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4月ー桜と共に
自分の体験ふまえつつ書いてます。仲良くなった友達と第一印象を言い合うのが好きです笑
入学式はガチガチに緊張しました。懐かしい思い出です。
長っ……私立女子中学校の入学式。校長先生のありがたいお話をパイプ椅子のうえで聞きながら、舞は心の中で小さくため息をついた。中学受験という高い壁をなんとか突破して、やっと手に入れた新しいセーラー服。周りを見渡せば、みんな賢そうで、どこか品が良くて、なんだか自分だけ浮いているような気がして落ち着かない。「あの、これ」緊張で無意識にスカートをいじっていた舞の前にすっと小さなプリントが差し出された。隣の席の女の子からだった。「式次第、落としたみたいだよ」彼女はそう言って、初対面の舞にふわりと優しく微笑んだ。おろしたての制服がよく似合う、親しみやすい綺麗な笑顔。それが葵だった。「あ、ありがと」誰にでも自然に手を差し伸べられるような葵の優しさに、舞は少し気恥ずかしさを覚えつつも、冷え切っていた緊張が少しだけほぐれるのを感じていた。
やがて校長先生の長いお話が終わり、拍手の音とともに張り詰めた空気が一気に緩む。新入生たちは担任の先生の誘導に従って、パイプ椅子を片付け、それぞれの教室へと移動することになった。「ねえ、さっきは本当にありがとう。私、長谷川 舞。よろしくね」教室へ向かう廊下、舞はさっきのお礼を言おうと、思い切って隣を歩く葵に声をかけた。「ううん、気にしないで。私は日向 葵。よろしくね、舞ちゃん」葵はやっぱり、ふわりとした優しい笑顔を浮かべた。その丁寧で物腰柔らかな雰囲気に、舞は(やっぱりお嬢様っぽいなぁ)と少し気後れしそうになる。教室に入ると、たまたま二人は前後の席だった。全員が着席すると、教壇に立った担任の高橋先生がパンフレットを配りながら明るい声で言った。「改めまして、みなさん入学おめでとうございます! 今日は最初のホームルームなので、まずは出席番号順…ではなく出席番号が遅い人から一人ずつ、簡単な自己紹介をしてもらいましょう」教室にピリッとした緊張が走る。前の席から順番に、みんな緊張で声を震わせながらも「趣味はピアノです」「早く学校に慣れたいです」と、品良くお利口な自己紹介を続けていく。やがて、葵の番が来た。葵はすっと立ち上がると、スカートの裾をきれいに整え、クラス全体を見渡してふわりと微笑んだ。「日向葵です。趣味は読書と、お菓子作りです。まだ慣れないことばかりですが、クラスの皆さんと仲良くなれたら嬉しいです。1年間、よろしくお願いします」(うわ、完璧……)舞は感心してしまった。おろしたての制服が本当によく似合っていて、まるでお手本のような、誰からも好かれる完璧な自己紹介だった。パチパチと温かい拍手が起きる。「はい、次は長谷川さん」先生に促され、舞はガタッと勢いよく椅子を引いて立ち上がった。可愛いお嬢様風の自己紹介が続く中、舞は自分の飾らない本音をそのまま口にする。「長谷川舞です。中学受験の勉強がめちゃくちゃしんどかったので、合格してやっと解放されたって感じです! 部活はまだ決めてないです。趣味はドラマを見ること。本を読むのは苦手です。まあとにかく毎日楽しく過ごしたいと思ってます。よろしくお願いします!」ズバッと本音を混ぜた勢いのある自己紹介に、教室の何人かが「ぷっ」と吹き出し、一気に親しみやすい空気が広がった。舞が席に戻ると、前の席の葵が振り返って「舞ちゃん、面白いね」と小さくクスッと笑ってくれた。自分が思っていることをただ言っただけの舞は(そうかな??)と不思議に思った。
全員の自己紹介が終わり、先生が黒板の文字をトントンと叩いた。「では、次は『学級専門委員会』の係を決めていきます。一人一役、必ずどこかに所属してください。まずは一番大事な、クラスのまとめ役『級長(学級委員)』を男女……あ、女子校だから二人ですね。やりたい人、立候補はいますか?」教室がシーンと静まり返る。さすがに初日から、責任の重い級長に立候補するような猛者はいない。先生が困ったように苦笑いした、その時だった。クラスの真ん中の席に座っている、少し派手で気の強そうな女の子が、大きな声で言った。「先生ー! 日向さん、さっきの自己紹介もすごくしっかりしてたし、級長にぴったりだと思います!」「あ、私もそう思う!」「日向さんなら優しそうだし、みんなをまとめてくれそう!」その声に流されるように、周りの子たちも「日向さんがいい!」「賛成ー!」と口々に言い始めた。まだお互いのことをよく知らないからこそ、一番印象の良かった葵に押し付けようという、教室の「空気」が出来上がっていく。舞が前の席の葵を見ると、葵は小さな体をさらに縮こまらせて、困ったように手元の消しゴムをいじっていた。舞は背中をトントンと突ついた。「葵、どうしたの? 級長やりたいの?」「あ、えっとね……」葵は振り返り、周りに聞こえないような消え入る声で呟いた。「私、本当はそういう前に立つ仕事、すごく苦手で……。本当は図書委員がやりたいな、って思ってたの。