近くにいなかった
今日はたしか…何も予定なかった筈
私が動き始めると百合音ちゃんがキッチンの方から飛んできた
「お姉さん、おはようございます」
「おはよう…どうしたの?」
「少しでもお礼がしたくて」
「何の?」
「色々の」
「…いいんだよ?」
「だって場所はわかってるんですから、あの人の今さえわかればもうすぐ見つけられる筈、ならお礼をするタイミングがないじゃないですか」
「まー…そーね」
百合音ちゃんが持ってきてくれたのはトースト
流石にレシピも何も知らない百合音ちゃんが作れるのはこれくらいだとなんか納得して
トーストを齧る
…あれ
「これ、チョコ挟んでる?」
「あ、うん、パンを半分にして板チョコ挟んでざくざくに焼きました!」
「…ありがとう、美味しい!」
いつも素のトーストにバターを塗ってるだけの私からしたらとっても嬉しくてついすぐ食べてしまう
最後にちょこちょこ飲んで残った牛乳をぐいっと一気飲み
「…っはぁ!」
「すごい飲み方…」
「こんなものこんなもの!」
「へー…」
「いやなんで引いてるのさ〜…ほら、調べるんでしょ?その親戚の人の名前覚えてない?」
「え、えーと…たしか、滝吉じぃさま…」
「…じぃさま…???まってそいつ何歳」
「わたしが覚えてるのは…たしか67…」
「はー…」
「…お、お姉さん…?」
「ジジィロリコンかよくたばれこらぁ!ロリコンショタコンはYESロリショタNoタッチが座右の銘だろ、ふざけんなぁ⁈」
「お姉さん⁈」
「それになんだこら、って事はそいつ幼気な子供に絵のモデルって言って服脱がしたり虐待したりウェディングドレス着せたってこと???は?」
「お姉さん⁈⁈」
「ふー…よし殺すぞ」
「ダメだよ⁈」
「いーやいやいやロリに手を出したロリコンは死すべきこれは世界の当たり前」
「違うよ⁈」
という事でやる気MAXになった私
調べました
…殺意が増しました
それは何故か!
「絵師とかうそじゃねぇかカス野郎…!」
「まさか嘘とは…」
そう、そのじいさん、絵師じゃなくてただの無職、元サラリーマンで自然が好きだっただけのただの無職のくそ!!!しかももう死んでますとか何??
え、地獄で10000000年間反省しろ??拷問でもされてろよこの××××××××野郎…!
「声に出てるよお姉さん…」
「あ、ごめんね」
という事で今私はアトリエの前にいます
え、急展開?
じいさんのクソキモ行動を調べる時間見たい??
いらないよねーはいはいわかってる
「…開けるよ」
「うん」
ぎぃぃと古い木の扉を開くとそこは
埃の匂いと共に腐臭が漂うシンプルな部屋だった
「うっ…」
「お姉さん…」
部屋の真ん中に置かれていた二つの椅子の上には
綺麗なままのウェディングドレスを着た百合音ちゃんの人形と
もう半分腐って白骨化した百合音ちゃんがブルーシートによってドレスを着たような風になっていた
もしこれを死体愛好家とかが見ていたのなら素晴らしいと讃えるのではないか、そう思う程
白骨化しかけながらもまだ整った顔の面影が残っていて髪もボロボロでもまだ少しの艶が残っている、ブルーシートの大きなドレスは今の幽霊体の百合音ちゃんの服ととても似ていた
窓から入る光のせいも相まって美しく見えてしまう
でも私はそれにやっぱり、やっぱり百合音ちゃんは死んでいるんだという確信と長い間放置されたことによる腐臭のせいで気分が悪くなってしまった
百合音ちゃんはゆっくり私に寄り添ってくれた
「…お姉さん、お願い」
そう寂しそうな目をした姿に私は
元々葬儀屋とかを呼ぶ準備はしていた
でもならばこの人形はどうなる?
