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【第二日目】「大声ヲ出スト排除」(後編)
「…っ、。」
蓮はハッとし、顔を上げて自分の手のひらを見つめる。ペンの破片がカラリと音を立てて落ち、ズキっとした痛みが走った。
立ち上がって救急セットを部屋の棚から出し、消毒をして包帯を巻く。
「…何をしているんだ、俺は…。」
小さくそう呟き、救急セットを再び棚の中へとしまい、玄関の方へと歩いてドアノブをまわし、外に出る。
【特別ルールを追加しまぁす!!】
突如として高らかな声が響き渡り、嫌な予感がし、冷や汗が頬を伝う。マンションの入り口の前で足を止め、モニターの方へと顔を向けた。デスゲームである以上、特別ルールなど、絶対に碌なものじゃない。そう心の中で思いながら、モニターから発せられる声に耳を傾ける。
【参加者の中から誰か一人を生贄にしてください!!生贄に選ばれた人は、もちろん死ぬよ!】
「は……?」
追加された理不尽なルールに、蓮は思わずポカンと口を開けて呆然とした。
ルールの詳細も、何も伝えられぬまま。
モニターの電源は消え、刹那、辺りにどよめきと混乱が広がっていく。
「なぜだ、なぜ!理不尽だ、いやだぁ!」
ある男の恐怖に混乱した叫び声をきっかけに、次々と人々が頭を抱えて叫び声を上げる。逃げ惑い、ドームの外へと出ようと再び駆け出す者もいた。
「(バカが…!)」
蓮は心の中で舌打ちをし、その場から走り出し、その男の口を片手で塞いだ。
だが、すでに遅かった。ー
【ルール違反者 発見!!】
モニターから再び発せられたその声を合図に、叫び声を上げていた人々全員の体がノイズのようにブレたかと思えば、次の瞬間には体が弾け、辺り一面に大量の血液が飛び散る。
先程の喧騒が嘘かのように静寂が広がった。
至近距離で人が弾け飛び、返り血を顔や服に大胆につけたまま、蓮はその場に立ち尽くし、大勢の人々が一瞬にして消えたことに呆然と目を見開いたままぴたりと動きを止める。
「これは面倒臭いことになりましたね…それで、生贄、ですか。」
その横から、矢井とはまた別の、スーツを身につけ目元にクマを持った男性が歩み寄ってくる。初日、デスゲームに巻き込まれた時に見たことがある人物だ。
「…。誰だ?」
「初めまして、私は佐伯緋色といいます。」
動かないまま掠れた声で問いかける蓮に対し、佐伯は丁寧に一礼し、蓮の方を真っ直ぐに見つめて名乗る。
「…俺は─」
蓮が声を絞り出し、自身も名乗ろうとしたその瞬間。
**『キャアアァァァァアァァ!!!!』**
突如甲高い女性の叫び声が聞こえ、蓮と緋色は声がする方向を同時に向いた。
「…っ、く…。」
佐伯は目を細め、眉間に皺を寄せて何か心の中で葛藤しているのか、その場から動こうとしなかった。
面倒ごとにはできる限り巻き込まれたくない、だからと言って誰かを見捨てることもできない。
「ッ、なにやってんだ!いくぞ!」
蓮は既に走り出し、後ろにいる佐伯を一瞥し、怒鳴っているような声をあげた。
「…!はい…!」
佐伯はその蓮の声を聞き、ハッとして顔をあげ、自身も走り出し、蓮の後を追いかけた。
スクランブル交差点にある街灯が、夜の暗闇の中を照らしている。
「なにがあった!?」
蓮は息を切らし、現場へとたどり着く。そこには、信じられない光景が広がっていた。
既に血まみれで血の池の中に力無く倒れている`月野瑠奈`の姿があった。脇腹に深い刺し傷があり、血がドクドクと流れている。
急いで蓮は瑠奈の近くに膝をつき、首元に手を添えて脈を測った。
が、脈がない。
完全に心肺も停止し、体も冷たくなっている。するとポケットに入れているスマホからバイブ音が鳴り、震える手でポケットの中からスマホを取り出す。
**`【月野瑠奈 死亡】`**
スマホの画面に血塗られたような赤い文字がそう映し出され、やがて電源が消え、再び画面は暗くなる。
「…まだこんなに若いというのに…。」
佐伯は目を伏せ、静かに祈りを捧げるように瑠奈の死体に向かって手を合わせた。
夜明けの日の明かりが差し込み、徐々に周囲を照らしていく中、蓮は血まみれのまま、誰にも聞こえない、小さな掠れた笑い声をあげた。
【今回の出演者】
・綺堂蓮
・佐伯緋色
・月野瑠奈(死亡)
第三話 前編へ続く─