葵の「あお」と舞の「まう」を入れてみました。
4月ー桜と共に
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4月ー桜と共に
自分の体験ふまえつつ書いてます。仲良くなった友達と第一印象を言い合うのが好きです笑
入学式はガチガチに緊張しました。懐かしい思い出です。
長っ……私立女子中学校の入学式。校長先生のありがたいお話をパイプ椅子のうえで聞きながら、舞は心の中で小さくため息をついた。中学受験という高い壁をなんとか突破して、やっと手に入れた新しいセーラー服。周りを見渡せば、みんな賢そうで、どこか品が良くて、なんだか自分だけ浮いているような気がして落ち着かない。「あの、これ」緊張で無意識にスカートをいじっていた舞の前にすっと小さなプリントが差し出された。隣の席の女の子からだった。「式次第、落としたみたいだよ」彼女はそう言って、初対面の舞にふわりと優しく微笑んだ。おろしたての制服がよく似合う、親しみやすい綺麗な笑顔。それが葵だった。「あ、ありがと」誰にでも自然に手を差し伸べられるような葵の優しさに、舞は少し気恥ずかしさを覚えつつも、冷え切っていた緊張が少しだけほぐれるのを感じていた。
やがて校長先生の長いお話が終わり、拍手の音とともに張り詰めた空気が一気に緩む。新入生たちは担任の先生の誘導に従って、パイプ椅子を片付け、それぞれの教室へと移動することになった。「ねえ、さっきは本当にありがとう。私、長谷川 舞。よろしくね」教室へ向かう廊下、舞はさっきのお礼を言おうと、思い切って隣を歩く葵に声をかけた。「ううん、気にしないで。私は日向 葵。よろしくね、舞ちゃん」葵はやっぱり、ふわりとした優しい笑顔を浮かべた。その丁寧で物腰柔らかな雰囲気に、舞は(やっぱりお嬢様っぽいなぁ)と少し気後れしそうになる。教室に入ると、たまたま二人は前後の席だった。全員が着席すると、教壇に立った担任の高橋先生がパンフレットを配りながら明るい声で言った。「改めまして、みなさん入学おめでとうございます! 今日は最初のホームルームなので、まずは出席番号順…ではなく出席番号が遅い人から一人ずつ、簡単な自己紹介をしてもらいましょう」教室にピリッとした緊張が走る。前の席から順番に、みんな緊張で声を震わせながらも「趣味はピアノです」「早く学校に慣れたいです」と、品良くお利口な自己紹介を続けていく。やがて、葵の番が来た。葵はすっと立ち上がると、スカートの裾をきれいに整え、クラス全体を見渡してふわりと微笑んだ。「日向葵です。趣味は読書と、お菓子作りです。まだ慣れないことばかりですが、クラスの皆さんと仲良くなれたら嬉しいです。1年間、よろしくお願いします」(うわ、完璧……)舞は感心してしまった。おろしたての制服が本当によく似合っていて、まるでお手本のような、誰からも好かれる完璧な自己紹介だった。パチパチと温かい拍手が起きる。「はい、次は長谷川さん」先生に促され、舞はガタッと勢いよく椅子を引いて立ち上がった。可愛いお嬢様風の自己紹介が続く中、舞は自分の飾らない本音をそのまま口にする。「長谷川舞です。中学受験の勉強がめちゃくちゃしんどかったので、合格してやっと解放されたって感じです! 部活はまだ決めてないです。趣味はドラマを見ること。本を読むのは苦手です。まあとにかく毎日楽しく過ごしたいと思ってます。よろしくお願いします!」ズバッと本音を混ぜた勢いのある自己紹介に、教室の何人かが「ぷっ」と吹き出し、一気に親しみやすい空気が広がった。舞が席に戻ると、前の席の葵が振り返って「舞ちゃん、面白いね」と小さくクスッと笑ってくれた。自分が思っていることをただ言っただけの舞は(そうかな??)と不思議に思った。
全員の自己紹介が終わり、先生が黒板の文字をトントンと叩いた。「では、次は『学級専門委員会』の係を決めていきます。一人一役、必ずどこかに所属してください。まずは一番大事な、クラスのまとめ役『級長(学級委員)』を男女……あ、女子校だから二人ですね。やりたい人、立候補はいますか?」教室がシーンと静まり返る。さすがに初日から、責任の重い級長に立候補するような猛者はいない。先生が困ったように苦笑いした、その時だった。クラスの真ん中の席に座っている、少し派手で気の強そうな女の子が、大きな声で言った。「先生ー! 日向さん、さっきの自己紹介もすごくしっかりしてたし、級長にぴったりだと思います!」「あ、私もそう思う!」「日向さんなら優しそうだし、みんなをまとめてくれそう!」その声に流されるように、周りの子たちも「日向さんがいい!」「賛成ー!」と口々に言い始めた。まだお互いのことをよく知らないからこそ、一番印象の良かった葵に押し付けようという、教室の「空気」が出来上がっていく。舞が前の席の葵を見ると、葵は小さな体をさらに縮こまらせて、困ったように手元の消しゴムをいじっていた。舞は背中をトントンと突ついた。「葵、どうしたの? 級長やりたいの?」「あ、えっとね……」葵は振り返り、周りに聞こえないような消え入る声で呟いた。「私、本当はそういう前に立つ仕事、すごく苦手で……。