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目次
アウダスの彼方へ 第一部 父の仮説編
第一章 父が遺した理論
惑星フェデウの北極点には、空の裂け目がある。
人々はそこを古くから「宇宙のゆがみ」と呼んでいた。
その中では、音が光よりも早く届く。
雪も雨も降らず、風も吹かない。
この異常現象は、今も謎に包まれている。
しかし、その奥には都市があった。
現在ではここが新アウダス帝国の首都となっている。
かつての超文明の首都でもあった。
その都市の名は------------
「ノルド・アウダス」
古い石造りの神殿と、現代の高層ビル。
古すぎる文明と、新しい文明。
二つが調和する都市の一角に、研究所があった。
その中の一部屋に、若い研究員がいた。
アレクシウス・ウェンシュタイン。
彼は、父の写真を見た。
そして、研究ノートを見た。
表紙には、
「古アウダス王朝四次元移動説。」
彼の父親「アリエル・ウェンシュタイン」の仮説。
古アウダス王朝はアウダス歴0年前後に突然消滅した。
言い伝えでは、「王朝は消えていない。先に行っただけだ。」となっていた。
古アウダス王朝がどこへ消えたかの仮説だった。
学会の記事を見る。
見出しには、
「アリエルの古アウダス王朝四次元移動説?」
記事の内容は、
「現実味がない。」
「伝承を科学に持ち込むな。」
どれも父を笑いものにする発言だった。
そして、失意のまま実験の失敗で亡くなった。
彼は、父親を尊敬していたので、父を笑いものにした学会が許せなかった。
だから、彼は父の仮説を証明してやりたかった。
「またやってるな。」
後ろからの声。
ルカ・フェルディナンド・ベルティーニ。
大学時代からの親友。
そして、
父の人生最後の実験を共にしていた。
アレクシウスは共にやれなかった。
やらせてくれなかった。
きっと、失敗したときアレクシウスを巻き込みたくなかったんだろう。
「今回はどんな方法だ?」
「空間を宇宙のゆがみに近い状態にしてみる。」
「できると思う?」
「いつもそう思ってる。」
「だろうな。」
「今度の実験ではどれくらいの確率で死ぬ?」
「公式には三十%。」
「非公式には?」
「七十%。」
「じゃあ三十%の確率で成功するな。」
「どうしてそんなに手伝ってくれるの?」
「父の研究を一番近くで見ていたのは僕だったから。」
「それに、父が僕に託した想いを継がないわけにはいかない。」
だが、この研究がやがて惑星フェデウ最大の謎を解き明かすことになるとは、二人はまだ知らなかった。
第二章 十八回目の実験へ続く
第二章 十八回目の実験
今日は十八回目の実験。
北極点近くの実験施設。
「こんなところ借りて、金は大丈夫か?。」
ルカの声。
「.....テレビ解約した。」
「お前は金銭管理苦手だからそんなもんだと思った。」
二人で微笑みあった。
いつものような会話をした。
でも、その会話も当分できないことを彼らはまだ知らなかった。
機械を始動させた。
中心の球体状の機械から青白い光が漏れだした。
父の理論通りの数値の変化だった。
これまでの十七回とは違った。
「行けそう!」
アレクシウスがそう呟いたその時だった。
空間安定率50%以下!
空間異常を検知!
機械からの警報。
赤い光が点滅。
そして間もなく、あらゆるものが吸い寄せられる。
工具、電子機器、ネジ。
そして、
ルカ。
「緊急停止コードを入力して!」
「必死に入力してる!」
でも、そのころには機械は制御を失っていた。
「ルカ!手をつかんで!」
アレクシウスは叫んだ!
「近づくな!お前まで!」
彼の手は、僅かに届かずに、ルカは機械に吸い込まれていった。
いや、正確には、別次元に。
ルカとの思い出がよみがえる。
学会発表の日。
父を笑う研究者たち。
何も言えない少年時代のアレクシウス。
そこでルカが怒鳴った。
「笑うなら証明してから笑えよ」
彼だけが、父の味方だった。
でも、もう三次元にはいない。
機械の記録を見た。そこには、信じられないことが記録されていた。
3.5次元。
古アウダス王朝も研究していた領域。
ルカが吸い込まれたのは四次元じゃない。次元の狭間だった。
これまで、古アウダス王朝ですら帰還者を出せなかった3.5次元。
「救出は、絶望的です。」
帝国研究局の主任研究員が言った。
アレクシウスは、父の研究ノートを開いた。
“不可能を可能にする。それが科学だ。”
“古アウダス王朝も、不可能を可能にして四次元へ移住した。”
彼はノートを閉じた。
「やれるかどうかじゃない。やるんだ。」
彼は歯を食いしばった。
その日、彼は決めた。
古アウダス王朝ですら帰還できなかった3.5次元へ、自ら向かうことを。
