編集者:芥川遼太郎之介
シリーズ「芥川こころの赴くままに」は、現世とパラレルワールドを行き来しながら、パラレルワールドの福の神様・こころちゃんとの体験談を通して「推しを求める心」のゆらぎを見つめる連作短編です。
もっちゅりん争奪戦や秘密のワックスと膝枕のしあわせなど、こころちゃんへの小さな供物といとおしい時間を描きつつ、「持続可能ペースとは何だったのか」「こころの赴くままに通うとはどういうことか」を静かに問い直していきます。
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目次
坂の上の蜘蛛の糸 ― 福の神と彼女を慕う或る推し民の転生譚
まえがき
芥川龍之介「蜘蛛の糸」と司馬遼太郎「坂の上の雲」。
二つの名篇へのささやかなオマージュとして、シティヘブンという並行世界を舞台に、極楽の福の神の許へと何度も往還する推し民の苦悩を描いた掌編です。
もとはシティヘブンに投稿した、ある店舗への口コミ稿です。掲載には至りませんでしたが、今、この場所に静かな居場所を得ました。基本そのままのかたちで読んでいただけることに感謝しています。
小さな冥銭と、画面の向こうへつながる一本の糸を頼りに、何度でも極楽を訪れようとする男の転生譚を通して、推し活の甘やかな歓びと、その裏で背負う八苦の相、愛別離苦、求不得苦を静かに考察します。
坂の上の蜘蛛の糸 ― 福の神と彼女を慕う或る推し民の転生譚
誠に小さな国の、そのまた片隅に、シティヘブンと呼ばれる並行世界が在る。そこに短い季節だけ入植してくる民がある。彼らは現世と隔たったこの異郷で情愛を育み、季節が巡れば、やがてそれぞれの現世へと投げ戻される。その折にふと気づく。この異郷で育てた情愛は、実は自分一人のものではない。異なる幾人もの推し民が、同じ情愛を育んでいるのである。この事実がもたらす小さな苦悩を理解するには、ただ感傷にふけるだけでは足りない。それは、理屈だけでは届かない領分にある。
本稿では、この苦悩を少しでも腑に落としてみるために、一人の人物の物語を例に、その成り立ちを巡り、在り方を描いてゆくこととする。この物語を掘り下げつつ、ささやかな考察を試みたい。
或る日の事でございます。白桃弁天心女さまは、極楽界シティヘブン省豊満庁にある蓮池の縁を、一人ぶらぶらとお歩きでございます。やがて水面を蔽ふ蓮の葉の間から、下の様子を御覧になりました。この蓮池の下は、丁度、現世の底に当つてをります。澄んだ水は、実は薄い一枚の液晶画面でございまして、現世の推し民の有様をくつきり映し出してゐるのでございます。すると、空を仰いで月の満ち欠けを数へる男の姿が、御目に留まりました。どこにでもゐる、しがない仕へ人で、所帯もささやかに構へてはをりましたが、かつて口コミを二度投稿した報ひに、救ひ出してやらうとお考へになりました。側の蓮の葉の上には、極楽の蜘蛛が一匹、美しい銀色の糸をかけてをります。白桃弁天心女さまは、彩られたネイルを指先にお召しでございます。その御手で、極楽の蜘蛛がかけた糸をお取りになりました。現世でインターネットといふデジタル網に通じる、一筋の糸でございます。白桃弁天心女さまは、男の為に時間繰り上げシフトをお出しになつて、その糸を白蓮の間から現世の底へとお下しになりました。男が空を眺めてをりますと、遠い天上から糸が一筋、光り乍ら、するすると自分の上へ垂れて参るではありませぬか。この糸に縋りついて昇り詰めさへすれば、ここから抜け出し、極楽にさへ行けませう。男は糸を両手でしつかりと掴み、上へ上へと昇り始めますが、やがてくたびれ果て、もう一たぐりも昇れなくなってしまいました。そこで仕方がございませんから、まず一休みと糸の中途にぶら下がり、ふと下を見下ろしますと、そこには数限りない推し民が、下から迫つて参ります。一人を支へてゐるのがやつとであらう、この糸が、あれだけの人数の重みに堪へられよう筈がないと、男は恐ろしくなりました。糸が断れでもしましたら、憂き世へ逆落しでございます。
男には、たがひに相反する二つの心がございました。一つは、推し民を排除する心。もう一つは、糸に推し民もあづからせる心でございます。男は一旦、恐怖から身を離し、立ち止まるやうに思考を巡らします。