壊される
それは嫌と思ってしまった
これは百合音ちゃんの最後のお友達だから
ポケットから調べる直前に買っておいたライターを取り出す
カチッと音がなって火がつく
「ごめんね」
せめて一緒に、罪なら私が全てもらうから
たった一日だけでもこんなに情が湧いてしまうなら
もしもっと前から知り合っていたら
もしかしたら一緒に…
2人で燃えていく小屋を見つめる
小屋が崩れたらすぐに周りに被害が行かないように周りの草や木をどうにか火が当たらないようになくす
本当は最初にするべきなのはわかっていたけど
忘れちゃってた…
小屋が燃えた事でできた煙が
お線香のあの煙に見えてそっと手を合わせる
完全に炭になったら残っている火を消していく
「…百合音ちゃん」
「…ごめんなさい、お姉さん」
「謝らないでよ、やったのは私だよ」
「だって、別によかったんですよお姉さんが燃やさなくても…」
「でもあの人形と一緒がよかったでしょ?」
「…、そう、ですけど」
「ならあれが一番いい…ほら、行こ」
「え?」
「あの煙で消防車呼ばれちゃってると思うから、バレないように帰ろ?」
「…はい」
段々と聞こえ始めた消防車の音に掻き消されないような声で百合音ちゃんを呼んで手を引いて走る
家についた、
私達はつくまで手を繋いでお互いに話さなかった
「…お姉さん」
「…なぁに?」
「わたし、もう、成仏、しちゃいます」
「…まぁ、だよね、よかったじゃん」
「だから…最後に名前教えてください」
「…私の?」
「はい、絶対わたし、来世もここに生まれてやります、…だからその時また会いましょ?」
「…ふーん言うねえ、いいよ、約束」
そっと2人で指切りの姿勢をとる
「私、坂井透架、また会いにきてよ百合音ちゃん」
「はい、遠架さん…また会いましょう!」
段々と消え始めた百合音ちゃんが消え終わる前に笑いながら2人で唱える
「指切りげんまん|私《わたし》達はまた会える!会えなかったら針千本!指きった!」
パッと離すと同時に百合音ちゃんの姿が消える
消えた後も私はまだ触れた指を見つめていた
文字数5647文字
【目指している賞】
キャラクター賞ですかね
ガチガチの一万以上文字作品じゃないので少し私にしては浅いキャラしてますが…
聖女のお友達
「…リーシャ」
「…シリュ⁈」
ここは聖女を産んだとして話題の中にある
とある村、学校はひとつ、家もみんな同じ見た目
そんな辺鄙な場所
そして私は元々聖女の友達、
色々あって目が片方見えないけど普通に暮らしてた
そしたら聖女になった筈の友達がいきなり帰ってきていた
「えーと…おかえり?」
「ただいまリーシャ!」
「あー…と、勇者様達は、ここへどうして…?」
そう、
聖女となった友達、シリュ・タリーナ・アミドールの後ろには世にも有名な勇者様達が立っていた
「…それが、シリュがどうしても友達に会いたい!と叫んでな」
「そうです、実は今回、魔王を倒した件で凱旋をする予定でしたが、どうしてもと」
「友人への心配が高いことは知っていたが、ここまでとは…」
「あー…なんかすみません」
困った顔をした勇者様、魔法使い様、タンク様に申し訳なくなって礼をすると私に抱きついていたシリュが声を上げる
「そりゃそうじゃない!リーシャいなければ私死んでたのよ⁈命の恩人よ⁈」
「まぁ、そうだが」
「うーん…」
「え、えと、何それ俺聞いてないよ…?」
「え?あれサリトアは」
「聞きましたよ」
「ダードラは?」
「聞いたな」
「…シンドーは」
「…聞いてない」
全員はぽかんとしている
そもそもそれぞれの身分的とかもあるから話せる時が無さそうとは思っていたけどまさか勇者様だけ知らないとは…
それぞれ、
魔法使いサリトア様は元聖職者
タンク役のダードラ様は冒険者
勇者シンドー様はそもそもこの世界の人ではなく召喚勇者である
本名はしんどうこうすけ
元々は元の世界ではこうこうせいで
学校の帰りに飛ばされてしまったらしい
それくらいは勇者パーティーの情報の常識
みんな知ってるくらいだ
「えーと、なんだろ…話す?私の家で」
「え、リーシャの家行っていいの⁈行きたい!」
ということでみんなを連れて家へ帰る
そんな聖女を産んだとはいえ栄えた村ではないここは家も基本的に同じ、
