r8 6/1〜よりの投稿のオリジナル短編集
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目次
倫理に背く下劣な男と信心深き哀絶たる女
めっちゃ前の日替わりお題です
いつのまにか、変換欄のところめっちゃ進化してる👀使いこなせるようになりたいです。
日替わりお題も時間経ちすぎだし、やんわり要素でも許してください💦
追記6/1
すみません推敲漏れました。
加筆修正加えました。
如月レツという男は、言うなれば畏敬の名を冠する男である。誰もが恐れ、誰もが敬い、そして跪いた。絶対的権力者。その男こそが、この国の全てを握っていた。
---
「______…… いい加減に貴様らのその厚かましい美徳観念的たる主張は聞き飽きたな」
「そっそんなあ!!!」
辺りに、慌てふためき絶望の淵へと徐々に追い込まれゆく情けのない国家の重鎮達の声が響いた。
「お待ち下さい!!!必ず実現させてみせると誓いますからっっ!!」
「・・・・・・」
この非常事態ともいう事態には、必死にもがき、なんとか食い止めようとする者、その突拍子もない発言に怒号する者、意気消沈としただ漠然と虚空を見つめる者までいた。会合に一国家の存続が掛かっているのかと考えると国民が可哀でならない。
暫く、混乱からなる騒音が鳴り止まない豪勢に飾り立てられた会合室にて如月が片眉を少しばかり顰めてみると、一瞬にしてその表情の機微から沈黙が流れた。
その沈黙を破るように、社会的にはこの国の首相が発言を呈した。
「………30年前に起きた人類史上、究極の悲劇ともなるアマザック大陸に訪れた大災害。世界が絶望した。だが、その5年後に如月殿の助けがなければこの国はとっくに途絶えていました。我々政府、いえ、国民はとても感謝しています。」
「ですが、先ほど仰られたこの『-国民救済策第九条案-如月レツ殿における遺伝子工学からなる人類の進化』来月から本格的に施行される、最重要政策からの離脱を為さるというお考えですがその経緯について是非、お聞かせ下さい。」
場に、緊張が走る。その目を合わす事は叶わずとも視線が一心に注がれる。長いようで、短い間をすぎるとその口を開け、一言仰せられた。
「私が如月レツだからだ」
続けて、
「私は兼ねてより、生まれてから死ぬまでは人類に『如月レツ』という大きく何事にも変えがたい影響を与えてきた。救うも、殺すも、全てにおいてだ。それは貴様らがようく知っているだろう。血は水よりも濃いと云うが、何故そうなのかわかるか?それは人に必ず自然発生的に起きる生と死に直結するものであるからだ。そこで人が何より重きにおくのは死なのだ。生ではない。」
「要するに、死は永遠で、生は刹那。そういう普遍的信仰が人類には根付いている。特に無神論者が蔓延るこの国においてはな」
「……………」
先程の沈黙から高圧的な重さとはまた、違った気味の悪い空気が彷徨う。
「だがな、25年前にある女が私の目の前に現れた。その女は私の思う人類の死生観を真っ向から否定するような者だった。」
---
<女との出会い>
あの女の名前も詳細も忘れたが、私の元へいきなり尋ねてきたんだ。国家救済への協力を要請しに、
「______世界的大災害が人歴8550年起きてから早5年が経ちました。我々は、人類進化そして遺伝子工学を主に日々世界の為に研究しています。今、人類が窮地に追いやられているこの時こそ、貴方のような進化という人類の大きな進歩を遂げられた存在に協力願いたいのです。………」
「そうか。どうでも良い」
「っ!?は?」
「どうでも良いと言った。私からすれば、人が大勢死んだも生きてもどうでも良い。何より私自身がこの事態において私のような極めて稀な者の与える影響力を理解していないとでも?」
「第一、この5年間私が自ら名乗りを挙げなかったのは何故だか考えたか?」
「っ……何故です?」
「フフフフフッフハッッハッハハハハハ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
「ハハハハハッッ………実に愚かだ。質問には、回答で返したまえ。まあ、要するに……」
「私が人類に対する前々から個人的にあった偏見とも云うか、持論……死生観だな。その証明に、丁度良いと考えた。それが理由だろうな。」
「死という、根源的なものからなる解釈も広がり、死をこういった災害であった被害などの報道でもあるだろう?これだけの人が死んだ。それだけ危険だった、と。それを推し量る判断基準としても扱われるのだな。と」
女は終始、私に対する言動にまるで怯む様子はなかった。軽蔑さえされていたと思う。関心さえ湧いたよ。あのような不遜な態度をとられるようじゃ、国の情勢や、政治的介入も考慮すればよくて大陸から親族諸共追放、または死刑だ。
「うゔぅっわ、最悪」
「っ?!ッフッッ!!!ハッッハッハッッハッッッッッ!!!!!!」
「ぇ、」
「ぁっえっゔっ、???!!!!………大変!!申し訳っ!!!!
