俺はギャップのある人に弱い。
ギャップ萌えは非常にいいものだ。
そうだろ?親友。
これは、容姿端麗、文武両道な完璧男子が、親友にオタ活報告をする物語。
作者の一言:コメディです。
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目次
#1 非力なギャル
()は基本親友の心の声です。
俺、|高峰光《たかみねひかる》は学校で王子様というあだ名がある。
成績優秀、運動神経抜群、容姿端麗。そして外面がいい。
しかし、俺の中身は―――オタクなのだ。
---
「今日も推しが尊いっ!」
放課後。
誰もいなくなった教室でそう叫ぶと、俺の親友の|水戸怜《みずとれい》は本から顔を上げ冷めた目でこちらを見てきた。
「で?今日は誰の話しなの?」
「よくぞ聞いてくれた我が親友。今日は|根津煌梨《ねずきらり》ちゃんの話しだ!」
「あー。あのギャルの子か。」
根津煌梨。
俺が推してる一軍グループの一人である。
キツめな美人顔で、毒舌な彼女は一見すると、怖いギャルだ。
だが、
「今日も相変わらず非力だった!」
「はぁ。」
そう、とんでもなく非力なのだ。
俺は今日の出来事を親友に語り始めた。
---
俺が職員室に日誌を取りに行った時だった。
「なんであーしがみんなの提出物運ばなきゃいけないわけ!?」
「そこにいたから。頼むよ。」
そこには数学の先生と煌梨。
そういえば昨日ノートを提出するように言われていたな、と思い出した。
そして了解を得る前に先生は大急ぎでどこかへ行ってしまった。
我が推しは仕方なく、ノートを持とうとしたのだが⋯。
「ふんっ!⋯うぅ⋯!」
先生がどこかへ行ってしまった後、ノートの束を懸命に持ち上げようとしている我が推し。
だが、全く持ち上がっていない。可愛い。頑張れ。
しばらく見ていたのだが、彼女の目に涙が滲んで来たので、慌てて駆け寄る。
「根津さん。俺、持つよ。」
「グズッ⋯え?あ、ありがと」
何やら赤面している。
持てなかったのが恥ずかしかったのかな?
そんなところも可愛いな、と思った。
---
「あの赤面でしか得られない栄養がある⋯!」
「あーはいはい」
テキトーすぎる相槌だが、きちんと聞いてくれてることがわかる。
その証拠に先程まで読んでいた本をちゃんと閉じてしっかりこちらを向いている。
そういう彼が可愛くて―――実は推してるのは、内緒である。
(光は自分の容姿をそこそこだと思っているっぽいけど本当は学校で一番容姿がいいんだよね。そして良すぎてみんな近寄りがたいみたい。で、そんな光と唯一友達の僕は光とただならぬ関係と誤解されて一向に彼女ができない。くそが。)
親友がそんなこと思ってるとはつゆ知らず、俺は今日の我が推し達のことを思い、ニヨニヨしていた。
親友のため息が教室に響いた。
---
次の朝。
「お、煌梨おはよう」
「ん。陸はよ」
「煌梨おはよう」
「那美早いね。」
「うん。今日遅刻したらおやつ抜きって言われた。」
「そ、そっか。」
「煌梨、おはよう。」
「はよ。璃子。」
「あ、煌梨ちゃん。おはようございます」
「美春。おはよ」
あー。推しグループが尊い。
「根津煌梨。キツめのギャルといった雰囲気で一部男子にとても人気。
しかし。実はとんでもなく非力でたまに自分のカバンすら持てない。
佐野陸。穏やかな好青年って印象の男子生徒。女子にも男子にも別け隔てなく優しい。
しかし。実はとんでもなく可愛いもの好き。そして怖いものが嫌い。
三原那美。無気力系な女の子。普段眠そうにしていて、とってもマイペースそう。
しかし。実は小さい弟達の面倒を見る、しっかりものなお姉さんなのだ。
新井璃子。基本無口で話してもたどたどしい感じのクール系。
しかし。実は関西弁でおしゃべりなことを隠しているだけ。
新島朔。無口な男子生徒で、基本誰とも話さない瓶底眼鏡をかけてて前髪が長い。
しかし。実はとんでもない美少年。もう目がパッチリしすぎてやばい」
「あー。知ってる知ってる。」
どこかうんざりした様子で俺の小声早口を聞いている我が親友。
「というか、いつも思うんだけどさ」
「ん?何を?」
「そんなに多くの情報、どうやって集めてるの?」
そりゃ、ね?