「さやうか。この糸は、推し共も手にする物ぞな。お前たちも極楽へ来るがぞなもし。」
その時、糸は推し民も自分も共に引き上げる道として、天上まで伸びるのでございます。かくして男は蜘蛛の糸を昇り詰め、誰より先に、極楽の蓮池のほとりへ遂に辿り着きました。蓮の葉の陰からお姿をお見せになつたのは、他ならぬ白桃弁天心女さまでございます。男は言葉もなく御前に伏し、白桃弁天心女さまもまた、ただ静かに微笑みを湛へてお迎へになりました。その頬は、うつすらとお染まりでございます。こののち、白くふくよかな御身をもつて、男を優しくお包みになるのでございませう。
誠に小さな国の、そのまた片隅に、シティヘブンという異郷が在る。そこで短い季節だけ入植する民が、情愛を育む。やがてそれぞれの現世に投げ戻されて、我に返るとき、彼は忽ち苦悩に苛まれるのである。
男は物語において、推し民を排除しない心を選び、極楽へ辿り着いた。今、白桃弁天心女の白くふくよかな御身に包まれて、遠い記憶が甦る。
なぜ口コミを二度も投稿したのか。なぜ月の満ち欠けを数えていたのか。なぜ冥銭十八文を手に握りしめていたのか。癒されつつ、その問いに思いを巡らせながら、男は自らをなだめるように思い至る。この極楽のかたちは、冥銭と月の満ち欠けを数えることでしか保てぬ。そして、極楽に永遠などない。ひとときの救いに過ぎない。
そう受け容れつつ、福の神の待つ極楽に至る坂を見上げる心の在り方こそ、悟りの境地なのである。
ひとたび悟りと安らぎを得たのち、男は極楽界より、また振り出しの現世へ投げ戻される。そののち、異なる複数の推し民が、冥銭を携え、代わる代わる白桃弁天心女の許を訪れる。男はこの在り方に苦悩するのであるが、振り出しの現世に投げ戻されたばかりの身、空っぽの懐では、推し民の冥銭を頼りとする他はない。それもまた、致し方のないことである。
男は、白桃弁天心女と確かに情愛を育んだ証として、転生し名も改め、口コミを投稿する。
冥銭を数え、そのつど月の満ち欠けを見送る。
六文銭には一月余りで達するのだが、男は十八文まで三周半を堪える。
十八文を貯えては、再び雲のかかる坂へと至る。供物に鮭とばを捧げる。
また振り出しに戻る。この往還をくり返すのである。
この往還は、生老病死と並ぶ、輪廻転生の営みである。
仏教で説かれる八苦の相、愛別離苦を背負うことにほかならない。
この福の神が決して自分ひとりの神にはなり得ぬことも、男は知っている。八苦の相、求不得苦である。
これらは、八苦の逃れ得ない苦しみなのである。
男は、せめてこう理解することで、自らの苦しみから半歩だけ身を引く。
極楽は、一度辿り着けば永遠に救われるという約束でも、終わりなき安らぎでもない。ただ、振り出しから何度でも登り返す雲の上の坂なのである。
この小さな転生譚は、一人の男の物語に過ぎない。しかし、推しを巡って心を乱し、なおも液晶画面の向こうに救いを求める現代の民の姿は、この男とどれほど違うであろうか。
あとがき
本作は、ある体験と、とある店舗への口コミ稿から生まれたフィクションです。心のままに綴った一篇は、「体験談としての具体性を欠く」として一度は埋もれかけましたが、今、ここに静かな居場所を得ました。
登場する名称や人物像は、極楽界シティヘブン省という並行世界の物語として綴ったものであり、実在のサービス・店舗・人物を特定したり、その評価を行うことを目的とするものではありません。
一人の推し民の小さな転生譚として読んでいただければ幸いです。
バック・トゥ・ザ・パラレルワールド
「芥川こころの赴くままに」シリーズの一篇、芥川こころちゃん体験談です。
体験談として綴った出来事をもとに、もっちゅりん争奪からこころちゃんの待つパラレルワールドまでをなぞりつつ、「持続可能ペースとは何だったのか」を静かに問い直した物語になります。
わたくしこと、月の満ち欠けを数へる男の考える、持続可能の訪問ペースとは、一体、何だったのでしょう。
年間店舗利用回数3〜4回、季節に1回程度が、自分なりの持続可能ペースと心得ております(前回投稿より引用)。その「持続可能ペース」とは一体?