第三章 理論上の計算へ続く
第三章 理論上の計算
アレクシウスはいつもの研究室で計算をしていた。
いつもなら。
いつもなら、
「コーヒー持ってきたよ。」と、
声をかけてくれるルカがいない。
一人の研究者は目を細め、寂しいと感じた。
扉が開く音。
アレクシウスは反射的に扉のほうを向いた。
ルカが帰ってきたと思った。
でも、
違った。
いや、期待してはいけないと分かっていた。
ルカは今、この三次元の世界には存在しない。
扉を開けたのは帝国研究局の主任だった。
「何の用ですか?」
彼は尋ねた。
「宇宙開発に興味はないですか?」
「それに答えて何になる?」
「現在帝国研究局では宇宙開発をするメンバーを集めてまして.....」
「それなら間に合ってます。」
帝国研究局主任を追い出した彼は計算を続けた。
「父さんのことをどうして誰も信じてくれないの?」
幼いころのアレクシウスの声が聞こえた。
ふと父の研究ノートを見る。
“3.5次元転送装置の原理”
「これだ!」
アレクシウスは確信した。
これでルカを救うことができると。
父の理論。
十八回目の実験データ。
そして、ルカを救いたいという想い。
三つが揃ったことで、一週間で装置は完成した。
何日も徹夜した。
何回も試行した。
父ですら半年かけた装置を、一週間で作った。
それほど、ルカを救いたいという思いは大きかった。
「ルカ、待っててね。」
これまで帰還した人はいない。
父ですら、失敗した。
だから、戻れる保証もない。
でも、行くんだ。
そして、アレクシウスは装置に吸い込まれた。
第四章 3.5次元の旅へへ続く
第四章 3.5次元の旅へ
アレクシウスは目を開けた。
「これが.....3.5次元.....」
そこは、美しい自然が広がっていた。
色とりどりの花が咲く丘。
緑の深い木々。
そびえ立つ山々。
でも、どこか変だった。
音はすぐに消える。
まるで、世界が音を必要としないようだった。
「音がしない。それに.....生き物がいない。」
「空は暗いのに、なぜ明るいのだろうか。」
森は風に揺れているのに「サラサラ」という音がしない。
鳥はいなく、花畑には蝶一匹もいない。
まるで、世界から生き物だけを誰かが隠したようだった。
空は紫のような、青のような、不思議な色だった。
でも、あたりは明るかった。
まず、彼は近くの山々を目指して歩くことにした。
山の方位を調べようと、方位磁針を取り出す。
針はぐるぐる回り一点に定まらない。
諦めて山々に向かった。
普通だったら四、五時間で着く距離だった。
でも、ここは3.5次元だった。
常識は通用しなかった。
彼は半日歩いた。
しかし、山からは逆に遠ざかっていた。
距離計は五十キロ歩いたことになっている。
でも、座標はそれを否定していた。
まるで、空間が曲がったかのようだった。
あたりが暗くなってきた。
これが、この世界の夜なのかもしれない。
「もうそんな時間か。」
アレクシウスは時計を見た。
おかしかった。
秒針は反時計回りに回り、分針は止まっている。
第五章 最初の夜へ続く
第五章 最初の夜
アレクシウスの3.5次元最初の夜が始まった。
彼は帝国研究局立大学で習った様に簡易的な焚火を用意した。
すると、闇の中に人影のようなものが現れた。
常に身長と体型が変化している。
どこかを指さしてる。
「そこに何かあるの?」
そこに行ってみた。
確かにあった。
工具箱が。
名前が油性ペンで書かれてあった。
「ルカ」と。
「ルカを知っている?」
振り返ると、人影は消えていた。
でも、アレクシウスは確信した。
ルカは生きてると。
一応工具箱の中を確認した。
すると、ルカの筆跡で、彼への手紙があった。
”アレクシウスへ”
”これを読んでいるっていうことは、結局来たんだな。”
”諦めが悪いところは昔から変わってないな。”
”僕は、歩くことをやめた。歩いても距離が変化して意味がない。”
”だから、僕はここから山のほうの丘の上で待ちます。”
”まあ、位置がわかっても来れないだろうけど。”
”白い塔が近づくまで。”
”ここへきてまだ一日目のルカより。”
アレクシウスはその「白い塔」を探そうと思った。
気づくと、「夜」と呼ぶべきものは終わり、
「朝」と呼ぶべきものになっていた。
アレクシウスは周りを見渡すと驚いた。
とあるものが、そこにあった。
第六章 七つの塔へ続く
第六章 七つの塔
そこにあったのは..........
七つの白い塔だった。
七つの星形の塔だった。
「七つの星…」
七つの星は古アウダス王朝の紋章。
「父の仮説は…あっていた?」
そして、その塔の奥には.....
丘。
丘の上に人影があった。
見覚えのある仕草だった。
正体は....
