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お試しlover 4話
R!u.
『お試し期間!貴方とあの人のlover♡』
『3日目』
〜♪✴︎
石井side
「おい、起きろ」
新山の声がして目を覚ました。
「ん、…」
体をあげようとしても持ち上がらない。
絶対昨日夜更かししたせいだ。
でも、思っていたのと理由は違かった。
「ちょっと熱測るぞ」
最初はどう言う意味か分からなかった。
熱がある感覚はしない、ただ体が少し重いだけ。
しかしピピッと音を立てた機械を2人で覗き込むとそこには衝撃の数字が示されていた。
【38.3】
「…ったく、どうりで熱いと思ったわ」
新山は俺をもう一度ソファに押し戻すと立ち上がって鞄を持ち玄関へ。
「新山、どこ行くん…?」
「足りんもん買い足してくるだけや。すぐ帰るけどなんかあったら連絡しぃや」
そう言い残して出て行った。
まさか熱があるなんて。
正直自分でも気が付かなかった。
新山が出て行って静かになった部屋を見渡す。
お試し期間に入ってから新山が家にくるのは当然となっていて、且つ昨夜も一緒に過ごしため温もりもなくなった感覚。
吐き気が込み上げてきて横になる。
「はよ帰ってきてや…」
寂しくて、ぽつりと呟いた。
新山side
約10分ほど歩いてようやくコンビニにつく。
体調が悪い時に用意するもの、とは。
「まぁ、ゼリーと熱さまシートくらいでええか…」
普段入らないゼリーの並ぶコーナーへ足を運ぶ。
そこには想像以上の味が並んでいた。
そういえば、アイツの好きな味しらんわ。
こんな時くらい選ばせてやろうと思ってスマホを開く。
石井とのトーク画面に昨日の会話が映し出されて顔が少し熱くなる感覚がして首を振る。
「石井」>
送ったLINEに既読はつかない。
また寝たか?とは思いつつも続きを送る。
「ゼリー見とるけど、味何がいいん」>
「りんごとかみかんとか、結構あるで」>
それにも既読はつかない。
「こんな気づかんことあるか…?」
嫌な予感が頭を過って打ち消すように頭を振り、迷わず通話ボタンを押した。
電子機器音を立てていたスマホが静かになる。
「おい、石井?」
何も言ってこないから名前を呼ぶ。
でも、それにも返事はない。
「なんや、どうかしたんか?」
『…、に、…やま、』
途切れ途切れに自分の名前を呼ぶ声がする。
「…おい、これ電波の問題とちゃうな、大丈夫か」
声をかけるも、すぐ返事は聞こえなくなってしまう。
「…長い言葉話せへんなら単語ごとでええから、今どうなってるん?」
返事を待っていると、ぽつりぽつりと今の状況を伝えられる。
『ベッド…、上、…』
「さっきの場所から動けへんのか、それで?」
『気持ち…悪い、なって…』
そこからの続きが中々こない。
「…あー、なるほどな、もう続き言わんでええよ。そこ、そのままにしとき。すぐ帰るわ。電話はこのまま繋いどくで?」
吐いたんだろうなと勝手に解釈して適当にみかん味を取る。
たとえ好きな味じゃなかったとしても、今の状況では当分選べないだろうし我慢してもらおう。
レジに行きがてら見つけた熱さまシートを取る。
会計を済ませ全速力で歩道を走る。
こんなことになるくらいなら、車でこればよかった。
車できてしまえば2、3分でついていたのに。
走る足を早める。
「もう少しでつくから、そっから動かず待っとけよ」
石井に声をかけて走った。
石井side
『もう少しでつくから、そっから動かず待っとけよ』
新山の声を聞いて安心した。
吐き気が急に増してゴミ箱を取る暇もなく嘔吐。
せっかく昨日新山と洗濯した布団を自分で汚してしまった。
新山にLINEをする力もなく働かない頭では通話ボタンも押せない。
そのタイミングで電話をかけてくれて本当に助かったと思う。
帰ってきたら感謝しよう。
そう思ってもう一度目を閉じようとする。
しかし、またそのタイミングで吐き気が込み上げる。
2度もここで吐くと片付けがもっと大変になる。
堪えるように服の裾で口元を覆う。
「にいやま、早く…、」
呟いた瞬間にドアが開く音がする。
「石井!」
あ、やっと帰ってきてくれた。
安心して力が抜けて、意識が飛んだ。
新山side
「…おい、石井?」
帰ってきた時点でもう意識はぎりぎりに見えていたが、途端とこちらへ体重を預けてくる。
これは…意識失ったか。
「ったく、心配かけんなや…」
呟いてタオルを取りに行く。
ソファに吐いた跡が残ったらきっと石井が遠慮して買い直そうとするからできるだけ元通りに。
タオルを挽いて、石井を抱き上げる。
ベッドへ連れて行く途中でもビクともしない。
寝かせてリビングへと帰ってくる。
「ほんま盛大にやらかしたなアイツ…」
悲惨な状態に苦笑する。
しかし、不思議と面倒ではなかった。
それに自分が面倒を見てやりたいとまである自分が今は別に嫌いじゃない。
だってコイツがこんな風に甘えるのも、
あんな風に笑うのも
全部俺がいるから。
「…なんか、メンヘラやない?これ。」
呟いた言葉は部屋に木霊して返事はない。
アイツが起きてたら終わり。
起きてませんようにと一願いして片付けに取り掛かり始めた。
石井side
「ん…、」
目を覚ますと先ほどまで12時さったのが20時。
半ば飛び上がるように起き上がる。
寝る前までの記憶が曖昧で新山が帰ってきたところまでしか覚えていない。
体は先ほどよりだいぶ軽い。
そりゃ8時間も寝たら治るか。
急いでリビングへと向かう。
「おう、起きたか」
台所に立つ新山の手にはフライパン。
わざわざ夜ご飯まで作ってくれてたのか。
今日は何もかも迷惑かけまくりで、すごく申し訳ない。
「…ほんま、迷惑かけてごめん。」
「迷惑とか思ってへんわ。1人で抱え込まれる方が厄介やし」
此方を一瞥した新山と目が合う。
「だいぶ体軽そうやな」
「おう、だいぶ」
「そら8時間も寝たら治るわな」
揶揄うように口角を上げた新山を目にして無意識に自分の口角も上がる。
「チャーハン作ったけど、食えるか?」
「食う」
「即答やん」
ソファに腰掛けてテレビをつける。
『いや、そこはあかんやろ!!』
『別にええやん、お前がやればええだけやろ』
片眉を上げて怒っているのか怒っていないのか曖昧な新山と澄ました顔の自分がテレビに映し出される。
「…それ、この間収録したやつやんな?」
新山の声が後ろからして振り返る。
「せやな、ほんまあそこのプロデューサー編集早いねんなー」
すごいわ〜と乾いた笑いをこぼす。
誰もこんな不仲コンビがお試しで交際しているなんて知らない。
テレビ界に立って仕舞えば家でのこんなの全て無かったことにされる。
お試し期間は俺が熱を出したせいで1日無駄になり、残るは後4日。
「明日、収録やぞ。出られそうか?」
「明日もなんか。普通に出られるで」
軽く会話を交わして立ち上がる。
めっちゃいい匂いするから、多分もうすぐ出来上がる。
「…なあ、明日収録終わりにちょっと買い物付き合ってくれへんか」
目線はフライパンのままそう告げられる。
「ええけど…どこ?」
「秘密」
「なんや秘密て、カップルか。」
「カップルやん」
そう言って悪戯に笑う新山に茶化されてから翌朝までの記憶はほぼ無いのであった。
4話 end