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後日譚:いつか、未来のはなし
穂乃花達のその後の話。
だいたい五年くらい後の物語。
ものすごく長くなりました……。
久々に地元の街に帰って来た。
職場で冬休みがなかなか取れなくて、その分一月の六日ぐらいまで休みが取れた。両親にそのことを伝えないといけない。
あぁ、それに、昔の友達にも会いたいな。花音とは今でも連絡は取っている。その花音は、今年のどこかに恋人だった工藤君と結婚して、近くの大きな街で暮らしているらしい。久々に会おうかな?
……あぁ、そうだ。祐は元気かな。
高校生のとき恋人だった、幼馴染の祐。高二の冬ぐらいに恋人になったあと、祐はアメリカに留学した。最初の頃は連絡を取り合っていたけど、祐はしばらくアメリカでのんびり過ごしていて、私が成人して大都会に引っ越してからはいつからか連絡を絶って、今はどこにいるのか分からない。
……でも、祐に会っても、何を話せば良いのかな。
私は、祐に振られたと、連絡が無くなったことを解釈した。そして、割とすんなりと受け入れられた。だから、私はこの帰省から帰ったら、本格的に結婚相手を探そうと思っていた。
「……懐かしいなぁ、このデパートも」
高二の冬、祐に告白されたデパートに、私は来ていた。
両親に諸々のことを話したら、独身最後の帰省かもしれないからと、実家でのんびりするよりは遊んで来た方が良いと言われた。
祐に告白された、大きなクリスマスツリーの前に立つ。あれ以降、何回デートしたんだろう?
「……よぉ、そこの嬢ちゃん」
嫌な感じの声。振り向くと、うーん、チャラそうなおじさんがいた。
「今から暇?暇なら、俺と一緒に遊ばない?」
……ナンパ?
「すいません、これから予定が入っているので……」
「少しくらいは大丈夫でしょ?」
「え、いや、あの……」
「おい、そこのおっさん」
ドスの効いたようなその声に振り返ると、私と同じくらいの男性がいた。
「その人、俺の連れだぜ?」
「あ、あぁ、すいません!いやぁ、少し悪戯心が働いたというか……」
おじさんはそう言って一目散に逃げていった。
「あ……ありがとうございます!本当に!」
この街に久しぶりに来た私には、本当に感謝することだった。
男性の顔を、そこではっきりと見た。
「え……祐?」
「は?穂乃花?」
祐とあのケーキ屋に入った。
あの時と同じ、二人がけの席に座る。
「いや~、まさか祐が日本で暮らしていたとはね」
「俺も驚いたわ。まさか、たまたま助けた人が穂乃花だったとはな。それにしても、穂乃花はどうして俺が日本で暮らしていないと思ってたんだ?」
「だって、私が成人して引っ越してから、日本に帰ったって連絡も無かったんだもん。それに、連絡が取れなくなったから、私、てっきり振られたのかと……」
あれ以降、全く音信不通になったのだ。本当に振られたと思わない?
「あ~……、実はアメリカでさ、俺のスマホが壊れて、もともと入ってたデータも全部無くなったんだよ。日本に帰ってきて連絡しようとしたけど繋がらないしさ。それに、俺が穂乃花を振る訳ないだろ?正直、二十五になるまでに穂乃花に会えなかったら取り敢えず結婚するつもりだったぜ?」
「そうだったの?私も、冬休みが終わって今の家に帰ったら、本格的に結婚相手を探そうと思ってたんだよ」
「そうなのか?ならさ──」
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「ふふ、あの二人、変わんないわね」
「そうだな。にしても、あいつってあんなやつだったか?」
「穂乃花と離れて変わったのかもね。一度離れ離れになったカップルが奇跡の再会を果たすなんて、素敵じゃないの」
「けどなぁ……、なんか釈然としないんだよなぁ……」
「……嫉妬?」
「はぁ?なわけないだろ?……お、ケーキ来たぞ」
「もう来たの?……あら、いかにもクリスマスケーキって感じじゃない」
「美味そうだよな。……お、この砂糖菓子いるか?」
「いらないわ。甘いものは苦手だもの。……そうだ、穂乃花達にあげればいいんじゃないかしら?」
「名案だな。で、いつ渡す?」
「テーブルも近いんだし、今渡しちゃえば?」
「お熱いところに悪くないか?」
「学生時代は散々見たんだもの。少しくらい良いじゃない?」
「そうだな。じゃ、渡しに行くか」
これで、「クリスマスの砂糖菓子」は完結です!
長くなりすぎて肝心なところをぼかしてますが、大筋は分かると思います。
ラストの会話は、花音と麗斗の会話です。