ルカだった。
いや、ルカの幻覚かもしれない。
「ルカ!」
アレクシウスは叫んだが、最初の法則を忘れていた。
音はこの世界は遠くの他の人に届く前に消えてしまう。
遠くだったら。
どんなに大きく叫んでも。
アレクシウスは手を振った。ルカのようなものも当然気づいた。
ルカのようなものは手を振ってくれた。
彼の頬に涙が流れた。
もし幻覚だったとしても、会えたのが嬉しかった。
そして、七つの白い塔に入ることにした。
十分歩くと、塔がこっちに来た。
距離が変わったんだ。
まるで、世界が彼の味方をするように。
塔に入った。
取り敢えず近くの「記録保存室Ⅰ」に入った。
そこは、まるで数日前まで使っていたようだった。古アウダスは数千年前に滅びたのに。
まあ、ここでは時間は信用できないけれど。
そこの記録に、一つ気になる物があった。
その記録の題名は、「第四次元観測日記」
中には職員の愚痴、同僚のこと、新しく分かったこと。食堂のメニューなどの事が書いてあった。
そして、最後の日記。
古アウダス王朝歴1437年7月21日 今日で四次元研究は中止。
四次元転送率が(焦げていて読めない。)%だからだ。
だから今日で(焦げていて読めない。)へ帰還だ。
さようなら。(焦げていて読めない。)研究施設。
大切なところだけ焦げている。
焦げ方が不自然だった。火災なら紙全体が焼ける。しかし、消えているのは必要な情報だけだった。
偶然とは思えなかった。
そして、廊下の壁に人影が映る
第七章 待っていた人へ続く
第七章 待っていた人
そして、廊下の奥から人が来ているような気配がした
急いで廊下に出たアレクシウスはつぶやく。
「アウダス....七世.....?」
「今も新アウダス帝国はあるかい?」
アレクシウスは答える。
「はい。ありますよ。」
「そうか。」
アレクシウスは歴史で習ったことを思い出す。アウダス七世とは、かつての古アウダス王朝最後の皇帝であると同時に、
新アウダス帝国の建国の父とも呼ばれる。
それは、失われた王朝の最後の皇帝だからじゃない。
現れたんだ。
数十年前。
そのころ、新アウダス帝国の一つ前の時代、ローデシア統治時代。
南方の大国に隙を突かれて攻められた後の時代。
アウダス七世が現れた時期は、反対勢力の活動が少し活発になったころだった。
そんな時期に証拠が山積みのアウダス七世が現れたら反対勢力に大きく戦況が傾いた。
おかげで今新アウダス帝国がある。
でも、新アウダス帝国を独立させたら、「私はもう役割を終えた。」と言い唐突に消えた。
かつての古アウダス王朝のように-----------
アウダス七世は言った。
「君はアリエル君の息子かい?」
「なぜ知っているんですか?父の名を」
「先へ進めばわかる。。」
アレクシウスは勇気を出し、聞く。
「なぜ.....」
「なぜ、あなたは今ここにいるんですか?」
「それは・・・」
「君たちが生きているうちにわかる。」
ゴォォォォォォォ
謎の振動が施設中に震えわたる。
まるで、3.5次元にも音があるかのように...
第八章 轟音の正体へ続く
第八章 轟音の正体
轟音の正体は....
いや、轟音のようなものの正体は....
-----------空間の亀裂が開く振動だった。
その先には、
宇宙が広がっていた。
アウダス七世は資料を見せる。
それは、「イリーナ」という科学者が書いた論文だった。
”3.5次元とは場所ではない。移動し続ける空間だ”
その下にも、実験、結果、それからわかる理論が書いてある。
アレクシウスがそれを読み、
納得する。
「確かにこの理論ならすべて成立する!イリーナさんすごい。」
「宇宙がここから見えることも説明がつく!」
そして、アレクシウスはルカのことを思い出す。
「そうだ!ルカは?」
アウダス七世は答える。
「この地図の通りに行けば会える。」
その地図は、点、線、距離。すべてが動いていた。
アレクシウスは走った。
ルカへの距離が変わる。
しかも、距離は縮まっていく。
世界が二人を祝福するように。
「ルカ!」
ルカは振り向いた。
姿は変わっていたが、確かにルカだった。
髪は伸び、服は一部破けていたけれど、確かにルカだった。
「アレクシウス?」
疑問気な声だった。
きっと幻聴が何度も聞こえたんだろう。
でも、きっとルカは見て分かった。
アレクシウス本人だと。
ルカは走ってきた。
「どれぐらい待った?」
アレクシウスの質問に答える。
「分からない。一日かもしれないし、十年かもしれない。この世界じゃ、時間は当てにならないから。」
そしてまた、白い七つの塔へ戻る。
アレクシウスはアウダス七世に最後に聞く。
「父の仮説は、あってましたか。」
第九章 父が見誤ったものへ続く
第九章 父が見誤ったもの
アウダス七世は答えた。
「君の父の仮説は.....」
「半分合っていた」
アレクシウス達は沈黙する。
「ただ…」
「半分間違っていた。」
「君の父が見誤ったものは…」
「君の父が見誤ったのは、四次元そのものではない。」
「確かに古アウダス王朝は次元研究が盛んだった。」
「我々が向かった"行き先"だ。」
「古アウダス王朝は別世界へ移住したのではない。」
「宇宙へ旅立ったのだ。」
「そ...そんな...」
アレクシウスが絶望する。
「四次元へ行ったのは、父の説の根幹なのに...」
真実は、時にある人を大きく傷つけることがある。
「まずい。もう帰らないと危ない。」
「空間が想定より早く崩れている。」
「早くこれに乗れ!」
画面にはいくつかの文章が書かれていた。
<<三次元復帰装置>>
<<残り使用回数:一回。>>
「もし失敗したら?」
アレクシウスが聞く。
「このまま崩壊に巻き込まれて確実に死ぬよりはましだ!」
「ルカ!来て!」
ルカも乗り込んだ。
アウダス七世は乗らなかった。
「私はまだやるべきことがある。」
アウダス七世はアレクシウスの背中を見送る。
最終章 父の仮説へ続く
最終章 父の仮説
次に目を開けると、フェデウの星空の下だった。
上には、雲一つない晴れた星空があった。
いつもの星に戻った。
でも、アレクシウスにとっては違った。
父の仮説は間違っていた。
アレクシウスは父の研究ノートを抱きしめる。
表紙には”古アウダス王朝四次元移動説”
昔は、その字を見るだけで誇らしかった。
なのに-----------
その時、一枚のメモがノートから落ちた。
”たとえ仮説が間違っていても、”
”誰かが真実へたどり着くことに役立てば、”
”それでいい。”
父との思い出が鮮明によみがえる。
研究室で見た星図。
「この世界にはまだフェデウの人が知らない場所がある。」
「四次元というね。」
父の言葉。
「なぜ…」
「なぜなんだ…」
「父の…」
「唯一の仮説が…」
「間違っていたなんて...」
空には古アウダスの人々が旅立った宇宙がかつてと変わらずに輝いていた。
本伝 第一部 父の仮説編 完
第二部 古アウダス宇宙内戦編へ続く
長文読むのお疲れさまでした!次も読んでくれるとありがたいです!
