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九度目の仰天
今日は対面でのグループ面接だ。
…いやだな。…はよ帰りたいな。
頭上からは鋭い日差しが照りつけ、その熱に空気が熱されて非常に蒸し蒸しとしていた。
今日参加する説明会は、会社説明の後にグループ面接も同日にやるという、非常に効率的な形式をとっていた。
そのため僕はわざわざこんな遠い都会まで来て、あっつい日差しの中、汗だくだくで、コンクリートの砂漠の上をよろよろと歩いている。
「あー。帰りたい帰りたい。」
周りには都会の洒落たブランドショップ、リアルを満喫している高校生、香水のきつい外国人のカップルがひしめき合っていた。そのなかに僕も混じる。
「嫌だ…帰りたいぃ。」
頬を伝う汗の雫は、涙よりも塩辛かった。
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ヒイヒイ言いながら着いた場所は、ガラス張りの洒落たオフィスだった。さすが都会と言うだけある。
すると、目の前のエントランスの中から社員らしき人が手を振っているのが見えた。その男性は僕に向かって愛嬌のある笑顔を向けて、中に入るように促した。
入った先にはすでに四人ほど椅子についている学生がいた。彼らは黙りこくって壁のスクリーンを見つめている。
僕はそのなかに混じった。田舎者とバレていないだろうか。
後から続々と他の学生がやってきて、おそらく全参加者が席に着いた。
流れる様に、とはいかなかったが、おぼつかない様子で説明会が始まる。
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そんなこんなで説明会が続いていったが、途中で企業の代表が現れ、急に身の上話を始めた。
とんでもねぇジジイ様だったのでおそらくかなり昔の時代の話だろう。ネットがなかった時代らしい。
代表の話をぼーっと聞いていると、グループ面接の時間になった。ついにきてしまった...
「それでは、履歴書を出してください。」
その言葉が代表の口から発されたところ、他のグループ面接の参加者の三人は流れるようにカバンから履歴書の紙を取り出した。
え?今時紙の履歴書なん??持ってきてないけど???
僕は全身から汗が吹き出して、体感的にはシャワーを浴びた後のようにずぶ濡れだった。
「あ、履歴書ないんですね。大丈夫ですよ、この紙に学校名とお名前を書いてください。」
先ほどの爽やかな社員が白い紙を四枚ほど手渡してくれた。
「あ、ありがとうございます。」
僕はそれに持ち前の汚ねぇ字で学校名と名前を書いた。
グループ面接が、今始まる_
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後日、迷いに迷ったが、やっとの思いで企業に選考辞退のメールを送ることにした。
なぜかって?答えは簡単。あの会社は絶対に『アットホーム』な会社だ。
つまりは確実にパワハラ昭和風味の社風である。僕は一瞬で見抜いたぞ。
面接自体は大して難しいことはなく、出身や就きたい職種、入社後に会社に求めることなどを聞かれただけでほとんどアンケートみたいな問答だった。面接という感じはしなかった。
しかし…
代表がなんかやばそう。まぁとにかくやばそうだったんだ。おそらく合う人にはめっちゃ合うが、合わない人にはとことん合わないタイプである。それは僕自身にはどうしようもないことだった。
ということで選考を辞退することを決めたという流れだ。
しかし会社の屋上からみたあの夜景は綺麗だったな。田舎とは違う、弾けるような眩い夜景。あれがもう二度と見られないというのは惜しいものだな。
僕はメールの文面に向き直る。
これまで何度も、何度も何度もやられてきたことをここで|返す《八つ当たり》。
「お祈り返しダァァっ!!」
僕の甲高い声が勇ましく、部屋中に飛び散った。