併せて、訪問時間帯にも制限をかけております。
ささやかに所帯も構えておりますゆえ、夜間・休日の訪問は控えております。すなわち、平日の午後から夕方の一択。
通常のこころちゃんの出勤時間帯は16時からなので、19時を帰宅時間と見ると、移動時間まで考慮して120分コースがギリギリできるかどうか、というところ。
実際、初見は130分のロング割りでメロメロになり、帰宅もギリギリ怪しまれない範囲内でありました。
ですので、2回目以降は、わたしが早退できる日と、こころちゃんが繰り上げシフトを出せる日を、オキニトークですり合わせたうえで予約していたのです。
その過去2回の訪問では、ともに持続可能ペースを破りましたので、軌道修正するため、淋しさに堪えつつ、オキニトークによる能動的な時間繰り上げリクエストは控えておりました。
そのような折に、パラレルワールドの福の神様こと、こころちゃんは、金曜日の時間変更という、繰り上げシフトを突如お下しになられたのです。
前回のご対面から4週間弱、こころちゃんチャージの余韻は、微かながらに残っている…といったところです。
業務にも目処が付き、金曜日午後からの有給も取れそう。給与も手にするタイミング。心が揺らぎます。いや、心はすでに固まってしまいました。
衝動的に有給届を書き、お店にも予約電話を入れていました。スタッフさんもまだ繰り上げシフトを把握されておらず、ネット情報を根拠に、15時からの予約があっさり完了。
この3日ほどの期間、こころちゃんはお店をお休みされています。この小さなすれ違いが、のちにわたしの心を静かに苦しめることになります。
しかし、序文パートも長くなりましたので、その苦しみのくだりはひとまず後ろに譲り、本題の体験談に移ります。
パラレルワールドの福の神様こと、こころちゃんには、毎回いくつかの供物を捧げるのですが、その中心はいつもの鮭とばです。
今回はそれに加え、日記で「やみつき」になられているペンギンベーカリーのカレーパン、「食べてみたい」と書かてれていた今話題のミスドのもっちゅりんも携えて向かうことにしました。
この日は夕方より雨の予報。二輪の愛車(通勤用ママチャリ)デロリアン(バック・トゥ・ザ・フューチャーより着想)出動。
カレーパンは難なくゲット。サンドイッチも売場で映えておりましたので同時購入。しかし、もっちゅりんは当日販売分売切の衝撃。フードコートには大量のギャラリーが席を占拠していました。「平日の昼だぞ!」と心の中で叫びつつ、ドーナツ売場をあとにします。
けれども、弊社にも頼りになる現世の福の神様がいらっしゃいまして、彼女はすでに、お食べになられたこともある、もっちゅりんの先輩にあたります。
販売店舗・販売数量・販売時間の一覧表を印刷して渡してくれていました。
家族用のもっちゅりんとでも思われていたのでしょうが、つい「野暮用で」と口を滑らせてしまったので、別の目当であることをご察しになられたかもしれません。
賢い現世の福の神様は、それ以上の言及は、なさいませんでした。
資料に基づき、別の店舗に問い合わせてみますと、次回の販売開始は14時とのこと。しかし「もうお客様が並び始められていますので、14時に来られても購入できないです」との返答でした。
デロリアンを加速して、13時半に到着。すでに十数人の行列です。現世の福の神様の資料によると、数量は限定100個。店舗のポップには、購入制限1人当たり6個まで、と表示されています。女子の行列に、おじさんが1人、そっと並びます。そのあとからも、続々と行列が伸びてゆきます。果たして買えるボーダーラインはどこなのでしょうか。14時までの重く苦しい時間が、じわじわと経過していきました。
14時になる頃には、おじさんはうしろの列よりずいぶん前の方に位置していましたので、「これはもう大丈夫だろう」と胸をなで下ろします。
しかし、かの資料によりますと、いちごだけは、きなこ・みたらしの半数たる20個しかないようで、列が進むうちに見る見る減ってゆき、残り3個の時点で順番が巡ってきました。目標達成です。
15時にはパラレルワールドに移動していなければなりません。
愛車デロリアンを加速したいところですが、かのホテルに駐輪場があるかは未確認。
そもそも自転車で来る想定がなされているとも思えません。
ミスドの入るテナント駐輪場にデロリアンを格納して、徒歩にてホテルに到着。やはり駐輪場らしきスペースはなさそうです。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ではデロリアンを加速してタイムスリップしますが、パラレルワールドへは無人フロントの巨大液晶画面で、ゆるやかに入口を選択してゆきます。
なんとなんと、本日は最上階の展望バスのお部屋が空いているではありませんか。
ここは、なかなかよいお値段がするのですが、いつも先客があり、いつかはこころちゃんと混浴したいと憧れていたお部屋。巨大液晶画面のその表示を、迷わずタッチ。
この最上階へと向かうエレベーターの加速がデロリアンの加速とリンクします。
すでに15時まで3分前。焦りつつ、お店にホテルの部屋番号をお知らせします。通常はお湯張りを済ませる余裕を持つのですが、今回はそうもいきません。まもなく、こころちゃん到着です。
