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[闇を歩み続ける私は]
「やめろ……!!やめてくれ…!!」
私の目の前に腰を抜かして座っている男は冷や汗をダラダラと流し、怯えと恐怖を隠そうとせず情け無く命乞いをする。
それが、酷く不快に思う。
「何と言った?」
私は男を冷ややかな目で見下ろす。
銃口を相手の眉間へと突きつけ、銃の引き金に指を掛ける。男は目に見えてわかるほど焦っていた。
「わかった、悪かった!悪かったから、助けてくれ!命だけは!」
自分が悪いくせに、自分が引き起こした事態のくせに、自分だけが助かろうとする。
吐き気がした。自分の仲間を売り、自分だけが逃げ回った結果追い詰められてこのザマだ。
「…貴方の命など、私にはどうでも良いことです。貴方の命に価値なんてない。」
突き放すように、吐き捨てるように言い放つと、銃の引き金に添えた手に力を込めた。
─ズガン!!
男の額から大量の血が吹き出し、それが返り血となって私の衣服にべっとりと大量につく。
額に風穴を空けた男の体は後ろへと倒れ、動かなくなった。
「…汚らわしい。醜いですね。」
銃をベルトのホルスターへと仕舞い込むと、男の死体を一瞥もせずに踵を返した。
「………。」
幼い頃の記憶はテレビの砂嵐の様なものが邪魔をして中々思い出せない。
だけど、7つの頃、誰かに言われた様な気がした。
『お前は強くあれ。この町の皆を守る為にも。お前が命を賭して、戦うのだ─』
その人は身体中から血を流し、ボロボロになってまで私を庇った。
私は無我夢中で走り続けた。後ろからは何者かが追ってくる足音と、銃声が聞こえた。
後ろを振り返らず、必死に、前だけを見てその細い枝の様な足を動かし続けた。
「…これで、いいのか……?」
私がふと零した問いに答えは返ってこないと分かっていながら、私はそう呟いた。
涙が自然と込み上げ、思わずその場に立ち止まる。
「強く、慣れましたか…?貴方の言う通りに、あの約束を果たせましたか…?」
膝を突いて項垂れ、地面を見つめた。涙がポロリと目から溢れ、地面に染みていく。
自分でもその声が震えていることに分かっていた。
「っ、あぁ、ああぁぁぁぁぁぁあああぁ!!!!!!」
誰もいない薄暗い廃墟の中で私の泣き叫ぶ悲鳴だけが響く。
声が枯れそうになる程何度も泣き叫び、目から止めどなく涙が溢れ続けた。
「…ぐすっ、う、ぅ……。」
しばらくして経った後、ようやく気持ちが治り、鼻を啜りながら涙を拭いた。
重い腰を上げて立ち上がる。
「…貴方の言う通りに、私は町の皆を守り続けます。この命がなくなるその時まで、私は光の中を歩く皆の代わりに闇を歩き続ける。」
胸元で片手を握り締め、決意を固めてそう宣言すると、一歩踏み出す。
もう2度と光の中を歩けはしない。
それでも構わない。
皆が幸せに過ごせるなら、喜んで闇に進もう。
私には、その方法しか思いつかないから。