大きな部屋が一つだけで中に台所と机とベッドがあるだけの普通の家、お風呂は村のみんなで温泉に入るだけ
「変わんないね、リーシャ!」
「シリュは外出て何か変われた?」
「うーん、家がレンガしか見れなかったかな」
「まぁ街はね…?」
そうシリュと雑談に花を咲かせているとサリトア様から問いかけられる
「えっと…お話を、しても?」
「あ、ごめんサリトア!」
「すみません、サリトア様」
「と、とりあえず…どこから、聞きます?」
「最初からとかじゃだめか?」
「最初がわからんと思うが」
「えーと…別れる前とか?」
「なら守ってくれた時ね!…それとリーシャの目を片方使えなくした奴の命日」
「あ、もう死んだの?あいつ」
「えぇ、情報聞き出して殺したわ…
リーシャの綺麗な目を片方使えなくした野郎をいきながらえさせる意味なんてどこにもないでしょう?逆に生かしてまたリーシャの何かを奪う可能性は少しでもあるなら命奪ってしまってもう何も奪えないようにした方がいいでしょう????」
圧がすごい
うん、圧
「シリュ、落ち着いて」
「うん!」
「流石ですね…」
「まぁ、慣れてますから…それにシリュ、私の目は無くなっちゃったけどまだもう片方は無事だから気にしなくていいんだよ?」
「それでも片方はないじゃない!」
「…シリュ」
「…なに」
「目の片方と命、どっちが重い?」
「…命」
「でしょ?命があるだけ、素晴らしいことなの、…ね、聖女様ならわかるでしょ?」
「…そっちで呼ばないで」
「なら、言わないといけないことがあるよね」
「…ごめんなさい」
「何に?」
「騒いでごめんなさい、人の命のこと軽く扱ってごめんなさい」
しょぼんと凹んだシリュの頭を撫でる
「うん、正解、ほら話すよ〜」
「い、いやいやいやいや!」
「どうしました?シンドー様」
「…え?え?」
「シンドー、話聞いたらなんでこんなことなってるかわかりますから」
「あぁ、なんでこんな猛獣と猛獣使いなのかそれでわかるから、落ち着け」
「…えー…」
大きな音を鳴らして立ち上がったシンドー様をお二人が宥めて座らせた時、シリュが話始めた
「えーと、大体10年以上前だね、私が聖女だってわかってすぐ、教会にいく直前の日、私達はいつも集まってたこの村に一つだけの学校の屋根裏にいたの」
「シリュ!ほら上がっておいで」
「うん!」
いつも私達は屋根裏を秘密基地みたいにしてお話をしてた、そしたら下から
「タリーナ!逃げろ!」お父さんの騒ぐ声が聞こえてリーシャが下をのぞいてすぐ私に逃げる準備をさせたの
「リーシャ?」
「いいから早く!透盾!」
リーシャがドアの隙間とかにバリアを貼って近くに落ちてた物で窓を割って、
下からお父さんの悲鳴と知らない人の声がした
「なぁ…聖女サマはどこにいんだ?バリアまではって…賢いやつでもいんのかねぇ」
その人がバリアが貼られた扉を叩き始めたの
「…リーシャ、お父さんが」
「静かに、シリュ…いくよ」
ってリーシャに手を引かれて開けた窓から隣の屋根に飛び移って離れようとしたら矢が飛んできた
「なーに逃げてんだお前ら…見つけたぞ」
「…なんの用?そんなナイフまで持って」
「決まってんだろ聖女狩りだ、聖女なんていらねぇ、だから殺す」
「意味がわからない、言葉も拙くて…猿にでも育てられたの?」
「ちっ…さっさとそこを退け、そしたらお前は殺さないでやるよ」
「退くわけない、あんたこそ帰りなさい!」
「うざってぇな…てめぇ!」
すぐに戦闘が始まった、でもこっちは10歳になったばっかりの子供、あっちはもっと上の大人、決着は早くてリーシャの目の当たりが切られた瞬間に同時にお腹にもナイフが刺さってて血を吐いてリーシャが倒れた
当然私は叫んだしそいつは私に近づいてきた
…すぐ、助けられたけど多分そのままだったら私死んでたね
「…ちなみに誰が助けにきたんだ?その状況で」
「騎士さん達、私ができるだけここにいたいって言ってたから残ってくれてたの」
「…今でも、あの時心配したからね、リーシャ」
「まぁ…生きてるから、ね?」
「普通、あんな血が出てたら死んだと思うよ」
「そっかぁ…」
「呑気な返事ね…ちなみに、シンドーはわかったの?」
「へ?」
「猛獣と猛獣使いの理由」