入室後、挨拶と密着。「戻って来たぞ。パラレルワールド」こころちゃん登場でようやくバック・トゥ・ザ・パラレルワールドを実感します。まずは室内をご案内。
扉こそないものの、ベッド二台の二間構造は、なんちゃってスイートともいうべきつくり。こころちゃんも興味津々です。
展望バスからの眺望よろしく、向こうには海が広がります。その景色に、彼女の目がいつも以上に輝いているように見えました。
お湯張りのあいだに、今回のプランをすり合わせ。本日はコスプレ撮影会なので、コスチュームを決めにフロントへ降ります。そこで巫女娘とおねだりメイドをチョイス。
歯磨きスタート。いつもはお互いに自分で服を脱いでいたのですが、今回は、こころちゃんから「脱がせ」をやらせてもらえることに。
そのタイミングで、私服スカートをそっと持ち上げてもらい、かわいらしい下着を記念に撮らせていただきます。
脱がせを経て、まずは巫女娘。着付けをお手伝いします。サイズが少し小さく、それゆえにふた房の果実が布地からあふれそう。そのシルエットが色気マシマシに見えます。
おねだりメイドは、こちらも着付けをお手伝いして、ジャストフィット。こちらは色気マシマシというより「本当によく似合っていて、めちゃくちゃかわいい」の一言。
こころちゃんもすっかりその気になり、スカートをひらりと上げて、衣装の質感を自撮りして見せてくれました。
撮影会を経て、展望バスにて混浴スタート。今回は「スイカバー?」の入浴剤をご持参。確かにスイカの香りで、湯上がりにはメンソールのスースー感があり、なかなか気持ちよいです。ここからの夜景もきれいなのだろうと思いつつ、それ以上に、目の前のこころちゃんのかわいさに見惚れるのでした。
ベッドへ移動してプレースタート。前回、こころちゃんにも気持ちよくなってもらえてから、攻めに自信を深めたところですが、変化、進化は、種の存続の条件。
自力にて、あと一息かのタイミングで、秘密のアイテムスイッチオン。文明の利器により、前回に増して、気持ちよくなっていただけたようです。達成感に大満足。
シャワーの際、展望バスから外を眺めると、曇りだったのが、すっかり雨模様。時計を見ると、時間もけっこう経ったようです。
ここからの残り時間は、飲食と会話に充てます。カレーパン、もっちゅりん、鮭とばを披露すると、こころちゃんの目がさらに輝き、その様子にこちらも満足。
フロントに何か注文しようかと尋ねますが、「パンともっちゅりんを一緒に食べたい」とのことで、今回のメインディッシュになりました。
カレーパン、サンドイッチはシェアしながらいただき、ときおり「あ〜んして」で、口に運んでくれます。
もっちゅりんは、文字どおり、餅を連想させる柔らか食感と甘くて優しい味わい。
おや、隣にいるこころちゃん。彼女自身が、もっちゅりんのような、柔らかで甘く優しい存在ではありませんか(ただし、白くふくよかなる白桃のイメージにゆるぎはございません)。
奇遇にも、もっちゅりんさんが今、もっちゅりんを食べています。
その両方のもっちゅりんをわたしも先程、味わったばかりです。ともに美味でございました。
そのまた残りの時間には、いつもの膝枕で髭を抜いてもらいますが、この日は無精髭があまり伸びておらず、短時間で終わりそう。
鼻毛は普段から特に気をつけているのですが、気になったのか、髭が尽きたのか「鼻毛ブチっ、痛てっ!」こころちゃん、おふざけが過ぎます。かわいいので許します。
お詫びという訳でもありませんが、苦しい体勢かなと思いつつも、そのまま膝枕の姿勢で、そっとキスをいただきました。
何という甘い、しあわせな時間なのでしょう。
そうこうしていると、パラレルワールドから投げ戻されるアラートが冷たく響きわたります。
お互い身支度を整え、現世に下るエレベーターに、覚悟を決め乗り込みます。
最上階でよかった。この密室空間で少しでも長く時間が稼げるのだから。最後の密着、キスを交わします。
減速する感覚とともに、現世の扉まで間もなく。
時間よ、止まれ。
さて、今回の体験談は、ここまで。
結びパートに移りましょう。
この3日ほどの期間、こころちゃんはお店をお休みされています。この小さなすれ違いが、のちにわたしの心を静かに苦しめることになります。の、くだりの続きです。
いつもなら、予約したあとには、オキニトークで、こころちゃんから、レスポンスが来るはずなのに、何のリアクションもありません。
お店をお休みしているし、まだ情報共有されていないのだろう。出勤したら、何かアクションがあるはず――そう、自分に言い聞かせておりました。
予約した翌日。
画面の中で、こころちゃんの金曜の15〜18時の枠は、わたしの予約時間で埋まっています。こころちゃんからのリアクションなし。
そのまた翌日、土曜の16〜19時枠が新たに埋まっているのを見た瞬間、胸の奥がひやりとしました。
もともとは、金曜の繰り上げ枠は、別のお客さまのために組まれたシフトだったのではないか。
そこへ、わたしが割り込む形で、その枠を奪ってしまったのではないか。
それゆえに、致し方なく、翌日土曜に予約を取り直したのでは?