「嗚呼、謝罪は結構とするよ。はぁ、フフ大変恐縮だが、その研究とやらに協力させて頂こう……」
「…っっぇ?…」
「ッ誠に、感謝申し上げますっっ!………」
それが出会いから、この国へ後々この25年という長い間まで関係を築くまでの経緯だ。
それから女の内にある、宗教的な思想観念を知るに至ったのは、______
---
「ッですが、彼女、小早川スエは既に故人です______」
失言。それは誰がどう見聞きしても明白であった。この軽はずみな発言を呈した官僚の行く末に同情さえ芽生える。
「そうか」
「……………………………」
「私は以上を持って失礼する。」
---
「あの女、スエという名前だったのか………」
私に名乗る事が無いまま死に行くとは、信心深さを物語っているようだな
<傲慢さを絵に描いたような男>
この国、いやアマザック大陸全土に伝わる様々な宗教で最も信仰されるものと云えば、〈リゼア教〉であろう。その教えは唯一神、ヨノクというこの世の全てから疎まれながら世に産まれた者の死までの事実に基づく伝説を後世に伝えていく一手段として、信仰対象として神へと昇格されたのだ。
---
「如月殿、この度は我々の研究へのご協力、本当にありがとうございます。」
「ああ!」
「驚いたよ。お前は、以前私に対して大変な無礼を働いた上に厚かましくも国家の政策協力を要請に訪れた者じゃないか?」
「…はい。以前は大変なご無礼を働いた事ここにお詫び申し上げます。」
「……ほう」
「して、具体的な計画はなんだね?」
「はい。まず、如月殿の遺伝子検査を中心に進めて、そこから国民に徐々に献血や検査という形で試験に取り組み、最終的に我々研究室で治験し、後に全国民へ本格的に救済政策として始動します。」
「………それだと、国民へ騙し討ちのような扱いにはならないか?」
「いえ、なりえません。リゼア教の聖ヨノクの教えに則り、救済は罪とありますから。」
「…………っとなれば、お前は国民への裏切り云々より、主への信仰を優先するという事か、?」
「……恐れながら、私のような者の言葉は主への冒涜的行為そのものに成り得ます。ですが教義に則り、例として国民は教徒として扱われると、その命を守る事、種の存続それらを是とする理由もまた失われます」
……………
そう、自らの手で私と人類を救う事を求めた事実さえ否定しうるその危うい思想にとても驚き、興味が湧いたのも束の間。スエといった女はそれまで順調に進んでいた私の血液のデータを元にはじまった遺伝子研究の治験の実験に自らが志願し失敗し、死んだ。
少々、失望した。いとも簡単に自身の死生観を証明するチャンスを逃したあの女に。
価値観が近く面白い話を度々する女であった。
---
だから、治験の際私の血液の濃縮度を高め、実験の順序を組み換えた。
殺してみたら、死んだのだ。あの女は
会合室から、退室していく如月レツという男の背中から官僚達は目が離せずにいた。重い扉が閉じ、彼との隔たりが完全にたつまで。
だが、転じて彼は振り返った。
燻る様な微笑みを浮かべて
愛で死を別つ
一つ目ですが、完全に勢いで書いたので設定や細かいところは事実と異なる可能性も大いにあります!!ご注意ください!具体的な時代背景は明記してません。ご了承を!!⚠️重い!
感想まってます!
「お願いだ。お願いだから、お願いだから、お願いだからどうかどうか、もう死なせてくれ。うんざりなんだ、だから今日この瞬間で、、、」
家臣達は戦場でまだ死闘を繰り広げる中、その大元の城主である武士の男がそう言った。負け戦だったのやも知れぬ。籠城され、既に女子供の命も幾つ散った事であろうか。
「……おわせてくれお前の後を、」
「介錯しよう」
静かに溢れた独り言を強引に拭いきるようにふいに出た言葉に、男は黙って頷いた。泣きじゃくりそうで、爆発的な怒りも同時に沸き立っていて、みっともないような顔をして。武士とはその最後は存外、無様なもの。まるでそれを物語っているかの様だった。お前が武士でなければ、私が武士でなければ、なんて譫言が空を漂う。
介錯人になど、あまり快く引き受けたくはないものだ。それも、この男の介錯人なんぞ……深呼吸と共に、身支度を整える。切腹人の沐浴は済み、髷も下げ、裃も左前に身を包み、畳を二畳ほど敷いた屋外にて佇んでいる。はちまきをして、股立ちをとり後は、切腹人の後ろに立ち、様々な細かく振り分けた作法が執り行われる。
