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景気の良いエンジン音よりも
主人公…相手に片思いしている状態
相手…モブ1、2の共通の友人かつ、主人公の片思い相手
モブ1(故人)…モブ1の恋人、死亡済み
モブ2…モブ2の恋人
▶事の経緯
モブ1を亡くしたモブ2を励ます相手の様子を見て、主人公が相手の交友関係について質問する
「それで調べ尽くして、#相手の一人称#が誰と付き合ってるか全部把握したらどうするつもりですか?」
不意打ちのように#相手#が尋ねた。
ハンドルを握る手元に視線を落とすが、動揺は隠せない。エンジンの振動に合わせて、また頬が熱くなるのを感じる。
「それは……その……」
言葉が詰まる。やがて、続けて言葉を絞り出した。
「…安心する、というか…」
我ながら歯切れの悪い、曖昧な答えだ。
#相手#は「ふーん」と気のない返事をしたが、その表情は少し面白そうに見えた。
車がゆっくりと動き出し、景色が流れ始める。
#主人公の一人称#は何気ない口調を装って、先ほどの会話の核心に触れようとした。
「……あの、さっきの“#モブ1(故人)#”さんについてなんですけど」
#相手#の横顔が少し硬直したように見えた。
「……何か気になることでも?」
と声のトーンがわずかに下がった。
「いえ……#相手#さんから、亡くなった方だと聞いているので、楽しそうに話されていたのが不思議で」
車内が一瞬、シンと静まり返る。重苦しい空気が流れるかと思ったが、#相手#はすぐに軽く息を吐いた。
「ああ、あれ」と呟き、#相手#はミラー越しに僕を見て、少しだけ口角を上げた。
「#相手の一人称#にとって、#相手の二人称#はもう“過去”の人間だけど、#モブ2#にとってはまだ“今”の人間なんだよ」
「……どういう、意味ですか?」
「#モブ2#はね、認識を更新するのが少し遅いんだ。自分の大切な人たちが、今も世界のどこかで生きているって信じ続けてる。
そういう、ちょっと夢見がちな奴なんだよ」
#相手#は、#モブ2#のことを話すとき、少しだけ優しい目をしているように見えた。
その事実に、胸の奥がきゅう、と締め付けられる。
「だから#相手の一人称#も、#モブ2#の前ではあいつがまだ生きている体で話をするんだ。その方が、#モブ2#が安心して笑えるから」
その言葉は、#相手#の不器用な優しさを物語っていた。他人のために嘘をつき、その場の空気を壊さないように振る舞う。
#主人公の一人称#が知っているよりずっと、#相手#は複雑で、そして思いやりのある人なのかもしれない。
「……優しいんですね、#相手#さんは」
ポロリと口から出た言葉に、#相手#は驚いた顔をした後、「別に」と照れたように視線を前に戻した。
「#モブ2#にしてみれば、僕の方が非常識な薄情者かもしれないよ。僕は、死んだら終わりだと思ってるから」
「そんなことないと思います」
と、僕は断言した。それに加えるように、言葉を続ける。
「その場に合わせた対応ができるのは、#相手#さんの強さだと思います」
#相手#は何も言わなかったが、運転席のミラー越しに、その耳がわずかに赤くなっているのが見えた。
その瞬間、#主人公の一人称#の心臓は景気の良いエンジン音よりも騒がしく脈打ち、さっきまで感じていたゾワゾワとした悦楽が、確かな“憧れ”と“恋慕”に変わっていくのを感じた。
この人が気になって、調べ尽くしたいんじゃない。この人のことを、もっと深く知りたいんだ。
目的地が近づいていることを知らせる無線の音が鳴り響く。
#主人公の一人称#の頭の中は、もう仕事のことではなく、隣に座る#相手#のことでいっぱいだった。