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空耳
孤独。きっと今思い返せばそれはずっと昔からあった私の砦。空を見つめると、ごくたまに母の私の名を呼ぶ声が聞こえてくる事があった。それは時に妹や祖母、友人の声をしていた事もあった。今思えば、寂しさの裏返しであったりするのだと思うが当時の私はその本質を理解する事を全力で拒んでいた。きっとあれは本当に母の声だ。と信じたかったのだろう。だが、私はその多くの機会を無視していた。怒鳴るように名前を呼ばれても、おやすみの前の優しい声であっても、きこえぬ振りをしていた。それは返事をすれば周りの人間に気味悪がられるような不安があったからだ。事実としては、そんな声は私以外に聞こえていなかったからだろう。だがずっと聞こえていた声であった。毎晩、眠りにつく前に明日は誰の声が聞こえるのだろうか。母であろうか、父であろうか。そう期待に胸を膨らませていた。懐かしい。
今はもうあの声は聞こえる事は無い。
だが、今もずっと孤独である。
「父さんの声はもう忘れてしまったな」