本当は図書委員がやりたいな、って思ってたの。でも、みんなが推薦してくれてるのに『嫌だ』なんて言ったら、雰囲気を悪くしちゃうよね。だから、私でいいなら、やろうかなって……」葵の困ったような笑顔には、自分の気持ちを押し殺してでも周りに合わせようとする、危うい優しさが見え隠れしていた。(なんだそれ。やりたくないなら、やりたくないって言えばいいじゃん。みんな自分たちがやりたくないから葵に押し付けてるだけなのに!)舞の胸の中で、小さなイラ立ちと、それ以上の「放っておけない気持ち」が湧き上がる。入学式のとき、葵の笑顔に救われた舞は、思ったことを溜め込めるタイプではなかった。「はーい、先生!」静まり返った教室に、舞のハキハキとした声が響き渡った。推薦していた女子たちが一斉に振り返り、葵も驚いて目を見開く。「長谷川さん、何か推薦ですか?」と先生。「違います! みんな日向さんが優しそうだからって、勝手に盛り上がって押し付けるの、ずるくないですか? 日向さん、本当は前に立つのが苦手で、図書委員がやりたいって困ってます! 本人が嫌がってるのに空気で決めちゃうのは絶対におかしいです!」ズバッと本音を言い放った舞に、教室内が一瞬でシーンと静まり返った。言い出した女子グループが「なによあいつ……」という視線を向けてくる。舞はそんな視線を気にも留めず、前の席で完全に固まっている葵の肩をぽんと叩いた。「ね、葵。級長じゃなくて図書委員がいいんだよね?」「えっ!? あ、う、うん……っ」葵は真っ赤になりながらも、舞の真っ直ぐな目に背中を押されるように、小さく、けれどしっかりと頷いた。「私、本を読むのが好きなので……できれば図書委員がいいです」葵が勇気を出して本音を口にした。「よし、じゃあ日向さんは図書委員に決定! 級長はちゃんとやりたい人で選び直そう」先生がそう言って黒板に向き直った瞬間、教室の空気は再びどんよりと重くなった。さっきまで葵を推薦していた女子グループも、自分たちが押し付けられるのを察して、急に下を向いて知らんぷりを決め込んでいる。「……誰かいませんか? 誰もいないなら、出席番号順で決めちゃうけど……」先生の困り果てた声が響く。出席番号順になれば、当然、最初のほうの生徒が強制的に選ばれる。教室のあちこちから「えー……」「最悪……」という不満のつぶやきが漏れ聞こえた。(はぁ? 自分たちで葵に押し付けようとしといて、自分がやるのは嫌なわけ?)その身勝手な空気に、舞の胸の中で再びイラ立ちが爆発した。元々は自分がやりたかったわけではない。でも、このままダラダラと押し付け合う時間が続くこと自体が、舞にとっては死ぬほどイライラすることだった。「あー、もう! 誰もやんないなら私がやります!」舞がバッと勢いよく手を挙げると、教室中の視線が一斉に彼女に集まった。先生も驚いたように目を見開く。「えっ、長谷川さん、やってくれるの?」「はい。みんなが下向いて黙ってる時間がもったいないんで。その代わり、文句言われても私のスタイルでズバズバ仕切らせてもらいますからね!」潔すぎる舞の宣言に、教室内から「おお……」とどよめきが起き、続いてパラパラと、どこか安堵したような拍手が湧き起こった。「よし! じゃあ一人目の級長は長谷川さんね。もう一人は……」舞の男気(?)に当てられたのか、その後は別の席の大人しそうな女の子が「じゃあ、私もやります……」と小さく手を挙げ、もう一人の級長も無事に決まった。ホームルームが終わり、解散のチャイムが鳴る。前の席の葵が、今度はいまにも泣きそうな、申し訳なさそうな顔で振り返った。「舞ちゃん……ごめんね。私のせいで、舞ちゃんが大変な級長になっちゃって……」「は? なんで葵が謝るのさ。私が自分でやらせろって言ったんだから、葵のせいじゃないよ。それにさ」舞はカバンに筆箱を放り込みながら、ニカッと不敵に笑った。「私が級長なら、これからクラスの決め事があるとき、葵にやりたくないこと絶対に押し付けられないように職権乱用できるじゃん。好都合だよ!」「あ……」葵はぽかんと口を開けた後、胸がいっぱいになったように、愛おしそうな笑顔を浮かべた。「ふふ、そうだね。舞ちゃんが級長なら、このクラスはすっごく楽しくなりそう」放課後。校門へと続く帰り道、夕日に照らされながら二人は並んで歩く。「でもさ、級長って何するんだっけ? プリント配るくらい?」「ううん、学校行事の司会とか、5月にある体育祭の種目決めとか、いろいろ仕切らなきゃいけないんだよ?」「げっ、まじで? 体育祭の種目決めとか、絶対みんな自分のやりたいことばっかり言って揉めるじゃん……」「大丈夫だよ。その時は私が、図書室の仕事の合間に舞ちゃんを全力でサポートするからね」誰にでも優しく、けれど自分を出すのが苦手な葵。思ったことを何でも口にする、不器用だけど真っ直ぐな新米級長の舞。正反対な二人の、凸凹だけど特別な6年間が、この新しい教室から本格的に始まろうとしていた――。
入学式当日とは思えない物語ができてしまいました…(自己紹介で日付区切ったほうが良かったかも)
舞と葵の物語はこれからも続けるつもりです。
ここが何か変だなとか面白かったなど教えてくれると嬉しいです!
