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未定 3
晴瀬です。
ヤナギ考案アンニャントロマン企画に参加しました。
リレー小説で、
みはなださん→ぺんぎんさん→晴瀬(現在)→ヤナギさん→かのんさん
の順番です。
1話と2話は下にURL貼ったんで飛んでください。
ちなみに4話は8月4日に投稿されます。
蝉の声で、目が覚めた。
きっと、この声はアブラゼミ。
そんな下らないことがふと頭に思い浮かんで、ぴくりと瞼が動いたのが分かった。
「|斗羽《とわ》?」
静かな低い声が聞こえた。
少しずつ目を開けると照明の光がダイレクトに飛び込んできて私は顔を顰めた。
特に体に違和感はなかったから「おはよ」と小さく言った。
「斗羽、起きた?大丈夫?痛いところはある?あ、あるよね、そうだよね、たくさん寝て元気になってね」
|傍《はた》を見ると私の枕元に周が座っていた。
私が目を覚まして早々少々大きな声で一人で喋りだす。
と、その声を咎める人がいた。
「|周《あまね》、ここ病室」
反対側を向くと|実來《みくる》が苦笑しながら私を見ていた。
「大丈夫?」
こんな二人に言われて私は事故に遭ったことを思い出した。
「今|沙羅《さら》と|蛍《けい》でお昼買ってきてもらってる」
実來がホッとしたように椅子の背もたれにもたれながら言った。
「事故に遭ったの夕方だったから、半日以上寝てたんだよ」
周が小さく笑顔を作りながら言う。
「あ、」
焦ったように周が言葉を次いだ。
「お母さん、今来てないけど、多分、すぐ来ると思うよ、あの、昨日電話したら、行くって、うん、言ってたし」
「ああ、うん分かってる」
私が適当に相槌を打つと、病室の扉が開いた。
「お昼、買ってきたよ〜………斗羽!?」
「起きてる、え?いつの間に?大丈夫、あの、痛いとこない、え、あれは?ナースコール」
沙羅が病院だということ忘れて叫ぶ。
蛍が驚きながらも的確に物を言った。
「あ、忘れてた」
周があっけらかんと言って、今になってナースコールを押した。
「ねえ、連絡しよ〜よそこはさぁ。言ったじゃん?連絡しようって。あんなたくさんじゃんけんして私と蛍が行くことになっちゃったんだから〜、もう〜、目覚めたと知ったらすぐ帰ってきたのにぃ」
沙羅がふてくされたように手に持っていたビニール袋を振り回した。
「|溢《こぼ》れる、溢れる!」
実來が慌てたようにそのビニール袋を止めて苦笑した。
私もそのいつも通りの様子に何故か安心して笑った。
❋
どうやら私の傷は頭のたんこぶ、足の打撲、体全体にちょくちょくあるかすり傷ぐらいで済んだようだった。
「お大事になさってください」
検査が終わって少ししたら看護師さんにそう言われて退院した。
「お母さん、こなかったね」
病院からの帰り道、蛍が静かに言った。
「まあ、母子家庭だし」
私は念の為、と言われて渡された松葉杖の端を弄りながら言った。
「仕事忙しいしさ」
私に興味もないだろうし、そう心の中で付け加える。
「あ、夏祭り台無しにしてごめんね、花火も見れなかった」
私が思い出したように言う。
我ながら、話を逸らすのが上手い。
「ううん、いいよまた皆で線香花火とかすればいいし」
周が隣で首を振った。
「線香花火!!本当映えるよね〜!やろやろ!!インスタ!!」
沙羅が後ろでぴょんぴょん跳ねながら応えた。
実來が笑って蛍が「単純だなぁ〜」と頭を掻く。
周がふざけて沙羅のまねをして飛び跳ねる。
青春してるなぁ、と思う。
夏祭りなんかは行けなかったけど、こういう青春だって、いいと思った。
❋
「ただいま」
そう声を掛けて玄関から家に入ったけれど誰も応えてはくれない。
分かっているけど、少し期待している自分がいたことに気付いた。
時計を見上げて、午後4時を確認した。
スマホのホーム画面からLINEを開いて、『母』の文字とその横の飾り気のないアイコンをタップして文字を打ち込んだ。
『今帰りました。頭にたんこぶ、足に捻挫とかすり傷程度で済みました。夜ご飯は適当に食べます』
送っても、すぐに既読が付くなんてことはない。
今はきっと、仕事だから。
明日は確か、久し振りに休みだった気がする。
❋
「おはよう」
そう声を掛けてリビングに入ったけれど、誰も応えてはくれない。
まだお母さんは寝ているから。
起こさないように静かにパンを食べた。
お昼が過ぎて、13時になってからお母さんは起きてきた。
「おはよう」
そう言って入ってくるからおはようと返す。
もうお昼だけどね、と小さく口の中で呟いて。
「怪我、大丈夫だった?」
お母さんが聞く。
「うん、全然大丈夫」
私が答える。
短く会話して、その後は各々自由に過ごした。
「ねえ、進路どうすれば、いいかな」
唐突に私は言った。
お母さんは弄っていたスマホから顔を上げて私の顔をまじまじと見つめる。
「就職すればいいんじゃない?
お金だって必要だし、どうせやりたいこともないんでしょう?行きたい大学とかないなら早く社会に出たほうが得よ」
分かってはいた。
こういう答えをすることは容易に想像できた。
でもお母さんは、
「早くに社会出るなんてしなければよかった」
「大学に言って、大卒にしておけばもっといい会社は入れた」
なんて言い訳してたじゃん。
なんて、そんなことは口が裂けても言えない。
「そうだよね」
私は、見えるか見えないかぐらいの角度で頷いた。
でも微かに、私以外の人間に私の人生を決められたくない。
微かに、意思ができた。
未定から小さく小さく、前進できる気がした。
『未定』 みはなださん
https://tanpen.net/novel/473553cf-41ac-460a-a614-5e62df2f40b8/
『未定 2』 ぺんぎんさん
https://tanpen.net/novel/608ad44f-6963-4204-a476-db1db008274a/
次はヤナギ!!
なんとも繋げにくい終わり方。あとなんか、内容薄い気がする…。
言うなら、斗羽が目覚まして母子家庭が判明したくらいじゃん。
…うんでも、ヤナギならなんとかしてくれるよ!!
だってヤナギだもんね!