アウダスの彼方へ 第二部 古アウダス宇宙内戦編
第一章 時空観測機の完成
アレクシウスの冒険から数年。
帝国研究局歴史探求課長 レオン・デニッシュ。
彼が完成させたのは、
時空観測機<<クロノス・アウダウ>>
その機械は、過去がわかる。
過去に行くのではない。
歴史に干渉するわけではない。
ただ、
見る。
それだけ。
それ以上でも、それ以下でもない。
この機械の使命は、ただ一つ。
かつて起きた、巨大な内戦。
古アウダス宇宙内戦の真実を見る。
レオンと研究員達は、機械を作動させる。
大きな作動音が部屋中に鳴り響く。
そしてメインテレビに映像が映し出される。
そのころ彼らはまだ知らなかった。
この実験が、世界の歴史観を変えることを。
第二章 文明を守りたい人々へ続く
第二章 文明を守りたい人々
映像には、若き日のアウダス七世がいた。
彼らは、皇帝軍だった。
敵は、フェデウ維持連合軍。
即座にクロノス・アウダスが解析結果だした。
それぞれの目的
皇帝軍:文明の発展にはより条件の良い星々へ出なければならない。
フェデウ維持連合軍:どんな理由があっても、故郷を出ることなどあってはならない。
それは、
未来の選択争いだった。
どちらにも、それぞれの正義があった。
どちらが間違っているとも言い切れなかった。
アウダス七世は虚無を指さした。
いや、指をさした先はレオンだった。
「そこに誰かいる。」
アウダス七世は言った。
レオンの部屋に、警告音が鳴り響く。
機械の警告音。
「過去からの干渉を検知!」
「未来の観測者よ。」
アウダス七世は静かに語る。
「未来では、我々はどう記録されている?」
レオンは少し考えた。
事実を伝えるべきか、うそをつくべきか。
「唐突に消えた超文明と記録されています。」
「そうか。」
フェデウの軌道には、無数の宇宙船が浮かんでいた。
「皇帝軍、前!」
アウダス七世の号令で一斉に動き出す。
一方で敵も、前方へ動くよう指令を出していた。
双方の間の距離、約十三万キロ。
通常では、砲撃が飛び交う距離。
でも、この戦いは違った。
どちらも、古アウダス王朝を未来に残したかった。
「防御幕展開。」
アウダス七世の落ち着いた声。
敵の大将「アルンシュダ」はそれを聞いて安心した。
王朝軍同士では、同じ技術体系の兵器が防御幕を突破できない。
そのため、皇帝軍も連合軍も決定打を与えられない。
その沈黙は、五時間続いた。
第三章 宇宙内戦開始の鐘へつづく
第三章 宇宙内戦開始の鐘
その五時間もの沈黙を破ったのは、皇帝軍の巡洋艦だった。
アウダス七世の命令に逆らい防御幕の外へ出て、光化学砲を撃った。
フェデウ維持連合軍の駆逐艦にあたり、撃沈。
アルンシュダは目を閉じた。
……やはり、避けられなかったか。
「全艦...砲撃開始...」
両軍の戦闘が始まった。
光化学砲の緑色の光。
粒子砲の青白い光。
無数の宇宙戦闘機の交戦。
「消失艦、敵味方合計七十二艦!」
「戦死者、敵味方合計四十二名!」
アウダス七世の部下が叫んだ。
「これほど激しい戦いなのに...」
「これが、古アウダス宇宙内戦...」
レオンがつぶやく。
古くから、古アウダス王朝軍は、救命信号を受け取ったら、
敵味方関係なく助ける。
それが王家の命令だった。
その時、フェデウの北極点で異常が起こる。
第四章 北極点の異変へ続く
第四章 北極点の異変
北極点では、空間が裂け始めていた。
まるで、アレクシウスの冒険の時のように。
その先には、
3.5次元。
北極点の研究施設が実験に失敗し、できた空間。
そこは、
アレクシウスの旅した3.5次元だった。
しかし、この現象は新アウダス帝国で知られる亜空間とは違っていた。
イリーナの論文によれば、3.5次元が移動した後、その入口だけが亜空間として残る。
新アウダス帝国で利用されている亜空間は、その後の時代に生まれたものだった。
そして、すぐ研究施設へ救急艦が向かう。
先程まで撃ち合っていた両軍は戦闘をやめる。
その研究施設の最深部、謎の男性が通信をした。
「計画Ⅰ完了。応答を待つ。」
その男性は、王朝の制服を着ていた。
だが、所属部署の部分は切り取られ、
指紋も手袋で対策済み。
そして、通信後すぐに消えた。
「研究所に、外部侵入の痕跡があります!」
