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君が飛び降りるのなら僕は
あいぼー組です
とある夕日の綺麗な放課後のこと。
俺は息を荒くしながらも気にせず階段を駆け上がる。
その先にあいつが待っているだろうから。
昔からあいつは寂しがり屋だった。だからいつもあいつが望んだら俺はあいつのそばにいて、俺が望んだらあいつも俺のそばにいてくれた。
お互いを信頼してる関係。相棒なんて呼ぼうか。
「っ…やっと、着いた……、よお
大先生」
「…シッマ。」
俺は今にも自殺しますよ〜みたいな顔をしているあいつ…大先生のところへ来た。
ちょっとまだ死ぬには早い気もするねんな。
「ちょっとだけ聞いてや。相棒、」
「ええで、相棒。」
「俺はまだまだ、大先生のことを知らんかもしれん。でも、お前のことをなんでも知っている気がすんねん。それはお前が大事やから。
出会った日のことはあんまし覚えとらんかもしれん。昔の話やから補正があるかもしれん。
ただ、お前と知り合えた時に、感じたんや。
"お前を守らなきゃ"って。
綺麗事を並べているのに変わりがないのはわかってる。でも、こんな状況を目の前に綺麗事を並べない人なんてそうそういないと思う。
そんな人の中の1人も俺だ。」
「…何が言いたいんや」
「虐待を受けてたり、ずっといじめられていたり、死にたいと思った俺を救ったのは誰や?
お前だろ?それなのに俺より先に逝くなんて俺が絶対に許さへん。もしも本当に逝きたいなら、俺を連れてけや。最後の我儘や。」
俺は思っていたことを口に出す。
半分綺麗事を並べただけで、半分本心のもの。
いつだろうか。大先生に救われた俺は、ますます大先生を守らなきゃっていう使命感が強くなった。いつか壊れてしまいそうなくらい、ガラスのようなやつだったから。
だからクラスのみんなは「扱いが難しい」なんて口を揃えて言う。
なんや。大先生は物ちゃうぞ。
彼らが言う、「扱いが難しい」大先生を俺はいつもそっと丁寧に扱っていた。まぁ、大先生に寄り添っていた、の方が正しいかもしれない。
「シッマって、ほんまそういうとこよな。」
「え?」
「シッマの長所。
身長高くてイケメンで。勉強も運動もずば抜けてできるし。そして何より、お前のいう"大切な人"に自分の気持ちをしっかりと伝えることができること。」
「…大先生には本心、あんま言ってへんで。」
「嘘つけ。じゃなかったら心優しい人思いな子はこんなやつのために泣きませんよ。」
あれ、いつの間にか泣いていたようだ。
気づかなかった。
ああ、そういえばそうだ。
俺は昔から泣く時は静かに誰にもバレないように泣いていた。だから空き教室の影でいつも泣いていた。そんなところにたまたま大先生が入ってきたんやっけ。
「ほんまに、綺麗に涙流すな、お前。」
「人のこと言えへんやろ…」
「……さぁ。」
「さて!大先生!飛び降りようや!」
「え、」
「なんや?強引にでもやめさせられると思ったか?そんなことせえへんで。お前が決めたことや。俺に拒否権なんてないわ。
さっきのはただ、俺の思いを伝えただけ。」
「僕らの絆甘く見てたわぁ…」
俺はフェンスを乗り越えようとはしなかった。
何かを忘れている気がするから。
何を忘れとるんやろか…
「あ、せや。」
「ん〜?」
「見たいテレビあるん忘れてた。」
「…ぶっ、アッハッハハッ!シッマらしいや!!」
「忘れとってん!それ見てから飛び降りん?」
「ええよ。」
「拒否権なーし!!」
「「ゆびきりげんまん、」」
俺たちは今、約束をした。
2人で飛び降りるという約束だ。
けれど、見たいテレビがあるしぃ…うう…
飛び降りのは後にしよう!!
すると大先生は「いいよ」と言ってくれて俺たちはそこで別れた。
「…もうちょっと大先生と居たかったなぁ…」
……なんで俺はそんなこと思うんだろう?
なんだろう、この胸のもやもやって。
大先生と一緒に逝けるから嬉しいのに、
大先生と生けないことが悲しい。
じゃあ止めればいいじゃん?
残念。"拒否権なーし"
俺は家に帰り、布団へ飛び込んだ。
制服がシワだらけになってしまうことを気にせずそのまま俺は特に意味もなく目を瞑り、1日が終わりを告げそうになる。
俺は悪い子かもしれない。
大先生のしたいことを全力で肯定してあげられなかった。
いつもの俺ならば、「じゃあね」と送ってあげられたはずなのに。なんでだろう?
……
さすがに友人が死ぬところを見たくなかった?
いや違う。
死なせたら効率が下がってしまうから?
コレも違う。
だったら、なんでなんや?
わからない。
自問自答を繰り返していくうちに一つの考えに辿り着く。
ー大先生が好きだから。
いやいやいやいやいや…
「考えたくもない事に辿り着いてしまった…」
俺は全力で違うという意思で手を全力で横に振る。
俺はここで考えるのをやめ、眠りについた。
案外あっさり寝れたので疲れていたのかと思う。
だから、夜の雨は全然気にならなかった。
誤字脱字等は見逃してくださいまっくすぴーぽーくん