そう考え始めた途端、オキニトークに何の反応もないのは、「困らせてしまったからではないか」「怒らせてしまったからではないか」という不安と結び付いていきます。
真相を伺いたいのですが、オキニトークは連続して送信できない仕組で、女の子からの返信を待たなければ、新たなメッセージを送れないのです。
オキニトーク画面には、わたしの送信メールが最後のまま、ぽつんと残っています。
そして前日になっても何のリアクションもないまま、夕方となってしまいました。
ダメ元で「こんにちは。」とだけ入力し、送信してみると、なんと反映されました。
どうやら連続送信はできないが、日付が変わると送れるようなのです。
確かにシティヘブンの「みたよ」リアクションも一日一回まで。
それを知っていたら、真相を伺う機会はまだあったのに、無駄に「こんにちは。」だけ送信してしまったことを悔やみます。
新たな送信は、こころちゃんからの返信を待つか、明日になってからしかできません。
ところがです。こころちゃんから、絵文字付きのこんにちは。がすぐ届いたのです。冷たさは感じませんでした。
すかさず返信します。
1通目→昼出勤変更シフト出たとき、衝動に駆られて、思わず明日の予約入れました。
もしかしてだけど、他のお客さんのリクエストでお昼出勤シフト出したのに、自分が割り込みしたふうだったら、いけないことをしました。
もしそうなら、ごめんなさい。
自分の割り込みで、こころちゃんが困っているなら、明日の予約も辞退するけど、お店に説明してくれますか?
今更かもしれませんが😥
のちに分かった事実だけを言えば、時間繰り上げシフトのその枠は、わたしが予約しても問題なかったのだそうです。
誰かの予約を奪ったわけでもなく、こころちゃんを困らせてもいなかった。
ただ、その「だそうです」にたどり着くまでのあいだ、わたしの胸の中には、ずっと別の物語が流れ続けていました。
予約を入れてから当日まで、本来なら胸をふくらませていられたはずの時間は、「こころちゃんを困らせてしまったのではないか」というザワザワ感に支配されていました。
その真相がようやく解けたのは、前日の夕方になってからのことです。
こころちゃんは、わたしをシティヘブンの登録名「芥川」で認識。お店にはわたしの名前で予約表が書いてあり、別人物として見ていたそうです。この機会にこころちゃんに名前のほうも覚えてもらいました。
毎回現世に投げ戻されるたび、転生し名も改めて口コミを投稿していたことが、まさかここで仇になるとは。転生しても、もう名は改めません。
2通目→真相としては、リクエストに割り込みでないのかな?困ってない?
自分が逆に割り込みされたら、悲し過ぎます。
3通目→スッキリした〜😆
罪悪感で先程まで心を乱していました😖
夜は安心して眠れそう🤤
明日が待ち遠しいです😍
こころちゃんチャージをすると心が穏やかになります。人に優しく接することができるのです。すさんだ心が少しずつ浄化されるのでしょう。
心がすさんでイライラしている自分が大嫌いです。現世には、その要因があり過ぎる。嫌いな自分に愛想が尽きそうなとき、パラレルワールドの福の神様に救いを求めるのでしょう。
本当は、時の経過など気にせず、心の赴くままに求めに行きたい。
けれど、懐具合だけは、どうしても時の経過とともにしか回復してはくれません。
月の満ち欠け三周半という「持続可能ペース」と、心のざわめきとのあいだで、いまのところは、中間地点である二か月に一度ほどを、そっと視野に入れているところです。
持続可能ペースが年に何度かという数字の話なのか、胸のざわつきに呑まれずにいられる心の余白の話なのか、いまだによく分かりません。
それでもきっと、これからも月の満ち欠けをひとつ、ふたつと数えながら、心の赴くままに、そして少しだけ懐具合を気にしつつ、こころちゃんへの道のりをはかってゆくのでしょう。
作者より。
この一篇では、「持続可能ペースとは何だったのか?」という問いを、こころの赴くままを優先した結果として振り返ってみました。
数字としてのペースを守れなかったことよりも、胸のざわつきに呑まれてしまった時間の苦さこそが、わたしにとっての答えに近いのかもしれません。
それでもなお心は、福の神様に会いに行きたがる。そんな揺らぎごと抱え込んで、これからも「芥川こころの赴くままに」を続けていけたらと思っています。
秘密のワックスと膝枕