アウダス七世の部下が叫ぶ。
そのころ、アルンシュダも同じ報告を受けていた。
「まさか、意図的に戦わされていた?」
二人の声が重なる。
両軍は臨時休戦協定を結び、レオンの謎の男の映像を基に調査を始めた。
そのころ、謎の男性の組織の本部。
「奴らは気づいたか。」
「ええ。」
「まあ、問題ないだろう。」
「それより、3.5次元の存在のほうが問題だ。」
第五章 フロンティア局の黒い影へ続く
第五章 フロンティア局の黒い影
両軍は、謎の男の捜索を続けていた。
両軍のスーパーコンピュータは直列に並び、
科学者は消えた理由を調べ、
歴史家は歴史に彼の組織がないか調べる。
古アウダス王朝両軍の努力の結果、ひとつの結論にたどり着く。
宇宙開発戦略局。
通称、
フロンティア局。
三十年前創設。
今から十年前に全員が退職した。
それは偶然ではなかった。
目的:人類の存続。
ただし、どんな犠牲を払っても。
彼らは内戦が起きることを予知していた。
そして、利用しようと考えた。
薄暗い司令室。
巨大な星図の前で、一人の男が静かにつぶやいた。
「ズウェズダ移民完了率98.5%。」
両軍は気づいた。
でも、遅すぎた。
もう、止められない。
移民船を攻撃すれば、古アウダス王朝の未来がなくなる。
攻撃しなくても、故郷を捨てることになる。
第六章 決断へ続く
第六章 決断
両軍ともに、後者を選んだ。
罪なき人々を攻撃できなかった。
そして、自分たちの望む未来をあきらめた。
それ以外の道はなかった。
両軍で共通の目的
「未来へ古アウダスを残すこと。」
攻撃すれば、達成できない。
司令官の声がまた重なった。
「待機…」
そして、両軍はズウェズダの方向へ方向変換。
艦橋の展望室には、一人の人がいた。
アウダス七世。
後ろから、もう一人。
アルンシュダ。
普通なら、会うことはない敵同士。
でも、今は違った。
飛び行く移民団。
もう、だれも止められない。
故郷にはもう帰れない。
第七章 止められないへ続く
第七章 止められない
アウダス七世は話しかけた。
「もう、止められないな。」
「ああ。」
「フロンティア局のことは知っているか?」
「ええ。かつて、公的機関だったころのフロンティア局にいました。」
「だったら、誰が中心の組織かわかるか?」
「わからない。」
レオンは、かつてのフロンティア局の映像を見る。
そこでは、演説をする人がいた。
「人類の存続のためには、多大な犠牲を求められる時がある。」
「それでも、乗り越えよう!」
少し未来に動かす。
また、同じ人が演説をしている。
「人類の存続のためのズウェズダ移住だ。」
「反対組織は消し、内戦を利用せよ!」
確かに、同じ人だった。
でも、口調が変わっていた。
確かに、やろうとしていることは正しい。
方法が過激だ。
レオンは展望室の映像に戻す。
アウダス七世が話しかけてきた。
「古アウダス王朝時代の後に、私にあったことがある人はいるかい?」
「....一人います。アレクシウスが…」
「彼は何のために行った?」
「父の....古アウダス王朝四次元移動説を証明するためでした。」
「そうか。」
第八章 約束へ続く
第八章 約束
アウダス七世とアルンシュダの会話に戻る。
アルンシュダが言った。
「約束を、一つしたいです。」
「どんな約束だ?」
「必ず、また、フェデウの空の下で会いましょう。」
「ああ。」
そして、それぞれの艦隊に戻る。
「全軍、発進!」
両軍に、同時に指令が伝わる。
全艦隊、ズウェズダへ向かう。
その中、一つだけフェデウへ向かう艦があった。
レオンの研究所のモニターは、その艦の中を映し出す。
---------そこには、
アウダス七世がいた。
一人、フェデウを見つめていた。
「これは、約束を果たすためだ。」
少し前に映像が戻る。
「せめて付き添いを!」
アウダス七世の部下の叫び声。
「いや、巻き込みたくないんだ。」
映像を戻す。
アウダス七世は、フェデウの北極の3.5次元入口へ向かっていた。
まだ、この頃は3.5次元だった。
レオンの時代では、亜空間への入り口だ。
それは、イリーナの論文でわかる。
3.5次元は、移動する空間だ。
3.5次元がその場からなくなったら、
入口から行ける場所は亜空間になる。