でも、みんなが推薦してくれてるのに『嫌だ』なんて言ったら、雰囲気を悪くしちゃうよね。だから、私でいいなら、やろうかなって……」葵の困ったような笑顔には、自分の気持ちを押し殺してでも周りに合わせようとする、危うい優しさが見え隠れしていた。(なんだそれ。やりたくないなら、やりたくないって言えばいいじゃん。みんな自分たちがやりたくないから葵に押し付けてるだけなのに!)舞の胸の中で、小さなイラ立ちと、それ以上の「放っておけない気持ち」が湧き上がる。入学式のとき、葵の笑顔に救われた舞は、思ったことを溜め込めるタイプではなかった。「はーい、先生!」静まり返った教室に、舞のハキハキとした声が響き渡った。推薦していた女子たちが一斉に振り返り、葵も驚いて目を見開く。「長谷川さん、何か推薦ですか?」と先生。「違います! みんな日向さんが優しそうだからって、勝手に盛り上がって押し付けるの、ずるくないですか? 日向さん、本当は前に立つのが苦手で、図書委員がやりたいって困ってます! 本人が嫌がってるのに空気で決めちゃうのは絶対におかしいです!」ズバッと本音を言い放った舞に、教室内が一瞬でシーンと静まり返った。言い出した女子グループが「なによあいつ……」という視線を向けてくる。舞はそんな視線を気にも留めず、前の席で完全に固まっている葵の肩をぽんと叩いた。「ね、葵。級長じゃなくて図書委員がいいんだよね?」「えっ!? あ、う、うん……っ」葵は真っ赤になりながらも、舞の真っ直ぐな目に背中を押されるように、小さく、けれどしっかりと頷いた。「私、本を読むのが好きなので……できれば図書委員がいいです」葵が勇気を出して本音を口にした。「よし、じゃあ日向さんは図書委員に決定! 級長はちゃんとやりたい人で選び直そう」先生がそう言って黒板に向き直った瞬間、教室の空気は再びどんよりと重くなった。さっきまで葵を推薦していた女子グループも、自分たちが押し付けられるのを察して、急に下を向いて知らんぷりを決め込んでいる。「……誰かいませんか? 誰もいないなら、出席番号順で決めちゃうけど……」先生の困り果てた声が響く。出席番号順になれば、当然、最初のほうの生徒が強制的に選ばれる。教室のあちこちから「えー……」「最悪……」という不満のつぶやきが漏れ聞こえた。(はぁ? 自分たちで葵に押し付けようとしといて、自分がやるのは嫌なわけ?)その身勝手な空気に、舞の胸の中で再びイラ立ちが爆発した。元々は自分がやりたかったわけではない。でも、このままダラダラと押し付け合う時間が続くこと自体が、舞にとっては死ぬほどイライラすることだった。「あー、もう! 誰もやんないなら私がやります!」舞がバッと勢いよく手を挙げると、教室中の視線が一斉に彼女に集まった。先生も驚いたように目を見開く。「えっ、長谷川さん、やってくれるの?」「はい。みんなが下向いて黙ってる時間がもったいないんで。その代わり、文句言われても私のスタイルでズバズバ仕切らせてもらいますからね!」潔すぎる舞の宣言に、教室内から「おお……」とどよめきが起き、続いてパラパラと、どこか安堵したような拍手が湧き起こった。「よし! じゃあ一人目の級長は長谷川さんね。もう一人は……」舞の男気(?)に当てられたのか、その後は別の席の大人しそうな女の子が「じゃあ、私もやります……」と小さく手を挙げ、もう一人の級長も無事に決まった。ホームルームが終わり、解散のチャイムが鳴る。前の席の葵が、今度はいまにも泣きそうな、申し訳なさそうな顔で振り返った。「舞ちゃん……ごめんね。私のせいで、舞ちゃんが大変な級長になっちゃって……」「は? なんで葵が謝るのさ。私が自分でやらせろって言ったんだから、葵のせいじゃないよ。それにさ」舞はカバンに筆箱を放り込みながら、ニカッと不敵に笑った。「私が級長なら、これからクラスの決め事があるとき、葵にやりたくないこと絶対に押し付けられないように職権乱用できるじゃん。好都合だよ!」「あ……」葵はぽかんと口を開けた後、胸がいっぱいになったように、愛おしそうな笑顔を浮かべた。「ふふ、そうだね。舞ちゃんが級長なら、このクラスはすっごく楽しくなりそう」放課後。校門へと続く帰り道、夕日に照らされながら二人は並んで歩く。「でもさ、級長って何するんだっけ? プリント配るくらい?」「ううん、学校行事の司会とか、5月にある体育祭の種目決めとか、いろいろ仕切らなきゃいけないんだよ?」「げっ、まじで? 体育祭の種目決めとか、絶対みんな自分のやりたいことばっかり言って揉めるじゃん……」「大丈夫だよ。その時は私が、図書室の仕事の合間に舞ちゃんを全力でサポートするからね」誰にでも優しく、けれど自分を出すのが苦手な葵。思ったことを何でも口にする、不器用だけど真っ直ぐな新米級長の舞。正反対な二人の、凸凹だけど特別な6年間が、この新しい教室から本格的に始まろうとしていた――。
入学式当日とは思えない物語ができてしまいました…(自己紹介で日付区切ったほうが良かったかも)
舞と葵の物語はこれからも続けるつもりです。
ここが何か変だなとか面白かったなど教えてくれると嬉しいです!