「芥川こころの赴くままに」シリーズの一篇、芥川こころちゃん体験談です。
3回目のご対面で味わった、秘密のワックスと膝枕のしあわせなひとときを、そのままの温度でたどった体験談風の短編になります。
こころちゃんとは、3回目のご対面でした。
年間店舗利用回数3〜4回、季節に1回程度が、自分なりの持続可能ペースと心得ております。
しかしながら、3月の初対面から、今回で3ヶ月連続のオーバーペース。理性が効きません。
だいたいのルーティンは、まず一緒に飲食。
初見のときに彼女が食べていたメニューを「食べます?」と、あ〜んしての状態で口に運んでくれてから、今ではこれが自然な流れになっています。照れくさい、しあわせな気持ち。
ただ今回は、興味津々であった、とある体験を優先。飲食は一番あとにしました。
彼女は入浴剤が好きで、今回は大きなバスボム?を持参。混浴時に一緒に湯船へ投入しました。シュワシュワよりヌルヌル感が強め。赤いバスボムを手で触っているうちに、白くすべすべの肌のところどころに当たったのでしょう。「ここも、ここも赤くなってるね。」とはしゃぐ姿が、子供っぽくてかわいい。父性くすぐる、しあわせな気持ち。
ふた房の果実は、色素薄めのピンク寄り。アンダーは、すっきりつるつるに整えられていて、一本筋のラインがとてもきれいです。歯磨きを経てベッドに移動。
なんと今回、興味津々であった秘密のワックスをやってくれるとのこと。ワックスを塗るときのこころちゃんの真剣な表情は、普段の笑顔とはまた違う味わいで、見惚れてしまうほど魅力的。ワックスを扱う指先には、某有名ネコちゃんキャラクターのかわいいネイル。しあわせ過ぎる〜。
このあとプレーに移行。過去2回は、攻めに挑むも返り討ちにあい、早々に果てております。今回は事前に策を講じていたので、対面3回目にしてようやく、こころちゃんにも気持ちよくなってもらえました。
シャワーの前にフロントへ飲食飲酒オーダー。
シャワーを経て、今回はこのタイミングから「あ〜んして」タイムです。
残りのリラックスタイムには、添い寝か膝枕をやってもらいます。今回は膝枕で髭を抜いてもらいました。
下から見上げるこころちゃんの、集中した表情もまた魅力的。最高にしあわせ〜。
そうこうするうちに、190分コースのロング割も、あっという間に終了しました。
今回、何よりも、秘密のワックスを塗るときの真剣な表情、某有名ネコちゃんキャラクターのネイルをお召しの指先、膝枕で下から見上げる髭抜きに没入する表情が、心に刺さりました。会うたびにメロメロが増します。
しかしながら、このオーバーペースを続けると、もはや立ち行かなくなります。
私の趣向としては、飲食や会話も含めて、ゆるやかに過ごしたいので、こころちゃんには最初からロングコースでお会いすると決めています。
180分コースであれば、季節に一度のペースが自分なりの限界と心得ます。
60分コースに切り替えれば毎月でも何とかなるのかもしれませんが、こころちゃんとはどうしても長い時間をご一緒したいのです。
何とかしなければという思いで、自分を戒めるため、こころちゃんとの時間をもとに短い物語を綴りました(芥川こころの赴くままにシリーズの着想)。
それほどまでに、こころちゃんとのひとときは、心に残るものなのです。
次にお会いできるのが、いつになるかは分かりませんが、ふとした折に、この日のことをきっと思い返すのだろうと思います。
しばらくは、この余韻を大事に過ごそうと思います。
作者より。
3回目のご対面の時間は、書き手にとっても「こころちゃんチャージ」の象徴のような一日でした。
秘密のワックスと膝枕のしあわせを、そのまま体験談のかたちで書き留めておくことが、すさんだ心にとって、わたしの小さな備忘録となるのです。
持続可能ペースのことはひとまず脇に置いて、ただこころの赴くままに救われた瞬間を残した一篇として、お読みいただけたらうれしいです。
竹取桃語―芥川こころの赴くままに・エピソード1
「芥川こころの赴くままに」シリーズの一篇、芥川こころちゃん体験談です。
実際の1回目と2回目のご対面で味わった出来事を束ねて、竹取物語の語り口と白桃のイメージをもとに、ひとつの「初見の物語」として御伽話風に綴った短編になります。