「おーん…わからん!」
スパァン!ってめっちゃいい音を鳴らしてシンドー様の頭をサリトア様が殴る
「いってぇ⁈」
「さ、シリュ、目的は?」
「…!あー!忘れてた!リーシャに私のメイドになって欲しくて…」
「…はい?」
いきなりの発言に意味がわからなくて変な声が出て思考が止まる
「…ちなみに、結婚する気は…」
「しないよ?私する気ないから!」
「え、聖女って勇者と結婚するんじゃ」
「?なんで?シンドーはサリトアが好きじゃん」
「はぁ⁈」
「え⁈」
ぽっと出された言葉にシンドー様達は顔を真っ赤にして驚いている
「え、自覚なし?あんな守りあってお互い大切にしてたのに?最後の魔王戦の時洗脳されたシンドー助ける為にキスまでして⁈」
「えっまって何それ初耳シリュ詳しく」
「え、わわ…え?」
「え…???」
「カオスだな…」
初耳情報をシリュに聞こうとする私にずっと狼狽えてるお二人、そしてそれをみて腕組みをしてるダードラ様とカオスな状態だった
「ダードラも覚えてるでしょ?」
「あぁ、あれは大変だったな」
「洗脳って…あの、時だよな?俺がその前の村で魔王の手下に攫われたやつ」
「うん、あの時はきつかったわよ、うちの主戦力は敵にいくわ、私はサポート担当、ダードラは言わずもがな、サリトアは遠距離…一瞬の隙を作らなきゃってなって、結局サリトアがキスして驚いたタイミングで叩いたのよね…リーシャどうしたの?」
「推しの新エピで喜んでる」
「そんなブリッジするほどですか…?」
「推しグルの闇堕ちってみんな好きなのよ、そして王道展開も」
「何語なのリーシャ…」
「オタク語ね」
「へー…で、2人は結婚するの?多分国王に言ったら大騒ぎよ?」
「…さ、すがに早いかと…」
「あら、どうするか決めてないのはあと2人じゃない!国王からのお礼!私はリーシュの今の情報」
「俺は妻への支援だな」
「俺元の世界に帰るつもりだったんだが…」
「え、愛する人置いて?」
「…帰るの?シンドー」
「…サリトア、でもこれは元からの話で」
「嫌なら帰らなくてもいいって聞いたわよ」
「…」
「…シンドー」
「…なんだ、サリトア」
「私と付き合ってください」
「え」
「わおいきなり」
「付き合って、私と一緒にいてください、そうして理由を作ってください、この世界から貴方がいなくなるのは、耐えられない…!」
言い終わってすぐにサリトア様から涙が溢れ出して止まらなくなる
「…サリトア、でも俺は異世界人だ、いつ帰ることになるか」
「ならこの世界にいる間くらい、私に貴方の時間をください!帰っても私が忘れられないような思い出をください!……お願い、します」
「…シンドー…?ここまでサリトアが言ってるのに、断り続けるの?」
「だけど、そもそも…俺は」
「大事な人になったら死ぬかもと思ってるからか?シンドー」
「ダードラ⁈」
「言ってたもんな、聞いたのは俺だけだが…元の世界で火事で家族を亡くしてその時の親友は自殺、だったか?」
「…」
「安心しろ、シンドー…いざとなったら俺たちもいる、守ってやるよ、最年少?」
「……揶揄うなよ、ダードラ……サリトア」
「…なに…?」
「何かがあっても、一緒にいてくれるか?」
「…そんなの、決まってる!もちろん!」
シンドー様が伸ばした手を引いてサリトア様達が抱きつく
そして私は泣いた
「リーシャ⁈なんで泣いてるの⁈」
「オタクのサガ…」
「う、うん…ちなみにさっきの返答は?」
「メイド?いいよ」
「え、軽っ」
「シリュと一緒にいれるってだけでしょ?いいよ、守ったげる…今度は絶対やられない」
「…ありがと、リーシャ」
しゃがんだ私の肩にぽてんとシリュの頭が乗っかる
「もう、重いよ」
今回は珍しくあとがきがある、
さぁこれを見てくれてる人はどれくらいいるのでしょうか知りません
今回のやつ、実は夢でみた内容を一部組み込んでます
その覚えてる内容から色々拡大解釈をしました
夢では勇者なんて出てきませんし勇者パーティーメンバーもいません、
聖女ちゃんとお友達ちゃんだけです、強いて言えばあとは襲撃野郎とお父さん…
まぁ、夢ってなんでそんな内容になるのかよくわかってないんですよね
なんでこんな夢を見たのか…
まぁ、わかりませんがね!