4月ー桜と共に②
前回の続きです。シリーズも作ろうと思ってます。前回は色々詰め込みすぎたので軽めにしたつもりです。
入学式から数日。本格的な授業が始まった。私立女子中学校の授業スピードは想像以上に早く、特に数学の時間は、黒板がどんどん数式で埋まっていく。「――というわけで、この問題の解き方は今説明した通り。じゃあ、次の例題を誰かに解いてもらおうかな」教壇に立つ数学の教科担任、少し厳し目のベテラン・佐藤先生が、眼鏡の奥の目を光らせて名簿に目を落とした。教室にピリッとした緊張が走る。当てられたくない生徒たちが、一斉に下を向いて「当てないでオーラ」を出し始めた。(やばい、全然意味わかんない……。解き方のステップ2あたりから完全に迷子なんだけど!)舞は冷や汗をかきながら、必死に教科書とノートを睨みつけていた。中学受験を突破したとはいえ、算数から「数学」に変わった途端、文字の扱いにつまずいていたのだ。「じゃあ……出席番号順で、長谷川さん。黒板に答えを書いてみて」「げっ」最悪のタイミングで名前を呼ばれ、舞の心臓が跳ね上がった。周りの席の子たちが「自分じゃなくてよかった」と密かに安堵の息を漏らすのが気配でわかる。(どうしよう、白紙で立つわけにはいかないし……)舞がガタガタと椅子を鳴らして立ち上がった、その時だった。前の席の葵が、すっと背筋を伸ばしたまま、自分のノートを少しだけ斜めに傾けた。舞の目線から、葵のノートがはっきりと見える。そこには、丁寧で美しい文字と図解で、佐藤先生が解説したばかりの「解き方の手順」が、どこよりも分かりやすく整理されて書かれていた。さらに、これから舞が解くべき例題のヒントになる部分に、小さな赤線まで引いてある。(……葵!)舞は救われた思いで、その美しいノートの軌跡を頭に叩き込んだ。教壇へ向かう短い歩みの間で、舞の持ち前の「ハキハキとした度胸」が戻ってくる。チョークを手に取り、黒板に向かう。葵のノートをヒントに、舞は迷いのない手つきで数式を書き進めていった。最後の一行を書き終え、「できた!」と心の中でガッツポーズをした瞬間、佐藤先生がじっと黒板を見つめて言った。「うーん、長谷川さん。答えは合っているけれど、途中のこの計算、ちょっと力技すぎるわね。もっとスマートな公式の使い方があったはずよ」少し意地悪な先生の指摘に、教室がまた静まり返る。せっかく正解したのに、と舞が少しむっとしたその時、今度は葵がすっと綺麗に手を挙げた。「先生」「はい、日向さん」「長谷川さんの解き方は、確かに公式通りではありませんが、前の単元で習った基礎を応用していて、とても確実な方法だと思います。私には思いつかない視点でした」葵は振り返り、舞に向かってふわりと優しく微笑んだ。その毅然とした、かつ誰も傷つけないフォローに、佐藤先生も「……そうね。確かに基礎がしっかりしていないとこの解き方はできないわ。長谷川さん、よく復習できているわね」と納得せざるを得なかった。「席に戻っていいわよ」と言われ、舞が席に戻ると、前の席の葵が小さく振り返った。「舞ちゃん、ナイスガッツ」「葵、ありがと。ノート見せてくれなきゃ詰んでた」舞が小声で囁くと、葵はクスッと笑った。「ううん。私はノートをまとめるのは得意だけど、あの緊張感の中で堂々と黒板に書ける舞ちゃんの度胸、本当にすごいなって思ったよ」「へへ、そっか? じゃあこれからも、葵がブレインで私が特攻隊長ってことで!」正反対な二人の、凸凹だけど無敵なコンビネーション。初めての授業は、二人の絆がまた一歩深まる、最高の時間になった。
**4月ー初めての放課後**
キーンコーンカーンコーン……。中学校に入って初めての「1日の授業」がすべて終わり、終礼のチャイムが響き渡った。「よし、今日の連絡は以上! みんな、部活の見学期間は今週いっぱいだから、しっかり見て回るようにね」高橋先生が教室を出て行った瞬間、それまで静かだった教室が一気にガヤガヤと騒がしくなった。あちこちで「何部見に行く?」「私、テニス部!」「一緒に行こう!」と、おろしたての制服を揺らした女の子たちが盛り上がっている。舞は机の上に突っ伏して、深いため息をついた。「はぁーー……終わったぁ……。初日から頭フル回転で、もう脳みそが限界なんだけど」そんな舞の前で、葵がすっと綺麗に振り返った。手にはすでに、図書委員の腕章とノートが握られている。「舞ちゃん、お疲れ様。初めての授業の日は、誰でも疲れちゃうよ」葵はいつものふわりとした優しい笑顔を浮かべた。「舞ちゃんはこれからどうするの? 級長の仕事がなければ、部活の見学とか行く?」「あー、部活ね……」舞は体を起こし、配られたばかりの『部活動紹介パンフレット』をパラパラとめくった。「実はさ、やりたいやつが2つあって、どっちにしようかマジで迷ってんだよね」「へえ、何と何で迷ってるの?」葵が興味津々で首をかしげる。舞はパンフレットの特定のページを指差した。「これと、これ」葵が覗き込んだそのページには、大きく二つの部活が載っていた。一つは、『茶道部』。もう一つは、『剣道部』。葵はぱちくりと目を丸くした。「茶道部と、剣道部……? すごいね、どちらも『道』がつく和風な部活だけど、雰囲気が全然違う気がする」「でしょ?」舞は腕を組んで、うーんとうなった。「剣道はさ、単純にカッコいいじゃん! バシッと防具つけて、大声出して、ストレス発散にもなりそうだし、私みたいなタイプに向いてるかなって。……でもね、実は密かに『茶道』にも憧れてるんだよね。私、普段ガサツだからさ、あのお淑やかで綺麗な所作を身につけたら、少しは大人っぽくなれるかなーって。あと、単純においしい和菓子が食べられるって噂だし!」舞が鼻をふくらませて熱弁すると、葵は「ふふっ」と愛おしそうにクスッと笑った。「確かに、和菓子は魅力的だね。でも、舞ちゃんが茶道部っていうのも、ギャップがあってすごく素敵だと思うな」「本当? でも私、正座とか3分で足が爆発する自信あるよ?」「あはは、それは練習すれば慣れるよ、きっと。……あ、そうだ!」葵が何かを思いついたように、パンフレットのある場所を指差した。「今日の放課後、茶道部も剣道部も、どっちも体験会やってるみたいだよ。私はこれから図書室の初仕事があるから一緒には行けないんだけど……まずは両方、自分の目で見てきたらどうかな?」「お、マジだ。よし、じゃあ早速行ってみるわ!」舞はガタッと椅子を引いて立ち上がり、カバンからスクールバッグへと荷物をまとめた。「葵、図書室の仕事がんばってね! 終わったら校門で待ち合わせしよ!」「うん、いってらっしゃい。舞ちゃんにぴったりな部活が見つかるといいね」葵に見送られながら、舞は期待と少しの緊張を胸に、教室を飛び出した。まずは、大きな掛け声が響いてくる体育館裏の武道場――剣道部から覗いてみることにした。