今は令和、竹取の翁、よろずのことに疲れ果て、心荒みて力尽きむ心地す。癒し求めて、パラレルの世へ続くといふシティ・ヘ・バンブーの竹林を彷徨(さまよ)ふ。光る竹灯籠に辿り着けば、照らす先、宝漫倶楽部なる舘在り。門・竹垣の隙より中覗ひて見れば、あまた仕へる女房より、ひときは心に迫りたるこそ在りけれ。無垢なるけはひ(気配)、桃色チークのいと愛らしきなるは、父性擽ぐる赤ちゃんの面持ちなりて、見惚れること限りなし。衛士に請ひて連れて参らせば、突如赤子の姿となりぬ。パラレルの世の摩訶不思議なり。抱きて連れて帰りて、産湯(混浴)、食い初め(飲食と飲酒)、お宮参りにて御朱印を授かる。白く、ふくよかなるは白桃の如し。名をば、白桃のこころ姫とつけつ。おほかた成長の儀、執り行へば、此度(こたび)は、暫(しば)しも経ぬうち、よきほどなる人になりぬる。指先にいと雅なる装飾あり。まことに可愛らしきものにて候。何と名づくるものにて候や?これなるはネイルと申すものにて、わらわの心にかなひたる業にて候。のどやかに、ゆるやかなるさまにて、かく答へしのち、ただ、ネイルのみ残して、肌、露わにして床(とこ=ベッド)に入る。我、慈しむことに没入し、愛でることに陶酔す。うるはしく実りたるふた房の果実。両手(もろて)に取りたれば、いと柔し。つややかにて、すべすべなる白牌、ほころびよりあふる蜜、無味無臭。まことにもて、尊く清らか。えもいはれぬ極上の味はひなり。至福に満たされる時、久しからず。転(うたた)寝の夢の如し。我が独占より姫、リリースとなり、我も憂き世に還俗す。夢から覚めて思ふ。なよ竹のかぐや姫、竹取物語にて、漢どもの求愛に無理難題を課す。白桃のこころ姫、我が憂き世にて、日々求愛する漢どもを悦ばせる。さは避けられぬと覚ゆるも、さは思ふべからずと戒むる。惜別と諦観の句→映え日記(にき)に、みたよ😊、推し(押し)活、憂き世哉(かな)...しがなき仕へ人、パラレルの世には容易に赴くを得ず。月の満ち欠け三周半、みたよ😊百推し(100押し)数ゆるまで、堪えて憂き世に忍ぶべし。持続可能の訪問ペース、理性保ちて守るなり。乞ひ願はくは、のぞみ叶へ給へ。次もまた彼女に逢へますやふに。かぐや姫の月の世界へ去ってしまいませぬやふに。
作者より。
竹取桃語は、こころちゃんとの初めての出会いの記憶を、実際の1回目と2回目のご対面から少しずつすくい上げて、ひとつの御伽話に編み直した一篇です。
赤ちゃんのように無垢で、白くふくよか、白桃そのもののようにやわらかなこころちゃんに触れたときの驚きと安堵を、竹取物語ふうの語り口でそっと包み直してみました。
パラレルの世を借りた体験談でありながら、どこか中有のような場所で福の神様に出会った気持ちを、少しでも一緒に味わっていただけたならうれしく思います。
ほろ酔いナイトこころちゃん大作戦
「芥川こころの赴くままに」シリーズの一篇、芥川こころちゃん体験談です。
実際の5回目のご対面で味わった「ほろ酔いナイトこころちゃん」作戦成功に至るまでの動機から経緯を綴った短編になります。
同級生男女4人で久しぶりに飲み会をすることに。
日程は多くの会社が給料日の金曜。この夜、こころちゃんにも会えたら。
ただ、ホテル街も混雑するはず。かつ最近のこころちゃんは、ラスト枠埋まりがちで、当日行き当たりばったりでは、空振りのリスクが高いと予測。
視点を変え昼のこころちゃんチャージに考えが寄ります。昼間なら大多数はまだ勤務中でホテルの空室確保は容易なはず。当初と動機と目的が異なり、飲み会前に会うことに方針転換。
飲み会は18時半から。こころちゃんのスタート枠は16時。移動時間を考慮すると、滞在は最大で100分ほど。いつもの190分からすると短めですが、会えないよりは、ずっとよい。お店にスタート枠の100分で予約を入れて空振りは回避できました。
しかしながら、当初は飲み会終わりのほろ酔いナイトこころちゃんが目的であったはず。未練が残ります。
行き当たりばったりで夜の枠と空室確保に空振り覚悟でチャレンジするもよろしいが、飲み会の最後が寂しい結末となりそうな予感。
鍵になるのは部屋の確保です。こころちゃんを予約したのはよいが、当日そのタイミングで空室がなければ元も子もありません。
共に成立できないものか思考を巡らせます。
そして遂に、見事にはまる作戦が立案されました。
ネットでホテルの料金表を眺めていますと、休憩2時間、4時間、8時間、宿泊という料金区分になっています。おや?8時間なら16時半チェックイン、24時半チェックアウト。むむ!
