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四怪目
山を歩く。先輩はここにいるはずなのに見つからない。そんな焦燥感を誤魔化すようにネット掲示板に書き込みを始めた。
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104:名無し
でももう一時間経ってない?
105:名無し
もうそんなに経つのかー
イッチ進展あったー?
106:イッチ
無さすぎて焦りと怒りと心配で気が狂いそう
107:名無し
お、おぉ
108:名無し
すまんて
落ち着いて
109:名無し
結構冷静だなって思ってたけどそうでもないのか
110:特定班
いやいや、23時から三時間自転車漕いで山の中でテント張って野宿してる人が冷静なわけなくない?
111:名無し
確かに
112:イッチ
気を紛らわせるために話をしようと思うんだけど
・先輩とこっくりさんした話
・先輩と悪魔降臨させようとした話
・先輩と学校で一人かくれんぼした話
どれがいい?
113:名無し
何その豊富な話のタネ
全部で
114:名無し
お前ホンマに先輩好きやな
全部やろ
115:名無し
気を紛らわせるために話す重さじゃない
全部お願いします
116:名無し
意外と仲良かったんだねー
全部ー
117:特定班
全部話してほしい
118:イッチ
じゃあ順に話すか
部室でこっくりさんやったんだよね。
こっくりさんって言うのはザックリ言うと呼び出したお化けに質問するあれね?
やってもいいけど自己責任でお願いね。先輩がこっくりさんに聞きたいことがあるって言うから付き合ったんだけど、俺はもちろん動かさないし、先輩も本気そうだったから多分動かしてないと思う。
それで一時間ほど待った時、動いたんだよね
119:名無し
一時間もやったのか
120:名無し
一時間も付き合うイッチはマジで流石やわ
121:イッチ
クルクルと鳥居を回った後、「はい」に進んだ。
ここから質問が始まるんだけど、先輩が「先にどうぞ」って言ったんだよね。
どうやら先輩は俺も質問があるから付き合ってくれたと思ったみたいで⋯
122:名無し
本当に動いたのすごい
123:名無し
何聞いたの?
124:イッチ
「俺が好きな人と結ばれるのはいつ頃になりそうですか?結構アピってるのに全然気づいて貰えないんですが?」って質問したよ
125:名無し
お前本人の前で⋯
神経図太いな
126:名無し
質問に見せかけた愚痴に見せかけた惚気だろ、それ
127:名無し
霊もそんなん質問されて困っただろうねー
なんて返ってきた?
128:イッチ
『し・る・か・が・ん・ば・れ』でした
ちなみに先輩は「好きな子、いたのね⋯」って目を見開いて驚かれた
129:名無し
こっくりさん辛辣すぎるww
130:名無し
本当に気づいて貰えてないの草
131:特定班
イッチ⋯頑張れ⋯
132:イッチ
まぁちょっと心折れかけたんだけど、そんなことで揺らぐ恋心じゃないよね
「俺からは質問もうないんで、先輩後はどうぞ」って話してこっくりさん再開。
先輩は「私も聞きたいことは一つだけ。こっくりさん、こっくりさん。私を連れ去ってくれませんか?」
って質問した。
133:名無し
えぇ⋯
134:名無し
イッチ一目惚れの割に一途よな
それ、質問って言うんか?
135:名無し
うーん
闇が深い
136:イッチ
そしたら「はい」「いいえ」をグルグル回り出して、窓ガラスが割れたんだよね
137:名無し
ひえ
138:名無し
急にホラーだな
139:イッチ
俺は飛び散ったガラスで先輩に傷がつかないように⋯
というのは建前で「このチャンスを逃してなるものか」と先輩を強く抱きしめた。
140:名無し
おいw
141:名無し
この有事に何をしてんだよw
142:イッチ
先輩は熟れたりんごのように顔を赤くしてそれはそれは可愛かったんだけど、
まぁその後は特に何も起きなくなって、こっくりさんは終結するのだった
143:名無し
イッチの思惑知ったら顔を青くしそう
144:名無し
二人の甘い空気に流石のこっくりさんも退散したのか⋯
145:名無し
なんか、こっくりさんが不憫に思えてきた⋯
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「ハハッ。確かに。」
俺はその後の話を思い出していた。
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「⋯あなたね。好きな子がいるのにああいうことするの、良くないと思うわよ」
部室の鍵を閉めながら、唐突に先輩がそう言った。
「そういうことって?」
「だ、⋯抱きしめる、とかよ!」
恥ずかしそうにそう言う先輩の顔は耳まで赤く、本当に愛おしく思った。
けど、同時に。こんなにも気持ちが伝わらないのに少し苛立ちを覚えた。
「わ、私みたいな陰キャにそういうことすると⋯勘違いされちゃうかも知れないでしょ!だからね!そういうことはその⋯あなたに相応しい陽キャ女子にしてあげ⋯」
「いいですよ。勘違いして。」
先輩の言葉に被せるように言う俺を見て、驚いたように目を見開いた先輩。これで鈍い先輩にも気づいて貰え―――
「いや、駄目でしょ?好きな子いるんだし」
俺は思った。―――なんて鈍くてちょっと憎たらしい可愛い先輩なんだろうって。
きっとその日からだ。先輩への好意を隠さなくなったのは。