思えば、この男の元でどれほどの時間を過ごしただろう。この男とは幼少の頃よりとても親しくしていた。この男が使え従う御大に同じく忠誠を誓い、いつ何時も二人で生きてきた。親友であり、戦友であり、共犯者であり、恋仲であった。時に、我らの間柄を他の者は揶揄し、白い目で見る者もおったが我らはそれに挫けず、お互いを支え合いながら共に生きてきた。御大の命により、妻を娶ったが子にも恵まれず、おまけに私という存在があった為に、正妻でありながらも身をひかせる様な真似をさせた事も今となれば、本当に申し訳ないことをしたと後悔が募る。だが、もうじき我らはこの世とは永遠に別れてしまう。嗚呼、すまなかった。私と此奴が好き勝手生きたせいで、今まで散々な目に遭わせた事だろう。神よ同胞たちにせめてもの慈悲を___
「………御大、貴方に別れをいえずに終わる事になるとは昨夜は思いもよらずに、酷い態度をとってしまった…………」
この男は、今何と申したのだろうか。まさかとは、思っていた。だが、もう受け入れる他ないのか。嗚呼、嘘なのだ。全て。そうあるべきだ。なのに、もう心も身体もわかってしまう。昨夜、私の誘いを断り、何処へ尋ねていたのだろうか。考えたくない。嗚呼、この男は二人きりで最後となる空間で、何と申したのだ。最後だからなのか、?どうして墓に入るまでその想いをもっていく事をしなかったのだ。あああ、嫌だ。
「お慕い申しあげます、御大……」
「左様なら、お前様」
**ザッしゅ**
私が問い詰める間も無く、この男は腹を切った。左脇腹に奥深くその短刀を突き刺して。溢れ出る鮮やかな赤とそこから漂う鉄の匂いに、頭がクラクラする。そんな幻の様な光景に圧倒され、一瞬卑しい考えが過ぎる。突き立てた刃は未だ、引く事もなく腹に刺している様子。
どうしてだ。死にゆく事ならまだ許せた。後をおうことを今更、此奴は責めないだろう。だが、何故なんだ………裏切りはもう許せない。
私にはお前一人であり、お前も私一人だけを愛していた筈だ………
だが、どうしてだ、私に誓っていてくれた筈だ、
愛を。
御大へ永遠の忠誠を誓おうとも、正妻や側室と家庭を築こうが私は絶えずお前を一心に愛し、待っていた。
だが、待てど暮らせどお前は私には何も望まず捧ぐ事も愚か、私をたった一人の愛する存在としてはいつしか見てくれなくなった。
だから、愛を、愛だけは、誰にも奪われまいとしてきたというのに。ふざけるな、なんて怒鳴る事もできず、もうすぐ死にゆく男に対してまだ恋慕の情を抱いている己に涙さえ溢れる。
「罰なのだ、甘んじて受け入れるが良い………」
私の言葉に呼応してかはわからずだが、そのまま刺した刃を右へと力をこめ、捻るようにして引き、凄まじい出血に歯を食い縛り吐血し疼くまる様にして頭をゆっくり、下におろした。
介錯は失敗が許されない。抱き首という高度な技法では、首の皮一枚繋ぐ事を肝としている。失敗があれば、名誉や家名の断絶や家財も没収される事も有り得る。私は生まれながらにして武士である。きっとここで、告白したこの男も承知の事であろう。
もう此奴には名誉ある死など授ける必要もなかろう。
「………っ、お前には恥ずべき処刑を与える」
---
あれから随分と月日が経ち、私は名誉ある武士の死を、見事にぶち壊した大罪人として牢獄にいれられている。今、考えても馬鹿らしい真似をしたものだ。私も若く、あの人は奔放でいらっしゃった。牢獄にいれられてすぐに、御大の使いからあの時書き上げられた辞世の句。その現物を贈られた。それには、酷い戯言が書いてあった。
最後まで私の望みを叶えてくれなんだ男を恨めしく思う。だが、きっと愛されていたのだ。今はそう想える。私は彼奴と共に生きられて本当に幸せだった。
無題
投稿頻度高くて嬉しい
現実逃避してるだけなんだが_(:3 」∠)_
推敲も編集もしないで投稿しちゃるわ!!!
「ちょっとはやいって!!」
「ごめんごめん!自転車気持ちよくってさハハハ!」
久しぶりに三芳さんと2人、真昼間に学校をサボって二駅先にあるカラオケまで行く。わたし達の通う高校はど田舎にあるので、電車に乗ってわざわざ市外まで行かなければ遊ぶ場所がないから。めちゃめちゃ不便だけどあの地獄みたいな猛暑が来ないうちに遊びまくるから、万事OK!あー超楽しい!!三芳さんもそう思ってくれてるかな
「あぁー!わたしも自転車乗ろうかなぁー‼︎」
「えーっ?向かい風強くて聞こえなーい!!」
「1人だけ!自転車乗ってわたしを走らせるなんて!」
「ひどすぎーーー!」
お腹に力をこめて、思いっきり声を出して言ってみた。さすがの三芳さんも拗ねちゃうかな?
おそるおそる、きれいな青緑の自転車でわたしの前を颯爽と走り抜けていくふわふわしたYシャツに乱雑にまとめたお団子頭の女の子の様子を伺う。
下り坂目前に突然、全速力に漕いでいた自転車の走りを止めて、自転車を降りて振り返った。風が吹いて前髪が揺れて、Yシャツに学校のジャージなんてとんちんかんな服装ですら愛くるしく見えてくる。ああ、綺麗。大好き。待ってくれてる!三芳さんがわたしを!
