動物と獣人と人間の入り混じる世界で、平和に生きる2人の鼠とお友達の御話。
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目次
キャラクター紹介
【動物】
現実世界と同様。稀に言葉を話すものがいる。
【獣人】
動物と人間の中間にいる。言葉を話す。獣具合は個人差がある。
【人間】
現実世界と同様。獣人とまではいかないが動物ぽい、という人もいる。
暁
ハツカネズミの女の子の獣人。小柄ですばしこい。
警戒心が低いため、知らない人にもホイホイついていく。
おとなしそうに見えるが、意外と活発。
どこから来たのか本人もよく分かっていない。
錆の家にお手伝い兼居候している。
錆
ドブネズミの成人男性の獣人。大柄でいつも顰め面。
実は高所恐怖症で、素直にものを言うのが苦手。
気が荒いと思われることが多いが、意外と優しい。
雨の日に暁を拾って、なんとなく家に置いている。
鍵師をやっていて、知り合いが多い。
まだ増えたら紹介しますネ
雨の日に
【錆side】
ぐしゃ、じゃっ、ばしゃっと乱雑に水溜りを蹴散らして歩く。
今日の依頼を終えて、帰路に着くと、晴天がいきなり土砂降りになったのだ。
雨男になったのは一体いつからだったのだろうか。
どうでも良いようなことをぼんやりと思い浮かべ、家に向かって歩く。
頭から尻尾まで完全にずぶ濡れだ。
「これが本当の濡れ鼠ってな、はは・・・・・もうやだ・・・」
そう、自分は今、傘など持っていなかった。
背が高くてよく地面が見えないのが半分、苛立ち半分で水溜りを蹴り続ける。
ガコッ
「ほぁっ」
「ん?」
水溜りじゃなかった。なんだこれ。ダンボール・・・?
しかもなんか変な鳴き声がしたぞ。犬か?猫か?どうか前者であってくれ。
電柱の影になったところに、折れたビニール傘とダンボールが置いてある。
デカすぎる図体を屈ませ、覚悟を決めて箱の中身を覗き込んだ。
「こんにちは、?はっくしゅん」
「は・・・・」
箱に入っていたのは・・・鼠?なんで?こういう時って大体は猫か犬だろ。
泥を被ったような色の自分とは大違いの、白の毛並みと赤い目。
古びたTシャツと短パンを着ただけのハツカネズミ。
俺の顔にビビらないのか?度胸あるな。
てか・・・・
「ちっっっっっっさ。天使か?」
「お兄さんは誰ですか?っくしゅ」
かわよ。え、かわいい。何これかわいい。やばいくらいかわいい。
誰だよこの天使を土砂降りの日に捨てたのは。もっったいな。
質問に答えるのも忘れて、目の前の天使を眺め続ける。
「お、お母さんとかは?この辺にいたりしない?」
「?いないのです」
「ンッッ・・・お、お父さんも?」
「いないのです」
居ないのか。ある意味セーフか。今の俺、完全に不審者だろうしな。
通報されてもおかしくない。箱に入った女児と、ずぶ濡れの成人男性。
やばい絵面すぎる。
「お家は?」
「分からないのです」
「し、知り合いとかは・・・」
「居ないのです」
「んん〜・・・・」
困ったな、放置する訳にもいかないし、
「あっ1人だけ居るのです」
「おっ、誰?その人のところまで連れてくよ?」
「お兄さんなのです!」
「ンッッッお、お兄さんは・・・知り合い、ではないなぁ・・・」
びしっと指をさされ、満面のドヤ顔で言われた。
しかしどう考えても違う。数分前に会った不審者を知り合いとは言わない。
「お兄さんが知り合いなので、お兄さんのところに連れてってもらえるのですね」
「えぇ・・・」
戸惑いが滲んだ声と、引き攣った笑み以外にできることは何もなかった。
誘拐ですか?
「〜♪」
「・・・・・」
やめろ。そんなキラッキラの目を俺に向けるな。
完全に連れて行って貰えると勘違いしているようだが、そんなことできるはずない。
鼻歌まで歌い出した目の前のハツカネズミにかける言葉も見つからない。
埒が開かないので、交番に連れて行くことにした。箱ごと、そっと持ち上げる。
「よっ、と」
「わぁ〜!」
「はしゃぐなコラ、落ちるだろうが」
咄嗟にキッと睨んでしまった。怖がられただろうか・・・?
このままだとこの子まで濡れるから、と横の壊れかけの傘に触れてみた。
少しは使い物になるかと思ったが、骨が出てるの穴だらけだので全く使えない。
仕方がないので、さっきまで着ていた黒革の男物のコートをダンボールに被せる。
首元にファーがついてるから、多分寒くはない、と思う。
「あったかーい!」
大丈夫そうなのでそのまま交番に着いた。
「すいません、この子についてなんですけど」
入り口のデスクで居眠りしている茶髪の犬獣人の警官に声をかけた。
犬のお巡りさんかよ。
「ぐー・・・」
起きねぇなコイツ。
「も・し・も・し?」
ガッと距離を詰めて男の耳元で低温ボイスで囁いてみる。
「ごがっ・・・はっっすみません!!なんの御用で!?」
「この子についてですって言っとるやろうが」
キレ気味に言う。
「えっ可愛い〜!素敵なお子さんですね!」
・・・・・・・・・・・素敵なお子さんですね・・・?