アウダス七世は、フェデウの北極の3.5次元入口へ向かっていた。
そして、3.5次元に入っていった。
約束を守るために。
第九章 最初の住民へ続く
第九章 最初の住民
3.5次元には、研究所にいた研究者が何人か吸い込まれていた。
そこに、アウダス七世が来た。
彼らが、3.5次元の最初で最後の住民だ。
この七つの塔だけは完成させる。
それが彼らの使命だった。
最後の研究者がアウダス七世に最後に残した言葉。
「どうか、未来の人々に真実を伝えてください。」
そして、アウダス七世は七つ目の塔へ向かう。
そこの、「長期間生命維持装置」<<コールドスリープ装置>>に、
アウダス七世は入力。
その後、アウダス七世は入り、
目を閉じる。
蓋が閉まる。
緑色の液体が注入される。
アウダス七世は永い眠りについた。
アウダス七世が入力した文は、
覚醒条件だった。
<<条件>>
<<1.この施設にフェデウ系生命の侵入を感知>>
<<条件を満たした場合、覚醒。>>
これが、約二千年後、アレクシウスが、侵入した時に反応したシステムだった。
最終章 ズウェズダ移住団へ続く
最終章 ズウェズダ移住団
研究所のモニターを終戦から数年後にセット。
アウダス七世以外のほぼすべての者は、ズウェズダへ移住した。
そして、アウダス七世の息子、アウダス八世が皇帝になるはずだった。
でも、彼は皇帝になる代わりに、初代連邦議会長になった。
ズウェズダ周辺連邦の。
彼らは、故郷を「想いや感情を伝えるすべての場所」とした。
そして、フェデウを忘れないことにした。
やがて、イリーナがあの論文を書く。
それは、3.5次元のアウダス七世にも送られた。
だから、彼が三次元にいない時期の論文を持っていた。
レオンは誰もいなくなった研究室でつぶやく。
「これが……古アウダス王朝の真実。」
そして、新アウダス帝国の人々もここを目指してやってくる。
それは、レオンの時代から数十年先の物語。
アウダスの彼方へ 本伝 第二部 古アウダス宇宙内戦編 完
アウダスの彼方へ 本伝 第三部 ズウェズダ探索編 へ続く
次は第三部!ぜひ次も読んでね!
アウダスの彼方へ 第三部 ズウェズダ探索編
アウダスの彼方へ 本伝 第三部 ズウェズダ探索編
---------王朝人との再開---------
第一部 出発
レオンの観測から数十年後。
新たなる冒険が始まる。
行く先は、古アウダス王朝も旅立った先。
ズウェズダ。
旅立つ船は…
ズウェズダ・アウダス。
船長は、
アリウス・ウェンシュタイン。
そう、
アレクシウス・ウェンシュタインの息子。
今日は出発の日。
職員たちは、慌ただしく用意する。
広場には、数万人の人々。
船長アリウスのスピーチ。
「僕の祖父は、仮説を立てました。」
「父は、未知の空間を旅しました。」
「だから、僕も未知に向かって行きます!」
大きな拍手。
アリウスが船に乗り込む。
それに続いて、数百人のクルーが船に乗り込む。
そして、船は空に飛んだ。
広場は、歓声を上げる。
やがて船は空に消えた。
第二章 ズウェズダへの旅路へ続く
第二章 ズウェズダへの旅路
船は、三十光年のズウェズダへの旅路を数時間で着く予定だった。
亜空間航行という古アウダス王朝と同じ技術を使って。
出発から二時間ほどたったころ、
「警告!前方に古アウダス王朝遺跡!」
艦内に警告音が響き渡る。
「何事だ!」
アリウスは艦橋へ行き、部下に聞いた。
「正面に超巨大なリング状の建造物が!」
建造物の中心に、映像が映し出される。
その映像には、一人の女性が写っていた。
「私はイリーナ。3.5次元理論を研究していた科学者。」
そう。あの論文を書いた、イリーナだった。
「もう、ズウェズダに人はいません。」
艦橋は沈黙した。
第三章 宇宙の波へ続く
第三章 宇宙の波
「宇宙の波が来たのです。」
「その波は、無音で惑星を消します。」
「その波を、「真空崩壊波」と我々は呼んでいます。」
「きっと、いつかフェデウにも来るでしょう。」
「我々はこのゲートを使い遠くの銀河へ移住しました。」
機械の警告音がまた艦内に響く。
「警告!警告!真空崩壊波、ゲートの奥から接近!」
アリウスは叫んだ!
「全速力で後退!」
「いや、間に合いません!」
その時、ゲートに青い光が薄い膜を作る。
イリーナが叫んだ!
