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縁結び屋 氷の縁結び娘は初恋に出会う。⑤〜拓海の婚約者〜
面倒臭いから書かない!
「ここが都シティホテル、ですか?」
「はい。ここからは自由行動で結構ですよ」
にこやかな態度で拓海がパーティ会場に夏美を入れる。
…これ、本当に拓海?
でも多分、この笑顔の裏では誰をどう動かして誰をどうするか、計算されているのだろう。
「…あ、夏美」
「あっ…鈴木くん?」
早っっっ
「…これ、私達いりました?」
「…すまん、まったくいらなかった」
多分、これは計算外だったと思う。
でも、美氷はなぜか、夏美と紀久の笑顔を見て、羨ましいと思った。羨ましいと思ってしまった。
「意外と早かったですね」
「そうだな」
拓海としてはドレス代の穴埋めのためにいっぱい搾り取りたかったようだ。しかし、二人が勝手にくっ付いてしまったのだから、請求するにも請求出来ない。
「…よし、帰るぞ」
「え?」
「いいから帰るぞ」
きっと拓海ならパーティの美味しいものを全て制覇してしまうだろう、と思うほどの勢いがあったのに。
しかし、拓海が帰るぞ、と言った理由が分かった。
「拓海様」
背後から、拓海の名を呼ぶ声が聞こえた。
静かで、綺麗な声だった。
そして、自分と似た顔を持っていた。
あなたはーー?
紫水晶をあしらった様な目、艶が見られる黒髪、この世の者とは思えない綺麗さだった。
「…あぁ、美桜か」
「ご無沙汰しております」
…美桜、美桜ってどこかで聞いた名前だ…
「…あの、そちらの御女性は?」
「お前には関係ない」
拓海は暗黙に「関わるな」と言っている。
「わたくし、拓海様に一生を尽くせと教わったのです。そのような事は出来ません」
…あっ、拓海の顔がめんどくせぇって言ってる。
というか、なぜ拓海は自分を選んだのだろうか。
縁結びの力を使える、他の男を探せば良かったのに。不倫だとか言われなくて済むだろう。
「では、拓海様は頑固そうなので」
桜色の着物を着た美桜が、少ししゃがんで美氷に視線を合わせた。
「あなたは、どこの暗殺者ですか?」
…は?暗殺、者?
「え?」
「拓海様にお気に入られ、その隙を突こうとでも思ったのでしょうが、わたくしが居るのにそのような事をさせるわけにはいきません」
「何か勘違いしておられます、美桜様」
「…あら、勘違い、ですと?」
「ええ。まず、私を縁結び屋に選んだのは拓海様です」
美桜は笑顔を絶やさないが、今の顔は笑っていない。
「そして、美桜様が信頼される拓海様は、情報を知るのに優れており、暗殺者など入れるわけがございません」
ぐっと美桜が唇を噛んだ。
分かっている。私がこんな事を言うと言うことは、暗殺者では無いと証明するとともに、
私が愛人か、それに似たものと言うこととも同義だということも。