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雨の日に
【錆side】
ぐしゃ、じゃっ、ばしゃっと乱雑に水溜りを蹴散らして歩く。
今日の依頼を終えて、帰路に着くと、晴天がいきなり土砂降りになったのだ。
雨男になったのは一体いつからだったのだろうか。
どうでも良いようなことをぼんやりと思い浮かべ、家に向かって歩く。
頭から尻尾まで完全にずぶ濡れだ。
「これが本当の濡れ鼠ってな、はは・・・・・もうやだ・・・」
そう、自分は今、傘など持っていなかった。
背が高くてよく地面が見えないのが半分、苛立ち半分で水溜りを蹴り続ける。
ガコッ
「ほぁっ」
「ん?」
水溜りじゃなかった。なんだこれ。ダンボール・・・?
しかもなんか変な鳴き声がしたぞ。犬か?猫か?どうか前者であってくれ。
電柱の影になったところに、折れたビニール傘とダンボールが置いてある。
デカすぎる図体を屈ませ、覚悟を決めて箱の中身を覗き込んだ。
「こんにちは、?はっくしゅん」
「は・・・・」
箱に入っていたのは・・・鼠?なんで?こういう時って大体は猫か犬だろ。
泥を被ったような色の自分とは大違いの、白の毛並みと赤い目。
古びたTシャツと短パンを着ただけのハツカネズミ。
俺の顔にビビらないのか?度胸あるな。
てか・・・・
「ちっっっっっっさ。天使か?」
「お兄さんは誰ですか?っくしゅ」
かわよ。え、かわいい。何これかわいい。やばいくらいかわいい。
誰だよこの天使を土砂降りの日に捨てたのは。もっったいな。
質問に答えるのも忘れて、目の前の天使を眺め続ける。
「お、お母さんとかは?この辺にいたりしない?」
「?いないのです」
「ンッッ・・・お、お父さんも?」
「いないのです」
居ないのか。ある意味セーフか。今の俺、完全に不審者だろうしな。
通報されてもおかしくない。箱に入った女児と、ずぶ濡れの成人男性。
やばい絵面すぎる。
「お家は?」
「分からないのです」
「し、知り合いとかは・・・」
「居ないのです」
「んん〜・・・・」
困ったな、放置する訳にもいかないし、
「あっ1人だけ居るのです」
「おっ、誰?その人のところまで連れてくよ?」
「お兄さんなのです!」
「ンッッッお、お兄さんは・・・知り合い、ではないなぁ・・・」
びしっと指をさされ、満面のドヤ顔で言われた。
しかしどう考えても違う。数分前に会った不審者を知り合いとは言わない。
「お兄さんが知り合いなので、お兄さんのところに連れてってもらえるのですね」
「えぇ・・・」
戸惑いが滲んだ声と、引き攣った笑み以外にできることは何もなかった。