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Ⅴ「サポーターズ」
シュウは一人で学生寮を出て、校舎へと続く並木道を抜ける。
(家の矜持を守る、島を守る、彼女を守る、僕はいずれ、負けるべき時に負ける)
歩いていると、朝の雑音を力技でねじ伏せるような、快活な声が聞こえた。
「シュウ様、おはようございます!」
三人の足音が近づく。
レトやヒナの姿も視界に入っているはずなのに、シュウの瞳は無意識に、真ん中を歩く凛とした少女の姿を追っていた。
そこだけスポットライトが当たっているかのように、存在感が際立って見えた。
「おはよう。レト、ヒナ、チカゼ。三人揃って登校?」
少しだけ浮ついた心を隠すように、茶化すような口調を選んだ。
すると隣に来たチカゼが、細い指でシュウの額をはじく。
「まさか。偶然会っただけよ。この二人は貴方のサポーターズでしょ」
「チカゼさんの言う通りです! その様子だと、転校生のこと気にしてますね? 俺が上手いことやるんで、高みの見物しててくださいよ!」
側近のレトが豪快に笑う。
歩く重戦車と見紛うばかりの勢いだ。
「ありがとう、レト。でも彼を怖がらせてはいけないよ。 おまえは何かと島外の人に厳しい」
その傍らで、丸眼鏡の少女・ヒナが書類を差し出す。
「あの、過去三年間の傾向から、対策資料をまとめておきました。今度の数学の難問はここから出ます。チカゼさんもご覧になられますか?」
「見る。ありがとうヒナさん。……それで、そう、シュウ」
ふわりと、淡い花の香りが鼻をくすぐった。
レトとヒナに聞かれたくないのか、チカゼが耳打ちの合図を送っている。
「なに?」
喉の奥に小さな違和感が走った。
シュウは眉尻を下げて身を寄せる。
(ぐっ、惚れた弱みだ。変に緊張する……いつも碌なこと言われないのに)
嫌な予感は的中し、チカゼは淡々と爆弾を投げた。
「マツリカちゃんがね、グレン君は自分の友達だって言いだしたの」
「…………なんだって?」
驚愕は、頬の筋肉をわずかに引きつらせる。
「彼女の冗談……いや、待ってくれ。どうして君が、その名前を知っているんだい?」
「マツリカちゃんに聞いた」
シュウはさらに声のトーンを落とし、一歩詰め寄った。
「その『グレン』という名は、まだ、公表されていない。それを、どうしてマツリカさんが?」
「さあ?私も知らない」