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4月ー桜と共に④
第四話ですっ!気合い入れて作りました。
**4月ー響く歓声、体育祭の種目決め**
「――というわけで、今日のホームルームは5月の『体育祭の種目決め』です。うちのクラスの目標は『普段はのんびり、やる時はやる!』だからね。司会進行、級長さんよろしく!」担任の高橋先生が、またものんきな調子で教壇を舞に譲った。教室が一気にざわざわと波立つ。女子校の体育祭は、お淑やかな日常からは想像もつかないほどガチ(本気)バトルになるという噂を、舞も耳にしていた。(げっ、また司会!?……でも、今回はもう慌てないもんね)舞はチラリと最前列の葵を見た。葵はすでに机の上にノートを広げ、舞に向かって小さくコクンと頷いている。その安心感だけで、舞の胸には新米級長としての自信が満ちていた。「はーい、みんな注目ー! サクッと決めて放課後遊ぶよ!」舞が黒板をトントンと叩くと、クラスの視線が集まる。最初の議題は、体育祭の花形であり、一番揉めやすい『クラス対抗選抜リレー』のメンバー(4名)決めだった。案の定、すぐに意見が真っ二つに割れた。「ねえ、やる時はやるんだから、1時間目の体育の50メートル走で上位だった速い子4人で固めて、絶対に1位狙おうよ!」声を上げたのは、派手めな女子グループのリーダー格だ。それに数人が「そうだね!」「勝った方が絶対楽しい!」と賛成する。すると、窓際の席に座る大人しめなグループの子が、困ったように眉を下げて手を挙げた。「あの……でも、足の速い子たちが選抜リレーに行っちゃうと、全員強制参加の『全員リレー』のほうに、走るのが苦手な子ばっかり残っちゃうよ……。そっちで大差で負けたら悲しいし、みんなで均等に分けた方がいいんじゃないかな……」「えー? でもそれじゃ選抜で勝てないじゃん。目標の『やる時はやる』って、勝つために全力を出すってことでしょ?」「それはそうだけど……」お互いに、先日決めたばかりの学級目標を盾にして正論をぶつけ合う。クラスの空気がじわじわとピリつき始め、教壇の舞は「う、うーん……」とチョークを握ったまま冷や汗をかき始めた。どちらの言い分も正しくて、多数決で決めたら絶対にどちらかのグループにモヤモヤが残る。(やばい、どうやってまとめりゃいいんだこれ……!)舞が助けを求めるように視線を送ると、最前列でペンを走らせていた葵が、すっと綺麗に手を挙げた。「長谷川さん、ちょっといいですか?」「あ、葵! どうぞ!」救世主の登場に、舞はすかさず発言を促した。葵は立ち上がると、クラス全員が見えるように、丁寧に書き込まれたノートを掲げた。「みんなの意見を聞きながら、ちょっと計算してみたの。さっき体育委員さんから、この前の50メートル走の全員のタイムデータを借りて分析してみたんだけど……」葵のノートには、クラス全員のタイムが細かいグラフや、バトンパスの相性ごとにグループ分けされて書かれていた。これぞブレインの恐るべき先回り能力だ。「選抜リレーは、クラスの最高タイムを持つ4人で固めて、全力で1位を狙いに行きます。その代わり、全員リレーのほうは、足の速い子と少し苦手な子を交互に配置して、さらに『バトンパスが得意なペア』を隣同士にしました。これなら、走力に自信がない子の遅れを、前後のバトン技術と、足の速い子のスプリントで完全にカバーできます」葵はふわりと微笑み、黒板の前に立つ舞を見た。「これなら、選抜でガツンと勝ちに行って、全員種目はみんなでカバーし合える。『普段はのんびり、やる時はやる!』の目標に、ぴったりだと思わない?」