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第26話 君といた証
※歌詞のせいで縦に長いです。おそらくスクロール大変です。すみません。
椅子が派手な音を立てて倒れる。
みんなが一斉にあたしを見て、不審げな顔をした。
阿佐美さんの鋭い声が飛んでくる。
「ちょっと何してんの!? 音聞こえないじゃん! 変な行動やめてよ!」
「あ、ごめん……」
あたしは蚊の鳴くような声で返事をして、ふるふる震える手で倒れた椅子を起こし、すとんと座った。
そんなことをしてる間に、曲は流れ終わって止んでしまった。
だけどそのリズムは、メロディーは、……あたしの頭の中に焼きついてる。
あたしは恐る恐る合唱曲集を開いた。薄いページがめくりづらい。さくいんで「き」を探す。すぐに見つかるはずなのに、気が急いてなかなか見つからない。
「あった……」
小さく呟く。
「君といた証」。
さくいんが示すページをゆっくりとめくると、現れる五線譜に並んだ黒い音符たち。
あたしは楽譜なんて全然読めないけど、歌詞を見た瞬間に、あたしの中には、その曲がそっくりそのまま、まるで直接聞いてるみたいに、
レコードが、流れ出した。
『君といた証』 作詞・作曲:不明 編曲:|神楽宮《かぐらみや》マサト
夕焼けの帰り道、二人で歩いた日のことを
君は今も覚えてるかな
流れ出す思い出のレコード
落書きしたノートに 皺のよった制服
黒板の隅の相合傘 屋上の秘密基地
今この手にはなくとも あの日々は色褪せはしない
すみっこのガラクタは宝物になる
過ぎ去った記憶は宝物になる
心の陽だまりも 小さな痛みも
全部君といた証
君が忘れても覚えていよう
さよならは言わない
いつか会う日のために「またね」
青空の放課後、水をやった芽は
小さなつぼみをつけました
光り出す明日への道標
どうすればいいの? 出口なしの迷宮
信じる道を進めばいい いつかの君の言葉
全部君といた証
あの日々抱きしめて
力振り絞って進もう
愛しい思い出
振り返ってもいいんじゃない?
心の陽だまりも 小さな痛みも
あふれこぼれる笑いも 静かな涙も
全部君といた証
全部僕を作ってる
泣いてもいいよ
だからまた前を向こう
諦めないでと君は言った
さよならは言わない
いつか会う日のために「またね」
君といた証 抱きしめて
希望の水をやり続けたら
小さなつぼみも
いつか花を咲かせる
その日に君に会えますように
忘れてないよと 言えますように
この想いは全部、
君といた証だから
君といた証が、
僕を作ってるから
─────────────────
ぷつっと音を立てて、踊り歌う音符が消える。鳴り響いていたレコードがやむ。
手はいまだに小刻みに震えてる。
語りかけるような優しいバラード。一年生が歌う割にはどちらかというと卒業ソング的な雰囲気。
だけどあたしが気にしてるのはそこじゃなくて、
**これ、あたしじゃないの?**
全部見透かされてるみたいで、怖くなる。
みんなと過ごした証を、「あたしのいなかった」残酷なこの世界で立つための支えにしてるあたし。
なんとなく過ぎてったはずの日々は──、今やあたしにとって、今はないけど、決して手放せない何よりも大切な宝物。
『君が忘れても覚えていよう
さよならは言わない
いつか会う日のために「またね」』
みんながあたしを忘れても……、あたしはみんなを覚えてる。はっきりと。
さよならなんて、あたしは言わなかった。
そう、
**“あの日“ も、あたしは、言わなかった。**
その代わり──、
「またね!」
あたしの脳内で、誰かが叫んだ。
どうしても“あの人“に伝えたいと、必死に手を伸ばして。
朦朧と浮かび上がる、いつか見た風景。ひしめき輝く緑。
ここ、どこ?
懐かしくて、でも寂しくて、切なくて──。
「……ハル? どうしたんだ?」
「うえっ!?」
思わず飛び跳ねた。
久遠が心配そうにあたしの顔をのぞいてる。
「あ、あれ? あたし…‥」
曲があたしのことを言ってるみたいで衝撃的で、それで……なんだっけ?