教室を飛び出した舞は、まずドタバタと激しい音が響く武道場へと向かった。重い扉を開けると、ツンとした竹刀と防具の匂いが鼻をくすぐる。「めーーーん!!」「どーーーう!!」床を激しく踏み鳴らす音と、お腹の底から出るような鋭い掛け声。防具に身を包んだ先輩たちが激しくぶつかり合う姿は、圧倒されるほどカッコよかった。(うわ、やっぱり剣道、超クール……!)舞が目を輝かせて見惚れていると、防具を外した凛々しい先輩が気づいて歩み寄ってきた。「新入生? 見学ありがとね! よかったら竹刀、振ってみる?」「えっ、いいんですか!?」手渡された竹刀は、思ったよりもずっしりと重い。先輩に教わった通りに構え、思い切り前へ踏み込んで竹刀を振り下ろしてみる。「やあーーーっ!!」ブンッ、と空気を切り裂くいい音が響いた。「おおっ!」と周りの先輩たちがどよめく。「君、すごく筋がいいよ! 体幹もしっかりしてるし、声もよく出てる。即戦力になれるよ、ぜひ剣道部へ!」手放しで褒められ、舞は「へへ、そうですか?」と鼻高々。大声を出して竹刀を振る爽快感は、まさに舞のイメージにぴったりだった。◇(剣道部、めちゃくちゃ楽しそうだったな……。でも、もう一つも見ておかなくちゃ!)舞は武道場を後にし、今度は校舎の奥にある作法室(和室)へと向かった。剣道部の喧騒とは打って変わり、廊下まで静まり返っている。「失礼します……」おそるおそる襖(ふすま)を開けると、そこは畳の敷かれた別世界だった。お香の優しい香りが漂い、上品に着物を着こなした外部指導の先生と、綺麗な姿勢で座る先輩たちがいた。「あら、見学の方ね。どうぞ、お上がりになって」優しく迎え入れられ、舞は緊張しながら畳に上がる。目の前で、先輩が流れるような美しい所作でお茶を点てていく。無駄のない動き、静寂の中に響くシャカシャカという茶筅(ちゃせん)の音。(すごい……。みんなお姫様みたいに綺麗……)自分のガサツさが恥ずかしくなるほどの美しい空間に、舞はすっかり圧倒されてしまった。そして、先輩が「どうぞ」と、可愛らしい桜の形の生菓子と、濃い緑色のお抹茶を差し出してくれた。(あ、これが噂の和菓子……!)一口食べると、上品な甘さが口いっぱいに広がる。その後でいただくお抹茶は、少し苦いけれど、すっきりとして驚くほど美味しかった。「どうかしら? 茶道は心がすっと落ち着くのよ」先生に微笑みかけられ、舞は「すごく、美味しいし、素敵です!」と感動を伝える。――が、その直後だった。(……あれ? 足の感覚が、ない?)体験が終わって立ち上がろうとした瞬間、舞の足にビリビリとした激痛が走った。「うおっ!?」完全に足が痺れた舞は、バランスを崩して畳の上で盛大にグラリとよろめいてしまった。「きゃっ!? 大丈夫!?」「す、すみませんっ! 足が爆発しました……!」赤面しながら平謝りする舞に、先生と先輩たちは「ふふっ、みんな最初はそうなのよ」と、顔を見合わせて上品にクスクスと笑った。カッコよくて爽快な「剣道部」。お淑やかで、でも足が死ぬ「茶道部」。(どっちも良すぎて、マジで選べないじゃん……!!)両足の痺れを引きずりながら、舞は約束の校門へと向かった。そこには、図書室の仕事を終えて、こちらを待っている葵の姿が見えた。
「うう……足が、足がまだジンジンする……」生まれたての小鹿のように頼りない足取りで、舞はなんとか夕暮れの校門へとたどり着いた。校門の脇、赤く染まった桜の木の下で、葵がスクールバッグを抱えて待っていた。「あ、舞ちゃん! お疲れ様」舞の姿を見つけると、葵の顔がぱっと明るくなり、ふわりとした笑顔で駆け寄ってきた。「どうだった? 剣道部と茶道部。……って、あれ? 歩き方がちょっと変だよ?」「聞いてよ葵~!」舞はがくっと葵の肩に寄りかかった。「茶道部で正座したらさ、マジで足が爆発した! 立ち上がろうとした瞬間に盛大によろめいちゃって、先輩たちに大爆笑(上品なクスクスだけど)されたんだから!」「ふふ、やっぱりそうなっちゃったんだ」葵は小さく笑いながら、舞の体を優しく支えてくれた。「でも、楽しかった?」「うん! 剣道部もめちゃくちゃカッコよくてさ、『即戦力になれる!』って先輩たちに大歓迎されたんだよね。竹刀振るの、超スカッとしたし」二人は並んで、夕日に照らされた帰り道を歩き始める。「へえ、剣道部ですごく褒められたんだ。じゃあ、部活は剣道部に決まりかな?」葵がそう尋ねると、舞は少しだけ真面目な顔をして、うーんと首を振った。「それがさ……私、『茶道部』にしようと思うんだ」「えっ? 茶道部?」葵は驚いて足を止めた。「てっきり、褒められてスカッとした剣道部にするんだと思ってた。足、あんなに痺れて大変そうだったのに、どうして?」舞は少し照れくさそうに頭をかきながら、夕空を見上げた。「いやさ、剣道部で大声出して暴れるのって、これまでの私そのまんまじゃん? 確かに楽しいし、得意なことやる方が楽なんだけど……」そこで言葉を一度区切り、隣を歩く葵を真っ直ぐに見つめた。「私さ、入学式の日に、誰にでもふわりと優しく笑える葵を見て、『うわ、めちゃくちゃ綺麗なお嬢様だな、素敵だな』って思ったんだよね」「え……? 私……?」予想外の言葉に、葵の綺麗な瞳が丸くなる。「そうだよ。私、自分のガサツなところも嫌いじゃないけど、葵みたいに上品で、周りをホッとさせるような綺麗な所作が出来る大人にも、ちょっと憧れるんだ。茶道部の作法室に入ったとき、あの静かで凛とした空気が、なんだか葵の雰囲気に似てるなって思ってさ。あそこで3年間頑張ったら、私も少しは葵みたいな素敵な女の子に近づけるかなーって……。あ、もちろん美味しい和菓子が食べたいのも本音だけどね!」最後は照れ隠しにニカッと笑った舞だったが、葵は完全に固まっていた。やがて、夕日の赤さよりもずっと深く、葵の頬がみるみるうちに真っ赤に染まっていく。「な、何言ってるの、舞ちゃん……っ。私なんて、全然そんな……」葵は恥ずかしさのあまり、両手で顔を覆って小さくなってしまった。けれど、指の隙間から覗くその瞳は、言葉にできないほどの嬉しさでいっぱいに潤んでいる。「ふふ、でも……ありがとう。舞ちゃんにそんな風に思ってもらえて、私、すごく嬉しい」葵は手を下ろすと、これまでで一番愛おしそうな、とびきり眩しい笑顔を咲かせた。「そっか、舞ちゃんは茶道部か。……じゃあね、約束。舞ちゃんが初めてお茶を点てられるようになったら、一番最初のお客さんは、絶対に私にしてね?」「もちろん! その時は葵を気絶させるくらい美味いお茶点ててあげるから、覚悟しといて!」「気絶しちゃったらお茶の味が分からないよ」「あ、そっか!」カランコロンと、二人の笑い声が静かな住宅街に響く。こうして、予想外の選択をした新米級長の舞と、図書委員の葵。正反対な二人の距離がまた少し縮まった、初めての放課後が暮れていった。
読んでくださりありがとうございます。私の学校は部活の見学すっごい遅い時期にやりましたが普通の学校はこのぐらい早いのかな、、?