アレキサンドライトのお願い
「…えぇ、だれ?」
「あ、拾ってください!人間です!」
「いやいやいやいや、人間ですじゃないのよ!」
私は魔界と人間界の狭間の空間に住む人外だ
種族名がないのはいろんなものが混ざってるから
元は悪魔、その後に鬼を喰い、人魚や天使さえも食べさせられ、結果はこんな紛い物
おそらくまだ食べてないのは人間くらい
「?人間です!拾ってください!」
「…あのね、ここは狭間、人間は入れない筈なんだけど」
「お母さんにここに置いてかれたので知らなかったです!」
めっちゃ元気よく返事するからちょっとよくわからない
「…これから吹雪くよ」
「え、じゃあ早く拾ってもらわないと!」
「…本気で言ってる?」
「はい…?」
「ここには大体魔界から追い出されたやつが多いの、拾われてもすぐ喰われるよ」
「…でも、私寒さに弱いんですよね、ちなみにどれくらい吹雪きます?」
「1週間、だからこんな買い込んでるの」
「……」
あ、凹んだ、ダンボールのなかで丸まって考え込んでるのが少し面白くてそれを見つめる
「!じゃあ、拾ってください!お兄さん!」
「お姉さんだ!!!」
思いっきり野菜が入った袋で頭を引っ叩く
「え、女の人⁈」
「悪かったな中性的で」
「胸もないしめっちゃマッチ棒なのに⁈」
「おっけー拾わない」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
「…料理できる?」
「いけます!洗濯料理掃除なんでもござれ!!」
「3食、衣食住保障付き」
「お願いします!」
ということで拾うことになりました
「ちなみに、なんで捨てられてたの?」
「あぁ、私がハーフだからですね」
「ハーフ?何との」
「宝石ですね、そのせいで寿命が短いんですよね〜」
「…ふーん、あとどれくらいなの?」
「大体1ヶ月ですかね?髪が宝石になっちゃったので」
どうやら宝石とのハーフは寿命が20年しかなくて
10歳で目、そこから段々と髪が宝石に変わり最後は肌が変わる、ということらしい
「…ちなみに名前は?」
「えー…そうですね、じゃあライトで」
「じゃあって何」
「覚えてないんですよー名前、だからライトで!」
「そう…」
「由来については変わってる宝石ですね!」
「へー…何なの?」
「アレキサンドライトです」
「だから色変わったのね」
この狭間の空間は時間の感覚がおかしい
夜であっても太陽が空を彩り平等に光を散らす
そんな太陽の下では青緑に光った髪と目は
今この部屋の中では赤紫に変わり別の光を見せている
「はい!結構綺麗じゃないです?」
「…まぁ、そうだね」
「あ!ご飯何がいいです?」
「その袋にあるやつで作って、色々あるから」
「はー、い?」
バっと袋を開けてライトが固まる
「どうしたの」
「えーと…これは」
袋から出されたのはこの狭間では定番の食べ物達
「それは悪魔の翼固め」
「…このなんかドロドロのは」
「人魚の臓物煮」
「…この炭みたいのは」
「鬼の角削り節」
「…人外食材ぃ…」
「当たり前でしょ…私キメラよ?」
「そうでした…も、もっと普通な…!ほら!このトマトみたいなのとか」
そっと取り出したのは真っ赤で丸いピッと皮が張った食べ物、でもそれは普通の野菜なんかじゃない
「それは天使の心臓球、高いわよ」
「変なのしかない⁈」
「ほら、どうするの?今からでも外出る?」
もう外では若干風と雪が窓から見える曇り空を彩りながら音を鳴らしている
「いや!!」
「じゃあお願い」
キッチンに袋を持って飛び込み悩む後ろ姿に
ふと疑問が浮かぶ
私はなんでも食べれるキメラ
だがライトに今の所一切の食欲が湧いていない
宝石なのは髪と目だけ、
肌もその内側の肉も何も変わらない筈なのに
その事を悩んでいると目の前にお皿を置かれる
「ふー…どうだ!」
「あら、早かったね」
「?もう20分経ってますよー」
「…ほんとだ、でこれは?」
「量産型天属生牛?のハンバーグです、まともなのこれくらいしかなくて…」
もじもじと指をこねる姿を揶揄いたくなって小さく呟く
「…ちなみに天属生牛は人喰いよ」
「えっじゃあ私共食いになる⁈」
「ならないわよ、それに嘘よ」
「な、ならよかった」