「三芳さん!やっと追いつけたぁ!」
ようやく追いつけた。さっきまで風が吹いていたのに途端に足を止めれば汗が全身に伝っていく。
息を整えようと顔をあげると、三芳さんの顔がすぐ目の前にあった。
キスをされた。
三芳さんはいつも急にキスもハグもしてくる。でもさすがに全力疾走直後のこのビジュアルにキスされるとは思わなかった。
体感10分くらいのキスは実際には数秒だったと思う。すぐにその綺麗な顔は離れていった。
「飛香、そんなに言うなら、後ろ乗せてあげるわよ」
「ジャージ履けよー」間延びした調子で言ってすぐに自転車の元へ戻っていく後ろ姿に悔しいような、嬉しいような気持ちがあった。
空耳
孤独。きっと今思い返せばそれはずっと昔からあった私の砦。空を見つめると、ごくたまに母の私の名を呼ぶ声が聞こえてくる事があった。それは時に妹や祖母、友人の声をしていた事もあった。今思えば、寂しさの裏返しであったりするのだと思うが当時の私はその本質を理解する事を全力で拒んでいた。きっとあれは本当に母の声だ。と信じたかったのだろう。だが、私はその多くの機会を無視していた。怒鳴るように名前を呼ばれても、おやすみの前の優しい声であっても、きこえぬ振りをしていた。それは返事をすれば周りの人間に気味悪がられるような不安があったからだ。事実としては、そんな声は私以外に聞こえていなかったからだろう。だがずっと聞こえていた声であった。毎晩、眠りにつく前に明日は誰の声が聞こえるのだろうか。母であろうか、父であろうか。そう期待に胸を膨らませていた。懐かしい。
今はもうあの声は聞こえる事は無い。
だが、今もずっと孤独である。
「父さんの声はもう忘れてしまったな」
rogue planets
1人。わたしはここ最近ずっと1人だ。生まれてからずっとそうなのか、それは急に起きたことなのかはわからない。だから、わたしは羨ましい。1人じゃない誰かが。この世界ではコミュニティや人との繋がりなくして生き続ける事は絶対に不可能なのだ。損得勘定で考えても、単なるないものねだりであっても、『羨ましい』という感情はずっとある。それは誰しもがどこかで気づいている事実だと、私は思い上がりでも何でもなく確信している。ずっとひとりで今日この時まで、生き抜いてきた経験の中で学んだ紛れもない事実であったからだ。
だけど、時々考える。わたしのような永遠にこの広い世界の中で漂い続けていく事しかない1人の者よりも、1人じゃない、誰かと共に地続きで生き続けるような者が一番寂しい思いをしているんじゃないか、と。厳密に言えば、一度でも誰かと共にする時間を知ってしまえば、1人になった後には永い孤独が訪れるという話だ。
きっとそれは誰にでも起こりえる悲劇的な別れであり、幸福な出会いが起こる前兆ともいえる。
わたしはそれをこの宇宙の片隅で回り続ける周回軌道という約束の地で出会い、別れ、それを繰り返す者たちを見守り続けることしかできないのだ。
怪士
「苦しそうな表情をするのね』
「臓器が痛くて熱くて苦しいでしょう……」
特に此処はすごく痛い!そう女が声を張り上げて私の腑に深く刺さった包丁を捻じ込んだ。途端に声をあげてしまう。
「ゔぁぁゔぇあがゔゔ〜〜!!!!」
痛い痛い熱い痛いクラクラするあああああ、嫌だ怖い
「随分と血が出てくるのねぇ」
包丁の持ち手を未だ握ったままの女の手は見ると、赤い血で汚れていた。絶え間なく湧き立つ血液はやがて、口からもぼたぼたと落ちてきた。
頭が揺れて真っ直ぐ立てなくなった頃には、床には大きな花弁のように広がった血溜まりがあった。
「鉄臭い」
女はそう呟いて、突き刺さる包丁でまた傷を抉りとるようにぐりぐりと掻き回して勢いよく抜いた。
「っぐぁぐがっぅ!!」
筋肉や内臓、血管全てをすり潰されていくような痛みが全身に走った。瞬間、噴き出していた赤い血が鮮やかに視界を覆い尽くした。
「ゔぁっかっはっは、」
吐血どころか噴き出すように出てくる大量の血。
そろそろ死ぬのだろうか。腹の中からとめどなく流れていく血と燃えるような痛みが私の心を打ち砕いていく。
「……あなた、やっぱり似てるわ」
段々と視界が暗闇に堕ちていく。身体が全部冷たい。
「怪士に。アタシ大好きなのよあの勇ましくて猛々しい武将の|面《おもて》よ、」
「見ないの?能、」
「ぁあぁぁぐっ」
ああ痛い熱い熱い苦しい痛い痛い血が止まらない永遠と肌を引き裂かれているようで、もう死にたいとすら考えてしまう程の激痛だった。傷に痺れるような痛みが波のように訪れる。
「|怪士《あやかし》はね!能の面の事で無念の死を遂げ修羅道へと落ちていく男の|面《かお》なのよ」
果たして私は、そんな立派な男の顔をしているのだろうか
あ、おわる
**バタンッ**
「死んだ」
「鉄で殺したし、血は鉄分だし、臭いのもまあ必然か!」
「ばいばい!素敵な人!」
Dr.
突発的に思いついたネタ!にしてはすごく頑張った!!応援コメント等もらえると嬉しいです!