「このゲートは、我々が移住した銀河へつながっています!」
アリウスは一瞬ためらい、決めた。
「ゲートへ全速前進!」
皆、目をつぶった。
もしかしたらゲートが壊れていて、宇宙船ごと消滅するかもしれなかったからだ。
次に目を開けると、全員が驚いた。
飛び交う宇宙船たち。
ネオンでいっぱいの惑星。
超巨大ホログラム。
案内アンドロイド宇宙船が飛んでくる。
「識別番号をお教えください。」
アリウスは即答する。
「新アウダス帝国の宇宙船です。」
第四章 アウダス星間連邦へ続く
第四章 アウダス星間連邦
「こちらをご覧ください。」
そこには、地図があった。
地図の通りに行くと、歴史館があった。
入り口前に広場の中心に石があり、こう彫られていた。
”故郷とは、想いや感情を伝えるすべての場所である。”
かつてと変わらない言葉。
紋章は…
八個の星。
古アウダス王朝の頃より、真ん中に一つ増えている。
増えた星の意味は、新銀河の希望の星だそうだ。
中は、フェデウ時代から、内戦、ズウェズダ、星間連邦。
フェデウから持ち出された最初の王旗。
アウダス七世が使った剣。
イリーナの論文の原本。
アレクシウスが持ち帰った父の研究ノートの複製。
すべてが記録として残っていた。
記録として。
実際のことを記憶している人は少ない。
それほど、何世代も歴史は続いている。
「まもなく到着します。」
機械の無機質な声。
第五章 真空崩壊波へ続く
第五章 真空崩壊波
そして、イリーナの孫が来た。
「もうすぐ、この銀河にも真空崩壊波が来ます。」
クルーは驚いた。
しかし、アリウスが言った。
「今度は逃げるだけでは終わらせない。」
イリーナの孫は少し躊躇い、言うことを決めた。
「一つ、情報があります。」
「ここへ、行ってみてください。」
大きな宇宙地図を取り出す。
それの一点に、白い点があった。
---------そこは、通称ポイントゼロ。
何もわからない。
送った探査隊は一つも帰ってきていない。
一つも。
アリエルは決める。
「行きましょう。」
クルーたちが動揺する。
それでも、アリエルは続ける。
「私の父がそうだったように。」
クルーたちは静かになった。
第六章 ポイント・ゼロへ続く
第六章 ポイント・ゼロ
その時、星間連邦のアラートが鳴る。
赤いランプが禍々しく光る。
全てのホログラムが黄色い警告に変わる。
スピーカーの音。
「銀河外周に真空崩壊波が到達!」
イリーナの孫が叫ぶ!
「行ってください!」
船は空に再び旅立つ。
惑星フェデウ。
惑星ズウェズダ。
星間連邦。
思いが、線となる。
船は、星間連邦の技術で速度が上がっていた。
ズウェズダ・アウダスは光を超える速度でポイント・ゼロへ進む。
途中、星間連邦の探査隊の船が何隻も壊れて破片とともに宙を舞っていた。
そして、ポイント・ゼロに着く。
第七章 銀河の正体へ続く
第七章 銀河の正体
そこにあったものは…
大きな球状の建設物だった。
それも、星間連邦のものでもない。
未知の技術で、常に自己生成をして大きくなっている。
そして、一つの無線が入る。
「あなた達のような方が来るのを待っていました。」
「ここのドックへ入ってください。」
無線と同時に座標が送られる。
アリウスは迷わず決断した。
「この座標へ行け!」
「全速前進!」
ドックに入り、船から出たクルーたちとアリウス。
すると、一つの機械が通路の奥からやってくる。
「第十八文明、確認しました。」
第十八文明という言葉にクルーが動揺する。
「私はオリジンAIです」
「この銀河は、実験場です。」
「文明がどこまで進化するのか、それを観測するための。」
第八章 実験結果へ続く
第八章 実験結果
アリウスは質問する。
「我々が十八番目ということは、一番目から十七番目はどこへ?」
オリジンAIは答える。
「選択しました。」
「実験結果を表示します。」
一番文明から十七番文明の「選択」が表示される。
すべて、滅亡か存続の選択をしている。
「どういう意味だ!」
アリウスは叫ぶ。
すると、機械の声が聞こえる。
「彼らは、ただ選択しただけです。」
「文明の実験の最大の選択を。」
アリウスは聞く。
「じゃあ、真空崩壊波も実験の一部か?」
「いいえ、次の宇宙へ資源を受け渡すのです。」
「すべての宇宙の物質は有限です。」
「我々の技術でも物質を無から生み出すことはできない。」
「だから、真空崩壊波で次の宇宙へ物質を受け継ぐ。」
第九章 選択へ続く
第九章 選択
「あなたたち第十八文明も選択してください。」
「選べる道は、二つです。」
「一つは今この宇宙を消し、次の宇宙へ物質を受け継ぐ、滅亡の選択。」
「もう一つは今消さずに残す、存続の選択。」
「存続を選択しても、いつか宇宙は熱的死を迎える。」
「それは、静かな死。」
「どちらを選んでも、いつか宇宙は消え、次の宇宙へ物質を受け継ぐ。」
「あなたたちは、どちらを選びますか。」
「滅亡と存続の二択から。」
間も無くアリウスは選択した。
「私たちは、滅亡を選びます。」
クルーは動揺する。
「まだ生きれるならば、生きたい!」
その言葉を遮るようにアリウスは答える。
「でも、ただ消えるわけではありません。」
最終章 アウダスの彼方へ
最終章 アウダスの彼方へ
「何も残さずに消えるわけではない。」
「想いを、受け継ぎます。」
オリジンAIは認識する。
「第十八文明の選択を認識しました。」
「第十八文明の成長は、想像以上でした。」
その時、ポイント・ゼロから強い光が一直線に伸びた。
まるで、フェデウから旅立つ宇宙船団のようだった。
その光は、星間連邦の上を通り、
ズウェズダの衛星の真横を通り、
故郷のフェデウの近くを通り、
宇宙の果てへとつながっていた。
そして、十九個目の宇宙がやがてできて、また選択するだろう。
きっと、同じ受け継ぐ選択を。
アウダスの彼方へ 完
アウダスの彼方へ 外伝 ルカの3.5次元旅行記
第一章 落下
次に目を開けたとき、僕は大自然の中にいた。
花が咲き乱れる平原。
どこまでも続く森。
目の前にそびえたつ山々。
「……きれいだ。」
僕は呟いた。
でも、すぐに音が消えた。
僕はいくつか違和感を覚えた。
計算上、四次元では音が大きく響くはずだった。
もしかして、四次元じゃない?