「本当は天使のなりそこないを餌にしてるわ」
「尚更ダメじゃないですか!」
「これは?この野菜みたいなの、どうやったの」
「えっと…たしか、説明書に…」
袋におまけとして入れられていた異食用の説明書の紙をめくりページを探している
「あ!これです、精霊の木の筋葉!」
「ありゃ人外殺しの植物だ」
「人外殺し⁈」
「うそよ、精霊の命で育つだけの植物」
「それでもやだー!!」
騒いでいるライトから目を避けて外を見ると
ガタガタと窓の音に
叩きつけるような雪が窓を覆って外が見えなくなる
「…?わ、すごい雪、窓開けたらここで小さな滑り台できそう」
「ただの積もった雪ができるだけ、ほらこたつつけるけど入る?」
「え、やった事あるの?入る〜」
小さなこたつ、一人分を想定して買っていたからかぎゅうぎゅうで…うん、近い
「近い…」
「まぁこれは…うん、仕方ないって事で!」
「ん…ねてた?」
こたつの中で寝てしまった事に気づいて
隣で寝こけているライトの頭を叩く
「いった!…え?」
「おはよ、どうしたい?」
「ぇ、えー…?」
「ここいてもすることないよ」
「…ん…じゃあいつもは何してるの?…あれ名前聞いたっけ」
「…言ってない」
「お名前教えて」
「サヘラサート・ストリッパージ・ユンドラ・ミシュトアン・ハリアミキュ・サフラン」
「…なんて?」
「サヘラサート・ストリッパージ・ユンドラ・ミシュトアン・ハリアミキュ・サフラン」
「……サヘラで」
「略すな」
「え、だって、さへらさんと、すとりぱじ、ユントラ、ミシュラン、ハリアニキ、そふらんだっけ?」
「サヘラサート」
「さへらさんと」
「ストリッパージ」
「すとりぱじ」
「ユンドラ」
「ゆんとら」
「ミシュトアン」
「みしゅらん」
「ハリアミキュ」
「はりあにき」
「サフラン」
「そふらん」
「……まぁいいや」
「よしサヘラ!いつも何してるの?」
「熊食べたことあるから冬眠できる」
「え、ずる!」
「どうするの、ライトは」
「…うーん、あ、じゃあ砕こっかなこれ」
そっと長く伸びている髪を一本摘んであげる
「…砕いてどうするの」
「一つにまとめておっきな宝石にでもしたら儲かるかなーって」
「1ヶ月しか無理なのに?」
「あ、忘れてた!それまでにこの体の使い道決めなくちゃいけないんじゃん!」
「…朝ごはん作って、その前に」
「?了解!」
まだ会って一日、それでも食べたいと思えない人間というだけ少しだけ心を開いてしまう自分がちょろいと思ってしまう
「え、まってもしかして昨日と同じ感じのしかないよね⁈」
「そりゃね、変わってないよ」
今回はちょっとデザート風だった
「はい!エルフの眼刻のケーキ!」
「あ、珍しいやつだ」
「ちなみにこれ何なの?」
「エルフの眼球部分を取った目元ら辺を甘く煮込んだやつ」
「うーんぐろい」
真っ白い肌のエルフが元だからか白に近い色のケーキにフォークを刺して口に運ぶ
「それをケーキに使うのもグローい」
「そう言いながら食べてるじゃん!」
「ま、ライトも食べれば?食べれるなら」
「…うぇぇ…」
「作ったなら食べてみ、ほら」
「…なんかあったら責任押し付けるからね!」
そう吠えながら差し出したフォークの先にあったケーキを口で覆う
「…あ、おいし」
「ほら〜」
「やっぱり人間じゃなくなってるってこと…?」
「まぁ、普通宝石とのハーフとかないしね」
「あ、そっか」
「ほら、食べるなら半分こしよ」
「わーい!」
「…雪止んだね」
ライトが作ったご飯を食べて、
お互いのことを話して、
やってみたいことも話して、
ライトの身体をどうするかの話をしていたら
あっという間に雪は止んだ
「でてく?ライトは」
「ううん、でてかなーい、あてもないしね」
残り三週間くらいのライトの身体はもう変わり始めていた
髪と目はもう変わりきっているからか
所々の肌が宝石となり始めていた
「…足の指からかぁ…動かしづらいんだよね、なると」
「ま、手はなってないからいいんじゃない?」
「うーんこのペースなら最後の一週間詰みでは?」
「?なんで」
「この一週間で足元、来週で胴体、なら多分…」
そっとこちらを覗いたライトは少しだけ不安そうな顔に見えた
「最後には作れないね」
「…なら今作ればいい、好きな食べ物あげなさい」