ああ、ボクはアナタを食べたいんだ
重い事実。
既に奥底に存在していたであろう怪物としての本能的欲求に、ボクをこの世に生み出してくれた唯一無二の親であるドクターにあった感謝も情のようなモノも消えつつあるその事実に、無限に湧き立つ罪悪感がこのガラクタと腐った死体によってつくられたこのカラダにはない筈の心臓が低くどくんと鳴ったように思えた。
「ドクター、ドクター………」
独りでこの広い世界の中で『ボク』をながい時をかけ、ようやく創り上げてくれた親に躾けられた呼び名を声を潜めて呟いた。
ああ、助けてボクはどうしたらいいんです。
ドクター、お願いお願いです。
わからないよ、怖いよ、
ボクは怪物なんです、ドクター
「ボク、ひとりだ」
---
深夜、昨日見た月よりもずっと大きく丸い満月がこの何かを測定するような機械や、ガラクタやごみのように思える何かの材料や、数々の薬品がゴチャゴチャと並ぶとても人が出入りするような部屋とは思えないような長年、共にした愛着のある研究室にあの美しい月がキラキラと窓を通して明るく照らされている。
「美しい、」
ふと漏れてしまった独り言に、慌てて口をつぐむがこの時間に呑気に出歩くような者がいるはずがないと後になって気づいた。
側からみれば、小屋や何かにも見えなくもないが、こうしてみれば毎日見ている景色に違いはないが、不思議とそのような感覚になる。
「そうだ、ちょうど良い!アレの夜間でのデータがまだまだ不足していた」
記録をとろうとなんだか身体が軽く揚々とした気分になった事で普段なら冷静にまず、基礎データを完璧にとった上で研究者は数名は要する危険が伴う生命体の開発を私はつい先日、成し遂げた。だが、あれは生命体とそう形容してしまっていいものなんだろうか。ふと、疑問が頭によぎる。
だが、遅すぎた。脳の思考回転速度が増してく中でドアノブへと伸ばしていた手はもう掴んでしまっていた。
音もなくゆっくりと開いていくドアの先、厳重なセキュリティで管理されているこの散らかった部屋に似つかわしくない荘厳な雰囲気を漂わせる科学装置があった。
「いや、何を焦る必要があったんだ」
少々、私は冷静さを欠いていたようだ。今夜はもう寝ようと踵を返そうと、ドアは振り返った瞬間、聞こえた。
「ドクター、…………」
驚きと興奮がじわじわと胸の奥から押し寄せてくるようだった。
「ドクターフランケンシュタイン、、」
なんとあの生命体は開発者である私の名を呼んだのだ。今、この瞬間に!
ああ、この研究室で彼について研究している間は主に昼間だったからか、このようなデータは今まで一度もとれたことはなかった。それに彼には脳の学習機能を発達させようと何度か実験をしたが、いずれも失敗したかに思えたが、今この瞬間成功した事が判明した!
ああ、そうだったか。彼は夜間に活動をする事が適しているのかもしれない!ああ面白い。
私は知的好奇心を抑えきれずに、彼の元へとごく自然に足早に向かっていた。
---
「ドクター、ボクは怪物です」
「何を言っている!!お前は私の開発した紛れもない人工生命体だ!!」
「私はお前を生み出した!!」
ああ、ドクター助けてよ
ドクターこわい
来ないでください
頭が痛い。苦しいよ
「素晴らしい!!こんな奇跡を見ているのが私1人なんて!!これこそ悲劇!!」
「やはり、脳の活動には人類と同様酸素が必要なのか?うむ、………」
あああたりが暗くてよく見えない、
「ドクターどこです!?」
匂いがする
「私はここだよ!!」
「かわいい、私の化け物よ!!!」
素晴らしい!素晴らしい!素晴らしい!呼びかけに呼応する事も可能なのか、この生命体は!
素晴らしい早急に記録せねば!
ああ、もうお終いだ。ドクター、ボクはもう怖くない
………美味しそうな匂いがします、ドクター
ねえこれはどこから?
ドクター、ドクター、ねえ
アナタの脳味噌はどんな味?
宵闇
消化不良
ほぼ詩
修正しまくった^^;
応援コメント等もらえると嬉しいです!