もやがかかってるみたいで思い出せない。
その瞬間、ぐうっとお腹が鳴った。
「やばっ」
赤面すると、久遠がクスッと笑った。
「お前、ほんとに腹減りすぎだろ」
「だって! 空くでしょ!? 久遠すかないの!?」
「んー……そーでもないな」
「ええ……!? ねえ久遠、あんた今絶賛成長期じゃないの!? 食べないと背ぇ高くならないよ!」
「お前親かよ……。俺は問題ない。一学期だけで6センチ伸びた」
「うっそぉ! あたしほんのちょっとしか伸びてないのにいい!」
嘆くあたしに「うるさいなもうちょっと静かにしろ」と注意する久遠。
学校ではみんながあんま見てない時にこれくらいしか喋れないけど、やっぱこの時間は嬉しいし楽しい。
そうかあたし美味しい給食の幻想でも見てたのかもしれないな。カスミン先輩にもしょっちゅう「食への執着心がすごいね」って言われてるし。お腹空くだけなんだけどなあ……。
相変わらず本を読む瑠璃乃が目に入って……思い出す。
『信じる道を進めばいい いつかの君の言葉』
久遠は……あたしが瑠璃乃がいじめられてる事実を知った時に、そんなようなことを言った。
あたしはブルリと身震いする。
多分偶然だ。合唱って、こんなようなこと言ってる曲多いもの。
それにしてもこの曲、なんだか空恐ろしくて…‥、
**あまりにもいい曲だ。**
あたしは立ち上がる。
いつの間にか授業は終わっている。
「給食♪ 給食♪」
「ハルちゃんほんと給食好きだねえ」
りのんにまで言われてしまった。
「ここの給食美味しいじゃん? 今日麻婆豆腐だってさ、楽しみすぎる!」
あたしはにかっと笑う。
給食もまた食べれるようになってよかったなあ。前も美味しいと思ったけど食べるのがあたりまえだったけど、今は毎回死ぬほど感動してる。
……今のあたしにわかるのは、あたしはあの歌を歌いたいということ。
頭の中では、いまだにあのフレーズが流れている。
優しく痛いレコードが、何百回、何千回。あたしに語りかけるように。
今この手にはなくとも あの日々は色褪せはしない
すみっこのガラクタは宝物になる
過ぎ去った記憶は宝物になる
心の陽だまりも 小さな痛みも
全部君といた証
君が忘れても覚えていよう
さよならは言わない
いつか会う日のために「またね」
王こと虎こと守護霊ことキングは怒っていた。ハルがなかなか自分をポシェットから出さないからだ。ずっとチャックを閉められたままでは息も詰まるというものだ。
確かにこのポシェット、王様の天蓋付きベッドで寝ているような最上級の居心地なのだが……たまには外の空気も吸いたい。頭のネジが抜けた不甲斐ない無礼な主こと明里ハルがどんな奴らと話しているのかもわからない。
キングは思う。我が寛大で立派な守護霊で真の王だからこそ奴を守ってやるために外に出たいのだ。決して、なんか学校という場所が面白そうだから見てみたいという訳ではない。給食を食べてみたい訳ではない。……多分。
まあ、見られないように連れて行けと言ったのはキング自身なのだが。
なぜか他人に見られてはいけないと守護霊的本能がキングに教えているのだ。理由は本人にも不明である。
とりあえずポシェットで暇を持て余しているキングにも、音は聞こえてくる。
キングも、「|黄身溶いた明石焼き《君といた証》」なる題名の曲を聞いた。
その瞬間、脳に穴が空いているのではないかというほど馬鹿な主は後ろにひっくり返りかけた。ドーンという衝撃。ポシェットのキングも巻き添えである。舞ったポシェットは床に激突し、キングも脳天衝突である。はなはだ迷惑な行為だ。真の王への無礼として、許されるものではない。
しかし──キングの頭も、そのど派手な音と同じぐらいの衝撃に支配されていた。
あの曲──何かが、おかしい。
守護霊の本能が、おかしいと告げている。
まるで主に起こったことをそのまま曲にしたようではないか。
主が経験した心臓をちぎられるような出来事の数々を全て知るものは、主本人と影宮久遠と自分以外はいないというのに。
いや、知るとしたら、あやつらなら……。
奴らは記録のも、
「……むむ? なんであったか……」
さすが主と同じくネジの外れたキング、即座に何を考えていたのか忘れた。
しかも外からは濃厚で塩気のある、旨み成分たっぷりの匂いが漂ってくる。
「こ、これがまぁぼぉどーふなる食い物……」
キングはごくりと唾を飲み込む。
見えないが、さぞ美味なのだろうっ……。
守護霊は食事は必要ないが、食べることはできる。
キングはかっこつけた言い方をすると美食家である。
主め、真の王の我に食事を貢がないなんて無礼者……ッ!
キングはギリギリと犬歯を歯軋りさせるのであった。
曲の歌詞考えるの大変だった(全て自作、駄作)
今回は誠に勝手ながら超おすすめ短編カフェ小説を紹介させていただきます。
「探偵部!」
私のリア友あおちゃん(ユーザーネーム:あお)が書いてる小説なんです! いやもうこれが面白くて面白くて面白くて、私は一日に30回更新確認しています。
スキルっていう超能力がある世界線の学校の探偵部ですね。
不穏がマシマシで……伏線らしきものも……色々ヒヤヒヤさせられる、そしてそれが超面白い……。
キャラも個性が強くてすごくいいです。
あおちゃんの前作の「転生したら元王女でした」と繋がりがあるので、そっち読んでからの方がいいかな?
とりあえず伝えたいのは、
ものすごくものすごくものすごく面白いので、絶対に読めッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!
ということです。
ちな、本人もものすごくいい子で、優しくて、面白くて、頭良くて、運動神経もいいという神様みたいな人ですよー!!!!!