「え、でも人外食材でしょ?」
「それは安いし私にとっては美味しいから」
そう、いつもの食材は近くの店で安く売られた量産型系列の商品、
言ってしまうなら本物とはかけ離れているが
少しだけ入ったエキスだけでも
私には美味しく感じられるのだ
「高いやつなら人間界のもの、あるよ」
「…なら、私も見たい」
「いいよ、服は貸したげる…どんなの好き?」
「なんでもいいよ、一番は可愛いの♡」
「じゃあ私の変装用ワンピースでも着てなさい」
「変装用?」
「キメラだからって変な事する輩から逃げる用」
キメラは大抵迫害の対象か武器として扱われる
同族喰い
天使喰い
人魚喰い
そんなあだ名は当たり前
それで呼ばないのはそれさえも受け入れる
この街の住人と武器扱いの馬鹿どもだ
食べれるとその種族の特性を身につけるキメラ
それがこの街には多いせいで
それを別種族との戦争に使おうと誘拐を企てる奴が多すぎる
その為の変装用だ
私は基本黒しか着ないから勘違いをする
「へー…だからこんな明るい色の」
外に出ると変わる青緑の輝きに似合う水色のワンピース
それを身につけくるりと回る
「ほら、いくよライト」
「はーい」
扉を開けると外は晴れて雲もほぼない晴天だった
「お、嬢ちゃん珍しいね、久しぶり」
「おっさん久しぶり、人間界の食材はある?」
「せめておっちゃんにしてくれ…あるよ」
行きつけのいろんなやつを売ってるお店
奥さんがキメラだからかキメラが食べられる食材を見極めて用意してくれているから助かっている
「というか…その子は誰だい?」
そっとおっちゃんがライトを指して尋ねる
「私ライトです!サヘラの家の居候です!」
「3食ご飯作ってもらってる」
「…その髪、宝石かい?」
「あ、はい!」
「…お嬢ちゃん、ちょーっといいか?」
「何さおっさん」
「おっちゃんな」
「で、何?」
店の裏、こそこそとおっちゃんに耳打ちされる
「あの子の髪、ありゃ綺麗な宝石だ…うちに売ってくれたりはしないか?嫌ならいいが」
「…本人には確認するさ、今はまだ無理だね」
「そうか、まぁだよな…悪い」
「でも売るってなったらここにするよ」
「そうか、ありがとう」
「で、これだけ?」
「あぁいや、ちゃんと在庫は確認して…」
「__えぇ⁈ちょっいたぁ⁈__」
「…は」
小さくライトの声が聞こえておっちゃんの顔さえ見ずに急いで向かう
そこではライトが髪を誰かに無理矢理引かれていた
「痛い痛い痛い!」
「ちっ…デーモントード!」
痛がるライトを無視して引く姿にイラついて
わざわざ悪魔の特性を使ってそいつの顔面を蹴り飛ばす
「…ぁ、サヘラァ!」
「…あー…なんだ自動人形か」
声を出せない、命令以外のこともできない
自動人形、動かない様子からそれなのがわかりやすい
「おっと、大丈夫か?」
「おっちゃん、警備隊に連絡しといて」
「はいはい、あぁ、人間界品そこに集めといたから、好きに取っていきな、金は置いてね」
「はーい」
「すごいね、さっきの蹴りヒーローみたい」
「悪魔の特性使っただけ、はいお肉」
「わーい!…特性って?」
「各種族についてる特殊なやつ」
「へー?悪魔のは何なの?あ、野菜あった」
「空飛びと身体強化」
「意外とシンプルだ」
「キメラだから薄いけどね」
「他だと何なの?」
「天使は空飛びと羽使った加護の付与」
「加護?」
「人魚なら再生と水中呼吸」
「ちゃんと魚っぽい」
「精霊なら空飛びと空中に飛べる粉の生成」
「…空飛び多くない?」
「あんたがわかりやすそうなのが少ないの」
「まぁたしかに?あ、最後のあったよ」
結局あの襲撃野郎は警備隊に回収されて
私達はほしい商品を取ってお金を払って帰った
「…で、何作るの?」
帰ってすぐにライトはエプロンを着て準備を始めていく
「ハンバーグ!大きいのがいい?」
「作りやすいので」
「え、指定してよー!」
「…じゃあ大きめ」
「おっけー!」
数時間後、前に出されたのは丸いものだった
「…何これ」
「ハンバーグ!まさか血抜き0とは思ってなくて頑張ったんだよ?」
「ふーん…あ、美味しい」
「よかった!私も食べる!…!うん美味し!」
ばくばくとハンバーグとご飯を食べていく
早めにライトのお皿は空になった