十歩進むごとに、目印として石を一つずつ置いていった。
なぜか、最初の位置に戻った。
並べた石を見た。
ところが、石の間隔は一つ一つ大きく異なり、ところが、途中から石が消えていた。
さらに、その先に置いた石は、最初に置いた石より後ろへ移動していた。
今度は方位磁針を使って歩こうと思った。
でも、針はぐるぐる回り、一点に定まらない。
空が暗いから、星を頼りにしよう!
でも、空に星はなく、色は青のような、紫のような、薄暗い色だった。
なのにあたりは明るい。
まさか、3.5次元?
第二章 3.5次元へ続く
第二章 3.5次元
アレクシウスの父の研究でも出てきた、3.5次元。
そこでは、時間も空間も音も変という計算結果が出ていた。
この空間と同じだった。
僕はやっとここでこの空間が3.5次元であることに気づいた。
そして、3.5次元では三次元の存在が安定しないことを思い出した。
もしかしたら消えるかもしれない。
でも、あくまで可能性があるだけだ。
僕は研究者である限り、未知を探究し続ける。
アレクシウスは必ず救いに来るだろう。
「旅をしてみるか。」
僕はそう思った。
アレクシウスがここへ来たとき、生きていると分かるように、印を残そうと思った。
そうしているうちに、あたりは暗くなり、3.5次元最初の夜になった。
謎の人影が辺りに数人現れた。
実体はないが、簡単な意思疎通ならできそうだ。
謎の人影が指をさしている場所に、
アレクシウスへ生きていることを伝える印を置こうと思った。
第三章 「手紙」へ続く
第三章 「手紙」
手紙の内容に悩んだ。
近くには、さっきまでなかった白い塔が来ていた。
その近くの破片を拾い上げた。
すると、塔はすぐ遠ざかった。
破片には、見覚えのあるマークが彫ってあった。
古アウダス王朝の王印だった。
やっぱり古アウダス王朝は、この空間を研究していた。
アレクシウスのお父さんの理論も、全部が間違いじゃないのかもしれない。
手紙に書く内容は決まった。
風に飛ばされないように、工具箱の中に入れた。
そして、約束の丘の上へ向かった。
丘まではとても長くかかった。でも、どれくらいかはわからない。
ここは常識が通用しない場所---------- 3.5次元だ。
行く途中、何度もアレクシウスが見えた。
そのたび、話しかけた。
返事が来ることはなく、大抵は数分で消える。
幻覚だった。
そして、
やっと着いた。
約束の丘の上へ。
第四章 約束の丘でへ続く
第四章 約束の丘で
僕は約束の丘の上に着いた。
ずっと、白い七つの塔を見ていた。
上から見ると、全部星形だった。
古アウダス王朝の国章も中心に星がある。
七つ。
古アウダス王朝の研究施設であることはほぼ確定した。
ずっと見続けた。
ずっと。
ずっと。
ある日、アレクシウスが見えた。
僕は叫んだ。
もしかしたら、僕「も」かもしれない。
音は聞こえないから。
すると、アレクシウスは手を振り始めた。
僕も手を振った。
そして、白い塔へ入っていった。
きっとまた幻覚だ。
僕はまた待った。
今度は、山を向いて。
もう、幻覚を見たくなかった。
また、待った。
アレクシウスを。
すると、
後ろから声がした。
「ルカ!」と。
最終章 再開へ続く
第五章 再開
後ろから声がした。
「ルカ!」と。
また幻聴だと思った。
でも、期待はした。
しても意味がないと思った。
なのに、期待してしまう。
それが人という生き物だ。
振り向いて、話しかけた。
「アレクシウス?」
そこにはアレクシウスがいた。
……でも、また幻覚かもしれない。
握手をした。
そこで、本当にきたことが分かった。
「どれぐらい待った?」
アレクシウスの質問に答える。
「分からない。一日かもしれないし、十年かもしれない。この世界じゃ、時間は当てにならないか
ら。」
そしてまた、白い七つの塔へ戻る。
アレクシウスはアウダス七世に最後に聞く。
「父の仮説は、あってましたか。」
アウダスの彼方へ 外伝 ルカの3.5次元旅行記 完
本伝 第一部 第九章へ続く