いくら親友でも教えられないよ。
サッと目を逸らす俺に親友がおい、とツッコむ。
すると、ふと何かに気付いたらしい。トントンと肩をつついてきたので耳を貸す。
「そういえば、最近転入してきた小林美春さんはどうなんだよ?」
「え?小林さん?」
うーん。小林さん、か。
小林美春。この学校で一番の美少女と言っても差し支えない彼女は成績は優秀。
運動は平均的。そして、柔らかな物腰。きっと男子生徒から今一番人気であろう彼女、なのだが。
「ごめん。ギャップがないから推しじゃない」
「どういう基準なのさ?」
親友の理解できないという顔を無視する。
ごめん。小林さん。ギャップがない人は推しとして見れない。
ギャップを見つけてから出直してきてね。
#2 爽やかな可愛いもの好き
昼休み、とある空き教室にて。
いつものように親友とお弁当を食べていた。
「今日も推しが尊いっ!」
俺の叫びに親友がまたか、と言いたげな顔をした。
「で?今日は誰の話なの?」
「よくぞ聞いてくれた我が親友!」
「聞かなかったらずっと騒がれるんだもん。」
ムスッとした親友の言葉はスルーして俺は今日あったことを思い返しながら話す。
「今日は佐野陸くんだ!」
「あー。あの一軍爽やかイケメン。」
そう。彼は男女分け隔てなく優しく、性格もいいし、何より顔が優しい。
もう優しいの権化だと言われても信じてしまうほど優しい彼。ただ、それだけでは推しにならない。
「今日もこっそり可愛いものを愛でていたのだ!」
「はぁ」
あれはそう、昼休みの一つ前の休み時間のことだ。
---
それは俺がトイレから帰ってきたときだった。
なにやら階段の方から声が聞こえてきたのだ。
こ、この声は⋯!
俺は急いでそちらを見ると、そう。我が推しの佐野陸くんがいたのだ!
「ふふ、今日も可愛いね。」
そして彼の手には小さい猫のキャラクターのキーホルダーが!
そう。彼はこのキーホルダーに話しかけていたのだ。
あぁ、今日も推しが尊いっ!可愛いのは君だよ!
そうしてしばらくそれを眺めていたのだが、急に廊下の方からこっちへ歩いてくる生徒が⋯!
このままだと推しがキーホルダーを愛でているところが見つかってしまう。
だが、推しは気づいていない。
仕方ない。一肌脱ぐかぁ!
俺はその生徒に見つかるより速く推しの方へ近づく。
「あれ?佐野さん。こんなところで何してるの?」
「え、あ。高峰。えっと。いや、別に。何か用?」
あー。推しに話しかけちゃった。
キョドってる推し尊っ。
ただ、別に用なんて、ない。
強いて言うならこれを誰かに見られたら推しが困ってしまうかもと思っただけだ。
うーん。何かないか。あ、そうだ。
「佐野さんってお姉さんいたよね」
「へぇぁ!?うん!」
我が推しは自分が可愛いものを持っている時の言い訳として姉がいると言っている。
しかし、本当は姉がいないのは確認済み。だが、それをわざわざ指摘はしない。
俺はポケットからとあるものを取り出した。
「じゃあ、こういうのって好きかな?」
そう言って取り出したのは可愛い丸いよくわからないキャラクターの小さいぬいぐるみ。
断じて俺が好きなのではない。
ただ、これをカバンに付けたら推しの視線がこちらに向かないかな〜?という淡い期待をしたから持っていたのだ。
「!うん!すごく嬉しい⋯ってお姉ちゃんなら言うと思う!!」
「⋯っ!そっか。よかった。どうぞ。」
「え!?ありがとう!」
推しの幸せそうな顔と、お姉ちゃん発言にもうそろそろ限界化してしまいそうだ。
鼻血出そう。ってか鼻血出てないよね?
あー。しんどい。推しが可愛すぎてしんどい。
とても軽やかな足取りで教室に向かう推しを見守る。
叫びたい。推しが尊いと今すぐにでも叫びたい。
その後、このデカすぎる感情を必死に抑え込んだ俺はスタスタと教室へ戻るのだった。
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「いつも大人な感じの我が推しの『お姉ちゃん』はしんどい。マジで尊い。」
「あーはいはい。」
俺の早口に、親友は頬杖をつきつつ適当に相槌を打つ。
そして話が終わるともぐもぐとお弁当を食べる。
そんな親友も尊いな、と思う。
(コイツまた暗躍してたのか。というか、佐野くんの視線を集めるためだけにぬいぐるみ持ってくるとかコイツやべぇな。)
親友の蔑みなんて露知らず、俺は今日のことを振り返り、によによした。
親友の白い目が俺に突き刺さった。