次もすぐ公開する予定なのでお待ちください!
4月ー桜と共に③
第三話です。正座って慣れていないと大変ですよね、、痺れて歩けない笑
**4月ーしびれる足と、初めてのトラブル**
「う、動けない……。誰か、私の足を回収して……」放課後の作法室。畳の上で、舞は完全にフリーズしていた。茶道部に入部して初めての本格的な見学とお稽古。先輩たちの美しい所作に見とれていたのも束の間、15分ほど正座を続けた舞の足は、すでに完全に感覚を失っていた。1ミリも動かせないほどの激痛(痺れ)がビリビリと襲ってくる。「ふふ、長谷川さん、大丈夫? 最初はみんなそうなのよ。無理せず足を崩してね」先輩たちが上品にクスクスと笑いながら、優しく声をかけてくれる。「す、すみません……。お淑やかな道は、思ったよりイバラの道でした……」舞が涙目でなんとか足を崩し、自分の足をトントンと叩いていた、その時だった。作法室の襖(ふすま)が、ガラッと勢いよく開いた。「ハァ、ハァ……! 舞ちゃん、ここにいた……!」息を切らせて立っていたのは、いつもの冷静な姿からは想像もつかないほど慌てた様子の葵だった。「葵!? どうしたの、そんなに息切らせて。図書室の仕事は?」「それどころじゃなくて……! クラスで、大変なことが起きてるの」葵の言葉に、舞はピクッと眉を動かした。「大変なことって?」「今日の放課後、提出期限の『自己紹介カード』、覚えている? あれを回収して職員室に持っていくのが級長の仕事なんだけど……さっき、女子のグループが『誰が出してないか』で揉め始めちゃって。お互いに『私は出した』『あんたが無くしたんじゃないの?』って、クラスの空気がすごく険悪になってるんだよ」まだ入学して数日。お互いの性格もよく分からない時期だからこそ、一度ギクシャクすると修復が難しくなる。クラスをまとめる責任のある担任の高橋先生は、今は職員会議で席を外しているらしい。「誰が出してないか分からなくて、犯人探しみたいになってるの。高橋先生が戻ってくる前に、なんとかしないと……!」葵の話を聞いた瞬間、舞の目がスッと鋭くなった。「なるほどね。……よし、特攻隊長の出番じゃん!」舞はガタッと立ち上がろうとした。――が。「痛たたたたたたっ!!! 無理! 足が、足がまだ死んでる!!」立ち上がった瞬間に激痛が走り、舞はその場に崩れ落ちた。「舞ちゃんっ!?」「くそっ、私のポンコツ足め……! 葵、悪いけど肩貸して! 教室まで引きずってって!」「う、うん! わかった!」葵にガシッと肩を借り、生まれたての小鹿のようにヨレヨレになりながらも、舞は凄まじい気迫で教室へと向かった。◇ガラッと教室の扉を開けると、葵の言う通り、教卓の周りで数人の女子グループが言い争っていた。「だから、私は絶対に実里(みのり)の分もまとめてトレイに入れたってば!」「でも現実に1枚足りないんだから、あんたが落としたんじゃないの!?」周りの生徒たちも、関わりたくないというように遠巻きにハラハラしながら見守っている。ドンヨリとした、最悪の空気だ。「そこまでーーー!!」教室に、舞の地鳴りりのような大声が響き渡った。一瞬で静まり返る教室。全員の視線が、葵の肩を借りて泥縄式に現れた級長・舞へと集まる。舞は葵の支えをそっと外し、まだ少し痺れる足を床に踏みしめて、教卓へと歩み寄った。「誰が無くしたとか、誰が出してないかとか、そんなの今言い合ってもカードは出てこないでしょ! 犯人探しする時間があるなら、サクッと解決する方法を考えようじゃん」「え、でも、先生に怒られちゃうし……」反論しようとした女子を、舞はニカッと笑って制した。「怒られないよ。出していない人が誰か分からないなら、今ここで、全員でもう一度『名簿チェック』すればいいだけでしょ。葵、名簿持ってる?」「うん、学級委員用の予備があるよ」後ろに控えていた葵が、すっと手際よく名簿とペンを差し出した。これぞブレインの連携だ。「よし! じゃあみんな、今から私が名前を呼ぶから、カードを出した人はハキハキ返事して! 1分で終わらせるよ!」舞の圧倒的なリーダーシップと、葵が用意した名簿のおかげで、クラスの女子たちは気圧されるように「は、はい!」と返事を始めた。出席番号順に名前を呼んでいくと、ある一人の大人しい子のところで手が止まった。「……あ。ごめんなさい、私、カバンの奥に入れたまま出すの忘れてました……」申し訳なさそうにカードを取り出したクラスメイトに、さっきまで揉めていた女子たちが「なんだぁ……」と脱力する。「よし、全員分揃ったね!」舞はカードをトレイに綺麗にまとめると、忘れていた子にポンと優しく肩を叩いた。「次から気をつければいーのよ! 誰も悪くない、これにて一件落着!」張り詰めていた教室の空気が、一気にフワッと緩んだ。揉めていた女子たちも「……長谷川さん、ありがとう。ごめんね」と少し気恥ずかしそうに頭を下げた。「ふぅ……」無事にカードを抱えて職員室へ向かう廊下で、舞はどっと押し寄せた疲れにため息をついた。「いやー、初トラブル焦ったわ。葵が名簿持っててくれなきゃ、あんなにスムーズにいかなかったよ。マジで助かった、ありがとね」隣を歩く葵は、嬉しそうに目を細めた。「ううん。私は名簿を出しただけだよ。あの険悪な空気を一瞬で変えて、誰も責めずに解決しちゃうのは、舞ちゃんにしかできないよ」葵は舞の顔を覗き込んで、ふわりと笑った。「やっぱり、舞ちゃんは最高の級長だね」「へへ、そっか? ……あ、それより葵、職員室終わったら購買部寄っていい? 足の痺れに効くか分かんないけど、なんか甘いもん食いたい!」「あはは、おごってあげるよ」新学期、初めてのトラブル。凸凹コンビの鮮やかな連携で、二人の絆はまたひとつ、強くなったのだった。