「は、いや違っ」
「で!お子さんがどうかしましたか?」
「違うっつってんだろうが・・・!人の話を聞け・・・!」
「あああすみませんすみませんゆゆゆ誘拐ですか!?」
「話を聞けっっ!!」
お互いに焦りすぎてとんでもない方向に話が逸れていく。
頼むから説明をさせてくれ。『逮捕』の2文字が頭を回り始めた時、
「おまわりさん!」
箱と上着の間から白い耳が覗いた。
犬のお巡りさん
【暁side】
お兄さんに被せてもらった上着があったかくてウトウトしてたら、
自分の頭上で言い争っている声で目が覚めた。上着越しでよく聞こえないけど、
何やら暁の話をしているらしい。
「普通、迷子の子猫ちゃんが来ますよね!?僕は犬のお巡りさんですよ!?」
「うるせぇ!!別に鼠が来たっていいだろうがよぉ!!」
「誘拐犯の言うことなんて信じません!!」
「だから違うって言ってんだろ!!話聞けよ!?」
・・・違うかもしれない。
お兄さんはどうやら、誘拐犯だと思われてお巡りさんに怒られているっぽい。
これは、暁の出番だ!今こそ箱から飛び出して、親切なお兄さんを救うのだ!
「お巡りさん!」
「「!!」」
お巡りさんとお兄さんが驚いた・・・気がする。
気がするって言うのは、暁から外が見えていないから。
ダンボールがあまりに大きいので、背伸びをしても耳までしか出られない。
言葉を続けようとした時、箱がガタっと揺れた。それから上着がどかされて、
いきなり明るくなった。お兄さんがダンボールを机に置いたんだ。
お兄さんは少し疲れたような顔をしてこっちを見ている。
多分、お巡りさんのせいだよね。さっきは声しか分からなかったお巡りさんは、
ふわふわした優しそうな見た目をしている。
あの人からさっきの声量が出ることにちょっとびっくりした。
眩しさに目を慣らしていると、いきなりお兄さんが暁を持ち上げた。
「・・・・」
無言。左手で暁のTシャツの首元を後ろから掴んでいる。
ぽかんとしていると、また箱に戻された。
暁は気付いた。さっきより目線が高くなったことに。
お兄さんが暁を左手で持っている間に、右手で箱にコートを詰めたのだ。
「やっぱりお兄さんは親切な人なのですね!」
「どうとでも言え」
気を取り直してお巡りさんの方を向く。
「お兄さんはいい人なのですよ!誘拐犯呼ばわりは失礼なのです!」
「そ、そうなんですか?」
「そうなのです!暁のこと連れていってくれるって言ってました!」
「それを誘拐っていうんですよ!!」
「頼むこれ以上誤解を生まないでくれ・・・!」
お巡りさんの目つきがスッと鋭くなり、お兄さんの顔はこれ以上ないくらい青い。
なんだか暁のせいでお兄さんが余計に怒られてしまったようだ。
「頼むから俺から説明させてくれ。お前は本当かどうか言えばいい。」
「わかった!」
「・・・なら話を聞いてあげないこともないですけど」
お兄さんの眉間の皺はとんでもなく深い。割り箸くらいなら挟めそう。
2人は、ようやく男の話に耳を傾け始めたのだった。
いちごキャンディ
【錆side】
「いいか?俺はコイツを拾って、|ここ《交番》に連れてきただけだ」
「今のところはそうなのです」
「はいはい・・・で?」
「両親も家も分からないらしいから、知り合いも聞いたが居ないと言われた」
「合ってるのです!そしたらお兄さんがお兄さんのお家連れてってくれるって!」
「へぇ・・・」
一気にお巡りの目が冷たくなる。なぜこのハツカネズミは誤解を次々作るんだ・・・
「知り合いがいれば連れて行くと言ったら俺が知り合い認定されただけだ」
「むー・・・でも実際お兄さんしか知り合いはいないのですよ」
「そうなんですね?うーん、お名前は?」
「暁なのです」
「暁ちゃんね〜、良く言えました!いちごキャンディあげちゃうよ」
「・・・」
お巡りは満面の笑みで飴を取り出して暁に渡そうとしている。どっから出したんだ。
が、一向に受け取る気配がない。おかしい。
コイツは俺にホイホイ持ってかれるような警戒心の低い獣人のはずだが。
なんかお巡りに対しての敵対心強くないか?飴を差し出した犬の手に、
今にも噛みつきそうな視線を向けている。ぶりっ子には懐かない感じか。
薄々気付いていたが、さてはこのお巡り、裏の顔と表の顔の差が激しいな。
「お前のことは苦手だってよ。残念だったなお巡りさん」
「・・・はは」
なんかお巡りが可哀想になってきた。
多分腹黒い部分をガキに見抜かれて焦っているな。死んだ目を隠しきれていない。
「お巡りさん、お兄さん虐めるからヤな奴なの」
「庇ってくれてどーも」
お巡りより俺の方が懐かれてるんだな。ちょっと、嬉しくないこともない。
お巡りが可哀想なのでどうにかしてあげようか。いいこと思いついた。
声を顰めて暁の耳元で囁く。
「暁、実は俺、甘いもの好きだからさ、代わりに飴受け取ってくれよ」
暁はコクコクと頷き、しょうがないなという顔でお巡りの手から飴を取った。
はい、と自慢げに俺に渡してくる。手ちっっっさ。可愛い。