どっぷりと孤独に浸かって、身体からドロドロと力が抜け落ちていく。ああ、こうしていればいずれ睡魔が心と身体を呑み込んでいくだろう。
いやだ。朝が来てしまう
会いたい貴方を逃してまで、私は明日が恋しいのか。
縋りたい、その背中に、その腕に
愛したい
愛を一心に注ぐから、貴方も私を壊してほしい
貴方のまだ誰にも見せた事のない愛くるしいその|表情《カオ》で、私にどうか囁いて
愛していると
貴方の細い線を描く唇が吐くその言葉
肌を燻る熱くて切ない程に優しい指先に、
私の心を引き裂く貴方との距離
この世の全てが恨めしくて愛おしくて、卑しい。
愛して愛したい愛されたい
砕けるまで抱き寄せて
心と身体ももう要らない
貴方との境はもう何だっていらない
---
ああ、まやかしだ
全部嘘だ
ありえない虚空の話
ただまだみぬ貴方を求め続けている事だけが事実
これ程までに惨めな心を殺してほしい
亡者たちのよすが
作業用BGM「いきどまり-星野源」
「罪悪感って嫌いなんだよ
焦燥感とかどうしようもないっていう感情で一つの事に脳が占領されていくのがすごく嫌いなんだ
だって不快だろ?」
そう、か。
俺はそう思ってたのか、あの狭い部屋の中で死にたくなるほどの孤独感が隣から楽しそうに響く声にいつも胸を潰されるように思っていた。
「大抵、心が限界になった時自分の葬式を想像する。」
「自分じゃなくても、親やきょうだい親戚、友達たくさんある
でも最近は、どう死にたいか、どう生きたいかの2択でどちらを大事にしたいのか考える。
その結論も様々でなぁ」
目の前でただ黙ってうなづいてくれていたのに突然に話しはじめた。
ああ、救ってくれようとしている。
あつかましいなんて、どこかで思う。
そんな自分自身が痛々しくて、やけに見窄らしい心根のようで、死にたい。
そんな俺をおいていくように話を続けた。
「どう死にたいかを選んだ時、大概は自分を大事にしてくれた人、自分が大事にしていた人らに惜しまれて死んでいきたいとなる。
家族ももちろん含まれてる
でもどう生きたいかを選んだ時、決まって、平家に住んでる自分が浮かぶ。大きな平家に1人で縁側でスイカ食べてるんだ。
そこには妹もお母さんも大好きなばあちゃんだっていない。近所に仲の良い姉ちゃんがいて〜くらいなら思い浮かぶんやけどな。」
「ははは!何それ!」
なんだか重苦しくなってきたかと思えば、途端にじじくさい話になった!
空気が和らいだかと思えば、目の前にある顔を見つめるととてもじゃないが、笑っている人の顔ではなかった。声色はどれだけ明るくとも根は暗くて重い人なのだろう。
「………私は多分家族とか友達とかいらないんやなどう生きたいかを聞かれれば、そう答えるのが真実になるんやろな。」
そうなのか、そういう感想しか出てこない
声に出せば、きっと俺は誰かに見捨てられる
「…………っただ、今どう死にたいかと聞かれれば、家族に囲まれて看取られたいと答えるやろな。
失わずに幸せになれるんやったらそう選ぶやろな。ただ捨てることで幸せになるとわかって仕舞えば、そうするやろうて。
ははは、ワシはほんに最低な奴やな」
なんだか救われたように思えた。
俯く顔をあげようと、ゆっくり首をあげると、
「ワシにはな、ないんじゃよ罪悪感なんて」
そこには、
「ない。ただ寂しいとか悲しいとかそういう情は捨てきれんな。
ははは、大丈夫やで
あんたは、そこらで寝小便して叱られとるガキとなんら変わりせぇへんよ
ワシからしてみりゃ、どっちも悪ガキやわははは!」
この人は俺だった
ああ、これは俺か
未来の俺でもないんだ
俺なんだ、
---
この人が俺であったからといって、
俺のこのクソみたいな心根は、嘘にもならない
俺だけの孤独も救われるわけじゃない
でも、でも
楽になる
はぢらい
作業用BGM
修羅場(adult ver.)-東京事変
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2時間後、捨てた
「非業の死」演出家
「門脇与一が体現している全てが好きなだけで、
門脇与一個人には特に、思わないなー何も。」
「んー…副産物かな!」
わたしから見たとき!てだけどねーと、小さく後付けするようにして、手元の蜂蜜入りのアイスカフェラテをストローで軽く混ぜながら伏し目がちに彼女は言った。
カラカラと氷とグラスがぶつかりながら混ざっていくそれを光のない黒い瞳でぼーっと見つめるその姿に、悍ましさすら覚えた。
---
僕は門脇与一の創る物語が大好きだ。
悲劇も喜劇も彼の手掛けた全ての作品においてその才能、技術、美しく昇華され、彼自身の『魅惑し、それを強烈に響かせる』という遠い昔読んだインタビュー記事の彼の活動理念の言葉は、今では僕自身の目指すべき頂点となるほどに。
新作発表会公式イベント 「門脇与一が語る異質」
門脇与一:コメント全文
表現、発表、提示、全てにおいて己の深い根底を開示する時、それを見た見知らぬ誰かは肯定するし、もしくは否定する。あるいは私たち自身がその彼らを肯定し、否定する立場にもなる。
私は常に否定されてきた。時には誰もが興味すら持たなかった。私自身、自分で作ったモノは願望に近く、希望であり災厄なんだ。
誰もが否定している中で、私もそれを否定している。あってはならない作品達しか私が作ったものにはない。だから、誰にも知られないよう気づかれないようひそかに狂気、魅惑、虚、を忍ばせるんだ。
みんな、表立っているものにばかり目がいくから気づかない。あるいは気づいているのかもしれない。でもそれはとても依存性の高いもので、すでに魅了されている者たちには意味のない現実なんだ。
私はね、面白くて怖くて美しい。そして、理解と欲を掻き立てる演出さえ備われば、それは名作になり得るという事を言っているんですよ。
素晴らしいでしょう、プロセスは単純なんです。
それまで"が"ですが。
要するに、否定させない努力と肯定させ得る技量があれば何においても困ることはほとんどないという持論ですよ。あくまでね!