**4月ー決まらない言葉、私たちの進む道**
「――というわけで、今日の放課後は初の学級活動。この1年間の『学級目標』を決めたいと思います。司会進行は、級長の二人にお願いね」担任の高橋先生がのんきな声でそう言うと、教壇の横にある司会者用のパイプ椅子をトントンと叩いた。クラス中から「うわ、出た」「何にするー?」とガヤガヤと声が上がる。(えっ、マジで!? 私たちが仕切るの!?)舞は内心、めちゃくちゃ焦っていた。思ったことをズバッと言ったり、揉め事を力技で解決するのは得意だが、「型にハマった formal な司会進行」なんて、これまでの人生で一度もやったことがない。ガタガタと震える膝を隠しながら教壇の前に立ったものの、黒板の前に立つと、クラス全員の視線が突き刺さるようで頭が真っ白になった。「えーっと……じゃあ、今から、あの、学級目標を決めまーす。えー……何がいいと思う?」あまりにもノープランな問いかけに、教室内がビミョーな空気で静まり返る。高橋先生は後ろの席でニコニコと見守っているだけで、全く助けてくれる気配がない。(やばい、詰んだ……! 最初のセリフって何だっけ!?)舞が冷や汗をダラダラと流した、その時だった。教壇から一番近い、最前列の席に座る葵が、すっと自分のノートを舞に見えるように掲げた。そこには、葵の美しい文字でこう書かれていた。『①まずは、みんなからキーワード(使いたい言葉)を募集する』『②似た言葉を黒板にグループ分けする』『③最後はみんなで組み合わせる』さらに、葵は口パクで「大丈夫、落ち着いて」とふわりと微笑んでくれた。(……神様、仏様、葵様……!)ブレインの完璧な先回りサポートのおかげで、舞の心にすっと余裕が戻ってきた。「コホン! じゃあね、まずはみんなが『このクラスでどんな風に過ごしたいか』、使いたい言葉をどんどん挙げていって! はい、そこの席の人から順番に!」舞のハキハキとした声に引っ張られるように、女子たちが次々と意見を口にし始めた。舞は葵の手順通り、黒板にチョークで言葉を書き殴っていく。「みんな仲良く」「楽しいクラス」「メリハリ」――。ここまでは順調だった。しかし、目標を一つに絞り込もうとした段階で、新学期最初の本格的な「揉め事」が勃発した。「やっぱり、私立女子中だし、四字熟語でガツンと『一致団結』とか『切磋琢磨』っしょ! カッコいいし!」クラスの派手めな女子グループのリーダー格が、腕を組んで主張した。周りの数人も「確かにー! 体育祭とかで使えそう!」と盛り上がる。すると、窓際の席に座る大人しめな女子グループの一人が、おそるおそる手を挙げた。「あの……でも、それだと運動会とかで無理やり熱くなれって言われてるみたいで、ちょっと苦手かも……。私はもっと『それぞれのペースで居心地がいいクラス』みたいな、優しい言葉がいいな……」「えー? でもそれじゃ目標っぽくないじゃん。ちょっと緩すぎない?」「……う、うん。ごめん……」お互いまだ出会って数日。遠慮があるからこそ、激しいケンカにはならない。しかし、だからこそ教室内には「言いたいことが言えない」ピリピリとした、どんよりとした空気が広がってしまった。(うわ、どっちの言い分も分かるけど……。多数決で決めたら、負けた方が絶対に一晩中モヤモヤするやつだ、これ)舞はチョークを握ったまま、うーんと考え込んだ。クラスが真っ二つに割れそうな、最悪の空気。その時、最前列の葵がすっと綺麗に手を挙げた。「先生、長谷川さん。二つの意見を組み合わせることはできませんか?」葵の声は、静かだけれど不思議と教室中の耳にすっと届いた。「『一致団結』も、みんなで頑張るために素敵な言葉です。でも、普段からずっと気を張っているのは疲れちゃうから……普段はそれぞれの個性を大切にして、やる時はやる、っていう両方のいいところを取りたいです」葵の柔軟なアイデアに、揉めかけていた女子たちが「あ、それなら……」「それなら私もいいかも」と顔を見合わせる。「よし、決まった!」舞は黒板をチョークの裏側でコンコンと叩いた。「二つの意見を合体させてさ、『普段はのんびり、やる時はやる! 凸凹だけど最強のクラス』ってのはどう!? 四字熟語みたいにカッコつけてないけど、うちららしくて一番しっくりくるじゃん!」飾らない、でも全員の気持ちをすくい上げた舞の言葉に、一瞬の静寂の後、誰からともなく「あはは、何それ可愛い!」「いいじゃん!」とドッと笑いが起きた。パンパンパン、と教室中に満場一致の拍手が響き渡る。後ろで見守っていた高橋先生も、「うん、素晴らしい学級目標だね」と満足そうに頷いた。◇「ふはーーー!! 終わったぁーーー!!」終礼が終わり、生徒たちが帰り始めた教室で、舞は机に突っ伏した。「級長の仕事って、頭フル回転させなきゃいけないから、部活の正座より疲れるわ……」「ふふ、お疲れ様、舞ちゃん」葵が自分のスクールバッグを持って、舞の席まで歩み寄ってきた。「最初の司会、すごく堂々としててカッコよかったよ。最後のまとめ方も、舞ちゃんらしくてみんな笑顔になってた」舞はむくっと起き上がると、葵の手をガシッと握りしめた。「何言ってんの! 葵のメモがなかったら、私、最初の3分で泣きながら教室逃げ出してたからね!? それに最後のナイスアシスト。やっぱり葵は私の最高の相棒だよ!」真っ直ぐに感謝をぶつけられ、葵は「もう、大げさだなあ」と照れくさそうに顔を赤らめた。でも、その表情はとても嬉しそうだった。『凸凹だけど最強のクラス』黒板に残されたその目標の言葉は、まるで正反対な自分たち二人の関係そのもののようだと、舞は心の中でこっそり思ったのだった。