葵の圧倒的な知略と、完璧な提案に、教室中が「おお……!」とどよめいた。すかさず、特攻隊長である舞が黒板にチョークを叩きつける。「聞いた!? 葵の作ったこの作戦、マジで無敵じゃん! 誰か一人が無理して頑張るんじゃなくて、みんなの得意なところで不得意なところを埋める。これ、うちらのクラスにしかできない最強の勝ち方だよ!」舞の熱い、そして誰も置いていかない力強い言葉が、クラスメイトたちの背中をドォンと押した。さっきまで言い合っていた女子たちが、顔を見合わせて笑顔になる。「日向さんすごすぎる……! これなら文句なしだよ!」「長谷川さんの言う通り、この布陣でいこう!」パンパンパン!と、教室内が満場一致の拍手で包まれた。後ろで見守っていた高橋先生も、「いやあ、級長と図書委員の連携、素晴らしいねぇ」と感心したように拍手を送っている。◇「ふはーーー!! 終わったぁーーー!!」終礼が終わり、カバンをまとめた教室で、舞は盛大に机に突っ伏した。「級長の仕事、マジで脳みそ溶ける……。これ、5月の本番まで私の心臓もつかな……」「ふふ、お疲れ様、舞ちゃん」図書委員の腕章をカバンに仕舞いながら、葵が舞の席まで歩み寄ってきた。「最後の舞ちゃんのまとめ方、すごく熱くてカッコよかったよ。私がどれだけデータを集めても、みんなの心を動かすのは、やっぱり舞ちゃんの言葉だね」よし! これで体育祭の布陣は完璧! みんな、本番がんばろうね!」舞が黒板の文字をバンと叩き、満場一致の拍手の中で学級活動は幕を閉じた。葵の作戦通り、選抜リレーはクラスで最も足の速い「精鋭4人」が走ることで決まった。誰もが「これで一件落着」と安心し、教室が下校のガヤガヤとした空気に包まれた、その時だった。ガラガラッ!!教室の前の扉が、ものすごい勢いで開いた。息を切らせて飛び込んできたのは、選抜リレーの第一走者に決まったばかりの体育委員の女の子だった。その顔は真っ青だ。「大変……大変なの! たった今、保健室から連絡があって……!」「え、どうしたの?」舞が駆け寄ると、体育委員は泣きそうな声で叫んだ。「リレーの第四走者(アンカー)の結衣(ゆい)ちゃんが……さっきの部活の体験中に派手に転んで、足首を捻挫しちゃったって! 全治3週間で、体育祭は絶対に出られないって……!」「ええっ!?!?」教室中に、ひっくり返ったような悲鳴が響き渡った。アンカーの結衣といえば、クラスでダントツに足が速く、この作戦の文字通り「最後の切り札」だった。その彼女がまさかの戦線離脱。「ど、どうするの……? 今からアンカーの代わりなんて……」クラスに一瞬で絶望的な空気が広がる。50メートル走のタイムが上位の子たちは、すでに全員他の重要種目やリレーの枠で埋まっている。これ以上メンバーを動かせば、葵が苦労して作った「全員リレーの無敵の配置」まで崩れてしまうのだ。後ろで見守っていた高橋先生が、困ったように顎をかいた。「うーん、これは困ったねぇ。選抜リレーのメンバー変更の締め切りは、今日の職員会議が始まる『あと10分後』なんだけど……。誰か、急遽アンカーとして走ってくれる猛者はいない?」先生の言葉に、女子たちは一斉に下を向いた。ただでさえ責任重大な選抜リレーの、しかも「アンカー」だ。急に押し付けられて走りたい人などいるはずがない。ドンヨリとした、あの嫌な「押し付け合いの空気」がまた教室を満たそうとしていた。「……あ」その時、最前列で名簿のデータを必死に見直していた葵が、ハッと目を見開いて声を漏らした。「舞ちゃん、大変……。タイムデータ、結衣ちゃんの次に足が速い子、まだ他の種目で埋まってない子が、一人だけいる……!」「マジで!? 誰、その救世主は!」