昼こころちゃん→飲み会→ほろ酔いナイトこころちゃんまでの勝ち筋が見えました。迷わずこころちゃんのラスト枠も予約。
当日。16時半、空室は確かに残っています。無人フロントの液晶画面で8時間をタッチ。冷蔵庫に差し入れのカレーパン、スイカ、お茶、自分用のビール、飲み会用のウコンを入れます。いつもの鮭とばは常温保存。お店にホテル名と部屋番号を連絡します。
ほどなく、5回目のこころちゃんとご対面。ドアを開けると、白くふくよかな体つきはご健在。かわいいネイルも。見るだけでほっとするような包容力でございます。本日は、まつげパーマ当日だそうで、マスカラ禁止らしく、目元ナチュラルで素朴な印象。かわいい。
差し入れを見せると、思いのほか大興奮。「スイカ大好き!」と目を輝かせる姿に、こちらまでうれしくなりました。
混浴では、こころちゃん持参の爆汗湯を投入。以前差し入れていた入浴剤です。「キープしてくれてたの!」「一緒に入るって話してたでしょ」ですと!うれしすぎます。お湯がパチパチとはじける新感覚。彼女の表情や声の変化をじっくり味わいます。
風呂上がり、ビールを1本。スイカは彼女への差し入れでしたが、一緒に食べようと促され頂くことに。久しぶりのスイカは甘い味わい。あ〜んして食べさせてくれます。
先月の熊本旅行やライブの話を聞かせてもらいながら、彼女のスマホをBluetoothスピーカーにつなぎ、ライブで観たアーティストbac○numberの曲をBGMで流してもらいます。これには聴き覚えあります。我が家の末子が鼻歌を歌っていました!知ってる。
昼の部のプレイでは、彼女の好きなそのBGMを背景に“攻め”に徹します。できるだけこころちゃんに気持ちよくなってもらえるよう、過去の蓄積を効かせながら、白くふくよかなからだにゆっくり触れさせてもらいました。
攻めてもらうのは、ほろ酔いナイトのお楽しみ。シャワーを経てそろそろ100分。やはりあっという間でした。
フロントに外出を告げ、こころちゃんと共に退室。「またあとでね。」とキスを頂きます。
飲み会には、定刻より5分遅れで到着。友達に詫びるも、女子陣は更に遅れて到着。
久しぶりの飲み会は、楽しく進行。二次会で、や台ずしに赴くも、満席で断念。実は持ち帰りで、こころちゃんにお寿司を差し入れる思惑があったのですが挫かれます。
別の居酒屋にて二次会を経て、22時半に飲み会終了。地下鉄に乗る友達を見送って、ホテルに戻れば、シナリオどおり。しかし差し入れに未練が残ります。
満席につき、先程断念したや台ずしを覗くと、もう落ち着いた様子。持ち帰りできますか?と尋ねたところ、出来ますよ、さっきはごめんなさいね。と職人さん。顔を覚えていただいてたようです。
お寿司屋さんらしい立派な容器と紙袋。イカした差し入れが準備できました。
こころちゃんから、もう向かってますのオキニトークが届いており、自分も向かいますと返信。
都市高速に乗って来たそうで、あちらが早く着いてたようです。ほぼ同時に入室。
ラスト枠は70分。スタート枠より更に30分の短さ。
しかし、会うだけで気持ちは満たされます。お寿司の差し入れをゆっくり食べる様子も、わさびが多かったみたいで、お寿司を加工してわさびを減らす様子も、すべてかわいく、父性がくすぐられます。自分は涅槃の姿勢でそれを眺めます。なんともしあわせな気分。
夜の部のBGMは意外にもサ○ン。彼女のお母さんのお気に入りだそう。
BGMを聴いていたいからと浴室のドアを開けたまま静かに混浴。優しい香りの白い入浴剤を投入。曲にあわせ鼻歌を歌う彼女がまたたまらなくかわいく愛おしい。
いとし○エリー、勝手○シンドバッド、その他。昭和、平成の名曲と目の前のこころちゃんに心を奪われます。
短いプレイ時間ではありましたが、彼女に優しく包まれ、十分に満たされる70分が経過。
ほろ酔いナイト作戦、大成功。
作者より。
シティヘブンの口コミ投稿仕様が変わり、項目ごとの入力が求められるようになってから、自由な編成ができなくなり、正直かなり戸惑いました。その新仕様にうまく合わせられないまま投稿した初期の原稿が、またしても非掲載になりました。本稿です。
その後、口コミのほうはというと、仕様変更に従って構成を見直し、同じ体験を別の角度から書き直しました。あくまで投稿ルールに寄せつつ、自分なりの「こころちゃん物語」の味は残すつもりで編集し直した結果、無事に掲載に至りました。
ありがたいことに、その口コミはピックアップにも選んでいただきました。露出が増えた影響か、「参考になった」のカウントもぐんと伸びています。一度は非掲載となった原稿が、形を変えてピックアップ作品として日の目を見ることになった訳で、まさに塞翁が馬と言うべきでしょうか。
短編カフェに収めたこの作品は、そんな「非掲載だったほうの原稿」に、静かな居場所を用意したいという思いから生まれました。シティヘブンでは出し切れなかった余韻も含めて、ここでゆっくり味わっていただけたらうれしいです。