読んでくださりありがとうございます!書いていてこれ一つ一つに分けたほうが文字数も減って読みやすいのかなって思ったのですがどうですかね。このシリーズがいつまで続くかもわからないので、、、
まあ読みやすいように工夫したいです。誤字脱字には気をつけます。
4月ー桜と共に④
第四話ですっ!気合い入れて作りました。
**4月ー響く歓声、体育祭の種目決め**
「――というわけで、今日のホームルームは5月の『体育祭の種目決め』です。うちのクラスの目標は『普段はのんびり、やる時はやる!』だからね。司会進行、級長さんよろしく!」担任の高橋先生が、またものんきな調子で教壇を舞に譲った。教室が一気にざわざわと波立つ。女子校の体育祭は、お淑やかな日常からは想像もつかないほどガチ(本気)バトルになるという噂を、舞も耳にしていた。(げっ、また司会!?……でも、今回はもう慌てないもんね)舞はチラリと最前列の葵を見た。葵はすでに机の上にノートを広げ、舞に向かって小さくコクンと頷いている。その安心感だけで、舞の胸には新米級長としての自信が満ちていた。「はーい、みんな注目ー! サクッと決めて放課後遊ぶよ!」舞が黒板をトントンと叩くと、クラスの視線が集まる。最初の議題は、体育祭の花形であり、一番揉めやすい『クラス対抗選抜リレー』のメンバー(4名)決めだった。案の定、すぐに意見が真っ二つに割れた。「ねえ、やる時はやるんだから、1時間目の体育の50メートル走で上位だった速い子4人で固めて、絶対に1位狙おうよ!」声を上げたのは、派手めな女子グループのリーダー格だ。それに数人が「そうだね!」「勝った方が絶対楽しい!」と賛成する。すると、窓際の席に座る大人しめなグループの子が、困ったように眉を下げて手を挙げた。「あの……でも、足の速い子たちが選抜リレーに行っちゃうと、全員強制参加の『全員リレー』のほうに、走るのが苦手な子ばっかり残っちゃうよ……。そっちで大差で負けたら悲しいし、みんなで均等に分けた方がいいんじゃないかな……」「えー? でもそれじゃ選抜で勝てないじゃん。目標の『やる時はやる』って、勝つために全力を出すってことでしょ?」「それはそうだけど……」お互いに、先日決めたばかりの学級目標を盾にして正論をぶつけ合う。クラスの空気がじわじわとピリつき始め、教壇の舞は「う、うーん……」とチョークを握ったまま冷や汗をかき始めた。どちらの言い分も正しくて、多数決で決めたら絶対にどちらかのグループにモヤモヤが残る。(やばい、どうやってまとめりゃいいんだこれ……!)舞が助けを求めるように視線を送ると、最前列でペンを走らせていた葵が、すっと綺麗に手を挙げた。「長谷川さん、ちょっといいですか?」「あ、葵! どうぞ!」救世主の登場に、舞はすかさず発言を促した。葵は立ち上がると、クラス全員が見えるように、丁寧に書き込まれたノートを掲げた。「みんなの意見を聞きながら、ちょっと計算してみたの。さっき体育委員さんから、この前の50メートル走の全員のタイムデータを借りて分析してみたんだけど……」葵のノートには、クラス全員のタイムが細かいグラフや、バトンパスの相性ごとにグループ分けされて書かれていた。これぞブレインの恐るべき先回り能力だ。「選抜リレーは、クラスの最高タイムを持つ4人で固めて、全力で1位を狙いに行きます。その代わり、全員リレーのほうは、足の速い子と少し苦手な子を交互に配置して、さらに『バトンパスが得意なペア』を隣同士にしました。これなら、走力に自信がない子の遅れを、前後のバトン技術と、足の速い子のスプリントで完全にカバーできます」葵はふわりと微笑み、黒板の前に立つ舞を見た。「これなら、選抜でガツンと勝ちに行って、全員種目はみんなでカバーし合える。『普段はのんびり、やる時はやる!』の目標に、ぴったりだと思わない?」葵の圧倒的な知略と、完璧な提案に、教室中が「おお……!」とどよめいた。すかさず、特攻隊長である舞が黒板にチョークを叩きつける。「聞いた!? 葵の作ったこの作戦、マジで無敵じゃん! 誰か一人が無理して頑張るんじゃなくて、みんなの得意なところで不得意なところを埋める。これ、うちらのクラスにしかできない最強の勝ち方だよ!」舞の熱い、そして誰も置いていかない力強い言葉が、クラスメイトたちの背中をドォンと押した。さっきまで言い合っていた女子たちが、顔を見合わせて笑顔になる。「日向さんすごすぎる……! これなら文句なしだよ!」「長谷川さんの言う通り、この布陣でいこう!」パンパンパン!と、教室内が満場一致の拍手で包まれた。後ろで見守っていた高橋先生も、「いやあ、級長と図書委員の連携、素晴らしいねぇ」と感心したように拍手を送っている。◇「ふはーーー!! 終わったぁーーー!!」終礼が終わり、カバンをまとめた教室で、舞は盛大に机に突っ伏した。「級長の仕事、マジで脳みそ溶ける……。これ、5月の本番まで私の心臓もつかな……」「ふふ、お疲れ様、舞ちゃん」図書委員の腕章をカバンに仕舞いながら、葵が舞の席まで歩み寄ってきた。「最後の舞ちゃんのまとめ方、すごく熱くてカッコよかったよ。私がどれだけデータを集めても、みんなの心を動かすのは、やっぱり舞ちゃんの言葉だね」よし! これで体育祭の布陣は完璧! みんな、本番がんばろうね!」舞が黒板の文字をバンと叩き、満場一致の拍手の中で学級活動は幕を閉じた。葵の作戦通り、選抜リレーはクラスで最も足の速い「精鋭4人」が走ることで決まった。誰もが「これで一件落着」と安心し、教室が下校のガヤガヤとした空気に包まれた、その時だった。ガラガラッ!!