舞が教卓に身を乗り出すと、葵は震える指先で、名簿のある名前を指差した。そこにあったのは――『長谷川 舞』の文字だった。「……は?」舞はフリーズした。「嘘でしょ!? 私、中学受験のせいで3年間まともに運動してないよ!?」「でも、舞ちゃん、小学校のときはリレーの選手だったって自己紹介カードに書いてたじゃない! 50メートル走のタイムも、うちのクラスで5番目に速いよ!」「あれは過去の栄光だってば!!」舞が頭を抱えた瞬間、教室の女子たちの目が一斉に輝き出した。「そうだ、長谷川さん走れるじゃん!」「級長がアンカーとか、めっちゃ熱い!」「長谷川さんお願い! クラスを救って!」「ちょっと待ってよみんな!」舞は冷や汗を流しながら、必死に自分の両足を叩いた。「私、運動神経は悪くないけどさ! 今は茶道部に入部したせいで、3日に1回は正座で足が爆発してんのよ!? 生まれたての小鹿みたいな足でアンカーなんて走ったら、バトン持ったまま盛大にズサーーーッて転ぶ未来しか見えないんだけど!」必死の拒絶に、教室が一瞬「あ、確かに……」と苦笑いに包まれる。しかし、時計の針は無情にも職員会議の時間を刻んでいく。あと5分。舞はうーんと唸り、トレードマークの短髪をくしゃくしゃに掻きむしった。(嫌だ。めちゃくちゃ緊張するし、責任重大だし、足が痺れてたら最悪だ。でも……)チラリと、隣で申し訳なさそうに自分を見つめている葵を見た。葵は、自分が舞の名前を見つけてしまったことを後悔しているような顔をしていた。舞を困らせたくなくて、小さな唇を噛み締めている。(……はぁ。やっぱり、特攻隊長が逃げるわけにはいかないじゃん)舞の腹が決まった。胸の奥から、持ち前の「ハキハキとした男気」がパチパチと音を立てて湧き上がってくる。「あーもう! 分かったよ、走ればいいんでしょ、走れば!」舞がバッと男前に胸を張ると、教室中に「おおおおっ!」と大歓声が上がった。「その代わり!」舞は最前列の葵をビシッと指差した。「条件がある! 体育祭の本番まで、私の『足の痺れ防止対策』と『特訓メニュー』の作成は、ブレインである葵に一任する! 葵が最高のサポートをしてくれるなら、私は死ぬ気で前を走るメンバーを追い抜いてみせるよ!」突然の指名に、葵は一瞬呆然と目を丸くした。けれど、すぐに舞の真っ直ぐな瞳に応えるように、その綺麗な顔にキュッと気合いを入れた。「……うん! 任せて、舞ちゃん。私の全知全能をかけて、舞ちゃんの足を爆発させない『最強のアンカー育成計画』を立てるから!」葵が力強く頷き、いつものふわりとした笑顔の中に、初めて「戦うブレイン」としての頼もしい光が宿った。「よし、メンバー変更完了! 二人ともよろしくねぇ」高橋先生が嬉しそうに書類を抱えて教室を飛び出していく。「……言っちゃった。あーあ、本当にアンカーになっちゃったよ……」全員が帰り始めた教室で、舞はガクッと机に突っ伏した。「ふふ、言っちゃったね」葵がノートとペンを握りしめて、嬉しそうに歩み寄ってくる。「さあ、舞ちゃん。泣いても笑っても本番まであと2週間。今日の放課後から、まずは『正しい正座の崩し方とストレッチ』の特訓、始めるよ?」「鬼ブレインだ……! でも、よろしく相棒!」学級目標『凸凹だけど最強のクラス』。その言葉の通り、二人の体育祭は、予想もしなかったハプニングから、文字通り「全力疾走」で幕を開けるのだった。
後々読んで思ったのですが作った時体育祭種目決めストーリーの後にトラブル無理やりくっつけたのでなんか変な形になっちゃったような、、
あと目立ちたくないとはいえ葵が最終的に目立ってるんだから組長になれば良かったのでは?と自分で思いました笑
まあ気にせず、、第五話は体育祭当日です!