雨に濡れた櫻井芳子
作業用BGM:本音と建前/timelesz
きっとあの、女は|櫻井芳子《さくらいよしこ》だ。いや、今私の視線の先にある女は櫻井に違いないのだが。
ただ、日曜の夕方ぐらいだったかあそこにいた女は櫻井だと思う。確かだ。
下世話だが、確かめた。本能的に、突き止めなければと思ったんだ。古びた建物から肩を寄せ合って一つの傘を分け合う2人組、あの日櫻井は白いワンピースに小さな肩掛け鞄を持っていた。2人の距離はすごく近くて、きっとそういう関係なのだろうとそう思った。
櫻井は、わたしが櫻井の秘密を知っている事を知らない。
優越感、というより怖くなった。
きっと、私も
「ねえ、吾妻ちゃん……」
ひっそりとした声の大きさに似つかわしくないハキハキとした声の特徴。あまり、話したこともないのに名字にちゃんをつけて呼ばれた。
声の主は案の定、櫻井だった。
「櫻井さん、」
驚いてる様子を見せるためと印象をよくするために、少し眉をあげて、目を開きながら柔らかく微笑むように目尻をさげる。
「えっとね、急なんだけど先生が配布物を科学室に置いてるから取りに来て配ってくれって」
彼女は思いの外、人見知りはしないようでどこかフランクな態度でにこやかに愛嬌よく頼み事を私にしてきた。
「そうなんだー」
代わりにパシられろ、という事なのだろうか。
馬鹿にみえるよう振る舞えば、損はないが、馬鹿にされるのはお門違いだ。ここは強かに、ヘラヘラとしてはいけない。
「それでね、私も先生から頼まれて二つ返事でオッケーてしちゃってさ!でも後から聞いたら、量が半端なくてね!!」
申し訳なさそうに、焦っているように、彼女の表情と声色はコロコロ変わり続ける。それでも、その愛らしい顔の造形は崩れることはない。
「まじか!それは大変だわー!」
余計な間をおかず、お互いに気を悪くしないように必要な程度、共感する。
「だからさー、よかったら手伝ってくれない?」
ああ、そういう感じか。いや、なんでだ。
櫻井には他に頼む相手もいるんじゃないのか。いつも仲良くしてる4人組。いや、今日は来月の行事の実行委員とかで呼び出されてて、いないんだったか。
「…りょーかい!いいよー」
「やったー!ちょう、助かる!まじありがと!」
にこにこ笑って、その可愛らしい表情は一度も崩れずに会話が終わり、科学室へと少し小走りになって2人で向かった。
休み時間が終わるまで、後数分。
急がないと、終わってしまう。
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人影のない、旧校舎にある科学室の中はすごく静かで陽も当たらない場所にあるからか、普段授業を受けてる新校舎の教室よりずっと暗かった。
きっと、今日の天気が曇りなのもあるだろう
だが、電気をつけて、消す暇もないのでそのまま積み上げられたプリントの山を2人で分けて抱えて、科学室をあとにした。
「いそげ!いそげ!」
彼女が走って行くその背中には長い髪の毛先が左右に揺れて、その影から首にかけて汗が滲んでいるのが、ぼんやり見えた。
「吾妻ちゃん!階段気をつけてね!」
「おっけ」
振り返りもせず、ただ颯爽と駆けていく彼女がなんだか惜しくなって、寂しさを感じてしまった。
「ねえ、櫻井。日曜の夕方にわたし、あんたらの事見たよ」
ザーーと窓に打ち付けていく、雨音が途端に響いた。
沈黙を埋めるように、ただ鳴り止まない雨音に救われた気がする。
先程まで、いそいそとかけていた櫻井の足が止まった。広い踊り場で積み上がったプリントをそっと床におろして、ゆっくり振り返った。その時、光が満ちた。正確にいえば、雷だった。逆光で、櫻井の表情は全く見えなかったが、驚いて持っていたプリントを全て、階段にばら撒いてしまった。紙が舞って、飛んでいく光景がスローモーションで視界の角度が歪んで見えた。
「あ」
足を滑らせて、大きく転んだ。
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スカートが大きく舞った。
ドン!と大きな音がした。
それ以上は思い出したくない。
櫻井があの時、すごく優しくて、心配してくれたのは覚えてる。
ただ、あの大きな音に気づいた先生たちが駆けつけてきた。あんな静かな所にも先生いたんだ。
きっと、丸見えだったんだろうな。
あー、恥ずかしい。恥ずかしい通り越して、もはや虚無しかない。
ああ、嫌になる。嫌になって仮病で休んでしまった。
恥ずかしい。
いやだな、今頃クラスではわたしはどういう立ち位置になっているんだろうか。
あーあ、学校やめたい。
ベッドと机の間にある、小さな窓も今日は朝からずっと雨音しかしない。
雨か。どうせなら、晴れであってほしかった。
とうに、両親は出勤してしまったし、家の中には誰もいない。
特に何をする気もおきないので、リビングまで降りる。
螺旋になったガラス張りの階段を一歩ずつ降りるたびに、昨日の記憶が脳裏をよぎる。