「ふー…美味しかった」
「ね、ライト」
「?なに?」
「おっちゃんが、売るならうちにしてくれってさ」
「…そうだね、あの感じならいい扱いしてくれそう!」
それだけを返してライトは静かになる
「…ライト?…っておい」
急に静かになったから心配したら
さらっとハンバーグを一切れ取って行った
「…ね、サヘラ」
「…何?」
「私が全身なったらさ、どっかアクセにしてよ」
「…はぁ?」
「目ーとか、髪とか?指輪とかにしてさ、持ち歩いてよ」
「いやよなんでよ」
「えー?いいじゃん!それ以外は砕いて売ってよ」
「それ言われてできると思う?」
「そこは頑張ってよ」
にこにことしたライトの顔、それに私は少しだけむかついて足を蹴った
「いった⁈」
そこからは早かった
次の週にはもう足はほぼ変わり
その次の週にはもう胴体まで変わっていた
残った部分は顔と腕だけ、そんな状態になっていた
ライトは動けないわけではなかったけど
若干動かしづらそうにしていることが多くなった
「…サーヘラ」
「何、ライト」
「気になってさ」
「何が」
そっと私の前に座ったライトが尋ねる
「サヘラは、私食べなくてよかった?」
「…はい?」
「あとは人間だけなんでしょ?食べてないの」
「そうだけど…」
「私を食べてよ、私を最初で最後の食べた人間にして?お願い」
「…最後って」
「?最後じゃなくてもいいけど、最初がいいなって!」
最初と変わらない笑顔に少しだけ気持ちが揺らぐ
「…お願い、多分もうすぐ全部なっちゃうから」
手を握られて目が合う
「最後のお願い」
一つしかないベットにライトが座る
いつもならここでジャン負けで布団にする
でも今日は違う、
そっとライトに近づいて腕を持つ
「腕にするの?」
「違う」
「じゃあ、どこ?」
「…ライトの大事な所、人間の誓いのもの」
少し変わり始めている左手を持って
薬指を食む
「…いいよ、食べて」
ゆっくり微笑んだライトに見えないように手で隠して指を口の中で転がす
千切ったタイミングで小さな悲鳴が聞こえたけどすぐにそこも宝石になったお陰でそれもなくなった
「…美味しい?」
「…おいしいよ、ライト」
「…ありがと、…あぁー!あとどれくらいだと思う?」
儚げな雰囲気さえもぶち壊してライトが聞いてくる
「明日ごろには全部なるんじゃない?」
「あ、じゃあ今日中に準備しないとじゃん!」
「準備?」
「うん!ちゃんと砕いて売ってよ?」
「あーはいはいそれね…アクセも?」
「もちろんやってね!私を外に持ち運べー!」
「はいはい」
ギャイギャイといつもと変わらない掛け合い
でもそれは簡単に時間に消えていく
翌朝、その時は来た
「さ、へら〜…」
「ライト」
「んふふ…あさにおやすみかぁ…」
「どこでもどうせ太陽でてるわよ」
腕ももう宝石に変わり、残ったのは顔だけ
それでもまつげはもうきらきらと反射するようになってる
多分数分で顔全部が変わる
そしたら、話せなくなる
見えなくなる
命も終わる
「…さへらぁ」
「何」
「どこあくせにするの?」
「…髪でも指輪にしてやるよ」
「いいね…さへら」
「なに?ライト」
「ひろってくれて、ありがとね」
それだけ言ってライトは静かになった
「…ライト」
声をかけても、変わらない
顔が変わりきる前に、そっと顔を撫でる
目は閉じているのにえがおに見えて少し口角が上がる
あぁ、最期まで変わらない
完全に変わったライトを用意されていた道具で簡単に砕いて次の日おっちゃんの所に持っていく
「お、嬢ちゃん…あれ、あの宝石の嬢ちゃんは」
「飛んでったよ、ほら約束のやつ」
「お、おう…あの嬢ちゃん天使だったのか?飛んでったって…」
「比喩だよ」
「そうか…ん?なんだその薬指の指輪」
「…ふふ、綺麗でしょ?」
外からの光に反射して指輪が光を放つ
毎朝の声も、置かれた布団が使われることも
おそらくもうない
最初で最後のお願いはおそらく全てに適応する
それもわかって
私は心をライトに許した
アレキサンドライト、きらきらとひかるその宝石にそっと唇を添える
笑ったあの顔はいつまでも私の頭に残っている
だから一つだけ
またいつか会えるかもしれない希望へ
小さなお願いを込めて
「おはよう、ライト」