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6話:束の間の平穏
「レフェールさん!」
暫くして、遠くから歩いてくる二人の姿が目に入る。
俺はすぐさま立ち上がり、その場から駆け出した。
「よぉ!大丈夫か?」
「大丈夫かはこっちのセリフです!」
片手を上げ笑いかけてくる翔陽の言葉に、俺は思わず声を荒げてしまった。
ハッとして片手で口を抑えた後、気まずく感じ、俺は目を逸らす。
レフェールはいつもと変わらぬ笑みを浮かべ、俺の肩に手を置いた。
「大丈夫、この位で死ぬほど私たちは弱くないよ。」
その穏やかな優しく語りかけてくる声を聞いて、俺は顔を上げた。
「す、すみません…。」
「気にしなくて良いさ。そうだ、君に紹介したい人がいるんだよ。」
「おっ、あいつかー?」
翔陽は腕を組み、何故かニヤニヤとしてレフェールを見る。
レフェールは言葉では返さず、静かに頷くと俺の背中を押し、ついてくるよう誘導して来た。
言葉こそ無いが、俺の勘がレフェールの伝えたいことを察知したおかげで、俺はすぐ理解した。
前を歩くレフェールについていき、俺の後ろからは翔陽、そして書類を抱えた美帆がついてくる。
「ここだよ。」
少し歩いた後、レフェールがある部屋の前で立ち止まってこっちを振り返った。
レフェールはドアノブに手をかけ、捻る。
カチャリ、とドアが開く音がして、部屋の中が見えて来た。
そこに居たのは、前髪をセンター分けにして右目にモノクルをかけたサイドテールの女性だった。
整った顔立ちをしており、前髪の隙間からルビーの様な真紅の瞳が覗く。
キリッとしており、どこか厳しい様な、厳格な雰囲気が漂っている。
……俺の偏見だが。
「ん…?あぁ、これが噂の新人ね!それにしてもレフェールまた拾って来たの!?」
彼女は俺たちの方に気づくと、先ほどまでキリッとしていた表情はどこへ行ったのか、パッと顔を明るくして近づいて来た。
ギャップなのだろうか。第一印象とは全く違い、親しみやすくフレンドリーだ。
レフェールが一歩前に出て、彼女の方に視線を向ける。
「拾って来るとは…言い方が少し違うね。まぁいいさ、彼女はルミネ。我々の手助けをよくしてくれる人物だ。頼りになるよ。」
レフェールは彼女を手で指し、俺の方を見てそう紹介した。
ルミネは微笑み、「よろしくね〜。」と手を振って来た。
「あ、よ、よろしくお願いします!」
俺は少し戸惑いながらも、頭を下げて礼をした。
そして顔を上げると、ふとある事を疑問に思った。
「あの…。」
「なんだい?」
レフェールは俺が躊躇気味に手を挙げたのに気付き、首を傾げた。
「ルミネさん…って、残月じゃないんですか?目が…。」
「あぁ、それはね、勿論私は残月じゃないわよ!天蝕でも残月でもない…「EDEN」っていう組織の一員なの!」
ルミネは自分について質問されたことが嬉しいのか、うっとりと目を細めて頬を赤らめながら答えた。
「EDEN」─楽園という意味を持つ言葉だ。
天蝕とも、残月とも違う神聖な雰囲気が感じられる。
「EDENはね、いわゆる中立組織みたいなものだよ。天蝕や残月両方にも手を貸す。EDENは一人一人が優秀な構成員だ。能力とは違い、「魔法」というものも持っている。」
「魔法…?俺たちは能力…「裂花」で天蝕や政府から危険視されているのに?」
「それはEDENが世界や人々にとって"救い"だからだ。彼女達が持つ魔法はどれも神聖で高い治癒特性を持つ。傷ついた人々を癒やし救ってくれるからね。そのEDENに手を出すと、世界の理が崩れてしまう。だから、天蝕や政府は手を出したくとも出せないのさ。」
「なるほど…。」
レフェールの説明を聞いて、俺は納得して頷いた。
「そう!だから私は時々、こうしてここに来ているのよ。」
ルミネは誇らしげに笑いながらそう言った。
残月ではなくEDENに属するからこそ、彼女の瞳孔は三日月型ではなかったのだ。
「それは頼もしいですね…!」
俺が目を輝かせて褒めると、ルミネは少し気恥ずかしそうに、だが嬉しそうに微笑んだ。
突然背後に気配を感じ、振り向くとゴーグル付きのキャップを被った…作業員のような服装をした青年がいた。
俺と同じくらいの年に見えるその青年を見たレフェールは、少し表情を険しくした。
「誉くん…君がここに居るという事は…」
「はい、天蝕第三組織、陽獄の者達がこちらに─」
その言葉が言い終わる前に、窓ガラスがガシャァァン!と勢い良く割れた。
幸い、誰も近くには居なかったが、目の前に二つの人影があった。
「僕らが逃すと思ってるの?」
「さっきの続き、第二ラウンドだ!!」
先ほどの大鎌を肩にかけた黒髪の少年と、黒い包帯で目を覆った男だった。
今回は新キャラ「ルミネ」と中立組織「EDEN」が登場しました!
「天蝕と残月が敵対してるなら、中立組織を登場させても良いのでは…?」
という事で作りました!
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