ああ、恥ずかしい。
本当に、恥ずかしい。高校生にもなってこんな恥ずかしい、、
一階に着くと、タイミングよくインターホンが鳴った。
「はあーい!お待ち下さーい」
特に確認もしないで、玄関のドアを開けた。
開けたその、瞬間に後悔した。なぜなら、視界いっぱいに、うちの学校の制服があったからだ。
ザーーと相変わらず、煩わしい雨音が外では永遠に響いていた。視線を上にあげると、そこには櫻井の顔があった。表情まではよく見えなかった。
「なんだ、櫻井か」
「あ!吾妻ちゃん、やほー」
やばい、素が出てしまった。
まあ、ここはスルーしていこう。自然に
「はいこれー、昨日と今日の分の授業のやつ」
「他は、あたしのノート写しちゃって!」
「え!ありがとう!」
気を取り直して、にこりと愛想よく振る舞う。
「…………」
「え!小テスト返ってきてる、やば」
彼女も釣られてか、『私』が『あたし』になっていた。
とりあえず、そこもスルーして自然体に振る舞い続けるが、彼女は一向に喋らなくなってしまった。
まだ帰らないのだろうか。
正直、気まずくてしょうがない。
「………はぁ、」
息がはやくなっていく、櫻井。雨のせいかワイシャツが濡れて、肌が透けている。よく見れば肩も足も震えている。
「はぁはぁ……ぅゔ」
苦しそうに唸る声がした。頭をあげると、そこには顔を真っ赤にして涙を堪えているようだった。
庇護欲を掻き立てるとは、まさにこういうことをいうのだろうな。別に、守りたいとか独り占めしたいというのとは違う。
ただ______
「櫻井、」
ただ、純粋にそのまま私の胸に飛びこんでくる事を願った。
あ、呼び捨て
それに気づいたのももう遅くて、気づけば櫻井は手に持っていたスクール鞄と傘をガシャガシャと放して、驚いたわたしが一歩下がると、大きく一歩近づいてきた。ドアをガバッと開けて、身を乗り出してくる櫻井に、また驚く。ただその意外にも長いその両腕の真ん中にある顔を見てしまえば、何故か可愛く思えてしまった。
意識がはっきりした頃には、ドン!と大きく玄関に2人して座り込んで、ガバッと力強く、少し苦しいくらいに抱き寄せていた。
私の肩で身を捩らせながら、泣き出す櫻井。
「………櫻井、泣いてんのはじめてみた」
「っるさい」
ああ、どうやら私はヤキモチを妬いていたんだ。あの日曜日の、あの女に。
昨日の記憶が蘇る。ああ、そういえばあの後に櫻井が言ったんだ。私が大袈裟に騒いで、保健室で休んで、2人っきりになった時
『吾妻ちゃんは、嫌になった?あたしが、その……日曜、』
頬を赤らめながら、恥ずかしそうに、少しだけ泣きそうになってか細い声で話していた櫻井を見るに、きっと、櫻井は私の事が好きだ。
そう自覚すれば、櫻井を抱きしめていた腕に一層力がこもった。雨の湿度によって汗ばんだ櫻井の首や胴が温かった。お互いの体を、ぴったりと密着させようとする度に、濡れて冷たくなった服がゾワゾワと肌をざわつかせる。
広い玄関でぽつりと身を寄せ合いながら、外の雨音を他所に、可愛いな。なんて変に舞い上がってしまった。
急がないと、櫻井の荷物が濡れてしまう。
まだまだ、泣き止みそうにない櫻井の手を握って、荷物を家の中に入れる。雨を吸い込んで、しめったスクール鞄についたふわふわのキーホルダーが引き寄せる腕に毛がまとわりついた。櫻井は、このキャラクターが好きなんだ。
その動作に気づいた櫻井が先ほどまで軽く嗚咽を漏らしていたのに、私と繋いだ手をそっと放し、黙って自分の傘を拾い傘立てへとしまった。
なんとなく、気まずい時間が流れた。
でも、どうしてかまた、2人で手を繋いで玄関を後にした。
学校が終わってまだ1時間ほどしかない。
昨日休み時間の倍も、今日は時間があった。
安心と緊張と浮つく心があった。
今日は、まだ2人きりになれる。
櫻井の息も、私の息も段々とあがっていく。
耳元で吐かれる息のあたたかさと、その雨で濡れてしまった毛先からぽたぽたとシーツに雫を落としていく。肩を、弱い力で押してみた。
櫻井が私の頬に震える手を合わせた。
「鳥肌たってる、ふふ」
さっきまでの泣きっぷりとは裏腹に、上品に笑ってみせる櫻井がなんだかずるいなと思った。
たんたんと
短短
コーヒーは好きだ。
ミルクと砂糖を入れたものが特に。
だが、周りからはそれはコーヒーではない。苦いのダメなんだねなどと言われる。
不本意だ。ミルクも砂糖もないものも飲む。
好きな味加減がそれだというだけだ。
ただ最近、そう話すと誤解なくそうなんだ。と淡々と返された。
一応いらなかったかもしれないが、説明も挟んだ。
そうすれば、それはじゃあ、このコーヒーは?と勧められた。それは苦味と渋味そして少しの酸味があるコーヒーだった。
「美味しい」
思わず出た言葉だった。
「このコーヒーには、ミルクや砂糖はいれてはだめだ。完璧でなくなる。」
そう言えば、満足そうに微笑んでしばらくして颯爽と会計を済ませ、消えた。