教室の前の扉が、ものすごい勢いで開いた。息を切らせて飛び込んできたのは、選抜リレーの第一走者に決まったばかりの体育委員の女の子だった。その顔は真っ青だ。「大変……大変なの! たった今、保健室から連絡があって……!」「え、どうしたの?」舞が駆け寄ると、体育委員は泣きそうな声で叫んだ。「リレーの第四走者(アンカー)の結衣(ゆい)ちゃんが……さっきの部活の体験中に派手に転んで、足首を捻挫しちゃったって! 全治3週間で、体育祭は絶対に出られないって……!」「ええっ!?!?」教室中に、ひっくり返ったような悲鳴が響き渡った。アンカーの結衣といえば、クラスでダントツに足が速く、この作戦の文字通り「最後の切り札」だった。その彼女がまさかの戦線離脱。「ど、どうするの……? 今からアンカーの代わりなんて……」クラスに一瞬で絶望的な空気が広がる。50メートル走のタイムが上位の子たちは、すでに全員他の重要種目やリレーの枠で埋まっている。これ以上メンバーを動かせば、葵が苦労して作った「全員リレーの無敵の配置」まで崩れてしまうのだ。後ろで見守っていた高橋先生が、困ったように顎をかいた。「うーん、これは困ったねぇ。選抜リレーのメンバー変更の締め切りは、今日の職員会議が始まる『あと10分後』なんだけど……。誰か、急遽アンカーとして走ってくれる猛者はいない?」先生の言葉に、女子たちは一斉に下を向いた。ただでさえ責任重大な選抜リレーの、しかも「アンカー」だ。急に押し付けられて走りたい人などいるはずがない。ドンヨリとした、あの嫌な「押し付け合いの空気」がまた教室を満たそうとしていた。「……あ」その時、最前列で名簿のデータを必死に見直していた葵が、ハッと目を見開いて声を漏らした。「舞ちゃん、大変……。タイムデータ、結衣ちゃんの次に足が速い子、まだ他の種目で埋まってない子が、一人だけいる……!」「マジで!? 誰、その救世主は!」舞が教卓に身を乗り出すと、葵は震える指先で、名簿のある名前を指差した。そこにあったのは――『長谷川 舞』の文字だった。「……は?」舞はフリーズした。「嘘でしょ!? 私、中学受験のせいで3年間まともに運動してないよ!?」「でも、舞ちゃん、小学校のときはリレーの選手だったって自己紹介カードに書いてたじゃない! 50メートル走のタイムも、うちのクラスで5番目に速いよ!」「あれは過去の栄光だってば!!」舞が頭を抱えた瞬間、教室の女子たちの目が一斉に輝き出した。「そうだ、長谷川さん走れるじゃん!」「級長がアンカーとか、めっちゃ熱い!」「長谷川さんお願い! クラスを救って!」「ちょっと待ってよみんな!」舞は冷や汗を流しながら、必死に自分の両足を叩いた。「私、運動神経は悪くないけどさ! 今は茶道部に入部したせいで、3日に1回は正座で足が爆発してんのよ!? 生まれたての小鹿みたいな足でアンカーなんて走ったら、バトン持ったまま盛大にズサーーーッて転ぶ未来しか見えないんだけど!」必死の拒絶に、教室が一瞬「あ、確かに……」と苦笑いに包まれる。しかし、時計の針は無情にも職員会議の時間を刻んでいく。あと5分。舞はうーんと唸り、トレードマークの短髪をくしゃくしゃに掻きむしった。(嫌だ。めちゃくちゃ緊張するし、責任重大だし、足が痺れてたら最悪だ。でも……)チラリと、隣で申し訳なさそうに自分を見つめている葵を見た。葵は、自分が舞の名前を見つけてしまったことを後悔しているような顔をしていた。舞を困らせたくなくて、小さな唇を噛み締めている。(……はぁ。やっぱり、特攻隊長が逃げるわけにはいかないじゃん)舞の腹が決まった。胸の奥から、持ち前の「ハキハキとした男気」がパチパチと音を立てて湧き上がってくる。「あーもう! 分かったよ、走ればいいんでしょ、走れば!」舞がバッと男前に胸を張ると、教室中に「おおおおっ!」と大歓声が上がった。「その代わり!」舞は最前列の葵をビシッと指差した。「条件がある! 体育祭の本番まで、私の『足の痺れ防止対策』と『特訓メニュー』の作成は、ブレインである葵に一任する! 葵が最高のサポートをしてくれるなら、私は死ぬ気で前を走るメンバーを追い抜いてみせるよ!」突然の指名に、葵は一瞬呆然と目を丸くした。けれど、すぐに舞の真っ直ぐな瞳に応えるように、その綺麗な顔にキュッと気合いを入れた。「……うん! 任せて、舞ちゃん。私の全知全能をかけて、舞ちゃんの足を爆発させない『最強のアンカー育成計画』を立てるから!」葵が力強く頷き、いつものふわりとした笑顔の中に、初めて「戦うブレイン」としての頼もしい光が宿った。「よし、メンバー変更完了! 二人ともよろしくねぇ」高橋先生が嬉しそうに書類を抱えて教室を飛び出していく。「……言っちゃった。あーあ、本当にアンカーになっちゃったよ……」全員が帰り始めた教室で、舞はガクッと机に突っ伏した。「ふふ、言っちゃったね」葵がノートとペンを握りしめて、嬉しそうに歩み寄ってくる。「さあ、舞ちゃん。泣いても笑っても本番まであと2週間。今日の放課後から、まずは『正しい正座の崩し方とストレッチ』の特訓、始めるよ?」「鬼ブレインだ……! でも、よろしく相棒!」学級目標『凸凹だけど最強のクラス』。その言葉の通り、二人の体育祭は、予想もしなかったハプニングから、文字通り「全力疾走」で幕を開けるのだった。
後々読んで思ったのですが作った時体育祭種目決めストーリーの後にトラブル無理やりくっつけたのでなんか変な形になっちゃったような、、
あと目立ちたくないとはいえ葵が最終的に目立ってるんだから組長になれば良かったのでは?と自分で思いました笑
まあ気にせず、、第五話は体育祭当日です!